06. リスク管理関連

東京医大の第三者報告書

年末に公表された東京医科大学の第三者委員会「第二次調査報告書」「第三次調査報告書(最終報告書)」を読んでみました
(ちなみに、年明けに文部科学省が再調査を指導したとのことで、これが「最終」ではなくなりました)。
東京医科大学のサイトへ

これまでに判明していた「属性調整(=女子および多浪生に不利な扱い)」「個別調整(=特定者に対して加点)」に加え、第三次調査報告書には、「医学科入試において問題漏洩が行われた疑いがある」「個別調整と東京医大への寄付金との間には、何らかの関連性があった可能性がある」「入試に関する依頼(仲介の依頼を含む)と、依頼を受けた者に対する謝礼との間には、何らかの関連性があった可能性がある」と、さらなる疑惑を提示しています。
さらに、看護学科の入試では、国会議員の依頼を受け、試験結果の上位29人を飛び越えて補欠者となり、最終的に合格となった事例を明らかにしました。

医学部人気のなかで、今回の件が東京医科大学および附属病院の事業運営にどの程度のダメージとなるのかはわかりません。
しかし、世の中の人々が何となく存在するのではないかと思っていた「裏口入学」が本当に行われていたということで、社会に対する悪影響はかなり大きいのではないかと考えています。

※富士山が雲に隠れてしまいました。

 

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ミスコンダクトの原因

12月16日の夜に札幌の直営店アパマンショップ平岸駅前店が起こした爆発事故の影響で、運営会社の親会社APAMANの株価が大きく下がりました。
たまたまある研究会で「保険会社のコンダクトリスク」について議論したばかりだったので、保険会社ではありませんが、今回のミスコンダクトについて考えてみました
(コンダクトリスクについては、例えばこちらの11ページあたり(PDF)をご覧ください)。

直接の原因

なぜ爆発事故が起きたのかといえば、直接の原因はショップの従業員が店内で消臭スプレー缶約120 本の廃棄処理を行い、ガスが充満している状態で湯沸かし器を点火したためです。
APAMANのIRサイトへ

従業員が可燃性ガスの危険性を認識していれば、換気しない室内で消臭スプレーを一気に噴出するようなことはせず、爆発事故も起きなかったでしょう。
再発を防ぐには「従業員に可燃性ガスの危険性について教育する」「可燃性のないスプレーに切り替える」などの対応が考えられます。

しかし、「なぜ160本もの消臭スプレーがあり、このうち120本をなぜ一気に処分する必要があったのか?」を考えると、今回のミスコンダクトの原因はもっと根が深そうです。
ここからは報道等を参考に、あくまで仮定のモデルケースとして検討してみましょう。

ミスコンダクトの真の原因は

運営会社の社長によると、2日後に店舗の改装があり、荷物整理の一環としてスプレーの在庫処分をしたとのこと。なぜこれだけの在庫があったのでしょうか。

まず、本来は時間をかけて行うべき消臭サービスをショップがきちんと実施していなかったことが考えられます。社長は会見で「(消臭)サービスを実施していなかったことが一因」と話したそうです。
2018年9月期(APAMANは9月決算)のIR資料(PDF)を見ると、1年前に比べ、賃貸管理戸数が急増したことがわかります(前期比+26%)。過去最大級の増加だそうです。個別店舗の状況まではわかりませんが、現場では業務が回っておらず、消臭サービスを実施する時間を節約したかったのかもしれません。
そうだとすると、本部が適切なリソースを投入せずに賃貸管理の獲得に走ってしまったことが、在庫発生の原因と言えるでしょう。

構造的に在庫が積み上がるようになっていたことも考えられます。
同じIR資料には、付帯・関連サービスの粗利が増えたとあり、ここには除菌消臭剤も含まれています。本部は付帯商品や関連サービスの拡大を推進しているそうです。
その結果、現場には消臭サービスを付帯するプレッシャーが強くかかり、やむをえず消化しきれないほどのスプレーを抱えることになってしまう。実のところ、本部の知らないうちに、このような状況が全国で蔓延していた…(あくまで想像です)。
そうだとすると、ビジネスモデルそのものに問題がある、あるいは、収益至上主義といった企業文化の問題ということも考えられます。

ダメージは大きい

リスクの特定が難しい「コンダクトリスク」ですが、事が起きてしまうとダメージは非常に大きいです。
APAMANの時価総額はわずか数日で162億円(14日終値ベース)から128億円(同21日)へと一気に減ってしまいました。コンダクトリスクの恐ろしさを改めて感じます。

※写真は横浜・みなとみらい地区のイルミネーションです。

 

