01. 保険経営全般

重要なのは含み損益ではない

5月11日(月)からダイヤモンド保険ラボで「新規制ESRの衝撃」という特集が始まりました。3回目の15日は「保険業界人必読のESRとの付き合い方、『7つの疑問』に専門家が回答」でした。今週はキャピタスコンサルティングの森本祐司さんにバトンタッチ。有料媒体ですが、これまでのところ新規制に関する一般向けの情報がほとんどでていないので、ぜひご覧ください。

さて、保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1328(2026.5.18)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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新たなソルベンシー規制の導入

保険流通に関わる皆さんは、この3月末から保険会社向けの健全性規制がガラッと変わったのをご存じでしょうか。
先週から始まった「ダイヤモンド保険ラボ」の連載でも述べていますが、約20年間の検討期間を経て、26年3月末から「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれる新たな健全性規制の適用が始まりました。ただし、これから保険会社の決算発表がピークを迎えますが、そこでは内部管理上の比率の公表が中心で、規制比率の公表はおそらく夏以降になるのではないかと思います。
新しい比率は従来の水準から大きく下がると見込まれます。だからといって、保険会社の健全性そのものが悪化したわけではないということを、念のためお伝えしておきます。冷静に考えれば、規制見直しによってモノサシが替わっただけなので当たり前なのですが、過去にはそのような報道もありましたので、ご注意ください。

重要なのは資産の含み損益ではなく、「適格資本」の状況

昨年度は株価が大きく上がり、かつ、国内金利も大きく上昇しました。その結果、株式含み益が一段と膨らむとともに、生命保険会社が保有する国内債券の含み損が拡大しました。
しかし、これは「これまでの超長期債への投資が裏目に出た」「(国内債券だけではなく)株式を持っていればよかった」という話ではありません。金利の上昇は資産だけではなく負債にも大きな影響があります(保険負債の時価が総じて小さくなります)し、新たな規制の下ではソルベンシー・マージン(適格資本)にも反映されます。もともと保険会社の経営を見るうえで、資産側だけに着目するのは正しくなかったのですが、新規制の導入によってそのことがより明確になりました。
重要なのは資産の含み損益ではなく、経済価値ベース(時価ベース)で見た適格資本の状況です。

ちなみに、資産のみを時価評価して算出する「実質純資産(額)」「実質資産負債差額」などと呼ばれた健全性指標も、新規制の導入とともに廃止されました。これは、リスク管理の観点から負債の金利リスクを資産(債券)で適切にヘッジしている会社ほど、金利上昇時に数値が極端に悪化してしまい、リスク管理の妨げとなっていたからです。この点からも、資産側だけに着目する意味はなくなりました。

含み益経営の亡霊から脱するべき

以上のように、資産の含み損益は健全性指標としての役割を名実ともに終えました。他方で、含み損益が実現益・実減損になると(あるいは減損処理を行うと)、会計上の損益に影響を与えるのは確かです。
ですが、2年前の本誌で述べた通り、株式の売却益を計上すると一見、儲かったように見えるかもしれないけれど、実際は株式を現金と交換しただけなので、売却益は会社の価値を高めません。同じく1年前の本誌で述べた通り、売却損を出して債券を入れ替えても、今後の利息収入が増えるだけで債券投資のリターンは向上しません。つまり、生保がリターンを目指す投資家であるならば、会計上の損益は全く参考にならないということです。
強いて言えば、メディアが会計損益しか報じないので、含み益は会計損益を安定させるために重要と生保の経営者が考えてしまうのかもしれません。契約者への還元をあまり増やしてこなかった生命保険会社の経営を見ると、ついそう疑ってしまいます。とはいえ、それなりにリスクをとっているのであれば、そもそも安定した損益を期待するのは理にかないませんよね。
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※週末は新潟でした。

 

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なぜ債券含み損にこだわるのか?

