12. セミナー等の感想

保険をめぐる二つの世界

 

昨日(5日)明治大学で、日本保険・年金リスク学会(JARIP)の
研究発表大会がありました。

保険や年金に関する様々な研究発表がありましたが、
最も刺激的だったのは、一橋大学・米山高生教授の
特別講演ではなかったでしょうか。

タイトルとなっている「保険をめぐる二つの世界」とは、
「伝統的な保険論」と「リスクマネジメント&保険」です。

「伝統的な保険論」は供給者の視点に立っており、
収支相等の原則からはじまる保険論です。
予定調和的な世界を前提にしており、
価格は保険数理による決定論的な世界で決まります。

これに対し、「リスクマネジメント&保険」は需要側から
マーケット(=自由競争)を前提に考えるものです。
予定調和ではなく不確実な世界であり、
価格は確率論的な世界で決まります。

そして、
「伝統的な保険論では解決できない問題や苦手とするテーマも
 需要側からマーケットを前提に考えると解決できる」

「今後の保険教育は伝統的な保険論(保険数理を含む)に加え
 リスクマネジメント&保険、金融工学、コーポレートファイナンス
 の4領域が主軸になる」

というのが先生の結論だったようです。

保険数理の専門家がリスクの専門家になれるかどうか。
アクチュアリー会でも話していただいたらいいかもしれませんね。

※写真は第三京浜の高架橋なのですが、格付けに見えてしまいます^^

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

JARIPフォーラム

開催中に大震災に見舞われ、やむなく中断した
日本保険・年金リスク学会(JARIP)主催のフォーラム
「ソルベンシーⅡと保険会社のERM」ですが、
2カ月たって再度開催することができました(23日)。

今回私はパネリストのほか、恥ずかしながら基調講演を務めました。

パネリストの顔ぶれは、明治大学の松山直樹さんを除けば
週刊金融財政事情の誌上座談会と同じです。
もともとはリアルな座談会の後、誌上座談会に突入する予定でしたが、
これは仕方がありません。

モデレータの森本祐司さんが挙げた論点を再度ご紹介しましょう。

1.ソルベンシーⅡ、特に経済価値ベースの評価を基準にした
  自己資本比率規制が、保険会社のERMにどのような影響を
  与えると考えるか。

2.経済価値ベースの規制の導入=保険会社ERMの進展と
  なるのか?懸念点はないか?

3.ERMのサクセスファクター/望ましいERMの実現に向けて
  優先的に実施すべきは?

私以外のパネリストの皆さんは、実際に保険会社のなかで
ERMを実践している、あるいは実践してきたかたなので、
体験に基づいた話は大変参考になります。

水を飲む気のない馬に、水を飲ませることはできません。
飲む気にさせるにはどうしたらいいか。
いろいろな方法を考えていく必要がありそうです。

ご参考までに、本日(24日)こちらが公表となりましたので、
リンクしておきます。 → 金融庁のHPへ

※あくまで個人的なコメントということでお願いします。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

大震災発生のとき

今回の大震災で被災されたかたには、心よりお見舞い申し上げます。

地震発生のとき、私は日本保険・年金リスク学会(JARIP)の
「ソルベンシーⅡと保険会社のERM」フォーラムに参加するため、
東京・丸の内の日本工業倶楽部3階大ホールにいました
(パネリストとして登場する予定でした)。

開催を告知してからわずか3日間で締め切りという人気で、
会場には大勢の参加者がぎっしり座っていました。

3人目のスピーカーとして東京海上のTさんが登場してから
10分くらいでしょうか。実のところ、それほど大きい揺れとは
感じなかったのですが、ゆっくりした揺れだなあとは思いました。
スピーカーのTさんも異変に気づき、話を中断。

しばらくしてから、どなたか(たぶんホールの係の人)から
「シャンデリアの下にいる人は離れて下さい」という声。
この会館は経済界のクラシックな社交場という雰囲気で、
大ホールの高い天井には見事なシャンデリアがあるのです。