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「経済学者たちの日米開戦」

前回ブログ(書評)の続きです。
本書「経済学者たちの日米開戦」は、経済思想史の研究者である牧野邦昭さんが、主に昭和15~17年(1940~42年)にかけて活動した陸軍の頭脳集団「秋丸機関」の実像を描いたもので、研究を通じて「なぜ日本の指導者たちは、正確な情報に接する機会があったのに、アメリカ、イギリスと戦争することを選んでしまったのか」を考察しています。いわば失敗の本質を探ろうとしたものです。

秋丸機関に関しては、「経済学者が対米戦の無謀さを指摘したにもかかわらず、陸軍はそれを無視して開戦に踏み切ってしまった」というのが通説となっているそうですが、牧野先生はこれを否定しています。
むしろ「専門的な分析をするまでもなく正確な情報は誰もが知っていたのに、極めてリスクの高い『開戦』という選択が行われた」と考えるべきであり、本書では行動経済学や社会心理学を用いて、リスクの高い選択が行われた理由を探っています。
次の2つの選択肢しかない状態のなかで、経済学者は何をすべきだったのかという記述もあり、非常に興味深く読むことができました。

・アメリカの資金凍結・石油禁輸措置により、2、3年後には確実に「ジリ貧」となり、戦わずして屈服する
・アメリカと戦えば、非常に高い確率で致命的な敗北を招く(ドカ貧)。しかし、非常に低い確率で、かつ、他力本願だが、開戦前の国力を維持できるシナリオがある

そもそも、この2つしか選択肢がない状態になってしまうと、指導者は後者を選びがちというのは、会社経営でも同じかもしれません。確かに、経営が悪化した保険会社が一か八かのリスクテイクを行い、かえって傷口を広げてしまったという事例もありました。
こうした状況になる前に手を打つことが重要なのでしょうね。

※大倉山公園に行ったら、見慣れない赤い木(紅葉?)がいくつもありました。

 

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公文書の書き換え

国立国会図書館では「調査と情報-Issue Brief-」という、時々の国政上の課題に関する簡潔な解説レポートを出しています。
2月27日号はタイムリーなことに「行政機関における文書管理-国の説明責務に係る論点と改善方策-」で、行政の文書管理制度がどのように変遷してきたかをわかりやすくまとめていました。

本稿によると、日本で国民共有の知的資源としての公文書管理制度が確立したのはつい最近のことだとわかります。久しく行政運営の能率化という内部目的のために行われてきた公文書管理に、情報公開制度の整備が進むなかで、ようやく2011年に「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)」が施行され、「国の活動を現在および将来の国民に説明する責務を全うすること」という目的が加わりました。

しかも、2016年に総務省が実施した「公文書管理に関する行政評価・監視結果報告書」では、公文書管理法の趣旨および公文書管理法に基づくルールについて、文書管理者を含む職員に十分徹底されていない状況にあるという指摘がなされているとわかりました。
本稿ではこうした状況を踏まえ、行政機関内部による改善と、外部の関与による改善を示しています。

今回の件で、公文書(決裁文書)の書き換えが起こりうるとわかってしまった以上、政府はかなりの取り組みをしなければ国民の信頼回復はできません。また、国民も忘れずに追求し続ける必要があります。

記録を残すことも促してほしい

おそらく今後、原因究明を進めるとともに、再発防止策が検討されるでしょう。その際、書き換えが起こらない仕組みを作るだけではなく、ぜひ文書主義の原則を徹底し、個人メモではなく行政文書として記録を残すことを促すような仕組みも作ってほしいと思います。

行政のみならず、日本では文書として記録を残す、あるいは、業務などを文書化するという習慣や文化が総じて薄く、議事録が残らないところで実質的な経営判断が行われていたり、担当者が変わると業務のやり方が大きく変わってしまったりしがちです。
しかし、家業であればまだしも、政府や大会社といった組織において、納税者や株主、債権者、従業員といったステークホルダーから透明性を求められるのは当然の話であって、「内輪の話は外に出さない」では済みません。

そもそも記録に残すのは意思決定を明快に行うためでもありますし、後世の歴史家だけでなく、今の自分たちに役立つ話でもあります。
なぜ記録を残すのか

決裁文書の書き換え発覚という前代未聞の事件を受けて、行政がかえって記録を残さなくなり、透明性が後退してしまうのであれば、文書管理制度を整備してきたこれまでの取り組みが無駄になりかねません。
表面的な書き換えや紛失の防止だけでなく、ぜひ「記録を残す」ことにも配慮した改革に期待したいです。

※小田急の複々線化がついに完成しましたね。いつか赤いロマンスカー(GSE)にも乗ってみたいです。

 

