02. 保険会社の経営分析

生保営業職員のターンオーバー

生命保険会社の営業職員組織というと、大量採用・大量脱落のターンオーバー問題が決まり文句のようになっています。
大手生保の数字を確認してみると、確かに2000年代前半は期初の在籍数の3、4割にあたる職員を採用しているにもかかわらず、在籍数が減る(つまり採用を上回る退職が発生している)状態でした。
ところが最近は、在籍数の2割弱にあたる職員を採用し、在籍数は増加に転じているので、退職率は15%程度です。約4割から約15%へというのはかなりの変化です
(日本生命はディスクロージャー誌が未公表なので、2018年度まで確認)。

2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました。新人についても、採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みを行い、ターンオーバーの改善に効果を上げたと考えられます。

あとはこれが持続可能かどうかです。新契約の大半を既契約者やその周辺から獲得しているので、既契約者の高齢化とともに事業基盤が先細りしますし、毎年5千人から1万人という採用数は、高いコンサルティング力を武器にするための採用ではないでしょう。ここからがチャネル改革の本番なのかもしれません。

※かつて近所を走っていた市内電車の痕跡を見つけました。

 

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ところ変われば

26日の日経に「生保解約 コロナで急増(有料会員限定)」という記事が出ていました。経営者保険などを中心に生命保険の解約が増えているとのこと。
確かにエヌエヌ生命では4-6月期の解約返戻金が前年同期より27%増えているのですが、業界全体では4-6月期は1-3月期よりも解約返戻金が少なく、一部を除けば「コロナで急増」という状況ではなさそうです。
中小企業の資金繰りということであれば、保険約款貸付に注目してもよかったかもしれません。大同生命とエヌエヌ生命は増加が顕著ですし、大手4社では日本生命の増加が目立ちます
(中小企業とは関係なさそうですが、かんぽ生命も増えていますね)。

財務部門とは

ところで、どの業界にも、その業界でしか通じない用語ってありますよね。
業界外で通じないだけならいいのですが、同じ用語を別の意味で使っていることもあり、混乱のもととなってしまいます。

保険業界で典型的な事例は「財務」「財務部門」でしょうか。
私は最初の就職先が損害保険会社の財務部門だったので、財務と言えば資産運用でした。
しかし、財務といえば資産運用なのはおそらく保険業界だけで、多くの場合、財務部門は主に資金調達を担当する部門です。私がそれを知ったのは就職してしばらくしてのことでした。
保険会社は先にお金(保険料)が入ってきて、後からお金(保険金)が出ていく事業なので、事業のために外部から資金を調達する必要がありません。だから他の産業と「財務」の意味が違うのでしょう。

支社と支店

生保と損保でも違いは結構ありますね。
これも私の経験で恐縮ですが、損害保険会社(大手)では「〇〇支店××支社」なので、支店長は支社長の上司です。ところが後に生命保険会社を担当するようになって、生保では支店の代わりに「〇〇支社」となっているのに気が付きました。同じ「支社長」でも生保と損保で社内の地位が全然違います。

不思議なことに、大手損保には「本店営業〇部」「本店損害サービス〇部」はありますが、全体としては「本店」ではなく「本社」です。このあたりは歴史的な経緯もあるのでしょうね。

保険料の支払い方法も、生保の「平準払い」のことを、損保はかつて「回払い」と呼んでいました(積立保険が開店休業中なので、今はどうなのかわかりません)。
他方で「占率(せんりつ)」「P免」などは生保の用語ですね。損保でも通じるのでしょうか?

※近くにスーパーが複数あるのは便利です。

 

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生損保の4-6月期決算から

8月7日までに公表された分だけですが、生損保の4-6月期決算で保険関係の数値を確認してみました。

損害率が低下【損保】

国内損保事業の正味収入保険料は、東京海上日動がほぼ横ばい、他の大手損保は小幅減となりました。ただ、減収は火災保険の再保険コスト上昇によるところが大きいようで、過去の料率引き上げ効果もあり、4-6月期に収入が大きく落ち込むということはありませんでした。

数字が大きく動いたのは支払いのほうです。外出自粛等の影響で発生保険金が減り、損害率が大きく改善しました。
各社の自動車保険のE/I損害率はご覧のとおりです(前年対比)。

 東京海上日動 56.5% ⇒ 46.2%
 三井住友海上 54.7% ⇒ 46.2%
 あいおいND 55.9% ⇒ 48.1%
 損保ジャパン 63.2% ⇒ 48.1%

