13. 保険マスコミ時評

週刊ダイヤモンドの保険特集

遅まきながら週刊ダイヤモンド毎年恒例の保険特集を読みました。

「プロが薦める【最新】保険商品ランキング」「岐路に立つ保険代理店」といった各企画は、一見すると他誌の類似企画と同じように思えます。ところが読んでみると、さすが週刊ダイヤモンドという記述が随所に見られます。とりわけ保険流通に関わるかたには必見の内容ではないでしょうか。

今年の保険特集で個人的に面白かったのは、記事のあちこちにある「掲載基準緩和型コラム」という小さな囲み記事と、特集の締めくくりに掲載された遠藤さん(金融庁監督局長・遠藤俊英さん)のインタビュー記事でした。

コラムのほうは、これを面白いと思うかどうかは個人差があるでしょうね。
例えば、決算発表の延期が続いているエヌエヌ生命について「金融庁が『あいつらナメてますね』とあきれ顔」なんて記事があるかと思えば、SOMPOホールディングスの副社長と三菱UFJ銀行の新頭取が同窓生で仲がいいとか、「このハゲぇー」の前衆院議員が少額短期保険制度の基礎を作ったとか、何というか、どうでもいいと言われればその通りなのですが、おそらく長年この業界をウォッチしていないと書けないものも多そうです。

遠藤局長のインタビュー記事は、商品ランキング、インシュアテック、保険代理店と読み進めてきた読者には、あれっ?、という印象ではないでしょうか。
大手生保をはじめとした国内系生保は、本誌が取り上げた商品比較からも、保険ショップが台頭する世界からもやや距離を置いたところにいるようですが、このインタビューでは見事にこちらに切り込んでいます。

「常識的に考えて相互会社形態のまま、無制限に企業買収を進めていくというのは、保険契約者に対して今後説明がつくんですかということになります」
「(契約者還元の透明性を高めるべきという質問に対し)本当にそうだと思いますよ。相互会社ってそういう存在ですからね」

結構重みのあるコメントかもしれませんね。

※生演奏を聴きながら美味しい料理をいただきました。一ツ木町倶楽部です。

 

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投信販売の本質

 

2017年末の公募投信の純資産残高が過去最高を更新したそうです。株高による時価上昇や日銀によるETF買い入れのほか、海外株式に投資するタイプの投信への資金流入も顕著だったとか。

「フィデュ―シャリ―・デューティーとは言うものの、投信販売の本質的な部分が変わるわけではない。当行では、20代の行員が高齢のお客さまのところに足しげく通い、かわいがってもらいながら『お願いセールス』で買っていただくというスタイルが定着している(後略)」
「『フィデュ―シャリ―・デューティー宣言』を出してからは、表向きの販売姿勢は変わっているが、根底にある人とのつながりで買っていただくという実態は変わらない」

「確かに、本質的な部分は変わっていないのかもしれないね。かたちのうえでは丁寧に商品説明をして、お客さまもご納得いただいたうえでサインをしていただくが、行員もお客さまもお互い複雑な商品設計を理解できるわけがない」
「わからないうえで、『手数料は高いかもしれないが・・・』『ハイリターンを狙えるなら・・・』という、稼ぎたい両者の思いが合致して売買が成立している」
「当局からは顧客本位で販売するよう言われるが、お客さまだって手数料が高かろうが『儲かればそれでよし』という気持なのだから、一概に売手だけを責めるのは筋違いではないか」

週刊金融財政事情(2018.1.15)の人気コラム「支店長室のウラオモテ」から引用させていただきました。
このコラムは銀行支店長の覆面対談(本当に対談しているかどうかは不明)なのですが、現場の声を代弁したものとして、出しているのでしょう。

一概に売り手だけを責めるのは筋違い、というのは同感するところがあります。金融リテラシー向上など顧客の主体的な行動を可能とする環境づくりや、顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化への取り組み(いずれも金融審議会が求めています)はどうなったのかと思います。

しかし、行員も顧客も理解できない商品を人間関係で売るのが投信販売の本質と言われてしまうと、やはり私には抵抗がありますね。
もちろん、金融商品といえども、顧客が価格面だけで選ぶとはかぎりません。例えば顧客が住宅ローンを選ぶ際、貸出金利の低いA銀行ではなく、金利は少しだけ高いけど、いつも相談に乗ってくれる担当者のいるB銀行の住宅ローンを選ぶ、というのはよくあることでしょう。

