千代田生命の破綻から20年

9日の日経に、明治安田生命が国際会計基準(IFRS)を採用する方針という記事が出ました。
日経新聞のサイト(有料版)へ

会社自体は今のところ何も発表していないので、真偽のほどはわかりません。ただ、記事では「(新)契約が減ると費用の計上が少なくなるので、増益要因となることが多い」「金利の動きも(IFRSでは)これまでより決算に反映される」など、現行の会計基準では生保の経営実態がわかりにくいことを示していて、これはその通りです。

実態がわかりやすく示されれば、経営破綻を回避できるとまで言い切れないにしても、経営に対する規律が効きやすくなるのは確かでしょう。

ちょうど20年前の10月に、千代田生命保険と協栄生命保険が相次いで経営破綻し、大きなニュースとなりました。特に千代田生命は大手生保の一角を占めていたこともあり、各方面に大きな衝撃を与えました。
拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」では両社の破綻について検証を行いましたが、このタイミングで千代田生命の関係者のかたがご自身のブログに「千代田生命破綻の真相」をつづっていますので、ご紹介します。内容についてはコメントしませんので、ご覧いただければと思います。

文面によると、「危機を訴えたために左遷させられ」という経験をお持ちのかたのようですね。拙著でも「財務(資産運用)部門でA氏に意見を言った社員は人事で飛ばされたり、担当を外されたりした。(中略)バックに神崎社長がいて、実際に反対した数人が外されると、もう誰も止めに入らなかった」という証言を載せています。

それにしても、あれから20年ですか。月日がたつのは早いものです。

※写真は大牟田です。

 

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株式の保有状況

9月末に生命保険会社のディスクロージャー誌がようやく出そろいました。
新たな開示はないかと探してみると、日本生命が「株式の保有状況」を初めて開示していました。
日本生命のサイトへ

参考までに他の相互会社では、明治安田生命は以前から開示があり、住友生命や朝日生命、富国生命は非開示のようです
(住友生命はかつてどこかで見たような気もするのですが…)。

「株式の保有状況」は有価証券報告書への記載を求められている項目で、上場株式会社ではない日本生命や明治安田生命は任意の情報開示となります。

各社の概要は次のとおりです。

【日本生命】
・純投資目的以外の上場株式 14銘柄、4,629億円
・純投資目的の上場株式 1,503銘柄、7兆1,536億円

【第一生命】
・純投資目的以外の上場株式 3銘柄、861億円(みなし保有株式を含む)
・純投資目的の上場株式 2,666銘柄、3兆0,473億円

【明治安田生命】
・純投資目的以外の上場株式 1銘柄、462億円
・純投資目的の上場株式 -、3兆3,718億円

【太陽生命】
・純投資目的以外の上場株式 35銘柄、2,014億円
・純投資目的の上場株式 19銘柄、1,337億円

【大同生命】
・純投資目的以外の上場株式 72銘柄、2,070億円
・純投資目的の上場株式 75銘柄、549億円

T&Dグループと他の会社で政策保有株式についての考えかたが違っているようですね。
ちなみに3メガ損保グループは保有株式の大半を純投資目的以外としています。
各社の純投資目的の上場株式は、三井住友海上が2銘柄、あとは0となっています。

※西鉄電車でランチの旅を楽しんできました。

 

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パンデミックリスクの補償

今回の新型コロナウイルス感染症では、保険業界が社会的な役割を必ずしも発揮できていないと感じる関係者が多いかもしれません。
死亡保険金や入院給付金は新型コロナ感染症を支払い対象としていますが、生命保険協会によると、8月末現在で死亡保険金は897件(約81億円)、入院給付金は11,100件(約15億円)だそうです。件数があまり多くないのはいい話なのですが、保険が役に立ったと感じる人もあまり多くないということになります。
さらに、事業中断の補償など、損害保険の支払いはより限られているようで、事業停止に伴う損失の補償は専ら政府が担っています。ただ、どの補償スキームも事前の準備が少なかったためか、給付金や支援金が必ずしもスムーズに提供されているとは言い難いようです。

