01. 保険経営全般

『保険ビジネス』を出しました

昨年10月に続き、新刊のご案内です。本日(8月22日)クロスメディア・パブリッシングから『保険ビジネス 契約者から専門家まで楽しく読める保険の教養』を刊行しました。

副題のとおり「楽しく読める保険の教養」ということで、保険と保険ビジネスに少しでも関心のある全てのかたに向けた書籍です。身近な存在にもかかわらず、わかりにくいとされることの多い保険の世界をいろいろな角度からひも解いてみました。
例えば、第1章の「『素朴な疑問』から学ぶ保険の世界」では、「ビッグモーター事件の本当の被害者は誰か」「そもそも保険には入っておいたほうがいいのか」「保険会社はなぜ一等地に立派なビルを持っているのか」などを取り上げ、最後の第9章では「最新テクノロジーから学ぶ未来の保険の世界」ということで、保険会社や保険販売の世界がどう変わるのか述べています。
各章はいずれもトピック6つとコラム1つという構成で、トピックは全て4ページで統一したので、どの章から読んでいただいてもテンポよく楽しく読めるのではないかと思います。

本書執筆のお話をいただいた時には、実のところお受けすべきかどうか若干迷いました。おそらく研究者としての業績にはなりませんし、昨年10月に出した『経済価値ベースのソルベンシー規制』に続き、関連するアウトプットをいくつか抱えていたという事情もありました。
とはいえ、保険業界と外部のギャップを埋めるのは(さらに言えば、保険会社の本社と保険販売の現場との距離を縮めるのも)私の役割だと考えていますし、産・官・学と立場は途中で何度か変わりましたが、約30年にわたり日本の保険ビジネスを外部からウォッチしてきた人間はおそらく数少ないと思います。そこで、大学の春休み期間を中心に、時には京都で籠ったりして、楽しく(?)書き上げました。

大学の教科書として使っている『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』と比べてもすいすい読めますし、かつ、保険ビジネスに携わっている皆さんにも楽しく読んでいただけるよう、工夫したつもりです(反論はあるかもしれませんが…)。
本書がネットに出回る「保険不要論」をはじめ、極端な情報に惑わされず、保険や保険ビジネスについてご自身で判断するための道しるべになることを願っています。

※ワーケーション in 京都の成果物です!

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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経済価値ベースのソルベンシー規制

金融庁は7月23日、「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する保険業法施行規則の一部改正(案)」等に対するパブリック・コメントの結果等の公表についてを示し、2026年3月末からの規制適用が確定しました。昨年10月に出した拙著『経済価値ベースのソルベンシー規制』でも述べたように、20年近い検討期間を経て、ようやく新たな規制が導入されることとなります。
なお、新たな規制の概要や主な法令等、第1の柱のQ&A、これまでの検討経緯を金融庁がこちらのサイトにまとめていて、助かります。

ところで、パブリックコメントの結果(PDF)ですが、私は昨年、第3の柱(3柱告示案(PDF))を中心にいくつかコメントを出していました。利用者目線からすると、告示案のままでは生命保険会社の金利リスクの現状やALMの考え方が把握できないという危機感を持ったためです。
同じように改善を求めたかたが複数いたこともあって、私がお願いしたとおりではないにせよ、開示の充実が図られることとなりました(別紙様式第7号の開示が当初案よりも充実しました)。
先ほどご紹介した金融庁サイトを引用すると、第3の柱(情報開示)は、保険会社と外部のステークホルダーとの間の適切な対話を促し、ひいては保険会社に対して適正な規律を働かせるためのもの。実際の開示を見てみないとわからない部分はあるにせよ、第1の柱を補完し、第2の柱をサポートするような開示情報の活用を考えてみたいと思います。

さて、ここから先は、規制を受ける保険会社の対応準備とともに、メディアをはじめ、保険会社のステークホルダーに新規制を理解してもらうための取り組みも必要になってきますね。

※念願の観光列車に乗りました。

 

