04. 保険商品、チャネル

二重構造とダブルスタンダード

今回は執筆のご案内です。金融業界ではよく知られている専門誌『週刊金融財政事情』の2026年11月3日号の特集は「望まれる保険代理店像」でして、

・金融庁の三浦参事官(保険担当)のインタビュー記事
・篠原孝典弁護士による「新しい比較推奨販売体制の定着に必要な保険会社と代理店の対応」
・編集部による「健全な競争環境を築くための実行フェーズに移る保険代理店改革」

とともに、私の寄稿した「制度整備に向けた保険流通改革の進展と乗り越えるべき課題」が掲載されています。きんざいで保険の特集記事が載るのは久しぶりではないでしょうか。きんざいOnlineの会員になると記事ごとの購入もできるようです。

私の論考は、保険会社の経営がどう変わるかという観点で書いたものです。これから本格化する取り組みも多いなかで、今後注目すべきは保険会社と代理店の「二重構造問題」と、代理店政策の「ダブルスタンダード」を解消できるかどうかと述べています。
保険ジャーナリストの中崎章夫さんはチャネルごとのダブルスタンダードを以前から問題視した発信をされていました(私も3年前の日経・経済教室「曲がり角の損保経営」などでダブルスタンダードについて触れています)が、総じて「二重構造問題」に比べると、このような言い方ではあまり語られてこなかったように思います。
とはいえ、今後は自動車ディーラーや整備工場、企業内代理店、金融機関など特定チャネルの優遇はできなくなるはずで、特定チャネルに向けたマーケティング戦略はありうるとしても、保険業務の専門性に欠けたままの代理店には市場から退場していただく。もちろん、はじめに解除ありきの対応は乱暴ですが、金融庁と国土交通省が10月13日に連名で出した「損害保険業界の信頼回復に向けた取組の適切な運用について(要請)」を踏まえても、大きな流れを変えるべきではありません。

なお、個人的にはこの文書の「二輪車販売店や整備工場等の保険代理店は、無保険車対策や利用者の負担軽減に寄与しており、重要な役割を果たしております。このような代理店の減少は、自賠責保険を始め、顧客が適切な保険サービスを受ける機会の喪失にもつながりかねません」というところには強い違和感を覚えました。小型バイクには車検がないので、無保険車が発生しやすいところを、二輪車販売店や整備工場が自賠責の更新を促しているということかと思いますが、代理店の業務品質向上とバイクの無保険車対策は別の話ですよね。

※写真は夜の大濠公園です。

 

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募体三計画

この週末は福岡大学で日本金融学会の秋季大会があり、多くの会員にお越しいただきました。運営に関わった皆さま、お疲れさまでした。

さて、プルデンシャル生命の件で、日経新聞が「プルデンシャル詐取 不正の構造」という特集を組み、3回目の「プルデンシャル不正、業界がおびえる『ボタイサン』 大蔵省支配の記憶再び(会員限定)」に私のコメントが載りました(紙媒体では10/16の朝刊)。

「厳選採用していた初期のプルデンシャルは営業社員の定着率も高かったが、足元では国内生保との差はなくなった」

念のためデータを確認しておきましょう。営業職員の定着率(例えば新規登録から25月目の在籍率や育成率のようなデータ)は公表されていませんが、ディスクロージャー誌に載っている期末在籍数の推移と採用数から「退職数」を推計すると、例えば2000年代の退職率(前期末の在籍数と比べた当期退職数の割合)は、大手生保が40%前後だったのに対し、プルデンシャル生命は10%を下回っていました。その後、大手生保は大量採用・大量脱落のターンオーバー構造の是正に取り組み、近年の退職率は13~15%まで下がっているのに対し、プルデンシャル生命では11~12%と、大手生保とそれほど変わらない水準です。
参考までに、ソニー生命の退職率は低く、5~7%となっています。