どうも日経記事は生保の含み損益に過度に注目する傾向がある(あるいは、一般勘定で株式投資をするべきだと言いたい?)ようです。
5月9日にアップされた「金銭詐取疑いで揺れるソニー生命 含み損処理で新たな火種(会員限定)」では、「ソニー生命は保有債券の含み損が多い。解約増で売却を迫られれば、収益への影響は大きい」と報じ、大手4社では株式含み益と債券含み損が打ち消しあっているのに対し、ソニー生命は債券偏重なので含み損が大きいという図表を示しました。

では、営業職員による金銭詐取が発覚し、販売活動の自粛を続けているプルデンシャル生命(POJ)はどうなっているのでしょうか。
親会社プルデンシャル・ファイナンシャルは4月21日に、POJの既契約からの利益が2026年には最大10%、2027年には最大15%減るという見込みを公表しましたが、ソルベンシー比率やキャッシュフローへの大きな影響はないとしています。
さらに、5月6日開催のIRミーティングでは、1-3月期における販売自粛による損益への影響は1.3億ドル(約200億円)で、このうち、0.5億ドルが顧客対応、0.5億ドルが営業職員への手当で、販売自粛と解約に関する損失は0.3億ドル(約46億円)とのことでした。POJもソニー生命と同じく、多額の債券含み損(昨年12月末時点で8950億円)を抱えていて、この0.3億ドルに売却損が含まれている可能性もありますが、そうだとしても大した金額ではありません。影響は2月からなので、さらに膨らむのは確実とはいえ、IR資料や質疑応答からはPOJの保有契約が急減しているとは読み取れませんでしたし、債券含み損に関するアナリストからの質問もありませんでした
(むしろ、「POJでは保有契約からの利益が全体の90%を占めるので脆弱ではない」とコメントしています)。

確かに解約が殺到すれば、保有債券の売却を迫られ、売却損を計上することもありうるでしょう。ただし、平準払いの商品を中心に販売してきた生保では、手元のキャッシュのほか、既契約からの保険料が常に入ってきますし、保有債券の償還もあります。公表資料によると、ソニー生命は既契約から毎年約1兆円の保険料収入がありますので、解約が多少増えても、ただちに保有債券の売却とはなりません
(ちなみに近年ソニー生命の解約返戻金が増えているのですが、他社動向を踏まえると、おそらく経営者向け保険の解約が増えたためではないかと思います)。

それに、この件で解約が殺到するという確率は極めて低いでしょう(新契約が取れなくなる可能性はあると思いますが…)。
仮に、担当した営業職員が犯罪に手を染めていたとしても、平準払い商品の場合、そもそも保障が必要だから加入しているので、「裏切られた。解約だ!」とはなりにくいです(特にソニーやPOJは義理人情ではなく、コンサルティングセールスを標榜してきました)。
しかも、他社に乗り換えたくても、加入してから時間がたっていなければ解約控除がかかりますし、時間がたっていれば被保険者の年齢が上がっていて、新たな保険に加入しにくくなっているはずです。

3月28日のブログ(生保解約返戻金の増加)と同じく、この時点でソニー生命の債券含み損にことさら言及するのは、やはりミスリードと言わざるを得ません。

※横浜・山下公園のバラです。

 

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日本の生保経営

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1324(2026.4.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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香港で「集中講義」

最近、香港で保険ビジネスに関わる皆さんに対し、保険会社経営に関する「集中講義」を行う機会がありました(ちなみに日本語でした)。
日本でも近年、貯蓄性の強い生命保険の販売が伸びています。とはいえ、変額保険を除けば、総じて利率固定型の商品です。これに対し、香港の生命保険は投資連動型が多く、保証部分(利率固定)と非保証部分(運用実績に応じた契約者配当あり)を組み合わせた保険が主流となっているそうです。米ドル建てが中心で、保険会社は保証部分については主に公社債で運用し、非保証部分は株式やオルタナティブ投資などで高いリターンを目指します。
ただし、運用実績をそのまま配当に反映させるのではなく、スムージングを行うとか、割り当てられた配当の多くが確定したものではないとか、なかなかに複雑な商品だと感じました。