皆さんがあわてて席を離れた直後のことです。
大きく揺れていたシャンデリアの1つが壊れ、一部が落下しました。
もし誰も声をかけず、そのまま下に人がいたらと思うとぞっとします。

実のところ私は「まさかこの程度の揺れで落ちることはないだろう」
と考えていたので、本当にびっくりしました。

結局、フォーラムは中止となり、私はパネリストから帰宅難民へと
立場が大きく変わってしまったのですが、いざ事が起きてしまうと、
状況を正確に判断し、的確な対応をすることがいかに難しいかを
思い知りました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

最終講義

 

博士課程で大変お世話になった早稲田大学・西村吉正先生
(「住専問題」の時の大蔵省銀行局長ですね)の
最終講義がありました(5日)。

タイトルは「世界史における日本の位置づけと金融の将来」。
西洋史学科出身の私には興味津津です。

「経済力(GDP)」=「人数(人口)」×「単価(1人当たりGDP)」とすると、
経済力の拡大は「人数増加」「単価上昇」のいずれかでとなります。

過去2000年間(!)の歴史を振り返ってみると、
経済力は「人数」で決まっていた時代が長く続いていましたが、
19世紀半ばあたりから、欧米が単価を高めることで先進国となり、
現在に至っています。

しかし、単価を高めることができるのは欧米だけではなく、
日本も戦後に高度成長を実現し、今は中国がそうです。
この結果、世界は再び「人口」が経済力を左右する時代に
回帰しているというわけです。

そのようななかで、日本はどうするか。
人口が減るなかでは単価アップで勝負するしかありません。

現在の「高付加価値のモノづくり」からさらに単価を上げるには、
「金融立国」、すなわち、「ヒトの上前をハネる力」を
持てるかどうかが鍵となります。

それには、つまるところ日本人の競争力を高めることが
必要というわけです。

これだけ大局的な話を具体的なデータをもとに、
かつ、冷静に分析してみせるところに、
西村先生のすごさを感じました(お世辞抜きで^^)。

会場の大教室にはシニア世代から現役の院生まで
大勢が集まりました。金融関係者もたくさんいた模様です。

※今回は珍しく写真と内容が合ってますね(苦笑)

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

女性アクチュアリー

null null

17(水)、18(木)は日本アクチュアリー会の年次大会でした。
18日は自分の関係するERM委員会主催のプレゼンのほか、
解約返戻金のパネルディスカッションなどにも参加して、
頭が疲れてへとへとになりました^^

数々の発表やパネルのなかで異色だったのは、
「アクチュアリー・キャリアの考察」というパネルでしょう。
(「女性アクチュアリーの視点から」という副題付き)。

あいにくERM委員会主催の発表と重なってしまい
参加はできなかったのですが、発表資料を見たところ、
「女性アクチュアリーに関する現状」に衝撃的なデータがありました
(アクサ生命の谷川香さんによるもの)。

日本アクチュアリー会の会員数(正会員、準会員、研究会員)は
2010年9月末時点で4466人。このうち女性はわずか228人です
(構成比は5.1%)。
正会員はもっと少なく、1255人のうち21人しかいません(同1.7%)。

他の資格の状況を見ると、医師は17.7%、SEは11.5%、
裁判官・検察官・弁護士は10.6%、会計士・税理士は11.1%、
教員は48.4%とのこと。
いずれも5年前のデータなので、今はもっと高いかもしれません。

確かに男ばかりだなあとは思っていましたが、
ここまで女性が少ないとは。

女性の話に限らず、日本の保険会社や信託銀行の経営者は
「多様性」の重要さについて、もっと真面目に考えたほうがいいと思います。

※写真は豊川稲荷のキツネさんたちです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

保険学会70周年記念大会

null null

日本保険学会の70周年記念大会が
23(土)、24(日)に早稲田大学で開催されました。

初日の午後は例年通りシンポジウムで、
今年のテーマは「保険販売の今後を考える」。

早稲田大学の大塚英明先生、日本生命の樫原英男さん、
保険代理店トータスウィンズの亀甲美智博社長、
ライフネット生命の出口治明社長、
三井ダイレクト損保の北尾敏明さんの5人が
それぞれの持論を語り、意見を交わしました。