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『経済価値ベースのソルベンシー規制』

新刊のご案内です。今週25日に『経済価値ベースのソルベンシー規制 生保経営大転換を読む』が日本経済新聞出版から出ることになりました。

本書は絶版となってしまった『経営なき破綻 平成生保危機の真実』(2008年、日本経済新聞出版社)のいわば続編にあたります。『経営なき破綻』から早くも15年以上が経ち、ようやく2025年度末に新たな規制が実現するこのタイミングで本書を世に出す意義は、主に次の2つと考えています。

1つは、「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれることの多い新たな規制の本質を示すことです。
新たな規制の詳細を解説するのが目的ではなく、保険会社の経営は新たな規制にどう向き合うべきなのか、新たな規制が期待どおり機能するうえでどのような課題があるのか、などを論じています。
経済価値ベースのソルベンシー規制導入に反対姿勢をとってきた富国生命・米山社長と、規制導入を有識者としてリードしてきたキャピタスの森本代表のインタビューも、それぞれ読みごたえのある内容となっています。

もう1つは、過去の生保破綻から新たな規制導入に至るまでの経緯を示すことです。
かつての生保危機を当事者として知る人の多くは現役を退いています。しかし、過去の経緯を知らないと、いま、どうしてそれがそうなっているのかを理解するのは難しいことです。
そこで本書の第1章で生保危機から新規制までの「歴史」を振り返るとともに、破綻生保の内部で何が起きていたのかを記録として残すため、編集担当のご理解を得て、『経営なき破綻』の中核である破綻事例の検証を巻末付録としてそのまま掲載しました。その結果、付録が90ページもある書籍となっていますが、とりわけ『経営なき破綻』を手に取ったことのない若い皆さまの参考になるのではないかと考えています。

加えて、福岡大学に移籍してから手掛けた研究の成果もいくつか盛り込んでいますので、全体として他に類を見ない内容になったのではないかと自負しています。
ポケットマネーで購入するにはやや高いかもしれませんが(3200円+税です)、保険業界に関心を持つ多くのかたの目に触れるとうれしいです。

 

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「中堅生保、債券偏重の死角」

9月11日の日経記事「中堅生保、債券偏重の死角」(電子版(会員限定)では9日)をみて、思わずため息をついてしまいました。

記事の主な内容は次のとおりです。

・ソニー生命は2024年4-6月期に債券の売却損を株式売却益などで補えず、キャピタル損益を反映した基礎利益が赤字になった。
・同社は金利上昇で保険契約の中途解約が急増し負債側の年限が縮小。資産の年限を縮めるため保有国債の一部を売却せざるをえなくなった。
・生保は保有資産の含み損益を加味して資産を売却する。売却損を出す場合、同時に含み益のある資産を売却して補うのが一般的だ。

これ(特に3点め)を読んで、特段の違和感を覚えなかったかたは、伝統的な金融村の文化に相当毒されています。ALMとか経済価値ベースとか言う以前に、そもそも「保有資産の含み損益を加味して資産を売却」する投資家とは、いったい何を目指して資産運用を行っているのでしょうか。考えられるのは1つだけ。会計損益の安定です。
しかし、生保をはじめ金融機関による資産運用の目的は会計損益の安定ではなく、リターンを上げて会社価値を高めることであり、そのためにポートフォリオを組んでいるはずです。それを「債券で売却損が出るから、同時に株式で売却益を出す」なんてことをしたらポートフォリオが崩れ、目指す期待リターンも変わり、何をしているのかわからなくなってしまいます。

多額の株式を保有する生保の運用担当者が日経の記者さんに吹き込んだのかもしれませんが、このような考えのもとで株式を保有している生保があるとすれば、株式含み益を経営バッファーとしてあてにしていた(いわゆる益出しですね)1990年代前半までの生保経営と同じです。そんな資産運用はありえないと、どうして記者さんもデスクも思わなかったのでしょうか。

