12. セミナー等の感想

ビジネス教育研究会

大学の同僚のお誘いで、「地方大学におけるビジネス教育研究会」に参加しました。会場は静岡県立大学でした。
この研究会は、主に東京以外の比較的規模の大きい大学で学部生教育を担う教員が、最近取り組んだ授業等の内容を紹介したり、学生の変化について意見交換を行ったりするものです(私の理解が正しければ)。コロナ禍のオンライン開催を経て、久しぶりの対面開催とのことで、当日は7名の先生によるプレゼンテーションがありました。対面開催だと懇親会で続きをやれるので、ありがたいですね。

研究会の内容は基本的にオープンになっていないようなので、私の感想を多少述べてみます。
この3年間といえば、やはりコロナ禍が大学教育に与えた影響を無視できません。単に授業をデジタル化したということにはならず、授業のスタイルも目線も変更を迫られました。
私も講義やゼミの目線をどの水準に置くのがいいのか今でも試行錯誤しているところですが、オンラインだとどうしても標準的なものを提供することになり、面識のない上位層の学生をオンラインでガンガン鍛えるなんてできなかったでしょう。

身近に海外留学や海外旅行の経験者がいないことによる影響についての示唆もありました(ある先生のプレゼン内容の一部として)。もちろん、海外留学にしても何にしても、「誰かが行くから私も!」「僕も!」というものではないでしょう。しかし、身近に経験者がいなければ、そもそも「海外」が選択肢に入ってこないおそれがあります。知らないことは選びようがありません。
海外に限らず、学生時代における各種の経験の少なさは、コロナ禍の大きな弊害と言えるかもしれません。まあ、多くの学生がかなりの時間をスマホでの動画視聴やゲーム、あとはアルバイトに費やしているのは、コロナ禍とは関係ないでしょうけど、意識の高い上位層(という表現が適切かどうかはともかく)には、気の毒だったと思ってしまいます。

※静岡といえばお茶とウナギですね

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

RIS2022全国大会に参加

この週末(12月3日、4日)は全国学生保険学ゼミナール(RIS)2022全国大会でした。今年は13大学・25チームが研究発表を行い、福岡大学の植村ゼミからも2チームが登壇しました。3年生ゼミの活動の柱がこのRIS全国大会での発表だったので、教員としては何とかここまでたどりつくことができて、ホッとしています。

植村ゼミの報告テーマは「地震保険の加入動向」「コロナで苦しむ学生向けの保険」でした。せっかくなので、それぞれについて簡単にご紹介します。

1.地震保険の加入動向

もともとは「地震保険の普及率が低いのはなぜか」という素朴な問題意識から始まりました。まず、火災保険付帯率の都道府県別データに加え、損害保険料率算出機構・日本地震再保険のご協力で入手した地方別データをいくつかの切り口で分析したところ、全国平均とは大きく異なる推移をしている県を見つけました。

・熊本県:震災後に付帯率が急上昇
・静岡県:地震リスクが大きいのに付帯率が停滞
・高知県:保険料が上がっても高水準の付帯率

そして、これらの原因を文献だけではなく、保険の販売現場への質問やインタビューなどを通じて探りました(ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました)。リスク認知の難しさや保険販売者(銀行やハウスメーカー)への働きかけの重要さなど、私も勉強になりました。

2.コロナで苦しむ学生向けの保険

「うちの先生(植村)が言うように、コロナは深刻な病気ではなくなったので、保険金(給付金)を支払わなくて当然なのかもしれないけれど、今でもコロナにかかって経済的に苦しくなる学生はいるはずで、このままでいいのだろうか」という私への反発(?)がこのテーマを選んだ動機のようです(多少盛っています)。

保険会社が撤退したコロナ保険を学生が実現しようというのですから、保険としての突っ込みどころは満載です。それでも、対象となる福大生100人にニーズ調査を行い、他大学の感染データを調べることで福大データが異常値ではないと確認し、さらに、可能なかぎり安く補償を提供するために大学とのタイアップを考え、学生課に突撃(インタビューを実施)するなど、がんばって行動してくれました。