ですが、顧客が金融商品に何を求めているかを踏まえると、行員が理解できない金融商品を親密な顧客に提供するというのは、もしかしたら、それが投信販売の実態なのかもしれませんが、本来やってはいけないことでしょう
(もちろん、行員がどのレベルまで理解すべきかという議論があるとは思います)。

裏を返すと、理解できない商品だからこそ、本部が勧める商品を何の疑問も持たずに提供できるという面があるのかもしれません。ウソを隠し通すのは結構大変なことですが、もともと知らなければ隠す必要もありませんので。

そうだとすると、当局が金融リテラシー向上のターゲットとすべきなのは消費者ではなく、まずは販売担当者なのかもしれませんね。

※左と右は同じ建物です。東海道新幹線の大倉山トンネル近くにあります。
 建物からは下の写真のような景色が見えます。

 

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生保の資産運用計画

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生保各社がメディアに示した「資産運用計画」
に関する記事がいくつか出ていましたので、
日経(有料版)と東洋経済のものを見てみましょう。

「生保マネー 背水の脱・国債依存」(日経)

各社が発表した部分はともかく、どうも初めから
「脱・国債」を主張したい記事のように感じました。

確かに、全10社ともオープン外債投資に前向きで、
国内債券は10社中6社で減らすと発表したようです。

だからといって、書かれているような、

「運用利回りを確保するために外国債券や社債など
 国債以外の資産に資金を移さざるをえない」

「為替と信用リスクをとった運用を目指さなければ
 立ち行かない現状」

「マイナス金利が長期・安定運用の前提を突き崩した
 今、生保は脱・国債を迫られている」

と決めつけるのはどうかと思うのですね。

生保の国債投資は、国債が安全資産だからでは
ありませんし、超長期国債への投資が多いのは、
日本独自の「責任準備金対応債券」区分があり、
格付けと利回りが相対的に高いからというのは
さすがに無理があります。

保険負債の円金利リスクをヘッジしようとすると、
社債市場等の規模が小さい日本では、どうしても
超長期国債を保有することになるからです。

記事のなかにも、「長期の負債を持つ生保は、
金利変動による損失を抑えるため、満期保有を
前提にした債券を多く持たざるを得ない」という
記述があるのですが...

他方、さすがに外貨建資産がここまで増えると、
「これ以上増やしてもいいのか?」と考えるのが
第三者としては普通の反応だと思うのですね。
しかし、「リスク適切管理と機動的運用が必須」
とのこと。

「機動的なヘッジ」の必要性を否定はしませんが、
為替リスクを取っておいて、損失は発生させない
(つまりリターンだけを確実に確保)なんてことが
常にできるものなのでしょうか。

「大手生保の運用担当は市場をどう見ているか」
(東洋経済)

生保6社(大手4社とかんぽ生命、太陽生命)の
運用計画と市場動向見通しを紹介したものです。
なぜこの6社なのかはわかりません。

こちらは警戒モードというか、「今すぐに生保各社の
経営が大きく揺らぐことはないが、低金利の長期化は
生保の経営体力をじわじわと奪いつつある」で始まり、

「今年度も国内の超低金利とボラティリティ(変動性)
 の高い為替相場に悩まされそうだ」

とまとめています。

テーマである「運用担当者の相場感」については、

・ヘッジコストの上昇が見込まれ、ヘッジ外債は慎重
・当面は低金利環境が継続するが、金利上昇も警戒
・為替は幅の広いレンジ相場。大きく振れる展開も

といった紹介でした。

なお、いずれの記事でも引用しているのが、
日銀が4月に公表した金融システムレポートの
「生保資産構成の国際比較(日、独、英、米)」です。

先日のブログでは書きませんでしたが、
65ページからのBOX1に4か国の保険商品構成や
資産構成などを比べた図表が掲載されています。

ただ、記事では各国の資産構成だけを見て、
「(日本は)他国に比べると国債への偏りが歴然」
(日経)という記述になっています。

国債が多いのは確かなのですが、他国にしても、
米国は特別勘定を除けば債券(国債、社債、MBS)
ばかりですし、ドイツもユニット・リンクと投信が
対応すると考えると、残りはやはり金利ものが
中心ということになります。
英国はユニット・リンクと実績配当商品なので、
資産構成を比べてもあまり意味がありません。

