『生活に活かす共済と保険』

米山高生先生(東京経済大学教授)の最新刊『生活に活かす共済と保険』を読みました。「共済と保険はどこが同じで、何が違うのか?」をテーマにした著作で、共済のみならず、保険や保険会社について考えるための材料もたくさんありました。

保険会社のビジネスモデルに関する本書の記述は明快です。

「消費者からみれば、保険は現在のキャッシュと将来のキャッシュを交換する『金融商品』である。これを保険会社からみれば、約束した将来のキャッシュを確実に支払うという義務を負うものといえる」(50ページ)。

「他の金融商品と比べて保険商品の特別なことが二つある。第一に、将来のキャッシュ支払いが確率論的に決定されること、そして第二に、消費者のリスクを保険者が引き受けることである。保険会社のビジネスモデルの特徴を形成しているのは、この二つの要素であるといっても過言ではない」(同)

保険会社は約束した将来のキャッシュを確実に支払うという義務を負っているのだから、経営者が最優先すべきはその義務を確実に履行するための経営ということになります。

米山先生はこうも語っています。

「保険には、他の金融商品とはどこか違った『何か』がある。(中略)困った人のためにみんながおカネを拠出し、困った人を助けようという仕組みによって運営されているという面がある」(76ページ)。

「しかし自助の手段として保険・共済という『金融商品』を消費者として合理的に選択しているのなら、『たすけあい』もいいが、契約者保護をより確実なものとしてほしいというのが(消費者の)本音だと思う」(79ページ)。

この「たすけあい」についても深い考察がなされています。
本書では「たすけあい」のうち、リスクプーリングによって結果として生じるものを「たすけあいI」、団体内での内部補助によるものを「たすけあいII」として区別しました。そして前者は保険と共済が共有する機能で、後者は共済においてのみ存在しうると整理しています。

共済に「たすけあいII」が組み込まれやすいのはどうしてなのか。私自身はまだきちんと理解できていないところがあるとはいえ、人間が利他的な行動に対して価値を置くことを踏まえると、団体内での内部補助を(それを構成員が理解したうえで)許容する場があるのは不思議ではないのかもしれません。

※写真のC-3PO ANA JETに乗りました。

 

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金融庁の金融行政方針

今週のInswatch Vol.1152(2022.9.12)では金融庁の行政方針を取り上げましたので、ブログでもご紹介いたします。元の資料はこちらになります。
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金融行政の重点課題と取組方針を公表

金融庁は8月31日に2022事務年度の金融行政方針を公表しました(金融庁の事務年度は7月から翌年6月です)。「直面する課題を克服し、持続的な成長を支える金融システムの構築へ」という副題が付き、「概要」「本文」「コラム」「実績と作業計画」を合わせると190ページにもなる大作です。
そのなかで保険に関する記述が少なく、かつ、モニタリング方針に挙がっている項目に前年度から変化がなかったのは、保険会社や代理店に問題がないというのではなく、金融庁の問題意識が今のところ必ずしも高くないというだけだと私は考えています。

以下では「実績と作業計画」に掲載された業種別モニタリング方針から、保険会社に関する作業計画をご紹介します。

保険業界における顧客本位の業務運営

節税(租税回避)手法を活用した保険募集の問題や営業職員による不適切事案の発覚などを受けて、前年度の作業計画に比べると記述がかなり増えました。とりわけ、「財務局との連携を一層強化しつつ、保険代理店の監督を行っていく」「(乗合)代理店の業務品質評価に係る取組みが各生命保険会社に広がるよう促していく」と、保険代理店に関する内容が増えたという印象です(営業職員管理のモニタリングに関する記述もあります)。

なお、外貨建保険の販売に関するフォローアップや、障がい者等への対応については、業態横断的なモニタリング方針のなかで触れています。

ビジネスモデル

引き続き保険会社とのビジネスモデル対話を行うというなかで、「トップラインだけでなくボトムライン(火災保険の収益改善等)の適正化に向けた取組み等をテーマとした対話を検討する」とあり、後述する「自然災害」と合わせ、金融庁が火災保険の収支動向に強い関心を持っていることがうかがえます。