欧米のようなロックダウンはなくとも、新型コロナ禍が人々の行動を変え、それが数値に現れたということかと思います。

営業自粛で業績落ち込む【生保】

更改契約がある損保に比べると、生保は営業自粛の影響を強く受けた数字となっています。
例えば営業職員チャネルを主力としている会社の「新契約年換算保険料」「新契約件数」(いずれも個人保険、前年同期比)はご覧のとおりです。

 日本生命 ▲59.1% ▲72.1%
 住友生命 ▲54.8% ▲54.4%
 MY生命 ▲35.8% ▲42.3%
 太陽生命 ▲36.8% ▲25.7%
 富国生命 ▲45.3% ▲47.4%

代理店を主力にしている会社として、損保系生保と大同生命の数字も見てみましょう(大同生命は営業職員チャネルの規模も大きいですが、とりあえず)。同じく個人保険の新契約年換算保険料と新契約件数の前年同期比です。

 あんしん生命 ▲21.5% ▲32.9%
 MSA生命  ▲29.2% ▲34.9%
 MSP生命  ▲57.7% ▲73.6%
 ひまわり生命 ▲23.3% ▲31.5%
 大同生命   +26.4% ▲14.3%

MSP生命(三井住友海上プライマリー生命)は銀行窓販専門会社なので傾向が違うのはわかるとして、それ以外の会社は大手よりも落ち込みが小さいように見えます。ただ、2019年4-6月期の数字は経営者保険の提供休止などの影響を受けているので、代理店チャネルのほうが落ち込みが小さいと言っていいものか、まだわかりません。

とりあえず速報ということで。

※石炭記念館に「白蓮夫人」の写真がありました。

 

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生保決算(1-3月データ)から

2019年度決算では、新型コロナ禍に伴う金融市場の乱高下の影響で、多額の有価証券評価損を計上した国内系生保がいくつかありました。評価損の内訳は「株式等」「外国証券」が大半を占めています。
例によって四半期ごとに分けて見てみると、評価損の計上に合わせるかのように、有価証券売却益が1-3月期になって急増している会社がみられます。

好意的に見れば、価格が下がる前に利益を確定したのかもしれません。しかし、この時期だけ突出して売却益が多く、かつ、比較的動きが小さかった国内債券もそこそこ含まれているとなると、通常の資産運用というよりは、3月決算を意識した利益計上を行ったのではないかと考えてしまいます。
資産運用で積極的にリスクをとるという経営判断は理解できるとしても、決算を作りに行くような行動は、どう理解したらいいのでしょうか。

新型コロナ対応といえば、3月以降、大手生保の契約者貸付が急増しているというニュースがありました(5/24のNHKなど)。
そこで、各社の契約者貸付(保険約款貸付)を確認してみると、大手生保(日本、第一、住友、明治安田)の貸付残高は3か月前と比べてむしろ減っていました。
本格的に増えたのは4月以降なのかもしれませんが、中小企業を顧客基盤とする大同生命では貸付残高が急増していますし、顧客に中小企業のオーナーが多そうなソニー生命やプルデンシャル生命でも、通常よりも増えていますので、顧客基盤のちがいが大きいようです。NHKは取材する相手を間違えたのでは…

1-3月になって解約返戻金が急に増えた会社もありました。第一フロンティア生命とMSプライマリー生命が顕著に増えていて、明治安田生命や住友生命でも増えているので、おそらく銀行で一時払いの貯蓄性保険に加入した人が、何らかの理由で保険を解約したのでしょう。

※アクロス山の登頂に成功しました(笑)

 

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大手損保グループ経営の現状

先週は大手損保グループ各社のIRミーティングがあり、いろいろと気付きがありました
(いずれも対面形式ではなかったので、福岡にいてもアクセスできました)。

まず、損保事業への新型コロナの影響は、国内と海外(欧米)でだいぶ異なっているようです。
東京海上やMS&ADでは、海外事業で数百億円規模の保険金支払いが発生する見込みです。主にイベント中止や事業中断などの保険ではないかと思います(取引信用保険も考えられますね)。
他方で国内では、2期連続で風水災による多額の保険金支払いが発生したものの、新型コロナ絡みの支払いは今のところ目立ちません。いわゆる新種保険の普及は国内ではまだまだということなのでしょう。