ゼミ生たちは他大学との質疑応答や実務家からのアドバイスなど、この2日間で多くの刺激を受けたのではないでしょうか。対面参加だったので、他大学との交流も多少はできたのかもしれませんね。4年生もオンラインで討論者の役割を果たしてくれて、助かりました。

※会場は慶應義塾大学の三田キャンパスでした。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

保険専門団体の年次大会

今週のInswatch Vol.1160(2022.11.14)に寄稿した拙文をブログでもご紹介します。
——————————
保険産業に深い関わりのある専門団体として、「日本アクチュアリー会」「日本保険学会」があります。先週の飛び石連休に両団体の年次大会がそれぞれ開催され、私も参加してきました。

アクチュアリーとは

皆さんは「アクチュアリー」をご存じでしょうか。
保険販売の現場や損害査定の場面など、保険産業は総じて人と人との生々しいやり取りに満ちあふれています。でも、皆さんが提供している保険のしくみそのものは、確率・統計の技術を駆使して成り立っています。将来の保険金支払いを確実なものとするため、日々活躍しているのがアクチュアリーです。
一般的には、難関と言われる資格試験に合格し、日本アクチュアリー会の正会員・準会員となった人のことをアクチュアリーと呼びます。

例えば、保険会社の取締役会は、「責任準備金が適切に積み立てられているか」「保険事業の継続性に問題はないか」などを確認するため、アクチュアリー(正確には日本アクチュアリー会の正会員で、一定の業務経験があるアクチュアリー)を「保険計理人」として選任しなければなりません。
また、生命保険会社は法令により、政府が定めた標準死亡率をもとに責任準備金を積み立てる義務がありますが(標準責任準備金制度です)、この死亡率を作成しているのは日本アクチュアリー会です。

なお、アクチュアリーが活躍するフィールドは保険会社(商品開発や責任準備金の計算など)だけではありません。将来の不確実な事象を評価するのが専門なので、企業年金やリスクマネジメント、最近ではデータサイエンスの分野など、活躍の場面が広がっています。

日本保険学会とは

他方、日本保険学会は社会科学系では最も古い歴史と伝統のある学術団体の1つです。「保険に関する研究と保険研究者相互の協力を促進し、かつ、国内外の関係学会、関係団体との連絡および交流を図ること」を目的としています。

学会員には法律系の研究者と、経済・商学系の研究者の両方がいます。例えば、同じ「自動運転車の普及」をテーマに取り上げても、法律系の研究者であれば、「事故発生時の責任関係はどうなるのか」「被害者はどう救済されるのか」などに関心を持つでしょうし、経済・商学系の研究者は、「保険産業にどのような影響を与えるのか」「保険の役割はどうなるのか」などを研究します(あくまでイメージです)。

こう書くと、なんだか敷居が高そうに見えてしまいますね。実は学会員の7割近くが保険産業に関わる実務家でして、学会では大学研究者と保険実務家が広く交流し、活発な意見交換を行っています。
私自身も、2020年からは大学研究者に該当しますが、それ以前から保険実務家として年次大会のパネルディスカッションに登壇したり、機関誌『保険学雑誌』に寄稿したりしてきました。

気候変動リスクへの対応

先週開催された両団体の年次大会では、いずれも多くの興味深い報告・パネルディスカッションが行われました。そのなかで、比較的近いテーマもあり、私はその両方に参加してみました。
日本アクチュアリー会の「あしたのために、その一:気候変動リスクマネジメント アクチュアリーもやもや解消レシピ」という、ちょっと変わったタイトルのパネルディスカッションは、気候変動リスクに対応する際の「もやもや感」を解消しようというものでした。リスク評価の専門家でも、最近の気候変動リスクをめぐる世界的な動きについては、どこか釈然としないものを抱えているのですね。