このテーマでこの顔ぶれですと、予想通りではありますが、
「情報開示」や「比較情報」の話になります。

日本生命の樫原さんは、
「シンプルでわかりやすく、かつ、充実した保障の提供が必要」
「ただ、特に生前給付型の商品では、充実した保障を提供しようとすると
 商品が複雑になりがち(=商品比較には慎重姿勢)」。

これに対し、亀甲さんや出口さんは、
「枝を捨て幹で比べれば、大きな選択ミスはしない」
「ただし、それには捨てる技術が必要」
という主張でした。

ポイントは「条件をどこまでそろえることができるか」なのでしょう。

出口さんのプレゼンには、これからの大きな課題である
「ベストアドバイス義務をどう担保するか」の一例として、
ニューヨーク州が販売コミッションの開示に踏み切った
(2011年から施行)という紹介がありました。

ニューヨーク州では、購入者が求めた場合には、
保険募集人は得られる報酬の種類、金額、源泉と、
募集人が提示した他の保険契約を販売した場合に
受け取る報酬について開示しなければなりません。

「ベストアドバイス義務」と「それをどう担保するか」は
確かに今後の保険販売を考えるうえで重要なテーマでしょう。

「保険販売」というテーマが学会の年次大会で
ふさわしいのかどうかは、私にはよくわかりませんが、
興味深いシンポジウムでした。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

差額ベッド料

null null

名著「医療保険は入ってはいけない」で有名なFP
内藤眞弓さんのセミナーに出席しました。

テーマは「今さら聞けない健康保険と民間医療保険の話」。
彼女が代表を務める「日本の医療を守る市民の会」
としてのスピーチだったので、会場には医療関係者なども
たくさん出席していたようです。
日本の医療を守る市民の会HPへ

スピーチのなかで「差額ベッド(特別療養環境室)料は
希望しないとかからない」という話がありました。

患者に同意書による確認を行っていない、あるいは
治療上や病棟管理の必要がある場合には、
病院は差額ベッド料を請求してはいけないのだそうです。

すると、質疑応答の時間に、ある医療関係者のかたから
ショッキングなコメントがありました。

救急車で急患を搬送していると、救急病院はしばしば
「差額ベッドでよければ受け入れる」と言い、
患者がOKと言わないと入院させてくれないのだそうです。

しかし、実際には普通のベッドも空いていることが多く、
かなりひどい病院もあるとのこと
(そのかたは具体名を複数挙げていました)。

この話がどの程度一般的なのか、ごく一部の例なのかは
私にはわかりません。

ただ、病院の経営環境がかつてに比べて厳しくなっているなかで、
儲かる患者を優先的に受け入れたいというインセンティブはあるはず。
厚生労働省が単に注意を促すだけではなく、
病院経営の実態をチェックしているのか、気になるところです。

差額ベッド料に限らず、医療の最新事情について
もっと勉強しなければいけませんね。

※写真は丸ノ内オアゾにあるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の
 情報センターです。JAXAのOBが丁寧に解説してくれました。
 事業仕分けの影響でもうすぐ閉鎖されてしまうそうです。残念。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

木を見て森も見る

null null

7/28に損保総研でIAIS(保険監督者国際機構)
河合美宏事務局長のスピーチを聞く機会がありました。
テーマは「国際保険規制の最近の進展2010」です。

金融危機以降の国際的な金融・保険規制の動向
(基本的に銀行を念頭に置いて議論が進んでいるとのこと)や、
IAISの主な活動(コムフレームなど)についての紹介がありました。

そのなかで出てきたのが「木を見て森も見る」という話です。

規制当局はこれまで個々の保険会社を監督してきましたが、
それだけでは十分でないことが金融危機で明らかになり、
保険業界全体に目配りする必要があるといった趣旨の話です。