逆に言うと、図表からは、変額商品でもないのに、
為替リスクや株式リスクをそこそこ取っているのは
日本だけということがわかるのですが…

ちなみに日銀は、日本以外で保険市場と投信の
つながりが強まっていることや、日本でヘッジ外債の
ウエートが高まっていることから、金融市場の混乱が
保険に波及しやすくなっていると指摘しています。

※写真はウラジオストク駅。シベリア鉄道の終点です。

 

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長寿生存保険

 

2016年3月期の生保決算が発表されつつあります。
マイナス金利政策による超長期金利の低下を受けて、
各社ともEVが減っているようです。

さて、今回は決算ではなく、日本生命が4月に発売した
「ニッセイ長寿生存保険」を批判する記事について。

記事の言う、「生命保険業界内で物議を醸している」
という話はともかく、このような誤った理解が広がるのは
不幸なので、取り上げることにしました。

記事のタイトルは、「日本生命、ボロ儲けか…平均寿命で
死ぬと契約者が約5百万円損する保険販売」。

記事のエッセンスは次のようなものです。

・平均寿命まで生きた場合でも、年金の受取総額は
 保険料の支払い総額よりも少なく、損失が出る。

・5年保証期間以降に亡くなると、死亡保険金などの
 支払いは一切行われず、ギャンブル的要素が強い。

・契約者が自らの寿命を賭けて一か八かの勝負をする
 ような保険であり、胴元となる日生がボロ儲けを狙って
 いると疑われてもおかしくない。

この記事を書いたライターのかたには、長寿への備え、
イコール貯蓄という思い込みがあるようです。
ですから、払い込んだ保険料を平均寿命になっても
回収できないのはとんでもない、となるのでしょう。

しかし、日本生命がニュースリリースで説明するように、
この保険のコンセプトは「長生きしたら支払う」というもの。
貯蓄で備えようという商品ではないのですね。
長寿生存保険のリリース(PDF)

一般的な生命保険(死亡保障)では、万一死亡した際、
遺族に保険金が支払われます。

加入者は死亡リスクへの備えとして保険に入るので、
もし契約期間内に死亡せず、保険金を受け取れなくても、
「保険料を支払ったのに保険金を受け取れないのは
おかしい」とはならないわけです(終身保険を除く)。

これに対し、この保険は万一、想定外に長生きした場合
年金が支払われるもので、長生きリスクへの備えです。

加入者は、例えば90歳を超えて長生きした場合の備え
として保険に入るのであって、遺族保障は目的外です。
長生きしなければ受け取れない(5年保証部分を除く)のは、
この保険の目的を考えると当然なのです。

ですから、年金の受取総額と保険料の支払い総額を
比べるという発想がそもそも違うのですね。

もちろん、長生きリスクに対し、貯蓄で備える方法も
あります(というか普通に行われています)。

しかし、自分が何歳まで生きるかわからないので、
多め多めにお金を貯めておく必要があり、結果として
多額の貯金を残して亡くなることになってしまいます。

そう考えると、貯蓄ではなく、いわば掛け捨ての保険で
想定外に長生きするリスクに備えようという発想は、
きわめて合理的ではないでしょうか。

よりシンプルな商品を考えれば、例えば90歳を超えたら
保険金を受け取れるような、掛け捨ての保険なのでしょう。

もっとも、記事にあるように、「長生きしなければ保険金が
一切受け取れないのは、自らの寿命を賭けたギャンブル」
という見方は根強いのかもしれません。

「私は長生きする自信がないから入らない」という声も
聞こえてきそうです。

ただ、同じことを死亡保障で考えてみると、
「私は〇歳までは死にそうにないから入らない」
と言っていることになります。

自動車保険だと、「私は事故を起こさないから入らない」
ということになりますね。

保険とはそういうものです。

リスクが無視できるほど小さい(あるいは自力で対応可能)
と思えば、わざわざ保険に入る必要はありませんし、
リスクが無視できないと思うのであれば入ったほうがいい、
そのような判断になるのではないでしょうか。

老後破産という話もしばしば耳にするなか、貯蓄以外に
長生きリスクに備える商品があるのは歓迎すべきことだと
私は思います。

この商品を批判するのであれば、何らかの根拠の元で、
「長生きリスクを過大に見積もった料率になっている」
というのならわかりますが、払い込んだ保険料の総額と
受け取る年金総額を比べて「元が取れない」という
批判をするのは的外れでしょうね。

ちなみに、この保険で5年保証期間を設けているのは、
何ももらえないという不満を少しでも解消するためでしょう
(そうでないと当局が認可しなかったのかもしれません)。