他方で、日本保険学会のシンポジウム「社会課題の解決に向けた保険の意義と課題」では、実務家から気候変動リスク対応などに関する国際的な議論の説明と、保険会社・共済団体によるSDGsへの取り組み状況の紹介がありました。
話を聞いていて、「経営としてSDGsへの取り組みをどう位置付けているのか」「契約者や株主はこのような取り組みをどう評価しているのか」など、いろいろ考えることができたのは大きな収穫だったと思います
(「もやもや感」は残りますが・・・)。
——————————
※写真は京都・真如堂です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

あんしん!ジャイアン保険

知人のSNS投稿によると、9月24日のテレビ朝日『ドラえもん』は「あんしん!ジャイアン保険」だったそうです。気になったのでアニメを観たところ、こんなストーリーでした。

未来の保険「なんでも保険」は、自分の考えた保障(補償)を保険屋さんロボットに相談すると、プランを提案してくれるというものです(保険屋さんロボットの名前が「なんでも保険」なのかもしれません)。のび太は「なんでも保険」に相談し、ジャイアンから殴られたり、蹴られたりしたら保険金を受け取れる保険に入りました。保険料は1日10円です。
加入後すぐにジャイアンに殴られたのび太は保険金を受け取り、そのお金で読みたかったマンガを買うことができました。

これに味をしめたのび太は保険料を2倍にして、お金をたくさん受け取ろうと画策します。しかし、わざわざジャイアンにからみにいっても暴力を振るわれない日々が続きます。保険料の負担でおこづかいが底をついたのび太は、ジャイアンが落書きしたしずかちゃんの本や、保険に入る前にジャイアンに壊されたラジコンカーなどで保険金を請求するのですが、保険屋さんロボットに支払いを拒否されてしまいます(ロボットは過去の出来事を確認できるのです)。最後は不正まがいの手段に出るのび太でしたが、これも失敗。契約を破棄した直後にジャイアンにボコボコにされるというオチでした。

アニメ『ドラえもん』の主な視聴者は小学生ですよね。よくできた話だと思いました。「もしもの時の強い味方」というキャッチフレーズから始まり、ドラえもんがのび太に「(毎日の保険料は)結構な出費だよ」とクギを刺すシーンもありました。長い間使っているうちに壊れたものや、保険に入る前の事故は補償の対象外だというのも保険の基本的な話ですよね。「保険はもしもの時の味方であって、保険で儲けようとするのはダメなんだよ」というメッセージになっています。
アニメにはありませんでしたが、もしのび太の画策が成功し、ジャイアンにわざと殴られた場合には、保険屋さんロボットはどう対応したのでしょうね。

ところで「なんでも保険」はどうやってジャイアン保険を引き受けているのでしょうか。暴行シーンを過去にさかのぼって確認できるので、不正な保険金請求を防ぐことはできます。ただし、のび太がリスクの高い行動をとることを防ぐシーンはありませんでしたので、モラルハザードの発生は避けられません。加入後ののび太の行動はモラルハザードそのものでしたよね。
プライシングは難しそうですが、ジャイアン個人の行動履歴を分析するというのではなく、全国のいじめっ子の詳細な暴行データ、あるいは詳細な被害データが入手可能な世界になっているのかもしれません(事件にはならないレベルまでの詳細な情報を第三者が入手できる社会で暮らしたいかどうかはともかく)。
もっとも、ドラえもんはもう何十年も放映されているので、ジャイアンとのび太が登場するシーンを分析すれば、保険料を決められるような気もしますね。

※日曜日は稲刈りの日、でした。福岡市内にて。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

ゼロゼロ融資・42兆円の反動

元首相の銃殺というショッキングな事件が起きてしまいました。ご冥福をお祈りするとともに、私たちの社会が妙な方向に進んでいかないことを願います。

さて、以前から親交のある一橋大学の安田行宏先生がNHKクローズアップ現代に出演するということで、なぜかドキドキしながら番組を観ました
(放送は7/6でした。13日まで見逃し配信中です)。