日本の生保の資産運用

もっとも、日本の生命保険会社の資産運用についても、合理的に説明するのが難しい点はいくつもあります。
例えば、「円建ての保険を提供しているのに、なぜ外国証券が運用資産の約3割をも占めているのか」という質問に、どう答えたらいいでしょうか。歴史的な低金利が長引くなかで、利回りの高い外債投資や外国籍のオルタナティブ投資を増やしていったという説明になるのかもしれませんが、そもそも日本の生保が為替リスクのコントロールに長けているという客観的な証拠はあるのでしょうか(むしろ過去には円高で損失を出した印象が強い)。
一般勘定での株式投資も、政策保有であろうと純投資であろうと、株主には説明するのが難しいです。拙著『保険ビジネス』でも記したとおり、株主は自分で株式投資ができる存在なので、株式投資に強みを持つと思わせてくれる経営者でもないかぎり、わざわざ税引後のリターンしか期待できない保険会社に株式投資をしてもらいたいとは考えないはずだからです。

他方で、ネットでは「日本の生保は安定志向が強すぎて(あるいは、政府を助けるために)、国債ばかり保有しているのでリターンが低い」といった論調をしばしば見かけますが、これは誤解です。超長期にわたり利率を保証する商品を提供すると、保険会社は必然的に金利変動リスクを抱えることになります。超長期国債の購入は、あらかじめ保険負債の金利リスクをヘッジすることで、長期保障をより確実なものにするといった考えに基づいての行動です。
生保の資産運用は、どのような商品を提供するか、つまり、どのような特性を持つ保険負債を抱えるかによって決まるのであって、単に集まってきた資金を運用すればいいというものではありません。

なぜ契約者配当が少ないのか

香港で保険ビジネスに関わる皆さんからすると、日本の生保による契約者配当の少なさも理解が難しいポイントのようです。
確かに、第一ライフグループやT&Dグループの株主還元(配当と自社株買いの合計)の水準に比べると、株主のいない日本生命や明治安田生命などの個人向け保険の契約者配当の水準はかなり見劣りします。団体保険では危険差益の大半を契約者に還元しているとみられますが、個人向け保険の配当は非常に抑制的で、何のために金利や株式、為替変動等のリスクをとっているのか、私も説明するのが難しいと考えています。
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※6年半ぶりの香港でした。

 

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生保の公社債含み損

1つの政党を除き、どの政党も公約に消費減税(検討を含む)を掲げるとは…
消費税を廃止するというのは、例えば年収300万円(同額を消費)の家計に30万円弱を配るというだけでなく、年収1000万円(うち500万円を消費)の家計にも50万円弱を配るという政策ですし、食料品の消費税をなくすというのは、年収300万円(食料品への消費が100万円)の家計だけではなく、年収1000万円(同100万円)の家計にも約8万円を配布するという政策ですよね。物価高対策として悪手としか思えません。
とはいえ皆さん、選挙には行きましょう。究極の消去法だとしても、意思表示は必要です。

さて、1月23日のBloombergに「金融庁が大手生保の債券含み損など調査、金利上昇受けて-関係者」というニュースが出ていました。31日の日経にも「金利急騰に苦慮の金融庁、生保に矛先 ダボス帰りの片山財務相発端に(会員限定記事)」というのがありました。
いずれの記事も、金融庁が1月中旬から生保(まずは大手4社)の保有する国債などの含み損益やその対応方針について調査を行っているという内容でした。

金利が上昇すれば保有する債券の価格は下がります。例えば、2019年発行で利率0.4%の30年国債の価格は直近で50円近くまで下がっていますし、利率0.5%の40年国債の価格は40円近くまで下がっています。今月半ばに発表される生保の2025年4-12月期決算では、9月末よりも各社の含み損が拡大していることでしょう。
ただし、生保が長期債を保有しているのは、同じく長期にわたる保険負債の金利リスクをヘッジするためなので、資産サイドの保有債券だけに注目しても意味はありません。ましてや、この3月末から経済価値ベースの評価による貸借対照表と、それに基づく数値基準(規制ESR)による規制を始めるのですから、政府は監視強化ではなく、むしろ会計上の評価に神経質となっている保険会社を安心させるべきでしょう(解約動向はよく確認する必要があると思いますが)。