グループガバナンス

大手保険グループの経営管理(海外事業を含む)に関するもので、前年度のフォローアップとみられます。

自然災害

大規模な自然災害に関する保険会社のリスク管理態勢を引き続きモニタリングするというものですが、「災害に便乗した悪質商法等の排除」「水災リスクに応じた火災保険料率の細分化」に関する記述もあります。

経済価値ベースのソルベンシー規制等

金融庁はこの6月に主要論点の暫定決定内容を公表しているので、これに基づいて準備を進めていくとのことです。
個人的には「監督会計のあり方について検討を行う」「IFRS任意適用に関する必要な法令の整備」にも注目しています。

金融行政方針は単に金融庁が作業計画を世に示したというだけではなく、行政として自らを律することになる重要なものです。読者の皆さんもこの機会に金融庁のサイトを確認してみてはいかがでしょうか。
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※鉄道150周年を迎える横浜・桜木町駅です。

 

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入院給付金の見直し(続き)

コロナ「みなし入院」による入院給付金支払い対象の見直しについて、9日に多くの保険会社がニュースリリースを公表しましたので、確認してみました。
9月26日以降の診断から、重症化リスクの高い「みなし入院」の加入者(=発生届の対象)のみに入院給付金を支払うという内容は各社共通ですが、説明内容はいくつかのパターンがありました。

・政府が発生届対象を限定した
・政府による発生届対象の限定で、入院が必要な状態と判断できなくなった
・発生届の対象外の人は入院の定義から外れる
・発生届が出ないと感染症法上の「健康観察」の対象とならない
・入院の必要性が低い感染者が増えたうえ、政府による発生届対象が限定された

発生届に関する政府の対応に伴う措置という説明だけではなく、実態として入院の必要性の低い感染者が増えたという趣旨の説明をしているのは、私が確認したなかでは第一生命、ソニー生命、オリックス生命、大手損保4社と損保系生保だけでした。この点に触れないと、これまでは政府に言われたから支払っていて、今般は政府が方針を変えたから見直すという説明に見えてしまうように思うのですが…
なお、「加入者間の公平さを欠いている」「モラルの低い加入者が増えている」といったところまで踏み込んだ記述は見当たりませんでした。

以下、大手生保を中心に10社ほどのリリースの概要を記しておきます(11日時点で未公表の会社もあるようです)。

日本生命
見直しの背景として、これまでは約款上の定義には該当しないものの「入院」と同様に取り扱ってきたが、今般の政府による発生届対象の限定により、今後は「新型コロナウイルス感染症に罹患したことのみをもって『常に医師の管理下において治療に専念』し『入院が必要な状態』と判断できない」と説明しています。

第一生命
これまでは、約款上の「入院」の定義に該当しないものの、社会情勢を踏まえた時限的な措置として実施してきたが、感染者数が増加するなかで、「(入院の必要性が低い)軽症・無症状の割合が高まっていること」「政府が発生届の対象を限定すること」の2つにより見直すと説明しています。

住友生命
「新型コロナウイルス感染症の発症状況が変化しつつある中、政府における措置などの状況変化を踏まえ、今後は、重症化リスクの高い方の宿泊療養・自宅療養を『みなし入院』による入院給付金のお支払対象とするもの」と説明しています。

明治安田生命
今回の対応の背景として、これまでは入院が必要である「みなし入院」の方に支払ってきたが、「今回の政府における措置に伴い、発生届の対象とならない方は『常に医師の管理下において治療に専念している』とはいえない」ため見直すと説明しています。

かんぽ生命
これまでは「お客さま保護の観点から、約款上の『入院』とみなして」きたが、「新型コロナウイルス感染症に係る発生届の範囲を全国一律に重症化リスクの高い方に限定する旨が公表されたこと等を踏まえ」見直すという説明です。

大樹生命
約款に関する記述はなく、今般の見直しの理由として、「発生届の対象外となる方については、『常に医師の管理下において治療に専念』していると判断できず、新型コロナウイルスに感染したことのみをもって『入院が必要』な状態と判断できないため」と説明しています。

