生命保険会社の異業種買収

日本生命によるニチイ学館グループの買収、第一生命によるベネフィット・ワン買収と、大手生命保険グループによる異業種の買収発表が相次ぎました。これをどう考えるべきか。
このようなお題を「日経モーニングプラス(BSテレ東・2月26日放送)」からいただいたので、次のようにまとめてみました。

背景として「人口減少によって国内の保険市場の縮小が見込まれる」(2023年12月8日のNHKニュース「生命保険大手 異業種の企業買収の方針を発表 収益基盤を強化へ」)と言ってしまえばそれまでですが、自分がコメントするとしたら次の2点を挙げたいです。

1つは、大手生保グループが金融市場に影響を受けやすい現在の経営構造を見直そうとしていることが挙げられます。
伝統的な生命保険では将来にわたり予定利率を保証しており、ヘッジが不十分であれば金利リスクを抱えます。しかも、大手生保は多額の株式を保有していますし、最近まで外貨建資産を増やしてきました。その結果、経営リスクの多くが金融市場関連という状況にあるとみられ、例えば第一生命グループはこうしたリスク構造の見直しを図るとしています。

もう1つは、人口動態の変化を受け、死亡保障ニーズが急速に縮小するなかで、保険会社が長生きリスクへの備えに活路を見出そうとしていることです。
この30年間に、かつて多数派だった「夫婦&未婚の子ども」世帯の割合は大きく下がり、単身世帯と夫婦のみ世帯の割合が増えました。しかも、かつて多かった「専業主婦」は今や少数派です。こうした変化を受けて、すでに各社は長生きリスクへの備えとして医療保険や長寿対応の保険を提供しており、「異業種」とはいえ、介護サービスや福利厚生サービスもその延長線上にあると考えられます。買収によって介護サービスや健康関連のデータにアクセスできるのであれば、その価値は大きいでしょう。

人口減少と言ってしまえば何でも説明できるとはいえ、もう少し踏み込んで考えてみました。

※福岡からのリモート出演でした。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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