16. その他

「大半の国 中立姿勢保つ」

日経新聞をご覧になっているかたは、木曜日(6/9)の朝刊に掲載された「ウクライナ危機を聞く」というインタビュー記事(有料会員限定)をお読みになったでしょうか。私は毎朝電子版をチェックしているにもかかわらずスルーしてしまい、FB知人の投稿で知りました。

話し手のチャン・ヘンチー氏はシンガポールの政治学者です(外交官と言ったほうが正しいかもしれません)。記事の一部を引用すると…

「ロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会の非難決議には141カ国が賛成した。国連決議に賛成した国の中でロシアへの制裁に踏み切ったのは、欧米やその同盟国を除くと、わずかだ。アジアや中南米、アフリカの大半の国は制裁に同調していない」

「世界の大半の国は米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしない『第3の空間』に属することを望んでいる。自国の国益を第一に考え、ある問題では米国の立場に賛同し、別の問題では中ロに近い立場を取ることを矛盾だと考えない」

世界の現実はこうなのですね。

2月下旬以降、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースが連日流れています。私の日常的なニュースソースはNHKと日経、その他ネットで得られるものが中心なのですが、私たちは何となく「ロシアは世界から孤立していて、一部の大国(中国やインド)だけが中立的な姿勢をとっている」といった世界観を無意識のうちに作り上げているのではないでしょうか。
しかし、残念ながら現実はそうではないと、このインタビュー記事は教えてくれます。

※写真は3月に新装オープンした日本銀行福岡支店です。天神にあります。

 

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令和3年の犯罪情勢

数回前のブログで、人間の2つの思考システムについて紹介しました。人間には物事を直感的にざっくりと捉えるシステム1と、論理的な思考を行うシステム2があって、日常の判断は直感的なシステム1で行われがちで、結果としてリスクを過大に、あるいは過小に評価しやすいという内容でした。数日前に、まさにその通りのニュース(読売新聞オンライン)を見ました。

警察庁が3日に発表した「令和3年の犯罪情勢」によると、2021年の刑法犯認知件数(警察が犯罪と認めた件数)が戦後最小を更新したそうです。刑法犯認知件数は2002年の285.4万件をピークに減少が続き、昨年は56.8万件でした。このうち強盗や殺人、強制わいせつなどの重要犯罪も減少傾向が続いています。

その一方で、警察庁が昨年11月にインターネットを通じてアンケート調査を行い、「ここ10年で、日本の治安はよくなったと思いますか。それとも悪くなったと思いますか」と聞いたところ、「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人の割合が64.1%に上ったそうです。
「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人に、どのような犯罪が発生している状況を思い浮かべていたかを聞くと、上位は「無差別殺傷事件」「オレオレ詐欺などの詐欺」「児童虐待」「サイバー犯罪」でした(5割以上の回答があったもの)。

統計を見れば治安はかなりよくなっているのに、人々は悪くなったと感じています。
アンケート調査の回答者の多くは、犯罪件数がピーク時の5分の1まで減っていることを知らなかったのかもしれません。しかし、もし知っていたとしても、アンケート直前の10月に京王線での切り付け事件が発生し、NHKでは毎日のように林田アナが「ストップ詐欺被害!」とやっていて、児童虐待の痛ましいニュースに心を痛める人々が、警察のアンケートで日本の治安はよくなったと回答するとは考えにくいです。

警察庁の総括は「一部罪種については増加傾向にあるほか、認知件数の推移からは必ずしも捉えられない情勢があることや新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の態様の変化の影響等も踏まえると、犯罪情勢は、依然として厳しい状況にある」です。この総括の参考としてアンケート調査の結果を示しています。
この資料にアンケート結果が載るようになったのは、2019年のものからです。やはり日本の治安について聞いていて、「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人の割合は61.4%。警察庁の総括は「必ずしも当該指標(=認知件数)では捉えられない情勢もあり、依然として予断を許さない状況にある」でした。

警察庁は2001年度から2017年度までの間に地方警察官を合計3万人強増やし、それが治安の回復に効果をもたらしたとしています。成果を上げたということですよね。交通事故による死傷者も減っています。すばらしいです。
事件や事故が減ったなら、警察官を減らすべきと言いたいわけではありません。特殊詐欺件数の高止まりやサイバー犯罪の増加などへの対応を強めることは必要だと思いますし、警察官の仕事が広がっている、あるいは変わってきているのかもしれません。
ただ、結果がほぼ明らかなアンケート調査を行い、それを参考にして「犯罪情勢は依然として厳しい状況にある」と総括するのは疑問を感じます。