朝日生命
やはり約款云々という記述はなく、政府の決定により、「発生届の対象外となる方については、常に医師等の管理下で治療に専念している状態にはないこととなり、新型コロナウイルス感染症に罹患したことのみをもって入院治療が必要だと判断できなくなります」と述べています。

太陽生命
これまでは保険約款を柔軟に解釈した特例措置をとってきたが、「発生届の対象とならない方を新型コロナウイルス感染症と診断されたことのみをもって『医師の管理下における治療に専念』し『入院が必要な状態』と判断できない」ので、見直すとしています。

富国生命
政府から示された方針を受けてという説明です。

オリックス生命
政府の方針見直しのほか、「新型コロナウイルス感染症の発症状況が変化しつつあり、必ずしも入院を必要としない軽症・無症状の割合が高まっている状況にあります」と述べ、入院の定義から外れるとしています。なお、ニュースリリースではなく「おしらせ」に出ています。

アフラック生命
発生届が出ないと感染症法上の「健康観察」の対象とならず、入院給付金の支払要件に該当しないという説明です。

メットライフ生命
「今回の取扱変更に至る経緯」という説明があり、「発生届を提出する対象とならない方については、感染症法上の『健康観察』(健康状態を確認する)の対象から外れるため、保険約款上の『入院』の要件である、『常に医師の管理下において治療に専念すること』には該当しない」ので取り扱いを変えるとしています。

あんしん生命
「新型コロナウイルスの感染者数が増加する昨今の状況においては、重症者の割合がこれまでと比べて低い水準であり、軽症・無症状の方の割合が高まっております」「発生届の対象とならない方については新型コロナウイルスに感染したことのみをもって入院が必要な状態と判断できない」の2つを挙げています。

ひまわり生命
「新型コロナウイルスの感染者数が増加する昨今の状況にあっては、重症者の割合はこれまでと比べて低い水準であり、軽症・無症状の方の割合が高まっている状況」「政府において、新型コロナウイルス感染症に係る発生届の範囲について、2022年9月26日以降、全国一律に、重症化リスクの高い方に限定」の2つを挙げています。

※写真は熊本・山鹿温泉です。

 

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入院給付金の見直し

前々回のブログでご紹介した8月20日前後のメディア対応に続き、9月1日から4日にかけて、NHK(夜9時のニュースなど)をはじめ、掲題のテーマでいくつかのメディアに登場しました。共同通信の取材にも応じたので、静岡新聞などいくつかの地方紙にコメントが出たそうです(知人に教えてもらいました)。

その共同発のコメントですが、前半部分に訂正があります(申しわけありません)。

「みなし入院給付金の特例は、新型コロナウイルス感染症が未知の病気で社会的に深刻だったタイミングで、医療機関の逼迫(ひっぱく)を回避するために保険業界が社会貢献のような形で導入した」

ではなく、

「みなし入院給付金の特例は、新型コロナウイルス感染症が未知の病気で社会的に深刻だったタイミングで、医療機関が逼迫(ひっぱく)して自宅療養者が出るなかで、保険業界が社会貢献のような形で導入した」

というコメントをしたつもりでした。これは記者さんのせいではなく、私の確認ミスです。

ちなみに後半部分はこうなっています。

「最近は軽症や無症状の感染者も多く、本来は給付金を受け取る対象か疑わしい人も受け取っていることが問題になっている。保険は加入者がお金を出し合って、いざという事態に備える仕組みだ。みなし入院の感染者全てに支払いを続けると、新規で医療保険に加入する人の保険料が値上がりしたり、販売停止につながったりして、加入者が不利益を被る恐れがある」

NHKのコメントは動画のほか、こちらで確認できます。

NEWS WEB「コロナ自宅療養で“入院保険”これからどうなる?」(9月1日更新)
サクサク経済Q&A「【詳しく】新型コロナ 入院給付金見直しって?」(9月1日公表)