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亀田製菓の調査報告書

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米菓で有名な亀田製菓のタイにある子会社が、利益を水増しする不正な会計処理を行っていた問題について、独立調査委員会が報告書を発表しました。海外進出先での事件ということで、さっそく読んでみました。
亀田製菓のサイトへ

同じ海外子会社絡みでも、以前ブログでご紹介した富士フイルムグループ(富士ゼロックス)の海外販売子会社による不正会計問題は、グローバル企業グループのなかで、重要な子会社であるがゆえにグループ統治が効かなかったという話でした。
これに対し、亀田製菓の海外事業は連結売上高の1割程度にすぎません(営業利益は赤字基調)。そのなかでもタイ子会社の事業規模は小さく、あまり重要視していなかったからこそ今回の件が生じたようでして、これはこれで参考になりそうです。

不正会計の中身は、現地の経理部長(タイ人)が棚卸資産を実態よりも過大計上することで、利益を水増しする会計処理を行っていたというもの。そのような処理を何年間も続けることができたのは、そもそも棚卸資産の確認作業と会計帳簿がつながっておらず、業務管理システムからも切り離されており、棚卸資産の会計処理を当該経理部長だけが担っていたことが大きいようです。
報告書では、本社の海外事業部や監査部によるモニタリングが不十分だったことや、日本から赴任したマネジメントの意識・執行能力の低さなども指摘しています。

では、この経理部長がなぜ不正会計に手を染めたのかというと、それがよくわからないのですね。調査委員会では、動機として特異としながらも、「自らの職を失わないようにするという個人的な利害に基づくもの」とまとめています。
というのも、経理部長はあくまで経理担当者にすぎず、予算達成を命じられていたわけではないのですね。マネジメントからの指示をほのめかす発言もあったようですが、調査委員会は聞き取り調査のほか、デジタル・フォレンジック(メールなど削除したデータを復元)を行い、そのような指示の存在を概ね否定しています。

ちなみに、本人に聞いてもらちが明かなかったようで、報告書の34ページあたりに詳しい記載があります。読んでいて思わず笑ってしまいましたが、これこそ東南アジアに進出した日本企業が直面するアジアのリスクかもしれません。

海外事業部と内部監査に関する次のような指摘も参考になると思います
(65~66ページ)。

「海外事業部長の専門はマーケティングであり、また、その他の海外事業部員も営業やマーケティングの出身者が多い(中略)特に、損益計算書に対する関心は高い一方で、貸借対照表に対する意識は極めて希薄であった」

「往査を担当する監査部員が基本的に性善説的な視点に立っていたきらいがあり、十分な懐疑心をもって往査に臨む姿勢が不足していた」「タイ国における現地事情(現実的な対応の困難さ)に遠慮し過ぎるあまり、監査が本来発揮するべき批判的な検討の意識を十分に発揮することができなかった」

特に後者については、私たちは「日本(あるいは先進国)であれば当然のことであり、普段意識もしていない」という多くの前提のもとに、マネジメントを行っているのだと痛感します。新興国では先進国とは違ったマネジメント意識が必要なのでしょうね。

※1987年の国鉄民営化まで新橋(汐留)と築地市場を結ぶ貨物線があり、この踏切は当時のものだそうです。

 

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富士フイルムの調査報告書

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富士フイルムホールディングスのグループ会社
(子会社の富士ゼロックスの海外販売子会社)で
発覚した不正会計問題に関する第三者委員会の
報告書をざっと読んでみました。
富士フイルムホールディングスのサイトへ

報道されているような、売上達成のプレッシャー
(「もう一丁(1兆)やるぞ!!」という表現など)は
確かに重要な問題点なのかもしれませんが、
私は改めてグループ統治の難しさを感じました。

報告書では、富士ゼロックスによる海外子会社
管理の失敗と、子会社化した富士ゼロックスの
持株会社による管理失敗という、2つの意味で
グループ統治の失敗が示されています。

富士ゼロックスは1962年に富士写真フイルムと
英国ゼロックスの合弁会社としてスタートし、
その後、2001年に富士フイルムが出資比率を
75%に引き上げ、子会社化しました。

それから15年以上たっても、富士ゼロックスの
独立性は強く、例えば、グループの承認規程が
富士ゼロックスには適用されていなかったり、
持株会社が富士ゼロックスの重要な情報を
取得するのが困難だったりと、富士フイルム
グループのガバナンスには相当な問題が
あったことが報告書で示されています。