Bloombergの記事で気になったのは、「金利上昇により過去に購入した保有国債の含み損は膨らんでおり、財務の健全性を示す指標の悪化につながりかねないとの警戒感はすでに生保側からも出ている」というところです。
ここで言う「財務の健全性を示す指標」とは何を指すのでしょうか。規制ESRのことだとしたら、保有国債の含み損は関係ありません。保険負債も小さくなっているはずなので、純資産はむしろ膨らんでいるはず。
負債の金利リスクをフルヘッジしていないにもかかわらず、金利上昇でESRが下がるのは、大量解約リスクという、いわば流動性リスクを数値化してしまったことによる影響でしょう。

日経記事にも「低金利時代に国債を買い増したことが含み損の拡大につながり『規制対応が裏目に出ている』(生保幹部)面もあり、場当たり的な監視強化に戸惑いもある」とあります。場当たり的と言わせないよう、金融庁は対話と情報発信をがんばってほしいですね。

※梅の季節になりました。横浜・大倉山の梅林にて。

 

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プルデンシャル生命の金銭不祥事

プルデンシャル生命保険の営業社員(退職者を含む)100名以上が、顧客から金銭をだまし取るなどの不適切行為を行っていたというショッキングな事件が発覚しました。
会社が2024年8月から「お客さま確認」を行った結果の概要はこちら(PDF)です。

23日の記者会見をネットで視聴しました。会社は不祥事を招いた原因について、次の3点を挙げています。
1.営業社員の活動管理および報酬制度上の課題
2.経営管理態勢の課題
3.組織風土の課題

不適切行為は1991年からとのことでしたが、同社のLP(ライフプランナー:営業社員)チャネルが変わっていったのは、おそらく2010年代ではないかと見ています。
創業者である坂口陽史氏が築いたLPチャネルは、単に米国流のフルコミッション・モデルを日本に導入したというのではなく、「顧客に生命保険の魔法の力を届ける」という強烈な使命感に支えられていたという認識です(なんとなく宗教的でもありましたが…)。
その後、2001年に親会社の米国プルデンシャルが株式会社化・上場を果たし、2002年に坂口氏が亡くなってからも、おそらくこうした「坂口イズム」はしばらく変わらなかったのだと思います。しかし、2008年からのグローバル経営危機を経て、グループのなかで安定して高い利益を上げていた日本事業への期待が高まる一方、2013年からの日銀による大規模な金融緩和政策で円金利が一段と低下し、それまでのように円建ての終身保険を中心に提供するのが難しくなるなかで、同社は外貨建ての資産形成を意識した保険に舵を切ることとなった模様です。こうした商品戦略の変更が会社の意向なのか、LP主導なのかはわかりませんが、例えば2019年度の新契約年換算保険料の8割弱は外貨建てでした
(ちなみに近年は外貨建てと変額保険の2本柱となっています)。

金融庁は今後どう動くのでしょうか。不祥事への直接的な対応を別にすると、ポイントは2つあると思います。
1つは、同社が示した再発防止策で十分と考えられるかどうかです。
フルコミッション型の報酬はLPだけではなく、営業管理職も同じなので、新契約業績重視の組織風土を払拭するにはビジネスモデルそのものの抜本的な見直しが必要となります。会見では今後報酬制度を見直し、LPの管理を強化し、経営管理態勢を改善するとのことですが、それが正しい処方箋なのかどうか。
そもそも金銭不祥事を起こしたLPがなぜ不祥事に走ってしまったのかを、会社は十分理解しているのでしょうか。不祥事を起こしたLPを擁護するつもりは全くありません。ただ、「業績に過度に連動する報酬制度は、金銭的利益を重視する志向を持つ人材を引き付け、営業社員の収入の不安定さが不適切行為につながるリスクを増大させていました」「金融機関社員として不適切な人材が採用されないよう、採用のプロセスを強化いたします」といった記述を見ると、どこか違和感を感じてしまいます。近年では毎年在籍者の1割強のLPが退職しているようですし、問題の根幹は「不適切な人材」なのでしょうか。