コメントの中核部分はこちらになります。

「保険会社が『みなし入院』でも給付金を払うと決めたときはまだ、コロナがどんな病気で、どれくらい深刻なのかが分からなかったため、こうした対応が社会にとって役立つと考えていたのだと思う。しかし、今は症状が重くなくても、陽性と判定されればそれだけで給付金がもらえてしまう状況で、給付金をもらうためにあえて保険に加入する人も出てきている。入院給付金の原資は契約者が払う保険料で、保険料を払っている人と給付金を受け取っている人のバランスが崩れ不公平な状況になっており、正常な状態に戻すという話だと捉えるべきだ」

後段の「保険料を払っている人と給付金を受け取っている人のバランスが崩れ不公平」というのはちょっと変ですが、「保険料と給付金のバランスが崩れているうえ、保険料を負担している人たちのなかで不公平が生じている」と捉えていただければ幸いです。

ちなみに同じNHKでもNEWS WEBとサクサク経済Q&Aは別の取材でして、これは本人でないとわからないかもしれません。

念のため、今回の見直しに関する資料を挙げておきましょう。

1.金融庁「入院給付金の取扱い等に係る要請」(9月2日公表)

生命保険協会、日本損害保険協会、外国損害保険協会、日本少額短期保険協会にあてたもので、「貴協会におかれては、会員各社において、医療機関や保健所の負担軽減に十分配慮しつつ、政府による検討の方向性を踏まえた上で、いわゆる『みなし入院』による入院給付金の取扱い等について、支払対象も含め、可及的速やかに検討が行われるよう周知していただきたい」とあります。

2.生命保険協会「新型コロナウイルス感染症による宿泊施設・自宅等療養者に係る療養証明書の取扱い等について

上記の金融庁要請を受けて、「生命保険各社においては、医療機関や保健所の負担軽減に十分配慮しつつ、いわゆる『みなし入院』による入院給付金の支払対象も含めた取扱い等について、 検討が行われるよう周知しています」とあります。日本損害保険協会のリリース文も、この部分に関してはほぼ同じです(「周知」ではなく「依頼」となっていますが)。

各社の対応はおそらく検討中で、まだサイトでは確認できませんでした(5日現在)。

※熊本城の修復もだいぶ進みましたね。

 

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生保の2022年度4-6月期業績(続き)

2022年6月末の大手生保(日本、第一、住友、明治安田)のソルベンシーマージン比率(SMR)を確認したところ、水準自体に全く問題はないものの、他社に比べて住友生命の低下幅が大きいことに気がつきました。

日本 1043%(△ 16%ポイント)
第一  886%(△ 21%ポイント)
住友  688%(△121%ポイント)
MY 1023%(△ 38%ポイント)

( )は2022年3月末との差

4-6月期決算でもSMRの分子・分母の内訳や有価証券の時価情報は公表されています(デリバティブ取引の開示は一部の会社のみ)。これによると、住友生命のSMR低下は、分子の「ソルベンシーマージン総額」の減少が他社よりも大きかったことと、分母の「リスクの合計額」が増えたこと(日本生命と第一生命は減少、明治安田生命は微増)によるものとわかります。

分子の減少は「その他有価証券評価差額金」の減少、つまり、その他有価証券区分の含み損益が減ったことが大きいです。4-6月期には海外金利が上昇した影響で、外国公社債の含み損益が減りました。これは4社に共通しています。加えて住友生命の場合、このところ増やしてきた「外国株式等」の含み損益の減少も目立ちます。ただし、今の開示ではこの詳細はわかりません。

分母のほうは、日本生命と第一生命が外国公社債の残高を減らしたのに対し、住友生命と明治安田生命は増やしています。とはいえ、明治安田生命の資産運用リスク相当額が微増にとどまり、住友生命が増加している理由は、残念ながら今の開示ではわかりません(外国証券の関係ではないかと思いますが…)。住友生命に限らず、各社はもう少し外国証券に関する情報開示を進めてほしいところです。まあ、デリバティブ関連であれば9月期に何かわかるかもしれませんね(株式のヘッジポジションの関係とかであれば)。