次のような記述も見られます。

・富士ゼロックスからの人事提案がそのまま
 受け入れられるような実態

・持株会社の監査部の役割は富士フイルムの
 監査が中心で、富士ゼロックスの監査は
 富士ゼロックスの監査部に任せていた

・スタッフレベルにおいて、技術部門以外の
 人事交流はほとんど見られない

他方、報告書には富士ゼロックスについても、

「(不正会計の舞台となった海外子会社を)
 買収してから既に25年以上が経過しているので
 あるから、現地ビジネスへの悪影響を抑えつつ
 富士ゼロックスによる子会社管理を実効あらし
 めるような、何らかの施策が実施されていても
 良い時期に来ていたとはいえるであろう」

と、富士ゼロックスによる海外販売子会社の
管理体制や事業体制の不備も本件における
大きな原因の一つと指摘しています。

海外保険会社の買収により、急速に事業や
地域の多角化を進めつつある保険業界にも、
本件は大変参考になりそうです。

※写真は横浜・みなとみらい地区です。
 雨が降り出す直前でした。

 

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金利低下と退職給付債務

 

熊本地震の被害が広がっており、心が痛みます。
日本は地震の巣なのだと改めて思い知らされました。

ところで、週刊ダイヤモンドの保険特集号が出たようです。
私もマイナス金利政策下での生保経営について
寄稿していますので、機会がありましたらご覧ください。

マイナス金利政策による生保経営への影響といえば、
「保険料の値上げや販売停止」もさることながら、
「超長期の保障提供が難しくなった」、言い換えれば、
「生保のバランスシートが実質的に毀損している」と、
いくつかの媒体でコメントしてきました。

同じような話が、企業の財務を圧迫する要因として
表面化しつつあります。
それは企業の年金・退職金に関するものです。

大和ハウス工業が退職給付債務の割引率変更に
伴う影響額を特別損失として計上する見込みとなり、
2016年3月期決算の業績予想を下方修正しました
13日公表)。

同社は金利市場の動向を受け、主な割引率を
前年の1.7%から0.8%に引き下げたそうです。
この結果、退職給付債務が849億円増えることと
なりました。

14日の日経によると、同社は期間20~30年程度の
超長期債券を基準に割引率を決めているとのこと。

11日にはLIXILグループも業績予想の修正を公表し、
そのなかで国内子会社の退職給付債務に関して
金利低下に伴い損失が発生すると示しています。

12日の日経によると、同社は20年国債利回りなどを
参考に割引率を決めており、前年の1.6%から下げた
ことで、約100億円の営業損失が発生した模様です。

この2社は、前年の割引率がやや高かったうえ、
債務の増加分(正確には「数理計算上の差異」)を
発生時に一括償却する会計処理を採用しているため、
決算への影響が大きくなっています。

数理計算上の差異を数年かけて処理する会社では
決算への影響はそこまで大きく出ないとは思いますが、
金利低下で退職給付債務が膨らむ点は同じなので、
あとは会計処理が異なるだけです。

生保の保険負債も、企業の退職給付債務も、
将来の支払いに備えた準備という点は共通なので、
会計への影響は区々とはいえ、金利水準が下がると、
現時点で認識すべき債務が増えてしまうことが
おわかりいただけるのではないかと思います。

※軽井沢の万平ホテルです。宿泊は初めてでした。

 

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リスクアペタイトの開示

 

いただいたコメントに、「メガバンク(MUFGとみずほ)の
統合報告書(=ディスクロージャー誌)が公表され、
リスク管理に関する情報が充実した」とあったので、
主にリスクアペタイトに関する記述を見てみました。

メガバンクはG-SIBsに指定されていることもあり、
このところ定性面、定量面ともにリスク関連情報の
開示が増えています。

今回はみずほがリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)の
導入目的や運営体制、リスクアペタイト策定イメージなどを
2ページにわたり掲載しました。
みずほフィナンシャルグループのサイトへ

もっとも、6月のIR説明会資料では、取締役会の課題に
「RAFの完全構築」が挙がっていましたので、
経営で活用・定着するのはこれからなのかもしれません。

他方、MUFGはリスク管理の全体像を示すなかで、
RAFの導入について説明しています。
リスクアペタイトの設定・管理プロセスの説明は
なかなか具体的で参考になりそうです。
MUFGのリスク関連情報リンク一覧へ

ただし、両社ともリスクアペタイトの具体的な内容を
残念ながらほとんど示していません。

保険業界では、東京海上やSOMPOグループのように
グループ全体レベルのリスクアペタイト(東京海上)や、
グループ・リスク選好の原則(SOMPO)を公表している
ところも見られます。

これらは会社と投資家が建設的な対話をするための
手掛かりとして有益な情報ではないでしょうか。
もちろん、リスクアペタイトに基づいた経営が
実現できていることが前提となりますね。