※季節外れの紅玉を見つけたので、ジャムを作りました。

 

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もうすぐ総選挙

このところ、総選挙のたびに究極の消去法を迫られる思いです。
今回はシンプルに、発足したばかりの岸田政権に対する信任という点だけで考えればいいのかもしれませんが、アベノミクスの評価だとか、あるいは、まともに各党の公約を見てしまったりすると、どこにも投票できない気持ちになってきます。

「一律10万円の給付」などを掲げる党が、少なくとも与野党に3党あります。そりゃ現金が天から降ってくれば国民は嫌ではないでしょうけど、昨年政府が実施した一律10万円の多くは貯蓄に回ったのではなかったでしょうか。ミクロの政策として特定業種へ一時的に補助金を出すまでならまだわかるのですが。

野党は軒並み消費税の減税を公約にしています。政府の歳出(一般会計)の1/3を占める社会保障費用の財源をどうやって賄うのかを検討し、何年もかけて様々な措置も入れたうえで導入したのが現在の消費税10%です。それでもこうした公約が出てくるのは、わかりやすく(目先の)国民の負担を軽くする感があるからなのでしょう。確かに買い物をするたびに10%の税金を意識させられますからね。

でも、その代わりに「社会保険料の引き上げ」「所得税の引き上げ(特に高所得者)」「法人税の引き上げ」をしなければ国債を増発するほかありません。消費税が下がってうれしいのは、これらを負担しないシニア層だけということを承知のうえで、各党は消費税減税を公約にしているのでしょうか。

他方の自民党ですが、総裁選関連のニュースを見ていた印象では、岸田さんと高市さん(政調会長に就任)の政治思想、あるいは権力行使の姿勢と言ったらいいのでしょうか、私には両者は全然違うように思えます。「丁寧な対話」「人の話を聞く」という総裁と、「大変失礼」「これほどばかげた話はない」と異論を切り捨ててしまう政調会長が同居しているのですから。

ということで何とも悩ましいわけですが、棄権や白票は中立の行動ではなく、多数派に投票するのと同じような効果を持ちます。そこまで踏まえたうえで行動することを若い皆さんには伝えていきたいです。

※博多駅ビルの屋上に「鉄道神社」がありました。

 

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メディアの信頼度

「平日のインターネットの利用時間が全年代(10~60代の平均値)で初めてテレビの利用時間を上回った」というニュースをご覧になったでしょうか。これは総務省情報通信政策研究所が2012年から行っている調査の結果でして、年代別に見ても、テレビ(リアルタイム)の視聴時間がネットの利用時間を上回ったのは50代と60代だけでした。
新型コロナ感染症の流行下で行われた調査だったため、動画配信などネットの利用が通常よりも増えた可能性もありますが、これまでの傾向からすれば、逆転は時間の問題だったのでしょう。ちなみに休日はまだ平均値でテレビがネットを上回っていて、ネットがテレビを上回っているのは10代と20代だけでした。

それにしても、休日の10代、20代のネット利用時間は290分(=4時間50分)、60代のテレビ視聴時間(リアルタイム&録画)は370分(=6時間10分)という結果には驚きました。休日なので8時間睡眠とすると、10代、20代は起きている時間の約3割をネットとともに過ごし、60代は起きている時間の4割弱でテレビがついていたということになりますね。

この調査ではメディアの信頼度についても調べていて、全世代平均で最も信頼度が高かったのは新聞でした。年代別に見ると、30~60代はいずれも新聞の信頼度が最も高く、20代でも新聞とテレビが同じ信頼度となっていました。
多くの人は「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ためにはネット(10~40代)またはテレビ(50代と60代)を利用し、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」手段として新聞と答えた人は15%程度であるにもかかわらず、メディアとしての信頼度は新聞が一番というのは興味深い結果です。あまり利用していないけど、社会としては重要な存在という認識なのでしょうか。

※ご当地ヒーローに遭遇しました!