新聞では、かつての旧大蔵省が生命保険会社に策定を求めた「募集体制に関する整備改善三カ年計画(募体三計画)」について触れ、基幹職員の育成や契約継続率の改善を目指したことが書いてありました。十分な教育や訓練を受けていない営業職員が販売した契約は、その職員が退職すると解約・失効につながりやすいという問題意識から、1976年に開始したもので、88年に「募集体制整備改善自主計画(募体自主計画)」へと名前を変えて、少なくとも90年代半ばまで続きました。
ただし、手元にある『図説 日本の生命保険』(平成6年版)によると、募体三計画について「一定の成果を達成することができた」とあるものの、例えば1990年度の新規登録職員の13月目在籍率は47.6%、25月目は27.0%。つまり、採用した職員のうち、1年後に残っているのは約半数、2年後には1/4強しか残っていないという状況でした。25月目の継続率も8割程度で、契約後わずか2年で2割の契約が解約などにより消えていました。
大手生保の営業職員の在籍率や契約継続率が改善したのは、募体三計画や募体自主計画が効果を上げたというよりは、2000年前後の経営危機の時代を経て、各社が新契約に過度に偏重した営業を改め、既契約を重視するようになったことが大きいとみています。

それにしても「ボタイサン」「ボタイジ」なんて言葉を見たのは何年ぶりでしょうか。

 

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企業内代理店の規制見直し

10月1日開催の金融審議会・保険制度ワーキンググループのメンバーに、私のゼミも参加している全国学生保険学ゼミナール(RIS)の先生方が3名(早大の中出先生、明大の中林先生、慶大の柳瀬先生)も入っていて、なんとなくうれしく思いました。
単に「保険の調達が難しくなっている ⇒ 再保険キャプティブを使いやすくする」というのではなく、企業のリスクマネジメント意識と能力を高めるような取り組みになるといいですね。

企業のリスクマネジメントと言えば、2024年6月の有識者会議報告書および12月の金融審WG報告書の公表からかなりの時間がたったものの、この9月に金融庁が企業内代理店に関する規制を再構築する案を公表しました。
企業内代理店を、「その立場の不明確さが独禁法抵触リスクを高める一つの要因となるおそれがあるほか、保険募集に係る実務能力が不十分であったとしても、グループ企業等の保険契約を取扱うことで損害保険会社から一定の手数料収入が得られ、保険代理店として存続できている実態や、当該手数料が保険料の実質的な割引になっているおそれがあることが判明」としたうえで、特定契約の「特定者」の範囲を広げるとともに、対象種目を限定していた「経過措置」を撤廃する案を打ち出しました。

注目していた「適用除外(=特定契約取扱代理店に該当しない代理店)」について、この案では「保険料の実質的な割引・割戻しが生じない態勢が構築されていること(=手数料適正化要件)」と「損害保険代理店として十分な実務能力を有し、親会社等からの自立が図られていること(=態勢整備要件)」を満たす必要があります。判断するのは代申会社です。
後者だけではなく、前者が置かれたことで、実務上のハードルが高まったと言えそうです。例えば代理店は所属保険会社に対し、保険代理業にかかる原価のみを分離して報告する必要がありますし、原則として原価を上回る手数料を受け取ることができなくなります(つまり、特定契約では利益が出ないと読めそうです)。

適用除外を設けるのは、「全ての企業内代理店に対して特定契約比率規制を画一的に適用すると、例えば、専門的な知見を有する企業内代理店による保険募集を通じたグループ企業のビジネスへの貢献が、現行と比較して著しく制限されるなど、企業向け保険市場における募集実務に一定の悪影響が及ぶおそれがある」「企業内代理店の中には一定の実務能力を有し、企業にとってなくてはならない保険リスクマネジメント分野に貢献している等の保険代理店もあることが判明」(いずれも金融審WG報告書より引用)との理由からです。
しかし、「グループ企業のビジネスへの貢献」「保険リスクマネジメント分野への貢献」への対価を負担すべきは保険会社ではなく、当該企業のはず。そもそものところに無理があるのでしょう。

パブコメの締切は10月13日です。どのようなコメントが出てきて、金融庁はこれらにどう回答するのでしょうか。

※浦和うなこちゃんに会ってきました。

 

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代理店数の減少

金曜日にインシュアテック企業主催のセミナーに参加し、保険の比較推奨販売の制度改正(いわゆるハ方式の廃止)について話を聞く機会がありました。
2028年3月以降、乗合代理店は保険商品を代理店の都合で絞り込み、顧客に勧めることができなくなります。過度な便宜供与の禁止など、すでに実施された制度改正とあわせ、兼業(副業)代理店や企業内代理店も保険販売業として存在する価値があるのかどうかが問われることになります(もちろん専業代理店や営業職員もです)。

ところで、日本損害保険協会が先月公表した2025年度損害保険代理店統計(PDF)を改めて確認してみました。
2025年度末の損害保険代理店数は124,024店で、1年間で11.5%減、16,114店も減り、この10年間で最も大きい減少率・減少数となりました。新設数が3,149店と10年前の1/4まで落ち込む一方、廃止数は19,263店と高水準でした。

