どうするソルベンシー規制

日本保険・年金リスク学会(JARIP)の事務局から次のようなご案内をいただきました。森本さんがスピーチを行うのですね。
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経済価値ベースのソルベンシー規制導入が2025年に迫るなかで、おそらく「監督措置をどうするか」「これまでの早期是正措置の発動基準(SMR、実質資産負債差額、保険計理人の3号分析)をどうするか」などの議論を行っていることでしょう。

事業会社の破綻処理では一般債務を削減することで債務超過状態を解消します。すなわち、銀行などの債権者が痛手を被ることになります(株主の価値はすでにゼロになっています)。
これに対し、保険会社の負債の大半は責任準備金なので、過去の破綻処理を振り返ると、債務超過状態の解消は主に既契約者の負担で行われています。責任準備金の削減に加え、予定利率の引き下げを原資に「営業権」を資産計上し、さらに早期解約控除も設定しました。スポンサー企業の出資はバランスシートがきれいになってからです。

破綻生保の資産は例えばバルクセール等によって現金化され、これによって債務超過額が膨らみましたので、経済価値ベースの評価だからといって、破綻処理における契約者負担がなくなるのは難しいかもしれません。しかし、少なくとも現行会計ベースの発動基準よりは早期となり、既契約者の負担軽減につながると考えられます。

あとは契約者価額(≒解約返戻金)との関係でしょうか。金利上昇時の解約に備える必要はあるとしても、既契約者全員の解約返戻金を常に確保しておくことを保険会社に求めるのは、あまりに保守的すぎると思います。

経済価値ベースのソルベンシー規制を導入するということは、現行の「ロックイン方式の責任準備金」「将来収支分析」「SMR・実質資産負債差額」の3点セットから、ESRを軸とした枠組み(ORSA、情報開示を含む)に移ることだと思うのですが、いかがでしょうか。

※太宰府天満宮にもお参りしてきました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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