再保険市場のハード化もはっきりしました。長い間、保険料率の低下基調が続いていたものが、少し前から上昇基調に転じたようです。
このところ世界的に自然災害が多発し、国内でも1兆円を超える自然災害に伴う保険金支払いが2期連続で発生したうえ、新型コロナ関連の支払いや金融市場の不安定さも加わり、再保険市場はハードマーケットに転じた模様です。
確かに損保各社の出再保険料(火災保険)をみると、各社ともかなりのペースで増えていることがわかります。

もっとも、各社とも政策株式保有を減らしてきているとはいえ、引き続き株価下落がグループにとっての最大リスクか、それに近いということも確認できました(金利リスクも大きいですね)。

※ラタトゥユとカルパッチョを作りました。
 すいかは今季初です。

 

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生保決算の概要

例年とちがい、生保決算はまだ出そろっていませんが、国内系生保に関しては大まかな傾向は見えたのではないかと思います。

まず、資産価格変動の影響です。
一時は株価が大きく値下がりしたものの、結果的に日経平均株価は前年度末から10%程度の下げにとどまりました。それでも株式保有の多い会社では、株価下落で支払余力が圧迫を受けています。
他方で、米国をはじめ海外金利が大きく下がり、こちらは外国公社債の時価を押し上げています(ただし、為替はやや円高なので、影響が相殺されているところもあります)。
これらは損益計算書には部分的にしか出てきませんが、公表されているEV(エンベディッド・バリュー)を見ると、会社価値への影響としては最も大きい要因だったようです。

保険関係では、会社によっては経営者保険の販売停止などにより、新契約価値が影響を受けています。第三分野の新契約年換算保険料が軒並み前年割れとなっているのもちょっと気になります。ただし、新型コロナの影響は、この段階ではほとんど見られません。
なお、大手生保が相次いで投入した健康増進型保険も大ヒットとまではいかなかった模様です。

こうしたことは、保険料等収入と基礎利益だけ追いかけていては、全く見えてきません。
メディアは今回のかんぽ生命(=営業を自粛していた)や大同生命(=経営者保険の販売を停止していた)の基礎利益が増えたのを見て、この指標に何も疑問を感じなかったとしたら、さすがにおかしいと思います。

国内系生保の経営が総じて保険ではなく、資産運用に左右されやすいのは、リスクの取り方がそうなっているからです。
このことについて、第一生命ホールディングスは決算説明会資料(PDF)のなかで、日本の大手生保グループとして初めてグループ統合リスク量の内訳を開示し、金利・株式を中心とした市場関連リスクが全体の7割を占めることを明らかにしました。
同社は金利リスクと株式リスクの削減に取り組み、市場の変動に左右されにくいリスクプロファイルにしていくとのことです。

※自宅からビーチまで歩いて行けました!

 

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米国金利の低下

経済同友会の櫻田代表幹事(SOMPOホールディングス社長)の「10万円給付を電子マネーで」が格好の炎上ネタとなってしまいました。
今回の施策の緊急性と電子マネーの普及度合いを踏まえると、さすがに今の日本では無理でしょう。ただ、世間の反応を見ると、まだまだ電子マネーは「お金」とはみなされていないのですね。
「条件付きで30万円給付」は困っている方々への生活支援という目的が明確でしたが、「一律に10万円給付」となるとどうでしょう。もちろん生活に苦しい方々への助けにもなりますし、総額も増えるのですが、今のところ1回限りの10万円ですよね。本当に困っている方々への生活支援としては不十分ですし、むしろ「10万円渡すから政府に協力してくださいね」というお見舞金の性格が強まったように思います。

米国金利の低下

さて、このところ米国の長期金利がかなり低くなっています。10年国債利回りは0.6%程度、30年が1.2%程度と、見たこともないような低水準です。
(ちなみに日本の10年国債利回りはほぼ0%、30年は0.5%程度です)。

ここまで金利が下がると、米国の生保経営にも影響がありそうです。
格付会社ムーディーズは4月1日に、米国生保業界のアウトルックをネガティブに変更しました。低金利と新型コロナウイルスによる影響を懸念しているためです。
ムーディーズのサイトへ

厳しい経営環境

米国生保といってもビジネスモデルは多種多様ですが、伝統的な利率保証型の商品を中心に提供している会社では、公社債によるマッチング型ALMを行い、金利リスクをヘッジするのが一般的です。一般勘定での株式保有は少なく、市場リスクではなく、主に信用リスクで運用収益の確保を目指します。