減少した16,114店のうち、兼業(副業)代理店が14,062店を占めています(前期比▲12.2%)。ただし、扱い保険料の伸びは専業も兼業もあまり変わらないので、規模が小さく、保険販売の実績が乏しい兼業代理店が多数廃止になったと考えられます。ちなみに専業代理店は前期比▲8.4%、2,052店の減少でした。
チャネル属性別に見ると、店数ベースで全体の5割以上を占める自動車関連業(自動車販売店、自動車整備工場)の減少が8,378店と数の上では大きく(前期比では▲10.7%)、不動産業の減少も目立ちました(同▲18.3%、2,251店)。

他方、専属・乗合別では、専属代理店は前期比▲10.9%で11,659店の減少。乗合代理店は同▲13.5%で4,455店の減少です。減少率は乗合のほうが大きいものの、扱い保険料は専属よりも乗合のほうが伸びています(専属は▲0.9%、乗合は+6.3%)。
少なくとも現時点では制度改正をにらんで乗合をやめ、専属化する動きが進んでいるようには見えません。むしろ専属代理店は乗合代理店に比べると、集約が進んでいないということなのかもしれません。

制度改正を受けて、兼業代理店の減少が続くのか、あるいは専業・兼業を問わず代理店数が減っていくのかなど、今後の動きに注目しています。

※写真は東京駅です。

 

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生命保険の加入状況

大学のゼミの関係で、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」で生命保険の加入状況について確認する機会がありました。
生命保険の加入状況の調査といえば、同じく生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」が有名ですが、「生活保障に関する調査」でも個人ベースの加入状況を調査しています。いずれも3年おきの調査です。

例えば次のようなことがわかります。

【加入率】
・2025年の生命保険・生命共済の加入率(個人年金やグループ保険を除く)は80.0%で、この20年間は概ね横ばいで推移。
・いわゆる保障中核層にあたる30代男性、40代男性の加入率がいずれも低下傾向なのに対し、60代男性と60代女性の加入率が上昇傾向。

【2025年の加入状況・加入意向】
・払込保険料(一時払を除く生命保険・個人年金)は平均17.8万円で、一貫して減少傾向が続く。
・生命保険加入金額は996万円(男性1,439万円、女性661万円)で、一貫して減少傾向が続く。
・他方、必要と考える死亡保険金は30代男性が平均3,025万円、40代男性が2,728万円。
・死亡保障に対して「準備意向あり」は、30代男性が67.6%、40代男性が74.1%と意外に高い。

【直近加入契約の加入のきっかけ】
・30代男性、40段男性は「家族や友人などにすすめられて」「結婚をしたので」「子どもが誕生したので」などが上位。
・60代男性、70代男性、70代女性は「営業職員や窓口ですすめられて」がトップ。

【直近加入契約の加入チャネル】
・男女ともに「営業職員」がトップだが、30代男性と40代男性は「保険代理店」も多い。50代男性と60代男性は「営業職員」が回答の過半数。
・情報入手経路でも、50代男性と60代男性は約4割が「営業職員」と回答。
・今後の加入意向のあるチャネルは、50代男性と60代男性・女性は「営業職員」で、他の年代は「営業職員」「通信販売」「保険代理店」が拮抗。

以上、ざっとデータを眺めたところ、営業職員チャネルは30代や40代にうまくアクセスできておらず、チャネルとしての認知度も必ずしも高くはなく、結果として営業活動の中心が50代以上(おそらく既契約者が中心)となっているようです。だから一時払終身なのでしょう。
営業職員への回帰どころか、ビジネスモデルの機能不全が着実に進行しているのではないでしょうか。

※写真は築地市場に向かう貨物線の遺構です。

 

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大手損保グループの決算資料から

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1332(2026.6.15)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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自動車保険の契約台数が減少

5月下旬に公表された決算関連資料およびIR資料から、大手損保グループの主に自動車保険に関するデータを確認してみました。
まず、近年の料率引き上げを反映し、2025年度の大手4社(東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和、損保ジャパン)の収入保険料はいずれも高い伸びとなりました。ただし、前年度と違い、契約台数の落ち込みが目立ちます。損保ジャパンは微減にとどまったものの、他の3社は1~2%程度の減少で、ここまで減ったのは過去10年間で初めてです。

