大手損保の国内事業戦略

最初にご案内です。6月28日の夜(18:00-19:00)に損保総研の特別講座で講師を務めます。演題は「保険会社経営の今後を探る ~最近の環境変化を踏まえて~」でして、ここ数年、定点観測的にお話をしているものです。
今回も対面ではなく、オンラインによるライブ配信ですので、ご関心のあるかたはぜひお申し込みくださいね。

さて、今週の保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1188(2023.6.12)に寄稿したコラムをご紹介します(IR資料へのリンクを加筆しました)。
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3メガ損保グループはそれぞれ四半期ごとに投資家・アナリスト向けに決算説明会(電話会議を含む)を開催しているほか、半期ごとにグループ戦略を説明するIRミーティングを行っています。
直近のIRミーティングが5月下旬にありましたので、今回は各グループによる国内損害保険事業の取り組み方針の概要を紹介します(詳細な情報は各社のIRサイトで確認できます)。

東京海上(5月24日開催)

東京海上グループは「国内損保事業でNo.1の成長とマーケット対比優位な収益性を実現している」とアピールしたうえで、着実な保険引受利益の成長のために次の5点にフォーカスすると説明しています(資料はこちらです)。

・自動車保険の収益維持
・火災保険の収益改善
・新種保険の拡大
・事業効率の向上
・新たなビジネスモデル

事業効率の向上に関して、現在の中期経営計画(2021~23年度)では約400億円のデジタル投資を行い、社内事務を徹底的に削減することでコンバインドレシオの改善を図るとしています。今回のIRでも、事務量削減の進捗状況と、それによって生まれた資源の再配分について定量的な説明がありました。

MS&AD(5月25日開催)

MS&ADグループは企業価値向上への取り組みとして、国内損保事業の主要戦略として次の4点を掲げています(資料はこちらです)。

・自動車保険の利益維持
・火災保険の利益改善
・新種保険の利益拡大
・事業費の削減

事業費の削減については、2022年度からのグループ中期経営計画で打ち出した1プラットフォーム戦略(ミドル・バック部門の共通化・共同化・一体化)の進捗状況を示しました。例えば、一部SCでの同居やコンタクトセンターの拠点同居(関西)が順次始まっていくそうです。

SOMPO(5月26日)

SOMPOグループからは「事業環境の悪化を踏まえ、収益回復に向けた新たなアクションを開始する」という説明がありました(資料はこちらです)。事業環境の悪化とは、インフレによる保険金増加や激甚自然災害の頻発化などのことです。収益回復に向けた新たなアクションとしては、以下を示しています。

・踏み込んだ収益改善策(火災保険・自動車保険・新種保険)
・更なる生産性向上策

更なる生産性向上策としては、商品の統廃合・簡素化による物件費の削減と組織体制の最適化によって、5年後の事業費率を31%台に下げる方針を打ち出しています(直近は33.9%)。

チャネル戦略への言及なし

こうして見ると、自動車保険の収支悪化にどうやって歯止めをかけるか、火災保険を赤字体質からどうやって脱却させるか、事業費のうち社費(人件費と物件費)をどうやって削減するか、というのが国内損保事業についての共通した関心事項だとわかります。
他方で国内損保事業のビジネスモデルの根幹をなす、代理店を軸としたチャネル戦略に関する記述は各グループともにほぼ見当たりませんでした。各社は中計で、「代理店システムの刷新等により、代理店の顧客接点および営業力を高度化」「オンライン商談等を活用した新たな募集モデルの構築」(いずれも東京海上グループ)、「代理店の高品質化・自立化を中心とした販売網構造改革に注力」(SOMPOグループ)などを掲げ、各社の代理店あたり収入保険料も着実に増加しているのですが、全く言及がないというのは不思議な気がします。
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※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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