 

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長崎の鐘

娘の「リベンジ修学旅行」に付き合って、2年ぶりに長崎に行ってきました。
熊本地震で高校の修学旅行が中止となったリベンジをしたいとのことで、プランニングを委ねられたので、初日は中華街からオランダ坂、グラバー園をめぐって異国情緒を堪能し、2日目は原爆の爆心地だった浦上地区を訪ね(午後はカステラめぐり)、3日目は娘の希望でハウステンボスまで足を伸ばしました。

2020年のNHK連続テレビ小説「エール」にも登場した長崎の鐘。浦上天主堂のアンジェラスの鐘は原爆で吹き飛ばされましたが、2つのうち1つは瓦礫の中から見つかり、今も1日に3回鳴っています。
原爆資料館で熱線、爆風、放射線による被害の甚大さを学び、夏空の爆心地で2人で空を見上げたあと、正午に鳴った浦上天主堂の鐘の音はきっと心に響いたのではないかと思います。

被災した浦上天主堂はしばらく廃墟が残っていたそうです。原爆の記憶として残したいという要望が強かったものの、最終的には廃墟を撤去したうえで、今の天主堂が1959年に再建されました。
2018年に長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産がユネスコ世界遺産に登録された際、浦上天主堂は登録されませんでした。建物自体に歴史的価値はないのかもしれませんが、浦上天主堂はキリシタンの歴史を知るうえで重要なだけでなく、「なぐさめ はげまし 長崎のああ 長崎の鐘が鳴る」(長崎の鐘より)の舞台です。世界遺産とはいったい何なのか、考えてしまいます。

 

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東京圏への議席集中は問題なのか

総務省が、25日に発表した2020年の国勢調査の速報値をもとに衆議院小選挙区の数を試算したところ、衆院小選挙区は東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知で計10増え、宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎で計10減ることがわかりました。2016年の法律改正で議席配分方式が新しくなったこともありますが、人口が大都市に集中し、地方で減っているためです。
総務省のサイトへ

この結果を受けた各政党のコメント(25日のNHKニュースに載ったもの)を見ると、都市部と地方の議席バランスが変わる(地方選出の議員が減る)のを問題視する発言が結構ありました。
そりゃ、自らが地方選出という議員にとっては死活問題でしょう。「東京都など関東地方に議員の数が非常に集中していくことになる。そのバランスをどう考えるかも含め、この5年10年のことではなく、その先も考えながら議論しなければならない」と述べた安倍前首相の地元である山口県も試算では1減となっています。

こうしたコメントをしている各政党の方々と私とでは、どうも頭の中にある「あるべき姿」が違うようです。各政党のコメントから判断すると、1票の較差(格差)を2倍とするのが格差是正の目標(あるべき姿)となっているように見えるのに対し、私は、本来あるべき姿は格差ゼロだと考えています。完全に格差をなくすのは難しいにしても、できるかぎり格差をなくす方向にしていくべきです。
新たな方式で割り振り直したところで、人口が最小の鳥取2区と最大の東京22区では1票の格差が2倍あります。都市部に住んでいる有権者は正当な理由なく、地方よりも国政に参加する権利を制限され続けていると感じます。

東京圏への議席集中は何が問題なのでしょうか。地方の声が反映されにくくなるから?
1票の格差が大きいことで、これまでずっと都市部の声が反映されにくい状態なのに。
民主主義国家において、都市部の有権者の権利を制限する正当な理由などあるのでしょうか。つまるところ既得権益を守りたいということしか思いつきません。
もちろん、国として人口の大都市集中を是正するという政策は(賛否はともかく)理解できます。しかし、人口集中の是正で行うべき政策と、有権者の権利を守ることは全く別であって、東京圏に人口が集中した結果、国政を担う有権者の代表が東京圏に集中してしまうのは当然です。

都市部にすむ有権者(いま住んでいる福岡市中央区も最小選挙区との格差が2倍近くあります)としては、今後も主張し続けていこうと思います。

※睡蓮の向こうにNHK福岡放送局が見えます。

※NHKニュースが消えてしまうかもしれないので、各政党のコメントを残しておきますね。

自民党(逢沢選挙制度調査会長)
「1票の格差が2倍を超えない状況をしっかり確保していくことは、非常に大切な憲法上の要請だ。ただ、地方と都市部の議員の数の格差がさらに広がることは、国民も相当な危機意識を持つと思う。地方創生や一極集中の是正をさらに強化しないといけないし、党としてより配慮した努力が求められる」