海外に目を転じると、日本よりも厳しい経済・社会活動の制限が実施された欧米各国で、今回のパンデミックの教訓を生かし、パンデミックリスクに備えた官民連携のスキームを検討する動きがあるようです。
損害保険事業総合研究所の機関誌『損保総研レポート』の2020年7月号は、欧州および米国でパンデミックリスクに備えた官民連携スキームを模索する動きを2つのレポートで報告しています。

牛窪主席研究員による「米国における新型コロナウイルスと事業中断保険を巡る動向」では、政府再保険を活用したパンデミックリスク保険制度を創設する法案が連邦議会で検討されていることや、米国損害保険協会(APCIA)などの業界3団体が、将来のパンデミックの際に事業者を支援する連邦プログラム(支払い責任はすべて政府が負担)の創設案を公表していることを紹介しています。
濱田主席研究員による「新型コロナウイルスの損害保険業界への影響」では、ドイツ保険協会が、補償を受ける可能性のある事業者が拠出し、政府も資金を提供するパンデミックリスクに備えた基金の創設を検討していることや、イギリスやフランスで、政府による再保険を活用したスキームを検討する動きがあることを紹介しています。

同様の動きは日本でもあるのでしょうか。
パンデミックのリスク特性を踏まえると、民間だけで補償を引き受けるのは簡単ではなさそうですが、普及活動や支払業務などオペレーションの面で貢献できると思います。例えば地震保険を参考に、中小企業向けの補償を念頭に置いた制度を検討する価値はあるかもしれません。

※先週末に訪問した「かっぱ駅」です。

 

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「基礎から理解するERM」

今回は新刊のご案内です。中央経済社から「基礎から理解するERM」という書籍が発行されました。編著者の武蔵大学の茶野努先生、一橋大学の安田行宏先生をはじめ、私を含む10人の執筆者によるものです。

本書は2015年に発行された「経済価値ベースのERM」を大幅に改訂し、かつタイトルも改めたものです。「経済価値ベースのERM」では主に保険業を中心に扱っていましたが、今回の「基礎から理解するERM」は銀行業に精通する執筆陣が新たに加わり、以下の構成となりました。

第1章 ERMとは何か、どこへ進むのか?
第2章 リーマンショックの背景とバーゼル規制強化
第3章 保険ソルベンシー規制の国際動向と生保経営への影響
第4章 リスク計測・管理手法の変遷と課題
第5章 銀行の流動性創出機能について-流動性リスクとリスク管理の観点から-
第6章 地方銀行におけるリスク管理への取り組み
第7章 生命保険会社のERM-銀行との比較を通じて-
第8章 損害保険会社のERM-自然災害リスク管理を中心に-
第9章 保険会社によるERM関連情報の開示
第10章 CROによるERM論

第10章の「CRO」はSOMPOホールディングスの伊豆原さんです。SOMPOホールディングスはIR資料や有価証券報告書でERM関連情報を積極的に開示している会社ですが、本章は同社のERMについての考え方がよく理解できる内容となっていて、興味深く拝見しました。

私が担当したのは第9章で、5年前に執筆したものを多少改訂したものです。多少の改訂ですんでしまったのは、この間、日本では上場保険グループによる投資家向けの任意開示を除き、ERM関連情報の開示にほとんど進展がなかったことを意味しています。経済価値ベースのソルベンシー規制の方向性が示されたことですし、数年後には進展がみられることを期待しています。

※秋ですね。

 

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生保の第1四半期報告より

今週のInswatch Vol.1050(2020.09.14)に寄稿したものです。
一時的な緊急事態から新たな生活様式にシフトするなかで、各社の新契約獲得力はどうなっていくのでしょうか。
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対面チャネルは総じて厳しい結果に

既報のとおり、新型コロナ感染症による営業自粛で、第一四半期(4-6月期)の生保各社の業績は著しく落ち込みました。

営業職員を主力チャネルとする大手生保では、個人保険の新契約件数、新契約年換算保険料ともに前年同期に比べて5~7割減少しています(明治安田生命は約4割減)。
代理店による生損保クロスセルを主力とする損保系生保では、新契約が前年同期に比べて2、3割の減少にとどまっています。ただし、これは損保代理店がコロナ禍のなかで生保営業に邁進したというのではなく、経営者保険の税制見直しにより前年同期の数字が落ち込んでいたためとみられます。中小企業を顧客基盤とする大同生命の新契約年換算保険料が前年よりプラスとなったのも、おそらく同じ理由です。こうした特殊要因のない2018年と比べると、いずれの会社も落ち込みが大きくなっています。
銀行窓販が主体の会社(第一フロンティア生命、三井住友海上プライマリー生命)でも新契約は大きく落ち込みました、こうしてみると、4-6月期は営業職員、代理店、銀行と、どのチャネルでも対面販売はコロナ禍の影響を強く受けたことが確認できました。