なお、準大手では富国生命のSMRが82%ポイント下がっていますが、分子のソルベンシーマージン総額が減った最大の要因は国内公社債の含み損益が減ったことでした。富国生命は保有する国内公社債の大半を「その他有価証券」区分としているため、金利上昇の影響を受けたとみられます。経済価値ベースでみれば、全く違った動きとなっているのでしょう。

※写真は東京・大手町の某ホテルからの景色です。

 

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メディアに登場

ここ数日メディアに登場する機会がいくつかあったので、備忘録を兼ねてご紹介します。

日経Beyond Health
19日(金)に「どうなる? 日本の生保ビジネス」という少し長めのインタビュー記事がアップされました。比較的長いスパンで大手生保の経営を考えるというもので、記事のなかでは課題として以下の3つを挙げました。

1.現在の経営スタイルに関する説明
2.ビジネスモデルの再構築
3.技術革新をどう取り入れていくのか

無料で公開されているようですので、詳細はサイトをご覧ください。

羽鳥慎一モーニングショー
18日(木)に、テレビ朝日の朝の情報番組にリモート出演しました。「保険 入院給付金支払い急増…新規販売見直しも」というコーナーでしたが、時間が押してしまったので、私のコメントはちょっとだけです。
画面では「『将来の不安に備えて加入する』という保険本来の形が成り立たなくなってきているのが、今、起きていること。保険業界として、コロナをめぐる保険の見直しが必要な時期に来ている」などいくつかのコメントが出ていたと思います。

最後にレギュラーコメンテイターのかたが、「保険会社には同情しない」「儲けようと思ってコロナの保険を売ったのだから、自業自得」という趣旨のコメントをしていましたね。いま起きている入院給付金の支払い増加はコロナに特化した保険の話ではないし、入院給付金の原資は加入者の支払った保険料なので、不正まがいの加入者が増えるのは問題なのですが…スタジオにいたら放送事故になっていたかもしれません(笑)

同じ18日にはNHKの朝のニュースでも、7月26日にアップされたwebニュース記事「コロナ自宅療養で “入院保険” 手続きはどうするの?」が何回か紹介され、SNSなどで「観たよ」というコメントを複数いただきました。医療保険の加入者に請求を促すような内容となっていますが、皆さんぜひ「My HERーSYS」を利用していただき、多忙な保健所の手を煩わせないようにしていただきたいですね。

コロナと民間医療保険に関しては、地元テレビ局のRKB毎日放送からも取材を受け、23日(火)の夕方18:15からのどこかでコメントが使われるかもしれません。
⇒ こちらから観られそうです。

以上です。

<8/22追記>
テレビ朝日の報道番組「グッドモーニング」にも取材協力しました。
こちらになります。

※写真は臼杵(大分県)の城下町です。

 

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民間医療保険の存在意義は何か

インシュアランス生保版(2022年8月号第3集)に寄稿したコラムをご紹介します(見出しはブログのオリジナル)。
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医療保険の支払いが急増

保険を学ぶ大学生に対し、「民間の医療保険は医療費を保障するものではないんだよ」という話をすると、怪訝な顔をされることが多い。
読者の皆さんには釈迦に説法だと思うが、医療費を保障するのは公的医療保険であって、保険会社が提供する医療保険は、病気の際の支出全般を保障(補償)する保険である。支払事由は被保険者の入院や手術などとなってはいるものの、給付金の使い道は自由なので、医療費の自己負担分に充ててもいいし、療養中に減ったパート代の補填にもなれば、体力回復のために美味しい食事をとるのにだって使える。裏を返せば、死亡保険や火災保険、自動車保険に比べると、加入者は民間医療保険で自らのどのようなリスクを保障(補償)してもらいたいのか、必ずしも明確ではないように思う。

こんなことを書いたのは、新型コロナウイルス感染症の流行第6波以降、保険会社による入院給付金の支払いが急速に増えていることがある。報道によると、生命保険協会加盟会社の入院給付金(コロナ関連)はこの4、5月だけで昨年度の水準に達した。全体で見ても、この2カ月間に支払った給付金は前年同期に比べて22%も多い。とはいえ、この給付金が基本的に医療費に充てられることはない。なぜなら、新型コロナは国の指定感染症であり、治療に係る医療費は公費負担となっているからである。

