12. セミナー等の感想

日経センターの金融研究報告

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日本経済研究センター・金融研究班の報告書について
深尾光洋理事長(慶応大学教授)の話を聞きました。

日経センター・金融研究のHPへ

報告書の概要は10/28(水)の日経「経済教室」にも掲載されています。

今回は「世界不況下の銀行・生保経営」というテーマで

・落ち込む経済と金融市場動向
・再び悪化する銀行経営
・変わる時代と生命保険経営

の3つの論文が発表されました。
例えば生保の論文では、健全性指標の修正版のほか、
相互会社の株式会社化や、生保・共済の経営分析などがあり、
短期間かつ少人数でよくまとめたなあと感心しました。

それにしても、「大手行の自己資本状況」という表を見ると、
みずほFGのコアTierⅠ資本の少なさが際立っていることが
改めて確認できます。

日本のメガバンクは前回の危機からのリハビリ中だったこともあり、
今回の危機では欧州の金融機関ほど経営が揺らいでいません。
それにもかかわらず、国際的な自己資本規制強化の流れのなかで、
「大幅な普通株増資を迫られる可能性がある」(報告書P69より引用)
というのはなかなか辛いものがあります。

深尾先生のスピーチのなかには、米国出張の報告もありました。
当初は金融規制改革のなかでFRBの権限を強化し、
業態ごとバラバラな規制の一元化を図る案だったはずですが、
現在の政治状況ではそれが難しくなっているとのこと。

BIS規制の見直しも、G20の枠組みのなかでは合意が難しく、
「あと2年ではできっこない」という関係者のコメントを紹介していました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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金融機関と事業会社のERM

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16日(金)の日本価値創造ERM学会の研究会で、
金融機関と事業法人のERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)
を比較検討しようという試みがありました。

日本価値創造ERM学会のHPへ(第6回研究会を参照)

パネラーは事業会社代表として東京ガスの吉野太郎さん、
金融機関(銀行)代表はPwCアドバイザリーの原誠一さん、
保険会社代表はキャピタスコンサルティングの森本祐司さん。
いずれもこの分野の第一人者です。

同じERM、すなわち全社のリスクを統合的に管理する経営でも、
金融機関のERMは定量的アプローチ(=VaR、ECといったイメージ)、
事業会社が定性的アプローチ(=内部統制、危機管理のイメージ)
という違いを想像します。
しかし、お話を伺うと、必ずしもそうではないようです。

確かに事業会社の経営リスクの多くは計量化になじみにくいとはいえ、
経営陣の納得感を高めるには、定性と定量の組み合わせが大切なのだそうです。
吉野さんによると、その際の「定量」はざっくりしたもので十分とのこと。

それに今回の金融危機では、金融機関の定量的アプローチ、
すなわち、モデルを重視したERMの限界が示されたわけで、
両者のERMは実はそうかけ離れていないのかもしれません。

他方、金融機関のアプローチでは「損失は一定の確率で発生する」のに対し、
事業会社では「事故は絶対に起こしてはいけない」という発想になります。

この違いについて今回は深い議論にはなりませんでしたが、
私なりに理解すると、事業会社の場合も
「絶対に起こしてはいけないけど、起こりうるもの」
ということなのでしょう。

例えば、ガス爆発事故の可能性を限りなく小さくすることはできても、
ガスタンクがある以上、可能性をゼロにすることはできないと思います。
そう考えると両者の違いは実質的になくなるのではないでしょうか。

もっとも、日本の事業会社でERM、あるいは全社的なリスクマネジメントを
行っている会社がどの程度あるのか、という別の問題も見え隠れします。

それはともかく、私は保険アナリストなので、どうしても保険業界に知識が偏りがち。
今回のような機会は、いろいろ考えるきっかけになるので非常にありがたいです。

※写真は町内会対抗の運動会です。
 私は今年も大縄跳びに出ました。

 

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損保と国際監督規制

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日本損害保険協会で2002年から最近まで国際部長を務めていた
松下勝男さんの講演会に出席しました。
演題は「金融危機の教訓と国際監督規制」。損保総研の主催です。