他方で、ダイレクトチャネルを主力とする会社は新契約を伸ばしました。ライフネット生命、アクサダイレクト生命、SBI生命などで、「ステイホーム」が追い風となりました。
オリックス生命、はなさく生命、メディケア生命なども健闘しています。オリックス生命は新契約件数も新契約年換算保険料も前年同期比1、2割しか減っていませんし、経営者保険による影響もほとんどありません(ダイレクトチャネルが貢献した可能性はあります)。ちなみに、はなさく生命は日本生命グループ、メディケア生命は住友生命グループの会社です。

個人は解約に動かず

解約が増えているという報道もありましたが、4-6月期の数字を見るかぎり、全体としては、解約はむしろ落ち着いていました。銀行窓販が主体の2社では1-3月期に続き、解約返戻金が高水準となりましたが、あとはエヌエヌ生命とマニュライフ生命の解約がやや目立つ程度です。
銀行窓販で解約が多いのはやや気になります。すでに解約控除期間が終わっている契約であればいいのですが、銀行の勧めにしたがい預金から貯蓄性保険にしてしまい、いざ手元に資金が必要となってはじめて顧客が解約控除の存在を知った、などということはなかったでしょうか。

手元資金に関連して、各社の契約者貸付の残高も調べてみました。6月末の残高が3月末に比べて100憶円単位で増えたのは、日本生命、かんぽ生命、大同生命、ソニー生命、プルデンシャル生命、エヌエヌ生命、あんしん生命でした。経営者保険に注力してきた会社で増加が目立ちますが、契約者貸付に対する取り組み方針による違いもありそうです。

4-6月期は緊急事態宣言が出されるなかでの営業活動でしたが、新たな生活様式が定着してきた7-9月期(とはいえ第2波の影響もありそうですが)の契約動向に注目したいと思います。
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※福岡大学では後期の授業が始まり、着任して初めて対面授業を行いました。

 

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社外取締役による座談会

2013年に政府による成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス改革が始まってから、社外取締役を選任する上場会社が急速に増え、2名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は95%に達しています(市場第一部)。
日本証券取引所のサイトへ

この変化は率直に言ってすごいと思いつつ、当然ながら形だけ整っていても意味はないので、実質的な役割を果たせるかどうかが焦点となります。
経済産業省が7月末に「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」を公表したのも、まさにそのような問題意識からです。

ところで、第一生命ホールディングス「アニュアルレポート2020」に「社外取締役による座談会」が載っていて、読んでみると形式的なコメントばかりではなく、興味深いものでした。

例えば、次のようなコメントがありました。

「社外取締役と社内取締役の間のコミュニケーションが、質、量ともに高まっていることと、そのコミュニケーションも形式的なものではなくて、ガチンコの議論が展開できている、もしくはそうなったということが挙げられます」【朱取締役】

「社外取締役による自律的な取組みが本格的に始まり、それが定着してきたということです(中略)昨年の2月か3月頃から自発的に社外取締役全員で集まって議論するようになり、当初は食事をして懇談するところから始まったのですが、回を重ねるごとに、テーマを決めて、誰かが資料を用意しそれをもとに議論するといったことも始めました」【井上取締役】

「第一生命ホールディングスの取締役の方々は第一生命グループ全体の取締役であり、グループ全体のマネジメントに権限と責任を有しています。取締役が自己の専担範囲の業務執行はしっかりと行うが、他の取締役の担当業務にはあまり関心がない、そのような状況に将来陥っては困ります」【増田取締役】

会社からインプットをしてもらうというレベルから、社外取締役による自律的な取り組みとなってはじめて、取締役どうしのまともな議論ができるようになってきたということなのでしょう。いい流れだと思います。