番組の概要はこちらのサイトのとおりですが、政府による異例の中小企業政策(特に2020年5月に民間金融機関まで広げたこと)が企業と金融機関のモラルハザードを引き起こし、結局のところ国民が負担する可能性が高いのだと理解しました。

「企業にとっては借りやすい分、本来の身の丈に合わない額まで融資を受けてしまう可能性があるといいます。金融機関にとっても、確実に融資を回収できて利子も稼げるので、今の低金利時代においてゼロゼロ融資は“恵みの雨”といえます」
(安田先生のコメント部分を引用)

番組では、大阪信用保証協会による経営サポートの取り組みや、金融機関どうしの連携で貸付先の経営改善を図る動きを紹介していました。とはいえ、コロナ前から総じて経営状態の厳しい金融機関を、全くリスクを負うことのない形でゼロゼロ融資に参加させたことが危機対応として正しかったのか、国民負担が実現してしまった際には検証が必要でしょう。
そもそも長年にわたり法人税を払わないような中小企業が数多く存続できているというのが正常ではないと思います。番組でも「ゾンビ企業」というワードが出ていましたね。

※JR九州の特急「A列車で行こう」に乗りました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

活版印刷の発明と海上保険

この週末(25日)は日本保険学会九州部会の例会があり、福岡大学での対面&オンライン(zoom)開催でした。こちらから当日のプログラムやレジュメをご覧いただくことができます(確か期間限定だったと思います)。

2人の報告者のうち、最初に登壇した神戸大学の若土先生の報告「活版印刷技術が及ぼした中世海上保険証券への影響」は、『海事交通研究』第70集に掲載されたこちらの論文(PDF)のアップデートだったようです。中世イタリアをはじめ、スペイン、ポルトガル、オランダ、ドイツなど、これだけの古文書(主に保険証券)を発掘するにはかなりの労力がかかったのではないでしょうか。

『海事交通研究』の論文を拝見したところ、15世紀にグーテンベルクが発明した活版印刷技術が、それまで全て手書きだった海上保険証券の定型部分に導入されていったことを、文献だけではなく、若土先生自らが収集した史料をもとに検証したものでした。

グーテンベルクの活版印刷技術は火薬、羅針盤とともに「中世の3大発明」の1つと言われ、その後のヨーロッパ社会に大きな影響を与えました。この技術を使えば写本よりも早く、安く、大量に読み物を作ることができるので、情報が広く一般に普及するようになります。確かにこれは革命的です。
ただ、海上保険の保険証券を早く、安く、大量に印刷する必要はなさそうなので、両者がどう結びつくのかが疑問でした。これに対し、本論文では16世紀末のアムステルダムで保険証券の定型部分に活版印刷が利用されたことについて、2つの理由を挙げています。

「登記の手間の削減や保険手続きの簡素化や迅速化といった時代のニーズに対応できるよう、恐らく証券書面の統一化を図るため証券上の定型的な部分に活版印刷技術を導入していったのではないかと筆者は考えている」

「取引市場のエリアが拡大し(中略)有力商人たちは企業化しネットワーク網が広がり、契約した重要な補償内容を現地・本部のいずれでも確認できる需要が強まり、証券の定型部分を活版印刷によって記載する動きに繋がったのではないかとみている」

いずれもまだ仮説のようですが、興味深いですね。僭越ながら研究が進み、活版印刷技術と保険の関係がより明らかになることを期待しています。

※アジサイにもいろいろな種類があるのですね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

保険代理店と保険会社

週末(18日)のRINGの会オープンセミナーでは、無事インタビュアーを務めることができました。
Inswatchによると、セミナーの参加者は約1000人(うちオンライン視聴者が約500人)に達したようです。ハイブリッド開催で、かつ、RING主催の懇親会もありませんでしたが、それにもかかわらず500人もの来場者が集まったのですね。大学のハイブリッド授業とは大違いです(笑)