何を補償しているのか

コロナ感染に伴う民間医療保険の入院給付金支払いでは、感染者数の急増のほか、保険会社にとって2つの想定外の事態が生じている。1つは、支払った入院給付金の9割超が自宅療養などの「みなし入院」患者向けとなっていること。もう1つは、濃厚接触者など感染リスクの高い人が率先して保険に加入するといった、大規模な逆選択やモラルリスクが生じた可能性である。
コロナ感染者の治療費に自己負担はなく、感染者の多くが軽症であることを踏まえると、なかには「保険に入っていたおかげで生活が助かった」という人もいるだろうが、給付金を受け取った人の大半は「お金を受け取れてラッキー」という感覚ではなかろうか。

コロナ感染という「苦痛」に対する補償に対し、目くじらを立てるのはおかしいという意見もあるだろう。ただ、保険本来の機能はリスクの移転であり、人々は保険を利用すれば、安心して社会活動を営むことができるというもの。現在の民間医療保険によるコロナ感染者への給付金支払いは、こうした保険本来の機能から外れてしまっているように見える。
想定を超えた支払いは、保険会社の保険引受リスク管理の甘さから生じたと言ってしまえばそれまでである。だが、そもそもの問題は、民間医療保険のカバーするリスクがあいまいなまま、保険業界にとって高収益の見込める主力商品として、競って販売してしまったことにあるのではないか。
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※写真は中津城(大分県)です。

 

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生保の2022年度4-6月期業績

新聞報道はどうして生保の保険料収入へのこだわりが強いのでしょうか。4-6月期決算を報じた記事「第一生命、保険料収入で日本生命抜く(有料記事)」では、主要会社の保険料等収入のランキングを載せています。毎度のことながら、この数字で何かを語ることの無意味さを示しておきましょう。

・保険料等収入は単にその期に受け取った保険料ということで「売上高」ではない
 (平準払い商品では過去に獲得した契約の保険料が多い)
・貯蓄性の強い商品の影響を強く受ける(特に一時払い商品と団体年金)

この4-6月期は外貨建て保険の販売が増えたのは確かですが、同時に解約返戻金が急増しているのにも注目です。一時払いの外貨建て保険の主要チャネルは金融機関なので、円安・海外金利上昇を受けて「解約による利益確定」「新たな契約の加入」が同じところで行われた可能性があります。「販売が増えた」だけではなく、そこにも触れてほしかったです。

給付金支払いの動向も確認してみました。先日確認した損保系生保(あんしん、MSA、ひまわり)の主力チャネルは代理店です。営業職員チャネルを主力としている生保でも給付金の支払いがかなり増えていて、今のところチャネルによる差は明らかではありません(8/16追記:保有ANP対比でみると営業職員チャネルの「支払率」が高いように見えますね)。少なくとも、昨年度1年間の支払いを大きく上回る入院給付金の支払いが4-6月期だけで生じていることが確認できました。

※くろちゃんの本名は「あそ くろえもん」なのですね。特急あそぼーい!の車内にて。

 

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SMRからESRへ

6月末に金融庁が新たな健全性政策の暫定決定を公表していますので、今週のInswatch Vol.1148(2022.8.8)ではこちらを取り上げました。ブログでもご紹介いたします。
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SMRの機能不全

保険業界のかたであれば、ソルベンシー・マージン比率(SMR)という保険会社の健全性を示す指標をご存じだと思います。保険業法は保険会社に対し、通常の予測を超えるリスクに応じた支払余力(ソルベンシー・マージン)の確保を求めていて、比率が一定水準を下回ると監督当局が行政命令を出し、保険会社の健全性確保を図るというものです。
しかし、当局の介入基準である200%を直近時点まで上回っていた保険会社が相次いで経営破綻する事態となったことのほか、現行会計では責任準備金を取得原価で評価しており、結果としてSMRが金利水準の変動をうまく反映できていないことなどから、SMRの信頼性は必ずしも高いとは言えない状況です。おそらく皆さんも、1000%前後の数字がずらっと並ぶ各社のSMRをほとんど気にしていないのではないでしょうか。