しかし、景気低迷で公社債のデフォルトが相次ぐようになれば話は別ですし、そもそも超低金利下でマッチングや最低保証のヘッジが有効に機能しているかという心配もあります(GMWBなど大丈夫なのでしょうか)。
もちろん商品開発での制約も大きいですし、新型コロナで対面販売もままならないでしょう。

日本の生保を取り巻く経営環境も非常に厳しいですが、超低金利は今に始まった事象ではありませんし、危険差益を獲得しやすい保障性商品を主力にしているため、新たな時代に合ったビジネスモデルの見直しに力を注げるのではないでしょうか。

※近くの公園で春を感じてきました。

 

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パンデミックのリスク

保険会社がパンデミックや感染症について予め想定していたのかどうか、上場保険グループの「事業等のリスク」を2018年度の有価証券報告書で確認してみました。

生損保で傾向にちがい

興味深いことに、生保を中心としたグループと損保を中心としたグループで傾向が異なっていました。
生保を中心としたグループでは、主に大規模災害に関するリスクとして、感染症の流行に伴う多額の保険金等の支払い発生をリスクとしてとらえています
(第一生命HDでは資産の流動性リスクについても触れています)。

生保にかぎらず、有価証券報告書の記載がグループのリスク管理とどこまで整合的なのかという疑問はありますが、日経新聞のインタビュー記事によると、第一生命では「感染症のストレステストとして、新型インフルエンザで入院患者200万人、死亡者数64万人の想定で、保険金の支払いに問題がないかをシミュレーションしている」そうです。

他方、損保を中心としたグループでは、主に事業中断に関するリスクとして、パンデミック発生時の事業中断をリスクとして取り上げています。
ただし、東京海上HDでは特定した11の重要なリスクの1つにパンデミックがあり、経済的損失額や発生頻度といった要素だけではなく、業務継続性やレピュテーションの要素も加えて総合的に評価を行っているとのことです(MS&AD HDでは「新型(強毒性)インフルエンザ大流行」が2019年度のグループ重要リスクの1つとなっています)。

このシナリオを想定していたか

新型コロナウィルス流行が保険会社経営に与える影響は、パンデミック発生時のストレスシナリオとして各社が考えていたものよりも、はるかに複合的であり、かつ、継続的と言えるのではないでしょうか。
多額の事業中断リスク等を補償として引き受けていれば別ですが、生損保ともに保険金等の支払いで苦しむような事態はおそらくなさそうです(ただし、金融市場変動の影響により損失を被るおそれは多々あります)。

もっとも、ここまではいわば想定どおりですが、新型コロナの流行は世界的に広がっていて、事業を各地に分散していても逃げ場がありません。しかも、流行が収まるまで一定の時間がかかり、その間は役職員や保険代理店の行動が制約されるうえ、そもそも社会全体で行動が抑えられてしまいました。
今になって思えば、そこまで想定したストレスシナリオが必要だったということになりますね。リスク管理は奥が深いです。

※学生が全くいないキャンパスです
 (許可を得て入構しています)

 

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日本の保険会社はどこで資本を使っているか

inswatch Vol.1023(2020.3.9)に寄稿した記事をご紹介します。
金融市場の混乱で株安、円高、金利低下となっているので、まさにリスクテイクが裏目に出ている状況で決算期末を迎えそうです。
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経営リスクの数値化

保険会社のリスクマネジメント手法の1つに、経営リスクを数値で示し、自己資本等と対比するというものがあります。
保険会社の抱える経営リスクのすべてを数値化することはできないにしても、保険引受に伴うリスクや株価下落に伴うリスクなど、主要なリスクカテゴリーに関しては、リスクを1年間に一定の確率で発生しうる損失額として数値(金額)で示す実務が普及しています。
これらを自己資本等と対比することで、経営として抱えているリスクが経営体力の範囲内に収まっているかどうかを確認できます。

資本の活用

同じ話を資本の出し手(株式会社の株主や相互会社の社員)から見るとどうなるでしょうか。
資本の出し手が保険会社に出資しているのは、保険会社の経営者がリスクを引き受けることでリターンを上げ、そこからの還元を受けるためです。リスクを引き受けるとは、すなわち資本を使うということ。だからこそ、リスクのことを「所要資本」とも言います。資本の出し手としては、出資した資本を有効に使ってもらいたいので、保険会社が実際にどこでどれだけ資本を使っているかは重要な情報です。
多くの上場保険グループが内部管理として計測したリスクと自己資本等を公表しているのは、このような背景があります。