今回のセミナーのテーマは「NEXT MOVE ~新たな時代に次の一手を~」でした。ただ、個人的には、今回の特徴として挙がっていた「(保険代理店が)保険会社と共に考える事」について、より考えさせられるセミナーでした。

登壇した第1部の参考として、事前に保険代理店および損害保険会社の営業担当社員に、「(withコロナで)日々の業務での不安や、不便に感じていること」を聞いていただいたところ、両者の回答に際立った違いがありました。代理店からは、withコロナでも「保険会社との関係」を不安視する回答がほとんどなかった一方で、保険会社社員からの回答で最も多かったのは「(同僚や代理店との)コミュニケーション」という回答だったのです。
第2部でも登壇者のお一人が代理店と保険会社のすれ違いを端的に表すアンケート結果を示しており、withコロナで両者が別の方向を向いていることが改めて見えてしまったのかもしれません。

第3部ではRINGメンバーの代理店経営者が登壇し、代理店の視点から保険会社と共に発展していくための提言もありました。保険会社からの参加者がどの程度いたのかがやや不安ではありますが、代理店からの片思いに終わらず、両者のすれ違いが少しでも解消されることを期待したいです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

RIS2021全国大会に参加

12月4日から5日にかけて、リスクを学ぶゼミ学生が全国規模で集う「全国学生保険学ゼミナール(RIS)」の全国大会が京都・同志社女子大学で開催され、私のゼミも初めて発表を行いました(大学からオンラインで参加)。
当日は13大学31ゼミの報告があり、社会人を含めて300人規模の参加者があったようです。

初参加の教員としては、何とか発表までこぎ着けたというところでしょうか。3年生のゼミは4月から発表に向けて準備を進めてきたとはいえ、先輩という道しるべもなく、テーマを決め、いざ調査を進めると壁にぶつかり、他の道を探るとまた落とし穴にはまる…といった試行錯誤の連続でした。

植村ゼミの発表は次の2つでした。

一班:九州の医療費が高いのはなぜなのか
・国民健康保険について調べていたら、福岡県をはじめ九州各県の医療費が全国平均よりも軒並み高いことを発見。そこで、医療費を高めている要因を可能なかぎり探りました。会場からは「日本の医療市場が供給主導となっているから」というコメントなどをいただきましたが、他の発表であった「医療分野でキャッシュレスが普及していない」というのも、根っこは同じなのかもしれません。

二班:自動運転と未来のリスクマネジメント
・自動運転車が活躍する世界はもはや未来ではなく、分野によってはすでに実用段階にあることを紹介したうえで、自動運転の事故事例に着目することで、今後の自動車保険市場の姿を探りました。流行りものをテーマにすると大変だとわかっていたのですが、案の定、情報がありすぎて、発表直前までゴールが見えずに内心焦りました。

難しかったのは、教員としてどこまで内容に関わるべきかどうかで、これは最後まで迷いました(まだ終わっていないので、現在進行形です^^)。すべてを学生に委ねるというやり方もあり、それはそれで有意義だとは思いますが、うまく回らなければ単なる放置となってしまいかねません。とはいえ、内容に踏み込み過ぎてしまうと、極端に言えば、学生は出された課題をこなすだけで終わってしまいます。
こうして振り返ってみると、ゼミの学生以上に教員としての私が鍛えられた1年だったのかもしれません。関係者の皆さま、ありがとうございました。

来年はクリスマスの東京開催ということで、いまの2年生を中心に臨むことになります。今度は先輩もいますし、また違った試行錯誤となるのでしょうね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

RIS2020全国大会に参加して

この週末に全国学生保険学ゼミナール(RIS)の全国大会がありました。
RISは全国の大学における保険論関係のゼミナールを中心に、年1 回集まって合同で研究発表会を行うもので、今年は14大学18ゼミが集結し、実務家も交えて盛大に開催されました。