G20財務大臣・中央銀行総裁会議やFSB(金融安定化委員会)、
IAISなど、最近の金融・保険分野の監督規制動向のほか、
金融機関への規制をめぐる海外メディアの論調の紹介や、
米国の規制改革動向など、盛り沢山でした。

松下さんいわく、

・議論されているカウンターシクリカル(景気連動性を抑制する)
 な準備金は、損保の異常危険準備金に通じるものがある。
・オリジネーターが原資産のリスクの一部を保有すべきというが、
 再保険の世界では当然の話。

など、リスクに対する保険業界の先進性(もしくは保守性)について
コメントされていたのが印象的でした。

もっとも、ここからは私の感覚なのですが、
確かに日本の損害保険会社は保険引受リスクに対しては
(過去に海外再保険の多額損失事件があったとはいえ)
基本的に保守的な姿勢だと思います。

ただ、保険引受リスクとその他のリスク(資産運用など)が
別々に管理されているというか、保険リスクに対する姿勢と
資産運用リスクに対する姿勢が同じ会社でも異なっているように
しばしば感じます。

だからこそ、保険引受リスクに対して非常に慎重な会社が
多額の運用・保証に関する損失を計上したりするのかもしれません。

※写真はセンター南駅です。駅前の広場で野外コンサートをやってました。

 

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損保労連「げんき」

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損害保険労働組合連合会(損保労連)の機関誌「GENKI(げんき)」には、
労連が開催したセミナーの講演録が載っています。
80号には、日本損害保険協会の竹井直樹さん(業務企画部長)、
金融庁監督局の長谷川靖保険課長の講演録などがありました。

以下では、私の目に留まったところをご紹介しましょう。

竹井さんの講演(3/18)は「保険自由化10年と損害保険業界」。
冒頭に損保協会の紹介があり、250名の職員のうち、
95%以上がプロパー職員ということ。
ロビー活動よりも、苦情・相談対応や業界インフラ関連業務の
ウエートが多いそうです。

竹井さんは保険自由化がもたらしたものとして、

・消費者や保険契約者の利便性の向上
・商品の複雑化
・消費者視点の欠如

を指摘したうえで、

「殺伐とした消耗戦を回避するためにも、新たな業界秩序の構築が必要」

と話し、具体策(標準約款のオーソライズと公表)を示しています。
私もよく考えてみたいと思います。

金融庁の長谷川さんは「保険監督行政の現状と課題」。
4/1の開催です。

・連結ベース(またはグループベース)で監督していくことの重要性を
 AIGの件で感じている
・大和生命から引き出せる教訓は、「ビジネスモデルの持続可能性」
 「SMRの見直しを」
・ストレステストを含めた統合的なリスク管理が非常に大事

などが財務に関する課題が話の中心だったようですが、
コンプライアンスに関して、

「若干懸念しているのは、(中略)何か保険金の支払い額は
 少ないほうがいいとする評価システム・体制がありはしないか」
「損害率に対して目標値を設定している会社がありはしないか」

というコメントもありました。

※写真は伊東温泉です。

 

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RINGの会オープンセミナー

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7/11(土)に横浜でRINGの会オープンセミナーがありました。

RINGの会の説明はこちら

共通テーマとして「保険大再編!! 顧客・代理店はどうなる」を掲げ、
午前、午後①、午後②とパネルディスカッションを3つ行いました。

第一部では金融危機と再編について、中央大学の野村修也先生、
元外国損害保険協会専務理事の森崎公夫さん、そして私が議論を交わしました。

多くの場合、コーディネーターに指名されたパネリストが
それぞれ自分の意見を言っておしまいとなるのですが、今回は違いました。

自己紹介を兼ねた10分間のプレゼンの後、野村先生からいきなり、
「植村さんのいう『代理店の社員化』がなぜ起こるのですか?」
という質問が入り、その後もコーディネーターそっちのけで
パネリスト同士でやり取りが交わされました。

やっているほうは何が飛んでくるかわからないので大変でしたが
(しかも大画面に表情が映し出されていたのですよね^^;)、
ご覧になったかたはそれなりに楽しんでいただけたのではと思います。