どこで資本を使っているか

昨年12月に金融庁が公表した資料「2019年フィールドテストの結果概要」の7、8ページに、金融庁が指定した手法により計測した保険会社の経営リスク(所要資本)の内訳が載っています。
有識者会議の資料(PDF)

<生命保険会社(単体ベース:41社計)>
・保険リスク 34%(解約・失効リスクが最も大きい)
・市場リスク 54%(株式、金利、為替のリスクが大きい)

<損害保険会社(単体ベース:51社計)>
・保険リスク 36%(巨大災害リスクが最も大きい)
・市場リスク 58%(株式リスクが大きい)

いかがでしょうか。PDFファイルで元の図表をご覧いただいたほうが、より明らかなのですが、日本の保険会社は保険引受に伴うリスクよりも、市場リスク、つまり金融市場の変動に伴うリスクのほうがずっと大きいことがわかります。保険会社なのに不思議に思えますよね。

資本の使い方は適切なのか

資金の出し手からすると、保険会社の経営者は資本をいわば「本業」である保険引き受けではなく、主に資産運用でリターンを上げるために使っているという現状をどう考えるかということになります。
もし、日本の保険会社が資産運用に強みを持ち、中長期的に高いリターンを上げることが期待できるというのであれば、適切な資本の使い方をしていると言えるでしょう。ただ、過去のトラックレコードからすると、必ずしも結果が出ていないようにも見えます。
保険会社の経営者は今の資本の使い方について、資本の出し手が納得できるような説明をする必要があります。相互会社であれば、説明の相手は契約者です。
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※写真は早稲田大学です。授業開始は4月20日以降だそうです。

 

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格付情報の活用

かつての生保危機の時代に比べると、保険会社の格付が注目されることは少なくなりました。
それでも格付会社の出す情報は、ディスクロージャー誌やIR資料とともに、保険会社の経営内容をつかむうえで貴重な情報源です。

格付会社の出す情報は格付符号だけではありません。例えば私が以前所属していた格付投資情報センター(R&I)の場合、原則として1年に1回は格付を見直し、格付に変化がなくてもコメントを発表しています。
R&Iのサイトへ

R&Iは2月21日に大手生保グループ4社(日本、第一、住友、明治安田)の格付を維持したと公表しました。
4社ともAAゾーンという高い格付ですが、リスク耐久力に対する次のような共通したコメントに注目しました。

「2019年度はグローバルに金利低下が進行し、ALM(資産・負債の総合管理)リスクが大きい大手生保の経営への逆風は強まっている。国内の超長期金利は8月から9月にかけて2016年6月末以来の水準まで切り下がり、〇〇生命グループの経済価値ベースのリスク耐久力は格付対比で見劣りする状態まで悪化したとR&Iでは考えている」

その後、金利が若干ながら持ち直し、リスク耐久力もやや回復したため、現時点で格付の見直しを行わなかったということですが、R&Iは金利の影響をかなり気にしていることがうかがえます。

公表文を細かく見ると、リスク耐久力の評価に違いがあることも見えてきます。

<日本生命グループ(AA)>
「資産運用リスクの削減に取り組んでいるものの、収益確保の観点から大幅な削減は進められていない。株式リスクも大きく、リスク耐久力は金融・資本市場の変動の影響を受けやすいことからAAゾーン下位と評価している」

<第一生命グループ(AA-)>
「(自己資本の拡充やリスクコントロールなど)これらを勘案すればグループのリスク耐久力はAAゾーンに見合う水準を維持できるとみている」

<住友生命グループ(AA-)>
「(前略)株式など価格変動リスクの保有は大手生保の中でも低く、ALMリスクをコントロールしている。グループのリスク耐久力の安定性は相対的に高く、格付に見合う水準を維持できるとR&Iはみている」

<明治安田生命(AA-)>
「資本の充実度を背景にリスクを取って利回り確保に取り組んでおり、株式リスクなど資産運用リスクの削減はあまり進んでいない。経済価値ベースでみると金利低下の影響が上回り、EV(エンベディッド・バリュー)は減少傾向にある。リスク耐久力はAAゾーン下位と評価している」

保険会社の格付情報がメディアで取り上げられることは滅多にありませんが、生保の経営内容に関心のあるかたは、時々格付会社のサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか
(ただし、S&Pとムーディーズは無料で得られる情報は限定されています)。

※エール交換だそうです

 

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