13日に福岡大学で開催された日本保険学会・九州部会で、久しぶりにリアルな場での研究報告を行いました
(正確にはリアルとオンラインのハイブリッド開催でした。伊藤先生をはじめ役員の皆さま、お疲れさまでした)。
私の報告は「マスメディア(新聞)は生命保険会社の決算をどう報じてきたか」です。
(レジュメは次の情報がアップされるまでこちらからアクセスできます)。
ソルベンシー規制の第3の柱、すなわち情報開示による市場規律は、主に株主やアナリストなどの市場関係者を念頭に置いたものだと考えられますが、消費者(契約者)も本質的には保険会社の経営情報を必要としており、市場規律の担い手と言えるでしょう。そして、保険会社の経営情報が消費者にどのように伝わるかを考えた際、メディアによる伝達を無視することはできません。
そこで、2001年から2020年の20年間の新聞(日経、朝日、読売)による生保決算報道を調べてみたところ、継続的に報道がなされているとはいえ、メディアにはメディアが考える「ニュースバリュー」があり、それは必ずしも消費者のニーズに合致しているとは限らないことが見えてきました。
特に近年の画一的な報道には、メディア独自のニュースバリューのほか、日本特有の「記者クラブ制度」「(短期間での)ローテーション人事」も報道内容に影響している可能性がありそうだとわかりました。
このまま2025年に経済価値ベースのソルベンシー規制が導入されると、もしかしたらメディアは相変わらず保険料等収入と会計利益を報じるだけで、経営内容を正しく伝えようとはしないおそれもあると、あらためて認識した次第です。
保険会社のディスクロージャーについての研究はいくつか見かけますが、保険会社のディスクロージャーを伝えるメディアについての研究は見当たりませんでしたので、皆さんに興味深くご覧いただけるのではないかと思います。
もっとも、今回の研究報告は途中経過に近いものなので、さらに調査分析を進める予定です。関係者の皆さまには引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。
※写真は古賀市筵内(むしろうち)地区の菜の花です。