※40年前に筑肥線・小笹駅があったところです。看板の前あたりだと思うのですが…
 取材したところ、駅前の通りは今よりも低くて、大雨が降ると水没して大変だったそうです。

 

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生保営業職員のターンオーバー

生命保険会社の営業職員組織というと、大量採用・大量脱落のターンオーバー問題が決まり文句のようになっています。
大手生保の数字を確認してみると、確かに2000年代前半は期初の在籍数の3、4割にあたる職員を採用しているにもかかわらず、在籍数が減る(つまり採用を上回る退職が発生している)状態でした。
ところが最近は、在籍数の2割弱にあたる職員を採用し、在籍数は増加に転じているので、退職率は15%程度です。約4割から約15%へというのはかなりの変化です
(日本生命はディスクロージャー誌が未公表なので、2018年度まで確認)。

2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました。新人についても、採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みを行い、ターンオーバーの改善に効果を上げたと考えられます。

あとはこれが持続可能かどうかです。新契約の大半を既契約者やその周辺から獲得しているので、既契約者の高齢化とともに事業基盤が先細りしますし、毎年5千人から1万人という採用数は、高いコンサルティング力を武器にするための採用ではないでしょう。ここからがチャネル改革の本番なのかもしれません。

※かつて近所を走っていた市内電車の痕跡を見つけました。

 

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ところ変われば

26日の日経に「生保解約 コロナで急増(有料会員限定)」という記事が出ていました。経営者保険などを中心に生命保険の解約が増えているとのこと。
確かにエヌエヌ生命では4-6月期の解約返戻金が前年同期より27%増えているのですが、業界全体では4-6月期は1-3月期よりも解約返戻金が少なく、一部を除けば「コロナで急増」という状況ではなさそうです。
中小企業の資金繰りということであれば、保険約款貸付に注目してもよかったかもしれません。大同生命とエヌエヌ生命は増加が顕著ですし、大手4社では日本生命の増加が目立ちます
(中小企業とは関係なさそうですが、かんぽ生命も増えていますね)。

財務部門とは

ところで、どの業界にも、その業界でしか通じない用語ってありますよね。
業界外で通じないだけならいいのですが、同じ用語を別の意味で使っていることもあり、混乱のもととなってしまいます。

保険業界で典型的な事例は「財務」「財務部門」でしょうか。
私は最初の就職先が損害保険会社の財務部門だったので、財務と言えば資産運用でした。
しかし、財務といえば資産運用なのはおそらく保険業界だけで、多くの場合、財務部門は主に資金調達を担当する部門です。私がそれを知ったのは就職してしばらくしてのことでした。
保険会社は先にお金(保険料)が入ってきて、後からお金(保険金)が出ていく事業なので、事業のために外部から資金を調達する必要がありません。だから他の産業と「財務」の意味が違うのでしょう。

支社と支店

生保と損保でも違いは結構ありますね。
これも私の経験で恐縮ですが、損害保険会社(大手)では「〇〇支店××支社」なので、支店長は支社長の上司です。ところが後に生命保険会社を担当するようになって、生保では支店の代わりに「〇〇支社」となっているのに気が付きました。同じ「支社長」でも生保と損保で社内の地位が全然違います。

不思議なことに、大手損保には「本店営業〇部」「本店損害サービス〇部」はありますが、全体としては「本店」ではなく「本社」です。このあたりは歴史的な経緯もあるのでしょうね。

保険料の支払い方法も、生保の「平準払い」のことを、損保はかつて「回払い」と呼んでいました(積立保険が開店休業中なので、今はどうなのかわかりません)。
他方で「占率(せんりつ)」「P免」などは生保の用語ですね。損保でも通じるのでしょうか?

