業界専門紙の役割とは

インシュアランス生保版(2019年7月号第1集)にコラムを執筆しました。
改めて石井さんのご冥福をお祈りいたします。

<以下、掲載されたコラムです>
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4月末に急逝した保険ジャーナリスト石井秀樹さんのお別れの会に参加した。石井さんのご冥福をお祈りするとともに、氏が長く保険毎日新聞の記者を務め、独立後もインスウォッチをはじめ、保険業界人が目にする媒体で健筆をふるっていたことから、業界専門紙誌や業界専門ジャーナリストの役割について改めて思いを馳せてみた。

業界専門紙の存在意義は何か

保険業界には本紙「インシュアランス(週刊)」のほか、「保険毎日新聞(日刊)」「新日本保険新聞(週刊)」「保険情報(週刊)」「インスウォッチ(週刊)」といった数々の業界専門紙がある。かつてに比べれば少なくなったとはいえ、1つの産業に複数の業界紙が存在するのは、それだけ保険業界の関係者が多く、かつ、業界に関する情報が必要とされてきたことの表れであろう。

業界専門紙を文字通り「業界人のための専門情報を提供する新聞」と定義すると、業界紙の役割は、一般の新聞や経済誌には載らないような詳細で正確な業界情報を提供したり、同じ情報でも一般紙誌とは違い、業界関係者向けの目線で伝えたりすることである。業界関係者を主な読者層としているのだから、一般紙と同じ目線でニュースを伝えていたのでは存在意義は乏しい。

ネット時代が到来する前は、保険会社のニュースリリースや監督官庁の公表する資料をそのまま掲載するだけでも価値があっただろう。だが、環境は劇的に変わっている。各社の発表をそのまま記事にしたようなものに大きな紙面を割く意義を見出すのは難しい。
亡くなった石井さんは、例えば保険ショップの全体像を取材の積み重ねにより報じていたが、業界紙にはこうした付加価値のある情報提供がますます求められている。

ファクトに基づく継続的な発信を

特に求められるのは、ファクトに基づいた継続的な情報発信であろう。
以前、保険毎日新聞が会社別の変額個人年金保険の販売状況を一覧表にして、それを定期的に掲載していた時期があった。各社の公表資料には保有契約と資産残高くらいしか情報がないなかで、銀行窓販の現状を知る貴重な情報だった。

こうしたニーズは今でもある。例えば各社が公表する「契約高・件数」「年換算保険料」などを見ても、業績動向をつかむのは難しい。年換算保険料が増えていても、貯蓄性の強い外貨建て保険の販売が前年度よりも多かっただけかもしれない。ブームとなっていた経営者向け保険が各社の業績にどの程度反映されているのかも全くわからない。
保険業界の健全な発展のためには米国AMベスト社のような存在が日本にも必要ではないだろうか。

さらに言えば、業界専門紙に期待される役割は関係者向けの情報提供にとどまらない。
サポーターと言うとやや誤解を招きそうだが、業界べったりの代弁者ではなく、業界の内外をつなぐ存在であったり、辛口のご意見番だったりと、関係者に対して「ムラの外ではこう見ている」という、いわば風を吹き込むような役割もあると思う。
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※写真(上)は昨年3月末の椿山荘、
 下はお別れの会のスナップです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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