記事の後段には「生保各社は債券中心の手堅い運用にシフトしてきた」とあります。しかし、生保は手堅い運用を行うためではなく、負債の金利リスクをヘッジすることで会社価値の振れを抑えるために超長期国債を購入してきました。金利上昇に伴い保有する超長期債の価格が下がるのは初めからわかっていたことであって、経済価値ベースのバランスシートは改善しているはず。含み損を処理すべきという合理的な理由はなく、「債券偏重の死角」ではありません。
金利上昇局面における生保経営者の悩みとして挙げるとすれば、資産運用の巧拙よりも、「金利上昇に伴う解約をどの程度まで考慮すべきか」「現行会計のもとで金利上昇で価格が下がった超長期債の減損を求められないか」などではないでしょうか。

ちなみに2点めに関しては、昨年度からの解約増加はドル建て保険が中心だと思いますし、残高が減ったのは「その他有価証券区分」の公社債なので、本当にこの説明のとおりなのかは疑問なのですが、ソニーフィナンシャルグループの決算発表資料をみると、確かに「金利上昇の影響を受け、ALM(資産負債の総合管理)の考え方に基づくリバランスを目的とした債券売却により一般勘定における有価証券売却損益が悪化した」とあります。
9月決算ではもう少し説明があるといいですね。

※写真はパリです。

 

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保険料調整行為の調査報告書

週末に登壇を控えていることもあって、どうしても損保問題関連のニュースに目が向いてしまいます。
6月11日に損保ジャパンが公表した「保険料調整行為に関する社外調査委員会による調査報告書」を一読しました。日経だけではなく、こちら(NHKニュース)やこちら(日刊自動車新聞)など、多くのメディアが取り上げていますね。
本調査の目的は独禁法違反をはじめとした不適切行為の事実と直接原因を解明・究明するとともに、「広範囲かつ相当期間にわたって行われてきた根本原因を、組織風土、ガバナンス、業界慣行等多角的な観点から分析した上、再発防止策を提言すること」だそうです(1ページ)。
経営陣による証拠破棄事案とか、金融庁報告で独禁法違反数を極力少なく見せようとしたとか、結構ひどいことを発見し、そのまま書いてあります。

ただし、関係者には申しわけありませんが、私にはどこかモヤモヤ感(?)が残る報告書でした。

報告書では、「全国規模で多くの従業員がさほど抵抗感なく不適切行為に及んでいた」(18ページ)としたうえで、原因として、長年にわたって培ってきた組織風土や、規制時代からの業界慣行などを挙げ、証拠をもって指摘しています。
例えば、G45と呼ばれる営業情報交換システムには、SJのほかTN、MS、ADを含む9社が参加し、こうした情報交換が不適切行為が行われる可能性を高める役割を果たしたという考察や、営業部門重視、営業部門と法務・コンプライアンス部門の不均衡なパワーバランスを端的に示す例として、過去10年の取締役に占める営業部門出身者が76%にのぼることを指摘するなど、確かにその通りだろうと思います。

私のモヤモヤ感がどこから来るのかを考えてみると、2つのことに思い当たりました。

1つは、問題が国内企業(特に大企業)との取引で生じているにもかかわらず、保険を提供してきた保険会社の問題を深掘りする一方で、保険を購入してきた国内企業についての考察がほとんどなされてないことです(企業代理店に関する記述は多少あります)。
大企業は保険会社にだまされ続けてきた被害者なのでしょうか。長年にわたる不適切な行為がなぜ発覚しなかったのか。そこには契約者である企業側の事情もあると考えるのが自然ではないでしょうか。残念ながらそこには踏み込まなかったようです。

もう1つは、「トップライン・マーケットシェアを重視してきた経営戦略を背景に、SJは営業部門の強さによって成長を遂げてきた」(54ページ)というのはわかるものの、それではボトムライン(損益)はどうなっていたのでしょうか。損益の悪化が著しいので不適切な行為が横行するようになったのか、あるいは、そもそもボトムラインには関心がなく、トップラインの獲得のみに走っていたのか。前者と後者では話がだいぶ違うのですが、再保険を含むボトムラインに関する情報が全く示されていないので、報告書を読んでも企業向け保険事業の実態はわからないままです。
報告書はERM(戦略的リスク経営)にも触れていません。例えば保険引受リスク管理に関して、プライシングはどうやって決めることになっていて、それがどうして不適切になってしまったのでしょうか。