その一方で、東京海上ダイレクト(昨年10月にイーデザイン損保から商号を変更)と三井ダイレクト損保(来年4月に三井住友海上ダイレクト損保に商号変更予定)の収入保険料が急増しています。東京海上の場合にはブランド変更に伴う効果もありそうですが、物価上昇が続くなかで契約者の一部がダイレクト型損保に移っている可能性があります。
東京海上とMS&ADのIR資料からは、個人向けには従来よりもダイレクトチャネルで対応しようという姿がうかがえます。物価上昇で契約者が価格に敏感になっているというだけではなく、(そうは書いてありませんが)自立していない代理店の顧客にはダイレクト型への移行を促すなど、ポスト損保問題におけるチャネル戦略の一環として、グループ内のダイレクト型損保を再定義したのかもしれません。

収支改善は道半ば

ただし、これだけ料率を引き上げてきたにもかかわらず、自動車保険の損害率は高止まりしたままです。
ざっくりした収支動向をつかむため、EIベースの損害率(既経過保険料に対する発生損害額の割合)と事業費率を加算したコンバインドレシオを見ると、前年度よりも下がったとはいえ、25年度も東京海上日動を除く3社で100%超となりました。前年度は自然災害の影響もあったので、実質的にはほとんど下がっていないと言えます。支払保険金の約8割は車両保険と対物賠償責任保険なので、事故件数が横ばいのなかで、インフレによる修理費単価の上昇が続いている模様です。

手数料率の低下を見込む

他方で、事業費率は低下しました。自動車保険に限った事業費の内訳は公表されていないので、全社ベースとなってしまいますが、25年度は収入保険料に占める「諸手数料及び集金費(=大半が代理店手数料)」の割合が各社とも一段と下がりました。
3グループともに今後も事業費率の低下を見込んでおり、そのなかには代理店手数料率の低下も含まれています。IR資料によると、東京海上は「新たな業務分担&手数料体系で代理店手数料の総額は減少」、MS&ADは「品質を重視した手数料体系へのスムーズな移行により、手数料合計の削減を見込む」。SOMPOは「高リスクセグメント契約や長期契約に対する基準手数料の引き下げ等を通じ、リスク実態に見合った適正なコスト構造へ転換」とありました(一部記述を修正)。
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※写真は大村(長崎県)です。

 

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自賠責保険の料率引き上げ

メディアでも報じられた通り、4月30日開催の自動車損害賠償責任保険審議会での了承を受けて、11月1日から自賠責保険の基準料率が平均6.2%上昇することとなりました。内訳は純保険料率が1.9%の引き上げ、付加保険料率(社費と代理店手数料)が4.3%の引き上げです。
詳しくはこちら(損害保険料率算出機構のサイト)をご覧ください。

業界のかたには釈迦に説法かもしれませんが、同じ自動車保険でも、自賠責保険と任意保険では支払保険金の内訳が大きく異なります。
自賠責保険は対人賠償責任しかカバーしていないので、当然ながら支払保険金は自動車事故による死亡や後遺障害、傷害への賠償責任に限られます。これに対し、任意保険では支払保険金の約8割を車両保険と対物賠償責任が占めています。両者の保険金の大半は修理費なので、近年の物価上昇の影響を強く受けていることがわかります。

では、物価上昇の影響を受けにくいはずの自賠責保険の料率がなぜ上げるのかというと、付加保険料部分(主に物件費)が物価上昇の影響を受けているのと、料率引き下げに活用してきた滞留資金の残高調整が必要になったためだそうです。自賠責保険はノーロス・ノープロフィットの原則で運営されていて、社費部分も当てはまります。

ちなみに、2020年の民法(債権法)で法定利率が年5%から3%に下がり、支払保険金が増加するとみられていました(逸失利益の計算で割引率が小さくなるため)。ただし、料率算出機構「自動車保険の概況」を見るかぎりでは、2021年に死亡保険金の単価がやや上昇したものの、その後は高齢者割合の増加などに吸収され、大きな影響を及ぼしてはいない模様です。

※船旅と在来線特急の旅を楽しみました

 

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プルデンシャル生命の金銭不祥事

プルデンシャル生命保険の営業社員(退職者を含む)100名以上が、顧客から金銭をだまし取るなどの不適切行為を行っていたというショッキングな事件が発覚しました。
会社が2024年8月から「お客さま確認」を行った結果の概要はこちら(PDF)です。