もう1つは、フルコミッション・モデルそのものにメスを入れるかどうかです。つまり、これはプルデンシャル生命だけの問題なのか、あるいは、このモデルで顧客本位の業務運営を行うにはリスクが大きすぎると判断するかどうか。
昨年8月に金融庁(関東財務局)が行政処分を行ったFPパートナーの件では、顧客の意向よりも代理店経営の都合を優先する実態が明らかになりました。損害保険会社も昨今の問題発覚を受け、代理店手数料のうち規模や増収に連動した部分を抑え、試行錯誤はあるにせよ、業務品質を重視する方向に進んでいます。
こうした事例・潮流を踏まえると、フルコミッション・モデルの保険販売をそのままにしておくことはできないと考えるのが自然です。

長くなりましたが、とりあえずコメントまで。

※NHK福岡です(番組出演ではありません)

 

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等級制度の事故抑止効果

このところ卒論指導にゼミの報告会準備などに追われていて、学生ネタが続いて恐縮です。
前回ご紹介したRIS(全国学生保険学ゼミナール)の活動とは別に、2年生が学内でプレゼンテーションを行う機会があり、ある班が自動車保険のノンフリート等級制度に関心を持ち、その事故抑制効果についてアンケート調査を行いました。

東京の大学とは違い、地方都市では車を運転する学生が多く、私のゼミ生も大半がすでに運転免許を持っています(ただし、車での通学は自粛となっています)。免許をとる過程で自動車保険についても学ぶはずなのですが、アンケートの結果はなかなか興味深いものでした。

10代、20代を中心にアンケート調査(回答者75名のうち8割が若年層で、その多くはうちの学生)を行ったところ、次のような傾向が見られました。

・「ノンフリート等級制度」という言葉を聞いたことがないという回答が大半を占めた(若年層以外では「知っている」の回答が多かった)

・「等級が上がると翌年の保険料が安くなる」は知っていても、「等級が下がると翌年の保険料が高くなる」は知らないという回答が多かった(若年層以外では両者に大きな違いはなかった)。

・「等級制度は安全運転の意識を高めると思う」という回答が大半を占めたが、制度への印象として「初心者や若い人に不利」という声も目立った。

・全体として「わからない」という回答が目立った。

大学生は免許をとってすぐに自分の車を運転するのではなく、家族の車を使うことが多いので、保険については家族任せでほとんど知らないということのようです。教習所の座学だけでは限界があるのでしょう。
ですから、このアンケートのなかで制度の説明をされたから「安全運転の意識を高める」と回答しているものの、等級制度の認知度は低く、知らなければ事故抑制効果も期待できません。
保険について教える立場にある者としては、もう少し工夫して話をする必要があると痛感しました。

※舞浜と上智大学のクリスマスツリーです。

 

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株式売却益は誰のものか

このところ大手損害保険会社の決算は政策保有株式の売却益計上で(少なくとも表面的には)好調が続いています。これを見た保険流通に関わるかたから、「株式購入の原資は契約者の保険料なのだから、保険会社は政策保有株式の売却によって得られた利益を保険料の引き下げという形で契約者に還元すべきではないか」という質問(意見?)をいただきました。

最初に結論を述べれば、株式会社形態の保険会社であれば、株式投資によるリターンは原則として株主のものと考えるべきで、これを契約者に還元しなければならない理由はありません。

株式会社形態の保険会社では、株主は保険引受のリスクやそれに伴う資産運用のリスクなど、経営全てのリスクを負っています。株主が政策保有株式のリスクを経営にとってほしかったかどうかは別にして、リスクをとった結果として得られたリターン(より正確には、時価ベースの純資産)は、まずは株主のものです。
これに対し、契約者は保険会社の破綻リスクのみを負う「債権者」という位置付けです。保険債務の責任を果たせば、経営にはそれ以上の責任はありません。