厳しい見方をすると、委員会が弁護士のみで構成されている場合には、どうしてもコンダクトの深掘りが中心になってしまいがちなのかもしれません。

※槇文彦さんによる建物です。福岡大学にて。

 

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新ソルベンシー規制の「残論点の方向性」

金融庁が5月29日に「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する残論点の方向性等について」を公表しました。あれ?「最終基準案」じゃないんだ?とは思いつつ、ようやくここまでたどり着いたということなのでしょう。お疲れさまでした。
ちなみに「概要」の最終ページ「新規制導入に向けたタイムライン案」には、赤字で「2024年5月 基準案公表」とありますが、この「基準案」とは今回公表した「残論点の方向性等について」を指すようです。

今回の「残論点の方向性等について」(つまり基準案)はこれまで挙がっていた論点に対する暫定案をまとめたもので、逆に言うと、論点として挙がっていなかったことについての記述はほとんどありません。ですので、例えば第1の柱の標準的手法について確認したければ、フィールドテストの仕様書など、他の資料にあたる必要があります。
2024年秋頃の「法令等パブコメ」までには最終基準案としてまとまった資料が出るのでしょうか?

金融庁は早期是正措置として、これまでのソルベンシーマージン比率(SMR)に代わり、ESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)を発動基準として、その水準に応じて段階的に監督介入を行うことになります。例えばESRが100%を下回ったら介入を開始し、35%を下回ったら業務停止命令です。
MCR(最低資本要件)の水準を0%ではなく35%としたのは、早期是正措置は事業の継続を前提にした制度であり、MCRも破綻処理のトリガーではないので、「一般に債務不履行のおそれがあるとされるCCC格の一つ上のB格相当の格付における破産確率に概ね対応する水準と仮定した格付機関の公表データに基づく試算や、EUのソルベンシーⅡの事例も参考に」したとのこと。つまり、業務停止命令の発出イコール破綻と捉えるのは正しくないということですね(保険会社が法的破綻を申し出る重大な考慮要素ではあります)。このあたりはもう少し丁寧な説明が必要かもしれません。
なお、これまでSMRとともに早期是正措置の発動基準となっていた実質資産負債差額は、新たな枠組みでは外れることになりました。

注目している第3の柱では、法定開示項目として、これまで出ていた項目のほか、「有価証券に係る補足情報」「保険負債の商品別差異調整に係る情報」が加わりました。定性的な開示事項の「リスク管理情報」には、「ORSAの経営への活用を含む、ORSAに係る基本方針及び体制等」ともあります。
もっとも、具体的な開示内容がまだ私にはわからないので、どこまで有用性の高い情報が出てくるか、引き続き注目していきます。

参考までに、フィールドテスト(2023年)の結果概要では、ESRの感応度分析だけではなく分子、分母それぞれの感応度分析も出ていますし、「金利」ではなく「円金利」と「米ドル金利」の変動に対する感応度となっています(為替の感応度もあります)。

※写真は東京・銀座です。

 

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日本の保険会社による海外M&A

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1232(2024.5.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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韓国保険学会が創立60周年を迎え、日本保険学会を代表するかたちで記念大会に参加し、スピーチをしてきました(5月10日)。日本保険学会と韓国保険学会の関係も50年前から続いているそうで、改めて日韓の近さを感じました。

保険会社のM&Aについて講演

私の講演テーマは「日本の保険会社のM&Aについて」。これは韓国保険学会からのリクエストに応えたものです。
韓国でも少子高齢化が進み、国内市場の将来的な縮小が見込まれるなかで、近年の日本の保険グループによるM&Aを通じた積極的な事業ポートフォリオ見直しに非常に関心があるとのことでした。そこで、日本の保険会社による主な海外M&Aを紹介したうえで、大手損害保険グループのM&Aを通じた海外保険事業(特に先進国市場)の拡大について、次の4つの背景が考えられるという話をしました。