※写真のひまわり畑は女満別空港のすぐ横にありました。

 

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福井地裁判決と保険リスク

 

福井地裁の交通事故判決が話題となりました。

「もらい事故で損害賠償義務?」ということで
判決を疑問視する声が多かったようですが、
公表された判決文原告代理人の説明を見ると、
判決がおかしいと言い切るのも難しそうです。

センターラインを越えて走ってきた車の任意保険は
家族限定だったのに、家族以外の人が運転していたとか。
これは気を付けたいですね。

ところで、福井地裁判決とは直接の関係はないのですが、
リスク管理の世界では、「経済情勢や保険事故の発生率等が
保険料設定時の予測に反して変動することにより、保険会社が
損失を被るリスク」を「保険引受リスク」としています
(上記定義は金融庁の保険検査マニュアルを引用)。

そして保険会社では、何らかの手法を用いることで
この保険引受リスクを定量評価するのが一般的です。

また、健全性指標であるソルベンシー・マージン基準では、
当年度保険料×リスク係数、または、平均保険金×リスク係数
のいずれか大きい額を一般保険リスク相当額としています。

こうして計算した数値をリスク管理部門がモニタリングすれば
保険引受リスクを管理したことになるのでしょうか。

例えば、交通事故の発生率が予測に反して変動する要因は、
景気の変動もあるでしょうし、ドライバーの年齢構成の変化、
交通法規の変化、異常気象の発生、保険会社の引受姿勢など
いろいろ考えられます。

これらのなかには営業・SCの現場でなければ
なかなか変化の兆しに気が付かないものもあるでしょう。

「リスクはリスク管理部門が管理するもの」という考えが
間違いであることがわかります。

※写真は小田急ロマンスカーです。

 

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「すき家」の調査報告書

 

ゼンショーHDが運営する牛丼チェーン「すき家」の
労働環境改善に向けた第三者委員会報告書が
公表されました。

8/1の各紙で報道されたとはいえ、せっかくなので、
現物をご覧いただくことをお勧めします。
ゼンショーHPへ

会社が自ら設置した第三者委員会ではありますが、
「とりわけ厳しい久保利先生にあえてお任せした」
(ゼンショーHDの小川CEO)とのことで、
総じて会社は協力的な姿勢だったようです。

報告書では、現場の生々しい労働実態のほか、
各種委員会(リスク管理委員会など)が全く機能せず、
内部監査部による指摘もCEOを動かすことはなく、
幹部が過重労働問題を認識しつつも、全社的な検討・
対応がなされなかったとしています。

そして、根本的な原因として、

・経営幹部の危機意識の欠如
・過重労働(法令違反)を是正する仕組みの不全
・経営幹部に共通する意識・行動パターン
 *顧客満足のみにとらわれた思考・行動パターン
 *自己の成功体験にとらわれた思考・行動パターン
 *数値に基づく収益追求と精神論に基づく労働力投入 など

を挙げています。

ゼンショーグループは創業者であり実質的な大株主でもある
小川CEOの会社であり、要はカリスマCEOがグループを
外食日本一に導く一方、現場に深刻な問題があっても、
誰もCEOと対等に議論することがなかったのでしょう。

会社の内面に迫る優れた報告書だとは思うものの、
一読した限りでは、アナリスト的な視点といいますか、
いわゆる経営分析がほとんど行われていないようです。

「『外食世界一を目指す小川CEOの下に、その志の実現に
 参加したいという強い意志を持った部下が結集し、
 昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が
 経営幹部になる』というビジネスモデルが、その限界に達し、
 壁にぶつかったものということができる」(報告書より)

内的要因としてはそうかもしれませんが、果たして
それだけなのでしょうか。

日本格付研究所によると、すき家の既存店売上高は、
ブームの反動もあり、2011年9月からマイナス基調となり、
2014/3期の既存店売上高も前年割れでした。
増収は新規出店によるものです。
この価格帯の外食産業の競争環境は熾烈と聞きます。

加えて、原材料価格の上昇などにより原価率が上がり、
収益を圧迫していることがわかります。

他方、有利子負債の一部には、2期連続の経常損失を
トリガーとする財務制限条項が付いているようです。
これがどの程度重要な話なのかはわかりませんが、
同社が有利子負債を活用した積極経営であることは確かです。

格付レポートや有価証券報告書をざっと眺めただけでも、
ここ数年のゼンショーHDの経営状況が厳しくなっていたと
うかがえるのですが、メンバーが弁護士中心だとしても、
このような視点からの分析も必要なように感じました。

※京橋の交差点が様変わりしていて驚きました。

 

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