もし、保険料を下げることで、中長期的にはより多くのリターンが得られるという考えに株主が納得すれば、料率引き下げという経営判断もあり得ます。しかし、それはあくまでも、さらなるリターンを目指すための料率引き下げであって、契約者への還元ではありません。

他方、保険料率の計算にあらかじめ資産運用収益を含めておくというのは、保険ビジネスとして健全な経営ではありません。保険会社の資産運用がうまくいかなかった場合に、保険会社は保険金額を減らしたり、契約者から追加で保険料を集めることができないからです。
長期の保険では一定の利率(予定利率)で増えていくことを前提にしたものが一般的ですが、これは資産運用収益を当てにしているというよりは、貨幣の時間価値を考慮している、つまり、将来のお金を現在価値に換算しているものです。

株主はそもそも資産運用で収益を上げるのを生業としています。ですから、バフェット氏のような資産運用に強みを持つ保険会社でもないかぎり、「資産運用に頼るのではなく、得意分野である保険ビジネスでリターンをあげてほしい」と考え、保険でリターンを上げられないのなら、そのビジネスをやめてほしいと考えるはず。
株式会社の保険経営者は、もちろん契約者をはじめとした利害関係者にも目配りする必要がある(法令等の遵守を含む)とはいえ、株主の期待に応えるために存在しています。

ちなみに、相互会社形態や協働組織であれば契約者への還元は重要な選択肢の1つです。なぜなら、これらの組織では、契約者は債権者であるとともに、組織のオーナーでもあるからです。

※週末の嵐山はすごい混雑でした!

 

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保険会社の名前

報道によると、2027年4月に合併する三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の新会社の名前は「三井住友海上あいおい損害保険」となるそうですね。さらに、グループを統括する持株会社MS&ADインシュアランスグループホールディングスの名前も「三井住友海上グループ」に変更するとのこと。報道が正しければ、確かに持株会社のほうは2010年に「MS&AD」としたときには「ん?」という印象でしたが、それでも15年たつので、よく決断したと思います。
ちなみに会社は9月12日付けで「現時点で決定している事実はありません」としています。

拙著『保険ビジネス』のコラムで取り上げたとおり、保険業法の規定により、生命保険会社の名前には「生命保険」、損害保険会社の名前には「火災保険」「海上保険」「傷害保険」「自動車保険」「再保険」「損害保険」のどれかが必ず入っていなければなりません(外国保険業者を除く)。保険会社が合併すると、この条件を守ったうえで、新たな名前を考えることになります。
これまでの合併事例を見ると、いずれか片方の名前がそのまま使われたケースは吸収合併の時くらいしかなく、両社の名前が何らかの形で残っているケースが多いようです。かつては「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」のように、非常に長い名前となってしまった会社もありました。

もっとも、同社は現在「SOMPOひまわり生命保険」ですし、グループの中核損保は「損害保険ジャパン」、持株会社の名前も「SOMPOホールディングス」なので、「安田」「日産」「大成」「日本」「興亜」「NK」などは入っていません。ただし、グループのブランドとしては「SOMPO」と「損保ジャパン」の両方ということになるのでしょうか。
その意味では、東京海上ホールディングスは当初の「ミレアホールディングス」を2008年に改め、ブランドとしては「東京海上」に絞っていますし、(報道のとおりであれば)持株会社の社名を「三井住友海上」にするというのもグループのブランド戦略としては理解できます。

上場する保険持株会社で中核会社の社名がそのまま使われていない事例としては「T&Dホールディングス」もあります。中核生保である太陽生命の「T」と大同生命の「D」ではなく、「Try」と「Discover」の頭文字をとったものです。「T&D」を使うようになってから早くも四半世紀が過ぎましたが、太陽生命と大同生命の社名はそのままなので、資本市場ではともかく、消費者へのブランド浸透という点ではなかなか難しかったのではないでしょうか。

※イスタンブールは猫の町でした!

