25日の保険毎日新聞で「ムーディーズ 強固な基礎利益と資本基盤で『安定的』」という見出しをみて、ため息をついてしまいました。
この記事はムーディーズが12月5日に公表したレポートを紹介したもので、確かにムーディーズのサイトにも、「日本の生命保険会社は低金利にもかかわらず、強固な基礎利益と資本を維持し、2020年の見通しは安定的」とありました。
記事によると、超低金利にもかかわらず、強固な基礎利益を維持しているのは、保険関係利益(危険差益、費差益)が基礎利益の約80%を占めているからで、「利差益が占める割合は約20%にすぎないため、基礎利益は金利変動の影響を受けにくい」とのことです。
しかし、基礎利益が金利変動の影響を受けにくいのは利差益の占める割合が小さいからではなく、基礎利益の運用収益である利息配当金等収入が金利変動の影響をほとんど受けないためです。金利水準が下がっても、過去に購入した公社債の利息には影響しませんよね
(同様に生命表改定の影響も、団体保険を除けば徐々にしか出てきません)。
資本基盤についても、金利低下による負債価値の増大を見ていないようです。ソルベンシーマージン総額の増加トレンドをもって「資本は継続的に増加」というのは誤解と言わざるを得ません。
ムーディーズが日本の生命保険市場にどの程度の影響力があるのかはわかりませんが、本当にこのような理解で保険会社の信用力を評価しているのでしょうか。保険会社の経営者が、「だから基礎利益が重要なんだ」などと考えていないことを祈ります。
たまたま手元に格付投資情報センター(R&I)の肝付アナリストが寄稿した7月の週刊金融財政事情があったので、こちらも確認してみました。
「(基礎利益など)会計上の利益は増加も、ボラティリティが上昇」「経済価値ベースの健全性は再び悪化」「(ハイブリッド証券の発行などにより)ESRは上昇するものの、資産運用リスクが温存されたままでは、市場ストレスに対する脆弱性の大幅な改善にはつながらない」といった、やや厳しめの評価となっているようです。
格付会社によって見解が異なるのは健全な姿ですし、R&Iの評価が正しいとも限りません。
でも、生保経営に対する理解度がこれほど違うというのは、困ったことだと思います。
※なぜか再び東京ドームでした!