※近くにスーパーが複数あるのは便利です。

 

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保険会社にとっての「重要なリスク」とは

インシュアランス生保版(2020年8月号第2集)に執筆したコラムです。
有価証券報告書で思い出しましたが、今年はまだ保険会社のディスクロージャー誌が出揃っていませんね(8月26日現在)。

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大手保険会社では、保有するリスクを各社の内部モデルを使って可能なかぎり定量的に把握し、経営体力としての自己資本(時価ベース)と対比したうえで、リスクの取り方をコントロールする実務が定着している。このうち3メガ損保グループでは、数年前からリスク量と資本のバランスとともに、リスク量の内訳を公表している。これを見ると、自然災害に伴う多額の保険金支払いなど、一見大きそうに見える損害保険(保険引受)のリスクよりも、多額の政策保有株式に代表される資産運用関連リスクや生命保険事業の金利変動リスクが大きいという実態がわかる。

他方、昨今のコーポレート・ガバナンス改革の一環として記述情報(非財務情報)の開示の充実が求められるようになり、有価証券報告書のリスク情報の記載に変化が見られるようになった。3メガ損保グループの有価証券報告書には、いずれもグループ経営に重大な影響を及ぼすとして特定したリスクが載るようになり、従来のいわば「考えられるリスクの羅列」から一変した。

特に高く評価したいのはSOMPOホールディングスの開示である。同社は特定した27の重大リスクを公表するだけではなく、それぞれのリスクを発生可能性と影響度を評価した「ヒートマップ」として図示し、さらにリスクへの対応状況を説明している。
ヒートマップを見ると、発生可能性は中程度(100年に1回以上)だが、発生した際の影響が極めて大きい(経済的損失で言えば5千億円以上)リスクとして、「経済環境の悪化」「パンデミック」を挙げている。後者の「パンデミック」には、もちろん新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響が含まれている。注意したいのは、ここで示されているのは新型コロナ禍としてすでに実現している損失ではなく、これから起こりうる影響であるということだ。同社では「リーマンショック級の市場変動」「企業倒産の増加等の環境変化による支払い拡大」「経済停滞に伴う保険需要の減少や損害率の変化等」「各事業の継続に不可欠な業務の中断」といった多方面かつ長期にわたる影響を想定し、対応を進めていることがわかる。

この2つに比べれば影響度はそこまで大きくはない(経済的損失で言えば500憶円以上)10のリスクのうち、発生可能性が比較的大きい(10年に1回またはそれ以上)ものとして「大型システム開発プロジェクトの遅延等」を挙げ、発生可能性の評価不能なリスクとして「顧客情報漏えい」「サイバー集積リスク」を挙げている。大型システム開発の影響がここまで大きいとは意外に感じるかもしれないが、まさに経営を左右する投資ということになる。

こうしたリスクプロファイルの把握が経営にどう生かされるのか、私たちは対話を通じて確認していく必要があるだろう。
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※この夏もフルーツかき氷を味わうことができました♪

 

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保険業の従事者数

この夏は執筆ものに追われていまして、確認のためにいろいろと調べることが多いです。
つい先日には保険産業の規模をつかむ一環として、保険業の就業者数を調べました。総務省統計局の経済センサス-活動調査という統計があり、2016年6月時点で668,466人と出ています。
内訳は生命保険業が361,623人、損害保険業が113,019人、保険媒介代理業が143,966人などです。

他方で、生命保険の募集従事者(営業職員と代理店使用人数)は約120万人、損害保険の募集従事者数は約200万人です(資料は「生命保険の動向」「日本の損害保険-ファクトブック」)。

経済センサスと募集従事者の差は、前者が主として保険業に従事している人なのに対し、後者は募集人として届出をしている人なので、銀行などの金融機関や自動車関連(ディーラーや整備工場)、不動産業などの副業代理店の募集人が数値を押し上げているのでしょう。

参考までに経済センサスによると、銀行業444,342人、協同組織金融業189,647人、郵便局286,945人、自動車小売業571,123人、自動車整備業243,301人、不動産業取引業323,508人、不動産賃貸業・管理業845,185人、税理士事務所140,283人でした。

生保の約120万人と損保の約200万人はかなり重複していると考えられるので、仕事として保険産業に関わっている人は300万人には達していないのでしょう。重複度合いを調べるのは難しいですが…とはいえ仕事として保険に関わっている人の数は結構多いと言えるのではないでしょうか。
なお、共済事業に関わっている人(JAや生協など)を含めると、数値はさらに膨らみますね。

※訪問の目的が胃カメラ検査というのがちょっと寂しい気もします。横浜ランドマークタワーです。

 

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