立憲民主党(安住国会対策委員長)
「1票の格差を2倍以内に抑えていくことは、憲法の理念からもやらなければいけない。ただ、政治が本来、光をあてないといけない過疎地から議員を減らし、東京だけを増やせばいいということには、大変複雑で割り切れない思いだ。このやり方が果たして正しいかどうかは、これから議論したほうがいい」

公明党(井上政治改革本部長)
「新たな議席配分が実現すれば『1票の格差』が2倍以内となり、投票価値の平等が確保される。速やかに区割り案の検討が行われることを期待するとともに、その後、公職選挙法など必要な法改正を進めていきたい」

日本維新の会(馬場幹事長)
「人口が集中する地域の議席が増える一方、人口が減る地域では議席が減っていくというのは制度自体のひずみで、根本的な選挙制度の見直しをしていく時期が来ている。地方で現状と同じ程度の議席を確保しつつ、国内全体の定数は減らすことを検討すべきだ」

共産党(穀田選挙対策委員長)
「有権者にとってみれば、しょっちゅう選挙区が変わることになる。そもそも小選挙区制度そのものに根本的な問題があるのであって、この制度を変えることなしには1票の格差の問題は解決できない。選挙は民意をいかに正しく反映させるかが重要で、比例代表を軸にした制度に変える必要がある」

国民民主党(玉木代表)
「地方の衰退を助長することにつながらないか、強い懸念を感じる。『1票の格差』の問題は非常に重要だが、国土を守っていくためにオールジャパンの観点も必要だ。このまま地方の議席を減らしていいのか。憲法も含めて、根本に立ち返った議論を始めるべきだ」

 

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植物博士・牧野富太郎

日本の植物分類学の父と言われる牧野富太郎の生涯に触れる機会がありました。

牧野先生は幕末に高知県佐川町に生まれ、94歳で亡くなるまで生涯を植物の研究に捧げた人物です。東京大学に47年間勤め、理学博士の学位も受けているので、典型的な学者人生を送ったかただと思っていましたが、全くちがいました。
牧野先生は小学校中退という学歴で、本格的に植物の研究を始めた20代には、東大の植物学教室に「出入りを許されていた」という状態。豪商だった実家の支援で研究活動を行っていて、その負担から実家は没落してしまったとか。

その後、31歳で東大助手の職を得ます。でも、それだけでは家族の生活費にも足りず、借金まみれの暮らしぶりとなります(牧野先生にはコストを抑えようという発想がなかったみたいです)。
後年、発見した新種の笹に妻の名をとって「スエコザサ」と名付けていますが、壽衛子夫人の支えがなければ生活は不可能でした。牧野先生は随筆のなかで、「壽衛子は平常、私のことを ”まるで道楽息子を一人抱えているようだ” とよく冗談に言っていましたが、それはほんとうに内心そう思っていたのでしょう」と書いています(平凡社「牧野富太郎 植物博士の人生図鑑」より引用)。夫人の稼ぎを研究費に充てることもあったようです。

さらに、50代になって困窮が極まり、採集した植物標本などを海外の研究所に売ろうとしたこともありました。しかし、それを新聞報道で知った篤志家の支援によって危機を脱します。まるでドラマです。

東京大学での研究活動も常に順調だったわけではなく、植物学教室から突然出入りを禁止されたり、助手や講師になってからも何度か追放されそうになりました。
例えば48歳の時、助手でありながら研究の結果を次々に発表するので、権威や秩序を重んずる東大教授とぶつかり、休職となってしまいます。その後、牧野罷免反対の声が上がり、50歳で講師となりました。それだけ牧野博士が研究者として自由かつ有能だったのだと思いますが、その後も講師のまま77歳で辞職しました。

出身地の佐川町には「『朝ドラに牧野富太郎を』の会」があり、署名活動を行っています。エピソードには事欠かないので、描き方によっては面白いドラマになりそうですね。

 

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政府のワクチン確保

新型コロナウイルスのワクチン接種が当初の見込みよりも遅れることがわかりました。
日経のニュース(有料会員限定)

M&Aや業務提携などで基本合意に達しても、そこから本格的な交渉が始まるのであって、最終的に契約締結に至らず、破談になることもあります。基本合意とはそのようなものです。
過去には保険業界でも、三井海上、日本火災、興亜火災のケース(1999年10月に統合を発表し、2000年2月に破談)など、大型M&Aが最終合意に達しなかった事例がいくつかありました。
合意するかどうかの判断は、株主をはじめとするステークホルダーに対し、それが企業価値を高めると説明できるかどうかです。