長寿リスク対応だけであれば、例えば80歳くらいまでは
給付が何もなくてもいいのかもしれませんが、
そこまで長寿リスク対応に徹した商品ではありません。

なお、解約返戻金が低い期間を設けることで、
年金財源を少しでも大きくしようとしているのも注目です。

※左の写真はエストニアの国会議事堂、右は中央銀行です。

 

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2015年版 生保・損保特集

 

毎年恒例の生保・損保特集(週刊東洋経済の臨時増刊)が
今年も発売されました。

縁あって今回も寄稿しています。タイトルは、

「大型M&Aがゴールではない 海外展開で問われるERM経営」。

加速する保険会社の海外事業展開を、ERM経営という
観点から考えてみたものです。具体的には、

・海外事業で積極的なリスクテイクを行うという経営判断が
 いかになされたのか
・海外大型M&Aの実行段階
・買収先をグループのメンバーとして経営体制に組み込む
 「ポストマージャー」におけるERM経営の関わり

の3つの局面を想定しています。
機会がありましたら、ご覧いただけるとうれしいです。

自分の原稿はさておき、今回の特集号は総じて好印象です。
まず、保険ショップの近未来図を予測した、石井秀樹さんの
「改正業法で地殻変動 保険ショップは三極化へ」をはじめ、
参考になる記事がいくつかありました。

また、メディアにみられる傾向として、それが全体のなかで
どの程度の影響を持つ話なのかを示さず、各社の取り組みを
そのまま記事にしたようなものが結構ありますよね。
これに対し、この特集号では全般的にきちんとファクトを
示そうとする姿勢がうかがえます。

例えば、銀行窓販の記事には過去10年の売れ筋商品の
推移が載っていますし、営業職員改革の記事では、
採用数や平均給与等の推移を示しています。
メガ損保の海外事業戦略でも、海外事業の収入・利益を
示したうえで、事業を支える組織や制度を紹介しています。

巻末の「生保・損保各社主要データ」が復活したのも、
うれしいですね。ここでしか取れないデータもありましたし。

何十年も続いている保険特集号ですので、
「保険業界の今がわかる」ものが続くといいですね。

※こちらの写真も大連です。ちょっと郊外に行くと、
 このような高層マンションがあちこちにありました。

 

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個人契約者の増配

 

11日の日経1面トップは、日本生命が個人契約者の配当を
7年ぶりに増やす方針を固めたという記事でした。
他の大手生保も増配を検討しているとのことです。

過去にも増配報道の不思議さについてコメントしましたが、
決算発表の際にも「増配」が取り上げられるでしょうから、
今のうちに疑問点を2つ挙げておきましょう。

疑問1:「増配総額」だけで「配当総額」はいいのか?

今回の各紙報道は「増配総額は約30億円」とあるものの、
配当総額がどの程度になるかの報道がありません。

これが株主配当であれば、増配もさることながら、
利益のうち配当還元がどの程度なのか注目されるはず。

それでは、前年の大手生保の個人向け配当総額は
いったいいくらだったのか。実は公表されていません。

相互会社では、剰余金処分額に「社員配当準備金」があり、
配当財源として社員配当準備金にあてた金額はわかります
(例えば昨年度の日本生命は2017億円)。

ただし、ここには団体保険、団体年金の配当も含まれていて、
両者がそこそこ大きな金額を占めているのです。

ディスクロ誌には「社員配当準備金明細表」という表があり、
保険種類ごとに当期の配当金支払がわかるのですが、
直近決算の支払額が掲載されるのは次のディスクロ誌です。

また、「当期の配当金支払」は必ずしも当期の配当所要額では
ないので、個人向け保険ではこれを配当所要額とみなすのは
ちょっと厳しいのではないかと思います。

ということで、配当準備金の内訳を公表してほしいのですが、
大手生保のなかで内訳を公表しているのは第一生命だけ。
保険マスコミの皆さまに期待しましょう。

疑問2:生保の配当はどうやって決まるのか?

