金融システムレポート

 

19日公表の日本銀行「金融システムレポート」
(2017年4月号)を見ると、

「金融機関は充実した資本基盤を備えており、
 当面収益力が下押しされるもとでも、
 リスクテイクを継続していく力を有している」

という記述に続き、

「今後、金融機関のポートフォリオ・リバランスが、
 経済・物価情勢の改善と結びついていけば、
 収益力の回復につながっていくと考えられる」

とあり、ちょっと首を傾げてしまいました。

例えば、ポートフォリオ・リバランスということで
地域金融機関の貸出金は確かに増えていますが、
その多くは不動産業向けです(17ページ)。

有価証券については、地域金融機関が保有する
外債と投資信託の残高が急増しています。
投信の半分は海外金利系とのこと(44ページ)。

これらを踏まえると、ポートフォリオ・リバランスで
将来の収益力回復に期待できるというよりも、
日銀のマイナス金利政策実施から1年たって、
副作用として金融システムの脆弱さが増した
と見るのが自然ではないでしょうか。

マイナス金利政策が金融システムに悪影響を
及ぼしているのは生保セクターも同じです。

レポートには、機関投資家等の資金運用動向
として生命保険会社の話も出ているのですが、
外債投資の増加と超長期国債投資の減速しか
言及がありません。

本来、分析すべきは、ALMのミスマッチを抱える
生保がマイナス金利政策により、どんな状況に
なっているかを見るべきだと思うのですが…
(各社のEVや金融庁フィールドテスト結果など
 分析のための素材も多少はありますよね)

なお、参考までに、レポートの27ページにある、

「外債の運用比率が上昇している背景には、
 国内債との利回り格差があるが、2010 年度に
 改正されたソルベンシー・マージン規制において、
 外貨建て債券のリスク係数が引き下げられたこと
 も影響しているとみられる」

という記述は、残念ながら誤解です。

外貨建て債券のリスク係数が 5%から 1%に
下がったことを見てのコメントかと思いますが、
改正前の「5%」は為替リスクを含んだもの、
改正後の「1%」は為替リスクを含まないもので、
為替リスクは別途に反映するようになりました。

合わせて為替ヘッジの反映方法も見直され、
改正前に見られたヘッジ効果の過大反映が
改正により解消されました。

つまり、規制としては厳しくなったのですが、
それでも生保各社は長引く低金利のなかで、
海外金利リスクやヘッジコストの変動リスクが
あるのを承知のうえで(だと思います…)で、
外債投資に注力しているという状況です。

※写真は愛宕山のNHK放送博物館です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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