23日の記者会見をネットで視聴しました。会社は不祥事を招いた原因について、次の3点を挙げています。
1.営業社員の活動管理および報酬制度上の課題
2.経営管理態勢の課題
3.組織風土の課題

不適切行為は1991年からとのことでしたが、同社のLP(ライフプランナー:営業社員)チャネルが変わっていったのは、おそらく2010年代ではないかと見ています。
創業者である坂口陽史氏が築いたLPチャネルは、単に米国流のフルコミッション・モデルを日本に導入したというのではなく、「顧客に生命保険の魔法の力を届ける」という強烈な使命感に支えられていたという認識です(なんとなく宗教的でもありましたが…)。
その後、2001年に親会社の米国プルデンシャルが株式会社化・上場を果たし、2002年に坂口氏が亡くなってからも、おそらくこうした「坂口イズム」はしばらく変わらなかったのだと思います。しかし、2008年からのグローバル経営危機を経て、グループのなかで安定して高い利益を上げていた日本事業への期待が高まる一方、2013年からの日銀による大規模な金融緩和政策で円金利が一段と低下し、それまでのように円建ての終身保険を中心に提供するのが難しくなるなかで、同社は外貨建ての資産形成を意識した保険に舵を切ることとなった模様です。こうした商品戦略の変更が会社の意向なのか、LP主導なのかはわかりませんが、例えば2019年度の新契約年換算保険料の8割弱は外貨建てでした
(ちなみに近年は外貨建てと変額保険の2本柱となっています)。

金融庁は今後どう動くのでしょうか。不祥事への直接的な対応を別にすると、ポイントは2つあると思います。
1つは、同社が示した再発防止策で十分と考えられるかどうかです。
フルコミッション型の報酬はLPだけではなく、営業管理職も同じなので、新契約業績重視の組織風土を払拭するにはビジネスモデルそのものの抜本的な見直しが必要となります。会見では今後報酬制度を見直し、LPの管理を強化し、経営管理態勢を改善するとのことですが、それが正しい処方箋なのかどうか。
そもそも金銭不祥事を起こしたLPがなぜ不祥事に走ってしまったのかを、会社は十分理解しているのでしょうか。不祥事を起こしたLPを擁護するつもりは全くありません。ただ、「業績に過度に連動する報酬制度は、金銭的利益を重視する志向を持つ人材を引き付け、営業社員の収入の不安定さが不適切行為につながるリスクを増大させていました」「金融機関社員として不適切な人材が採用されないよう、採用のプロセスを強化いたします」といった記述を見ると、どこか違和感を感じてしまいます。近年では毎年在籍者の1割強のLPが退職しているようですし、問題の根幹は「不適切な人材」なのでしょうか。

もう1つは、フルコミッション・モデルそのものにメスを入れるかどうかです。つまり、これはプルデンシャル生命だけの問題なのか、あるいは、このモデルで顧客本位の業務運営を行うにはリスクが大きすぎると判断するかどうか。
昨年8月に金融庁(関東財務局)が行政処分を行ったFPパートナーの件では、顧客の意向よりも代理店経営の都合を優先する実態が明らかになりました。損害保険会社も昨今の問題発覚を受け、代理店手数料のうち規模や増収に連動した部分を抑え、試行錯誤はあるにせよ、業務品質を重視する方向に進んでいます。
こうした事例・潮流を踏まえると、フルコミッション・モデルの保険販売をそのままにしておくことはできないと考えるのが自然です。

長くなりましたが、とりあえずコメントまで。

※NHK福岡です(番組出演ではありません)

 

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生保の営業職員チャネル(続き)

主要生保の4-9月期決算が出そろいましたので、前回の続きとして、公表資料から営業職員チャネルの販売動向を確認してみましょう。
日本生命、住友生命、明治安田生命はチャネル別の新契約年換算保険料や保険料収入などを「説明資料」のなかで開示しています(日本生命はグループベースなので大樹生命の営業職員を含む)。第一生命はグループのなかでチャネル別に会社を分けているので、第一生命の数値を営業職員チャネルのものとみなすことにしましょう。

各社の営業職員チャネルによる新契約年換算保険料(ANP)は以下の通りでした(カッコ内は前年同期比)。

日本 1042億円(+ 8.8%)
第一  530億円(▲ 5.4%)
住友  332億円(+22.1%)
MY  727億円(+68.4%)