日経だけではなく他紙も含め、増配の理由として、

「株高や円安で資産運用収益が増え、保有契約数の反転など
 本業の改善も確実になったと判断」

とほぼ同じ書きぶり。円安・株高の恩恵というわけです。

ただ、ここで言う「資産運用収益」とは何でしょうか。
基礎利益に注目するのであれば利配収入なのでしょうし、
円安・株高で資産価値が上がり、売却益をあてるのかも
しれません(まあ、増配総額30億円ですしね)。

いずれにしても、何がどうなったら生保は配当を増やすのか。
基礎利益なのか当期剰余なのか、あるいは支払余力なのか。
いくら経営の裁量で決められるとはいえ、株主配当に比べると
あまりに手掛かりがないと感じるのは私だけでしょうか。

そのようななかで、

「生保の増配は株や外貨建て商品を持たない保険の契約者にも
 円安や株高の好影響が及ぶ」(日経)

とは、ちょっと強引な感じがしますね。

日本生命の昨年12月末のソルベンシーマージン総額は
12.6兆円(前期末比+3.2兆円)に達しているのですから。

※写真は娘の作品です(中3家庭科)。
 親バカということでご容赦下さい^^

 

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「りそなに出資」報道に思う

 

第一生命と日本生命が、りそなホールディングスとの
資本関係を強化するという報道がありました。

例えば6日の日経夕刊を見ると、

「第一生命と日生がりそなと資本関係の強化に踏み切るのは、
 銀行窓口での保険販売を拡大させるためだ」

「第一生命と日生は出資をテコに銀行窓口で貯蓄型商品などの
 販売を増やす」

とあります。他のメディアも、「出資で保険販売強化」という論調。
完全にプレーヤー目線です。

昨年5月に保険業法が改正され、保険募集の基本的ルールが
全面的に見直されようとしているタイミングなのですが...

保険業法見直しのきっかけとなったのは、複数保険会社の
商品を販売する「乗合代理店の出現」(金融庁資料より引用)です。

乗合代理店が特定の商品の提示・推奨を行う場合には、
その理由を顧客に説明することになりました
(乗合代理店に対する情報提供義務)。

ある生保が銀行の大株主になったからといって、
その生保の商品しか取り扱わないというなら話は別ですが、
たいていの銀行は乗合代理店です。

資本提携イコールその生保の商品が売れるようになると
単純に考えるのは新たなルールの下ではおかしな話であって、
顧客に勧めるだけの何らかの理由が必要となります
(保険会社は当然そんなことはわかっているはずです)。

実は、同じ日の日経には保険ショップに関する記事があり、

「(金融庁は)販売が特定の商品に偏りすぎていないかや
 契約者への薦め方が適切だったかを重点検査する」

「保険ショップが保険会社から受け取る割高な手数料を
 目的にした販売を是正する狙い」

「特定の保険会社と資本関係があり、その会社の保険販売を
 強化している場合には、その事実を顧客に伝えるよう指針に明記」

と書いているのですね。

なお、「りそな出資」が報道の通りだとしても、それぞれの保険会社は
目先の貯蓄性商品の販売というよりも、もう少し中長期的な視点から
資本関係の強化を行うのではないでしょうか。

マスコミ的には両生保の保険料競争が面白いのかもしれません。
しかし、今の金利水準(海外を含む)で貯蓄性商品をがんがん提供する
保険会社があるとは思えないのですが。

※大倉山公園の梅が咲き始めました。

 

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今年の生保・損保特集号

 

先週発売された2014年版の生保・損保特集号
(週刊東洋経済の臨時増刊)を読みました。

昨年に続き、今年もレポートを書いています。
タイトルは「主要生損保のリスク戦略」。
決算データからリスク戦略の違いを探ったものです。
機会がありましたら、どうぞご覧下さい。

さて、今回の特集号ですが、昨年版とは違い、
「保険グローバル競争」「保険販売大激震」
「女性活躍推進」と、テーマを明確にしたことで、
読みやすくなったと感じました。

グルーバル競争のところでは、ニッセイ基礎研・松岡さんが、

「ASEAN各国は決して遅れた保険市場ではない」

「近年のASEAN諸国への外資参入は、出遅れていた
 米国や日本の保険会社がM&Aを通じて参入している
 という側面が強い」

という分析をしています。

本号の目玉とも言える保険販売の特集では、

「当面、損保専業代理店は、地域密着型のスモールビジネス
 モデル、保険会社の販社機能を持つ直資型代理店モデル、
 独立系で全国展開するグループモデルに3分化されていく」

という保険ジャーナリスト・石井さんの記事が印象的でした。
保険流通のレポートは事例や取り組みの紹介記事が多く、
全体としてどうなっているのかを示したこの記事は貴重です。