確かに、ある保険会社が経営危機に陥った際には、
別の保険会社にも影響が及ぶおそれがありますよね。
あるいは、もし保険会社が一斉に株を大量に売りだしたら、
株価が急落し、場合によっては金融システムの動揺を招いてしまいます。

こうしたことも視野に入れて監督すべきということなのですが、
いざ取り組むとなると、どうしたらいいか考えてしまいます。

※いつものようにコメントは個人的なものです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

RINGオープンセミナー

null null

毎年恒例になっている「保険代理店の文化祭」、
RINGの会オープンセミナーが26日に横浜で開催されました。

このセミナーは今回が12回目。
毎年1000人弱が集まる一大イベントになっています。
全てRINGの会メンバー(主に代理店経営者)によるボランティア運営です。
運営に当たった皆さん、お疲れさまでした。

今回は転職直後ということもあり、私は企画やパネリスト依頼のみで、
当日は朝から晩までじっくりとセミナーを拝聴しました。

「プロ代理店は死滅の道を辿るのか?」というテーマは
ちょっと刺激的だったかもしれません
(ちなみに原案は「プロ代理店は死んだのか?」でした)。

この会に参加して下さる代理店や保険会社の皆さんは
ここでしか得られない刺激や気づきを求めているのでしょう。

結果的に今回は第1部~第3部とも、いずれも突き詰めれば
「専業代理店の存在意義」を考えさせられるような話になりました
(第1部の米山先生は光ってましたね...)ので、
このような刺激的なテーマを掲げてよかったのではないかと思います。

特に第2部と第3部は、いずれも「プロ代理店」を掲げたパネルでしたが、
コーディネーターの違い(あるいは個性)が、うまく作用したように感じました。

ただ、わかっていたことですが、このような刺激的なテーマを掲げてしまうと
次回が大変なんですよね。
とはいえ、来年も開催するのであれば、無い知恵を絞り、
参加者に刺激を与えられるような文化祭にしたいですね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

ガバナンス研究

null

先週末(22-23日)に日本ファイナンス学会の年次大会があり、
コーポレートガバナンスに関する2つの研究発表を聞きました。
いずれも実証分析です。

1つは「日本企業が独立取締役に何を期待しているか?」
という早稲田大学商学部の広田真一先生の発表です。

日本の独立(≒社外)取締役は特定のステークホルダー
(株主など)の代表というより、ステークホルダー全体の
代表であるという分析結果が示されました。

さらに、日本で独立取締役の導入が進まない理由は、
マスメディア等の通説である「経営者の保身」ではなく、
従業員をも含めた企業内部者の抵抗、という分析もありました。

ステークホルダーにはもちろん従業員も含まれますが、
日本企業の場合、外部ステークホルダーと内部ステークホルダーに
分けて考えるというのも確かに一つのアイディアだと思います。

もう1つは「日本企業の取締役会構成の決定要因」という、
京都産業大学・齋藤卓爾先生の発表です。

日本企業で取締役がどのように選ばれるかに注目したうえで、
社外取締役と企業属性(規模、R&D比率など)の関係を分析し、

「社外からのアドバイスは好むが、モニタリングは好まない」

という日本企業の選好が取締役会構成に反映されているという
興味深い結論を示されていました。

日本でも社外取締役が増えたとはいえ、海外に比べれば圧倒的に少なく、
しかも経営者が選定に強くかかわっていることが多いようです。
委員会設置会社についても、社外取締役が中心の指名委員会を
導入した会社はごく一部です。

お二人の発表から感じたのは、海外に比べ、日本企業の
ガバナンス構造がかなり特殊な状態にあるということです。
うまくいっている時代はよかったのかもしれませんが、
今は明らかに問題のほうが大きいように思います。

ただ、日本企業のガバナンスに問題があるのがわかっても、
アメリカなど海外の仕組みをそのまま導入しただけでは
あまり役に立たないのかもしれません。
どのような制度設計がいいのか、難しい問題です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。