他方で各社は「保障性商品」の新契約ANPも開示しています(日本生命は「主要保障性商品」、住友生命と明治安田生命は「保障性商品」として開示。第一生命は非開示だが「一時払い終身商品は主戦場ではない」と社長が言明しているので個人保険の数値を掲載)。

日本  323億円(▲ 5.6%)
第一  299億円(+21.0%)
住友  144億円(+ 7.1%)
MY  153億円(▲ 9.1%)

参考までに、第三分野(生前給付保障、医療保障等)の新契約ANPは以下の通りでした。

日本  217億円(+ 2.1%)
第一  229億円(+21.2%)
住友  141億円(+ 2.5%)
MY  180億円(▲20.0%)

これらの数値および日経報道などを踏まえると、第一生命はやや傾向が違うようです(昨年度に個人年金の販売が急増した反動あり)が、総じて円建て貯蓄性商品の予定利率を引き上げた会社の新契約ANPが大きく増えたことと、保障性商品の販売は引き続き低調であることがうかがえます。同じく営業職員を中核チャネルとする朝日生命や富国生命でも、同様の傾向が見られるようです。

とすると、気になるのは次の2点です。1つは「円建て貯蓄性商品の販売による弊害はないか」です。金利上昇時の解約リスクについて、今の情報開示では手掛かりがほとんどなく、営業職員チャネルとはいえリスクを貯めこんでいないかどうか心配です。収益性も気になりますし、さらに言えば、保障性商品の販売につながるものなのか、あるいは、そもそも貯蓄性商品の提供に軸足を移すのか、といったチャネル戦略も気になります。
もう1つは、保障性商品の提供に軸足を置き続けるのであれば、前回のブログでもコメントしたように「今の採用数や採用方針を続けるのかどうか」です。
このような視点で今後も見ていきたいと思います。

※飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸を訪問しました。

 

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生保の営業職員チャネル

1週間ほど前の日経新聞に「生保が営業職の定着策(会員限定)」という記事が出ていました。生保各社が営業職(営業職員のことでしょうか?)の退職を減らす取り組みに力を入れているというもので、主要8社の在籍率の推移を調査したそうです。

まず、8社の調査をしたのであれば、8社のデータ(1年後から5年後まで)を記事中で使うだけではなく、そのまま出してほしかったです。紙の新聞はスペースの制約があるものの、電子版にはありません。メディアはファクトを出すのが重要な役割ではないでしょうか。

そのうえで、入社5年後の在籍率25%というのをどう考えるかです。
拙著『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』の150ページには、次のような記述があります。

「2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました」

「採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みもターンオーバー(大量採用・大量脱落)の改善に効果を上げたと考えられます」

確かに採用後1年程度で辞めてしまう営業職員はかなり減りました(記事には入社1年後の在籍率が平均71%とありました)。
在籍する営業職員の協力によって採用となった新人職員が、地縁・血縁に頼った販売が一巡すると営業活動が滞ってしまい、早々に退職に追い込まれるとともに、その職員が獲得した保険も短期で解約となるというパターンは、かつてに比べれば減っているのかもしれません。
もっとも、5年後の在籍率が25%まで下がってしまうということは、採用後の教育を重視し、育成期間の固定給を増やし、既契約重視の営業活動に舵を切っても、「採用⇒縁故販売⇒退職⇒解約」というパターンは変わっておらず、サイクルが長くなっただけという可能性もあります。

早期退職は減っていても、大手各社の公表データをつなぎ合わせると、営業職員による保障性商品の販売は総じて低調です。教育制度の拡充や給与体系の改善で在籍率が多少改善したとしても、このビジネスモデルが今後も持続可能なのかという疑問は残ります。

生命保険は本来、主に個人の生死にかかわるリスクマネジメントの手段の1つです。もちろん、ネットが普及した世界でも、「信用できる相手から話を聞いて買いたい」というニーズはあるでしょう。
しかし、いくら「生命保険(保障性商品)はニーズがネガティブなのでプッシュが必要」とか、「○○さんが勧めるのだから大丈夫」ということはあるにしても、そもそも大手4社合計で毎年2万人も採用し、資格取得によるふるい落としもほとんどない職員が、リスクへの備えを相談する相手となりうるのでしょうか。そこに根本的な疑問があるのですね。貯蓄性の強い商品であれば、なおさらです。

個人差がかなり大きいのは承知のうえで、問題の本質は営業職員の退職ではなく、今の採用数や採用方針を続けるのかどうかではないかと思います。

※秋の深まりを感じます。福岡大学にて。

 

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