恒例の生保レディ覆面座談会では、新人の育成や推奨商品
への取り組み姿勢が、もしかしたら、早くも会社によって
違ってきているのかなあと、興味深く読みました
(「A子」「B子」という表現にはちょっと抵抗がありますね…)。

ということで、前向きなコメントで終わりたいところですが、
今回は巻末のデータ集をやめ、「保険会社四季報」と
なってしまいました。これには困りました。

これまでのデータ集には、記者クラブにだけ公表され、
ディスクロ誌には掲載されないデータが載っていたのです
(例えば「平均予定利率」「銀行窓販額」など)。
それ以外のデータも、統計号のように使えて、結構便利です。

保険会社四季報もいいですが、長年の読者としては、
次回からはぜひデータ集を復活していただきたいですね。

※写真は築地市場(青果部)です。季節を感じます。

 

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きんざいのコラム

 

今週の週刊金融財政事情の巻末コラムはなかなか辛口でした。
「生保は逆ザヤを生んだ経営を繰り返すな」というタイトルです。
金融界有識者が執筆しているとありますが、私ではありません^^

主なポイントを引用させてもらいます。

・かつて逆ザヤを生むに至った生命保険会社各社の経営体質は、
 まだ安心とはいえそうにない。

・(逆ザヤを生んだ)背景には、運用やリスク管理よりも保険の販売を
 優先する、生保経営の「量への偏重」があったが、この生保の体質は
 治っていないように思われる。

・たとえば、年金基金向けには、現下の短期金利がほぼゼロで
 長期国債の利回りでも0.6%程度の環境にあって、0.75%ないし
 1.0%といった利回りを保証して一般勘定の運用を引き受けるような、
 金融常識が欠如した営業行動を制御できていない。

・残念なことに、経営者の無能リスクをカバーする保険はないので、
 金融機関であることの自覚と常識をもってしっかり経営してもらいたい。

いかがでしょうか。

※写真は丸の内のイルミネーションです。

 

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「逆ざや解消」報道に疑問

 

先週後半から大々的に風邪をひいてしまいまして、
ようやく回復しつつあります。
妻からは「長い!私なら1日で治すわよ!」とのお言葉。
日頃の不摂生がたたったのでしょうか。m(_ _)m

というわけで、少し遅れてしまいましたが、
先週の生保上半期報告(というか、その報道)について
コメントを少々。

日経をはじめ、「逆ざや解消」がキーワードとなり、
主要生保の利差合計が初めて順ざやとなったことが
注目されています。

「バブル期に販売した高利回りの保険が満期を迎えて減る
 などして、契約者に約束する平均利回りが年々下がってきた。
 加えて4-9月期は円安の影響で外債の利息収入がかさ上げされ、
 一気に逆ざやが解消した」(11/28の日経)

このブログで何度も苦言を呈していますが、特に今回はまずいです。
「逆ざや解消」がひとり歩きしてしまい、生保経営に対し、
「健全になったのだから、リスク資産へ投資しろ」という圧力が
高まるのではないかと心配です。

この「逆ざや解消」には何の意味もありません。

高利率の契約がだいぶ少なくなった印象を受けますが、
大手生保の個人分野の責任準備金に占める高利率契約
(=1995年度以前の契約)は、いまだに4割程度もあります。

生保の契約は非常に長いので、残念ながら高利率契約の負担は
なかなか小さくならないのです。

しかも、団体年金保険が見かけ上の平均予定利率を
押し下げていることも忘れてはなりません。
昨年度の責任準備金(一般勘定)に占める団体年金の割合は、
例えば日本生命が23%、明治安田生命が24%となっています。
団体年金の平均予定利率は1%程度です。

逆ざや額を計算する運用収益にも問題があります。

記事にある、「円安の影響で外債の利息収入がかさ上げされ、
一気に逆ざやが解消」って、意味がわからないですよね。

逆ざや額を計算する運用収益は「利息配当金収入」なので、
株価や為替の変動はほとんど影響がありません
(ただし、投信の運用損益の一部はここに入ります)。

しかし、外債の利息収入は為替変動で振れるので、
このような説明になったのでしょう。
間違いではありませんが、利息収入だけ円安で増えて、
元本は見ないなんて、おかしいですよね。

つまり、逆ざや額は生保の運用成果を反映したものでは
ないのですね。

「逆ざや額」はそのわかりやすさから広く使われてきましたが、
むしろ弊害のほうが大きくなっているように思います。

※写真は地元・大倉山公園です。

 

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