「盛大」と書きましたが、オンライン開催で懇親会もできなかったため、例年のような大学を超えたリアルな交流はできませんでした。とはいえ、自分が参加したかぎりでは、発表資料が総じて充実していたほか、討論者(他大学の学生)とのやり取りや参加者との質疑応答など、リアルな大会に負けないレベルで行われていたように思いました。

同時に4つの発表があるので、がんばっても全体の1/4しか参加できなかったのですが、私が参加したなかで最も印象に残ったのは「マスクの裏表問題」(長崎県立大学)でした。
使い捨てマスクに裏表があるのをご存じでしょうか。使い捨てマスクは裏と表で素材が違い、正しくつけないと着用の効果が減ってしまうにもかかわらず、裏表を間違えて着用している人は結構多いようです。コロナ禍でマスクの研究というのは身近でタイムリーですし、感染リスクに関わる重要な話でもあります。
発表者は入手できるマスク30製品超を確認し、アンケート調査を行い、さらにはメーカーへのヒアリングも実施しています。各メーカーの姿勢の違いも垣間見えたようで、いい勉強をしているなあと思いました。

来年は私のゼミ生も参加する予定なので、今回はオブザーブ参加させてもらいました(これはオンライン開催のいいところですね)。他大学の学生の様子を見る機会はなかなかないでしょうから、何らかの刺激にはなったのではないでしょうか。

なお、もしRISにご関心のある実務家等のかたがいらっしゃいましたら、私までご連絡いただければ幸いです。
実務家の投票によるMNP(実務家の視点から最も印象に残った発表)の表彰も行っていますし、意外な発見があるかもしれませんよ。

※写真は福岡・六本松のイルミネーションです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

前期の講義を終えて

大学教員1年目の前期講義が終わり、採点などをしています。

同僚の先生がたと情報交換してみると、オンライン講義は出席率が高く、かつ、下がらない傾向があったようです。確かに私の場合もそうでした。
ただし、ゼミ以外の授業では「音声をミュート」「カメラをオフ」にして授業に臨むので、本当に出席しているかどうかは確認しないとわかりません。前期の経験からすると、どうやら1割くらいの学生はその場にいなかったようです。

2回に1回は小テストを行い、時には感想を聞いたりしたところ、「ゆっくり丁寧でわかりやすい」という声と、「難しいのでもう少しゆっくり話してほしい」という声があり、どうしたものかと悩みました。
後期もいろいろと試行錯誤してみることにしましょう。

2つの保険の講義のうち、片方で保険会社の経営破綻に関する話を2回に分けて行いました。
感想を聞くと、保険会社が次々に破綻したという事実を知って驚いたというコメントが多かったですね。「自分は保険に入っているけど、保険会社の破綻など考えたこともなかった」「ビルの名前か何かで聞いたことがある生保が破綻していたなんて」などなど。
中堅生保の経営破綻が相次いだのは2000年前後なので、20歳前後の学生の皆さんがちょうど生まれたころに起きた事件です。社会科の授業で取り上げることもないでしょうから、知らないのも無理はありません(リーマンショックだっておそらくピンとこないでしょう)。

なるほどそうきたか、というコメントもありました。
例えば、「保険会社は破綻しても再出発できるのですね」というもの。保険会社の破綻の話しかしなかったので、比較のためにJALの話でもすればよかったのかもしれません。とはいえ、生命保険会社の場合、債権者の大半が保険契約者であり、既契約の存続が絶対命題としてあるので、特殊な処理なのは確かですね。

破綻生保の既契約を引き継いだ会社が設定する「早期解約控除」について、「うまいこと考えるなぁ」というコメントには、当事者には申しわけありませんが、思わずクスッとしてしまいました。二次破綻を避けるための苦肉の策だと思うのですが、興味深く映ったようです。

※今年は実家での会食をあきらめ、ケーキを切って実家に持っていきました。
 久しぶりに横浜に戻ってきています。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。