・将来的に国内市場の縮小が見込まれる
・海外再保険会社に頼らずに保険引受リスクの分散ができる
・高い信用力を活用できる
・株主からの資本有効活用への強い期待に応える

海外M&Aのほか、近年では介護事業など、M&Aによる異業種への進出も目立つという話も紹介しました。

なぜM&Aなのか

うれしいことに、講演後には多くの質疑応答がありました。そのなかで特に印象に残った質問は次の2つです。
1つは、「海外に子会社を設けるのではなく、なぜ買収による事業拡大なのか?」という質問です。あくまで私の考えではありますが、簡潔に言えば「時間をお金で買った」という趣旨の説明をしました。
過去の成功事例として、損害保険会社による子会社方式での生命保険事業進出を振り返ってみても、損保の顧客基盤や販売網などを活用できたにもかかわらず、一定規模となるにはかなりの時間を要しています。他方で韓国の大手保険会社による海外M&Aは新興国が中心なので、グループへの利益貢献が非常に小さいとのことでした。
ちなみに、講演のなかではM&Aの失敗事例の話もしています。

純投資なのか事業投資なのか

もう1つは、「海外M&Aの目的は純投資なのか、それとも事業による利益獲得をねらったものか」という質問です。
私の考えでは後者、つまり、事業による利益獲得をねらったものという回答になります。純投資であれば、ある保険会社1社に多額の資金を投じるよりも、同じ金額を使って多数の保険会社に投資したほうが、同じ期待リターンでもリスクは小さくなります(ポートフォリオ理論ですね)。
それでも特定の会社に投資をするというのは、国内中心の事業展開から脱却したほうが将来的にグループ全体としての価値を高めることができるという経営判断が、どこかの時点であったはずです。さらに、自らが大株主となることで、買収先の価値をこれまで以上に高めることができるという期待もあるのでしょう(プレミアムを支払ってまで買収しているので)。

ただし、ここで問題になるのが相互会社の場合です。純投資であればまだ理解できるとしても、成長が期待できるからといって海外の保険会社を買収し、グループとして非社員契約を増やしてしまうのは、契約者が会社の構成員(社員)となっている相互会社のあり方として適切なのかという疑問が生じます。また、株主と相互会社の社員では、経営陣への期待(リスクのとり方など)も異なると考えるのが妥当です。
おそらく質問者にそこまでの意図はなかったでしょうが、これはいい質問だと思いました。
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※韓国の鉄道博物館に行きました。

 

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損保4社の業務改善計画

企業向け保険料の事前調整問題で金融庁が昨年末に出した業務改善命令に基づき、大手損保4社が2月29日に業務改善計画を金融庁に提出し、その概要を公表しました。いくつかのメディアから取材を受けたので、備忘録としてコメントが載った部分をご紹介します。

時事通信

政策株6.5兆円、すべて売却へ 不正の温床、迫られた清算―損保4社」という記事の最後のほうに、

「政策株の全売却について、保険業界の動向に詳しい福岡大学の植村信保教授は『いびつな保険の取引慣行の是正のきっかけになる』と指摘」

というコメントが載りました。記事はその後、「金融庁は『政策株がゼロとなるよう売却状況を監視していく』(監督局幹部)方針だ」で締めくくられています。

読売新聞

損保4社 改善計画 政策保有株ゼロ 目指す 過度な営業支援も是正(読売会員限定)」という記事の最後に、

「福岡大の植村信保教授(保険論)は『長年続いてきた慣行を変えるのは容易ではない。損保各社の取り組みは当然として、顧客企業の意識改革も重要だ』と指摘する」

というコメントが載りました。
ちなみに同紙は政策保有株式の削減について、「純投資に切り替わるだけに終われば改善策は骨抜きとなりかねない(中略)各社が売却を加速していけるかが問われそうだ」という冷静な視点を示しています。