 

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『保険ビジネス』を出しました

昨年10月に続き、新刊のご案内です。本日(8月22日)クロスメディア・パブリッシングから『保険ビジネス 契約者から専門家まで楽しく読める保険の教養』を刊行しました。

副題のとおり「楽しく読める保険の教養」ということで、保険と保険ビジネスに少しでも関心のある全てのかたに向けた書籍です。身近な存在にもかかわらず、わかりにくいとされることの多い保険の世界をいろいろな角度からひも解いてみました。
例えば、第1章の「『素朴な疑問』から学ぶ保険の世界」では、「ビッグモーター事件の本当の被害者は誰か」「そもそも保険には入っておいたほうがいいのか」「保険会社はなぜ一等地に立派なビルを持っているのか」などを取り上げ、最後の第9章では「最新テクノロジーから学ぶ未来の保険の世界」ということで、保険会社や保険販売の世界がどう変わるのか述べています。
各章はいずれもトピック6つとコラム1つという構成で、トピックは全て4ページで統一したので、どの章から読んでいただいてもテンポよく楽しく読めるのではないかと思います。

本書執筆のお話をいただいた時には、実のところお受けすべきかどうか若干迷いました。おそらく研究者としての業績にはなりませんし、昨年10月に出した『経済価値ベースのソルベンシー規制』に続き、関連するアウトプットをいくつか抱えていたという事情もありました。
とはいえ、保険業界と外部のギャップを埋めるのは(さらに言えば、保険会社の本社と保険販売の現場との距離を縮めるのも)私の役割だと考えていますし、産・官・学と立場は途中で何度か変わりましたが、約30年にわたり日本の保険ビジネスを外部からウォッチしてきた人間はおそらく数少ないと思います。そこで、大学の春休み期間を中心に、時には京都で籠ったりして、楽しく(?)書き上げました。

大学の教科書として使っている『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』と比べてもすいすい読めますし、かつ、保険ビジネスに携わっている皆さんにも楽しく読んでいただけるよう、工夫したつもりです(反論はあるかもしれませんが…)。
本書がネットに出回る「保険不要論」をはじめ、極端な情報に惑わされず、保険や保険ビジネスについてご自身で判断するための道しるべになることを願っています。

※ワーケーション in 京都の成果物です!

 

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経済価値ベースのソルベンシー規制

金融庁は7月23日、「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する保険業法施行規則の一部改正(案)」等に対するパブリック・コメントの結果等の公表についてを示し、2026年3月末からの規制適用が確定しました。昨年10月に出した拙著『経済価値ベースのソルベンシー規制』でも述べたように、20年近い検討期間を経て、ようやく新たな規制が導入されることとなります。
なお、新たな規制の概要や主な法令等、第1の柱のQ&A、これまでの検討経緯を金融庁がこちらのサイトにまとめていて、助かります。

ところで、パブリックコメントの結果(PDF)ですが、私は昨年、第3の柱(3柱告示案(PDF))を中心にいくつかコメントを出していました。利用者目線からすると、告示案のままでは生命保険会社の金利リスクの現状やALMの考え方が把握できないという危機感を持ったためです。
同じように改善を求めたかたが複数いたこともあって、私がお願いしたとおりではないにせよ、開示の充実が図られることとなりました(別紙様式第7号の開示が当初案よりも充実しました)。
先ほどご紹介した金融庁サイトを引用すると、第3の柱(情報開示)は、保険会社と外部のステークホルダーとの間の適切な対話を促し、ひいては保険会社に対して適正な規律を働かせるためのもの。実際の開示を見てみないとわからない部分はあるにせよ、第1の柱を補完し、第2の柱をサポートするような開示情報の活用を考えてみたいと思います。

さて、ここから先は、規制を受ける保険会社の対応準備とともに、メディアをはじめ、保険会社のステークホルダーに新規制を理解してもらうための取り組みも必要になってきますね。

※念願の観光列車に乗りました。

 

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