午後①は「顧客にとって何が起こるか」というパネル。
消費者代表として著名な原早苗さんの質問に、
経営コンサルタントの望月広愛さん、ライフネット生命の出口治明さん、
RINGの会会長の田村薫さんがそれぞれ答えるという構成でした。

それぞれの皆さんのプレゼンは興味深かったのですが、
原さんの「代理店が顧客・保険会社のどちらを向いているのか」
という問いかけに対し、予想されたことではありますが、
「顧客のほうを向いていなければ長続きしない」
「顧客の信頼を得られなければやっていかれない」
と、どうしても議論が平行線になってしまった感がありました。
これはこれでよかったのかもしれませんが。

午後③「代理店は何をするべきか」で、5人の代理店の経営者が登場しました。
伝統的な損保代理店の代表(?)という立場のパネリストが
他の若手パネリストたちに質問をするという趣向がよかったと思います。
パネリストが5人だと、90分はやや短かったかもしれません。

ということで、簡単にコメントしてみましたが、
保険代理店や保険会社の皆さんはどのように感じたのでしょうね。

 

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社会保障の勉強会

FPの内藤眞弓さんのお誘いで、日本の社会保障についての
勉強会に出席しました。

内藤さんは、フリーライターの早川幸子さんとともに
「日本の医療を守る市民の会」を主催しており、私は初出席でした
日本の医療を守る市民の会HPへ

今回の講師は都留文科大学の後藤道夫さん。
貧困の急増、労働市場の激変などが詳細なデータで示され、
福祉国家型の大きな政府にしなければどうにもならない、
というお話でした。

結論部分にはいろいろと議論の余地がありそうです。ただ、
この10年間に社会構造の大きな変化が起きたのは間違いなさそうです。

例えば、派遣・契約社員の数が増えたのはよく知られた話ですが、
若年層を中心に年収の低い正規労働者がかなり増えているのですね
(コンビニやファーストフードの店長などが典型的な例です)。

そして、終身雇用が崩壊する一方、日本の社会保障は
年金や医療保障に比べて失業時の生活保障が弱いうえ、
教育費や住宅費といった社会サービスのコストが高いため、
収入が減ると、ただちに貧困状態に陥りやすいのだそうです。
確かに言われてみればその通りかもしれません。

かつての終身雇用・年功序列には魅力を感じませんし、
そもそも前提が変わったため、戻ることはできないでしょう。
しかし、全体の2割が貧困世帯(貧困の定義にもよりますが)というのは、
やはり健全な社会ではないですよね。

いろいろ考えさせられる勉強会でした。

 

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「保険会社破綻」セミナー

先週末になりますが、保険会社の破綻をテーマにした
保険代理店向けセミナーの講師を務めました。

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前半が私で、アナリストの視点から保険会社のリスク構造や
経営の現状についてスピーチしました。

後半の岡武さんは、大成火災の破綻時にどうなったのか、
実際に何をしたのか、という貴重な体験談。
これは非常に興味深い内容でした。

同じ保険でも生保と損保では、破綻による影響や
破綻時にしなければならないことが、かなり違うのだと
私も改めて認識することができました。

 

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アクセンチュアのイベント

保険会社向けのイベントで基調講演をしました。
場所は六本木ヒルズの49階です。

全体のテーマは「オペレーショナル・エクセレンス」。
私は「生損保の経営は変わったのか」という演題で
30分ほど話をしました。

例えば、「破綻生保では経営が実態をつかめていなかった」
「経営実態を正しく把握する仕組みが不可欠」といった話をしました。

これを受けた某ソフト会社のかたが「経営の見える化」について
話すというので注目していたところ、excelベースで販売実績や
経費の状況を一覧できるソフトについてのデモンストレーションでした。

タイトルに「オペレーション力を向上する」とあったので、
てっきりEVや負債評価の話などかと思っていたのですが...

後半のSBIアクサ生命の副社長によるスピーチは、
実際に保険事業の立ち上げに関わっているかたの話だけあって、
もっと聞いてみたいと思うようなものでした。

 

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