SMRからESRへ

金融庁はこれまで何も手を打ってこなかったわけではありません。例えば2011年には、あくまで現行の枠組みのなかではありますが、SMRの厳格化を行っています。さらに、金利水準の変動をはじめ、保険会社の財務状況を的確に把握できるよう、金融庁は健全性指標を抜本的に見直す検討を続けてきました。検討に時間がかかったとはいえ、先月(6月)ついに新たな健全性指標の暫定基準を公表するに至りました。
新たな指標は「経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)」と言います。現行会計では負債の大半を占める責任準備金を取得原価で評価しているので、いったん獲得した責任準備金の評価は原則として動きません。これ対し、ESRでは資産も負債も経済価値ベース、簡単に言えば時価ベースで評価するというものなので、金融市場や発生率等の変動による影響をただちに反映することから、当局は健全性の低下した保険会社を早い段階で発見することができます。
特に、長期の負債を抱える生命保険会社にとって、ESRは現行のSMRとはかなり異なる健全性指標となります。損害保険会社もリスク計測の厳格化による影響を受けますので、暫定基準の公表には強い関心を持っているはずです。

すでに公表している会社も多い

もっとも、多くの大手保険会社は金融庁の動向をにらみつつ、すでに独自の基準でESRを計算し、自らのリスク管理に活用しているという実態があります(規制上のESRと区別するため、以下では「個社ESR」と記します)。個社ESRを外部に公表する会社も年々増えており、その動きは上場会社だけではなく、相互会社など非上場会社にも広がってきました。現在では、いわゆる協会長輪番会社が所属する7グループのうち、日本生命を除く6グループが個社ESRを公表しています。

公表されている個社ESRは規制上のESRではないので、各社がそれぞれ独自の基準で計算したものであり、単純に横比較することはできません。ただし、個社を見るにあたっては、参考になるところが多い指標です。
多くの場合、保険会社は個社ESRを基準の1つにしてリスクテイクや資本増強の判断をしています(個社ESRのターゲットレンジを示している会社もあります)。そのため、もし金融市場の変化によって個社ESRが下振れしたら、リスクテイクを抑える、資本増強を行うといったアクションが取られる可能性が高まるでしょう。また、ESRの分子である経済価値ベースの純資産は、現行会計上の純資産に比べると企業価値の評価に近いので、分子が着実に増えているかどうかにも注目です。
メディアの決算報道には取り上げられない個社ESRですが、保険業界人にとって必見の指標だと私は考えています。
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※オープンキャンパスが終わり、大学は夏休みモードです。

 

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大手損保の2022年4-6月期の業績

5日に大手損保グループの2022年4-6月期決算発表がありました。

「自動車保険の支払いが増えたので減益」(日経)とあったので、数字を確認してみたところ、確かに発生保険金は増えていますが(損保ジャパンはEIベース損害率から推測)、6月に発生したひょう災の影響が大きかった模様です。通常であれば、自然災害による支払いが多いのは火災保険ですが、この4-6月期に関しては、自動車保険が自然災害による発生保険金の6割を占めました。
ただし、4-6月期は例年損害率が低い傾向にあることを踏まえると、自然災害を除くベースでもそこそこ支払いが多かったと言えるのかもしれません。

コロナ感染拡大の影響もみられます。
グループ各社の生保子会社(あんしん、MSA、ひまわり)では、給付金の支払いが急増しています。MSAとひまわりは給付金支払いがそれぞれ前年同期の1.5倍に増え、あんしんも26%増でした(同社は支払備金の増加が目立ちます)。損保の傷害保険の支払いも増えているようです。
海外事業でも、東京海上グループは台湾政府の政策変更(ゼロコロナからウィズコロナへ)に伴う感染者の急増で、7-9月期に500億円以上の損失を計上すると公表しました。日本でもそうですが、コロナ感染症は保険会社にとって、疾病そのものリスクよりも政策リスクが大きいようです。

※福岡よりも暑かった!(1週間前の写真です)

 

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