参考までに、4社の業務改善計画はこちらになります。
東京海上グループ
三井住友海上
あいおいニッセイ同和
SOMPOグループ

「取引慣行」に関する改善策として政策保有株式の売却のほか、

・本業支援の見直し(出向を含む)
・企業代理店のあり方

が挙がっています。「トップライン重視・シェア重視」に関しては、

・営業目標や個人評価制度の見直し
・保険引受管理態勢の見直し

が挙がっています。
いずれも方向性として全く違和感はないとはいえ、個社の取り組みだけでどこまで実現できるか。政策保有株式のように、外部からでも取り組み状況がわかるといいのですが、透明性について工夫が必要ではないかと思います。

※三越本店のライオンに会ってきました。

 

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生命保険会社の異業種買収

日本生命によるニチイ学館グループの買収、第一生命によるベネフィット・ワン買収と、大手生命保険グループによる異業種の買収発表が相次ぎました。これをどう考えるべきか。
このようなお題を「日経モーニングプラス(BSテレ東・2月26日放送)」からいただいたので、次のようにまとめてみました。

背景として「人口減少によって国内の保険市場の縮小が見込まれる」(2023年12月8日のNHKニュース「生命保険大手 異業種の企業買収の方針を発表 収益基盤を強化へ」)と言ってしまえばそれまでですが、自分がコメントするとしたら次の2点を挙げたいです。

1つは、大手生保グループが金融市場に影響を受けやすい現在の経営構造を見直そうとしていることが挙げられます。
伝統的な生命保険では将来にわたり予定利率を保証しており、ヘッジが不十分であれば金利リスクを抱えます。しかも、大手生保は多額の株式を保有していますし、最近まで外貨建資産を増やしてきました。その結果、経営リスクの多くが金融市場関連という状況にあるとみられ、例えば第一生命グループはこうしたリスク構造の見直しを図るとしています。

もう1つは、人口動態の変化を受け、死亡保障ニーズが急速に縮小するなかで、保険会社が長生きリスクへの備えに活路を見出そうとしていることです。
この30年間に、かつて多数派だった「夫婦&未婚の子ども」世帯の割合は大きく下がり、単身世帯と夫婦のみ世帯の割合が増えました。しかも、かつて多かった「専業主婦」は今や少数派です。こうした変化を受けて、すでに各社は長生きリスクへの備えとして医療保険や長寿対応の保険を提供しており、「異業種」とはいえ、介護サービスや福利厚生サービスもその延長線上にあると考えられます。買収によって介護サービスや健康関連のデータにアクセスできるのであれば、その価値は大きいでしょう。

人口減少と言ってしまえば何でも説明できるとはいえ、もう少し踏み込んで考えてみました。

※福岡からのリモート出演でした。

 

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政策保有株式の売却

既報のとおり、SOMPOホールディングスは2月15日のIR説明会「次期中期経営計画の方向性」のなかで、政策保有株式の削減ペースを加速し、最終的に保有残高ゼロを目指すという方向性を打ち出しました。

損保グループ各社はこれまでも資本効率向上の観点から政策保有株式の削減を進めてきました。削減を加速する背景には、金融庁が企業保険分野における適正な競争を妨げる要因の1つに政策保有株式の存在があると認識したことがあります。
鈴木大臣は13日の会見で、「政策保有株式の売却の加速は重要であると考えておりまして、現在、大手損保4社に対して、今月末までに提出を求めている業務改善計画が、そのような観点も含めたものとなるよう、各社との対話を進めているところです」と話しています。そうである以上、おそらく行政処分を受けた他の損保グループも同じような動きになる可能性が高そうです。

企業保険分野における適正な競争という観点からすると、政策保有株式や本業支援の問題は確かに大きいと思います。さらに言えば、例えば「従業員向けの火災保険・自動車保険で収益を上げているので、管財物件の料率が取れていなくてもOK」という発想(慣行)にもメスを入れる必要がありそうです。

短くてすみませんが、とりあえずコメントまで。

※大阪での会合の後、久しぶりに奈良に行きました。

 

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