ですから、基本合意しても破談となったり、当初の合意と最終的な契約が異なることは理解できるのですが、これが新型コロナのワクチンで悪いほうに生じてしまうとは、ステークホルダーたる国民としてはガッカリです。

念のため厚生労働省の発表文を確認しましょう。
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2020年7月31日の厚生労働省リリース「新型コロナウイルスワクチンの供給に係る米国ファイザー社との基本合意について(PDF)」

本日、厚生労働省は、米国ファイザー社が新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることについて、ファイザー社と基本合意に至りましたので、お知らせします。
今回の基本合意は、ファイザー社との間で供給量等の基本的な事項に関して合意を得たものであり、今後、最終契約に向けて速やかに協議を進めてまいります。(後略)

2021年1月20日の厚生労働省リリース「新型コロナウイルスワクチンの供給に係るファイザー株式会社との契約締結について(PDF)」

本日、厚生労働省は、米国ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンについて、日本での薬事承認等を前提に、年内に約1億4,400万回分の供給を受けることについて、ファイザー株式会社と契約等を締結しましたので、お知らせします。
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基本合意では「6月末までに6000万人分の供給」だったものが、最終的な契約等(「等」が気になります…)では「年内に約1億4400万回分(1人に2回必要なので約7200人分)」と、供給が半年ずれてしまいました。

活動自粛により感染拡大を抑えこんでも、活動を再開すると再び感染が拡大する(まさに今の状況)ので、多くの国民はワクチンが普及するまでと不自由な生活を忍んできました。ですからワクチンの確保はどう考えても優先順位の高い政策です。供給が半年ずれるということは、ステークホルダーにさらなる不自由を求め、国の価値(GDPなど)を大きく傷つけることになります。某マスクの比ではありません。

日経報道が正しければ、政府は年末まで米国のファイザー本社と直接交渉していなかったそうで、世界的なワクチン争奪戦のなかで、優先順位の高い政策において、これが正しい戦い方だったとは思えません。

もちろん、交渉決裂によりファイザーからの供給がなくなってしまうよりはマシですし、英国アストラゼネカとは開発成功後に1500万人分の供給を第1四半期中(1-3月と推測)に受ける、米国モデルナ&武田とは上半期(1-6月)に2000万人分の供給を受ける契約をそれぞれ締結しているようなので、6月までワクチンが全くないという状況ではないかもしれません。
ただ、厚生労働省が少なくとも昨年12月の時点で想定していたスケジュールが遅れるのはほぼ確実なので、これが企業経営者であれば、ステークホルダーから責任を問われる事態だと思います。リスクマネジメントやガバナンスを学生に教える立場からしても、今後の展開に注目しましょう。

※写真は福岡・マリノアシティからの眺め。アウトレットがあります。

 

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飫肥の旅

杵築(大分県)、秋月(福岡県)に続き、年末に古い町並みが残る飫肥(おび。宮崎県)を訪ねました。
同じ九州でも福岡から宮崎は意外に遠くて、陸路では最短でも3時間強かかります。飫肥は宮崎からさらにローカル線に揺られること1時間余りのところにあります。

飫肥は伊東氏が代々治めた城下町です。伊東氏のルーツは曽我兄弟の仇討ちで有名な工藤祐経(すけつね)で、祐経の子が工藤を伊東に改めたそうです。戦国時代には島津氏と争って敗れたものの、豊臣秀吉に仕えて軍功を挙げ、飫肥にカムバック。関ヶ原の戦いでは徳川方につき、小藩ながら伊東氏の統治は幕末まで続きました。伊東氏が江戸時代を生き延びたのは、島津氏を監視する役割を担っていたのかもしれません。
なお、天正遣欧少年使節の伊東マンショも伊東氏の一族で、島津に敗れて豊後に逃れた際、キリスト教に出会ったそうです。歴史は面白いものですね。

城下町というと城跡や武家屋敷を見学するのが定石ですが、たまたま建物が気になって立ち寄ったところが「服部植物研究所」という、世界で唯一のコケ専門研究所でした(上と下の写真)。飫肥出身の植物学者である服部新佐(しんすけ)博士が終戦直後の1946年に研究所を設立し、ここを拠点にコケの研究を行っていたそうです。スタッフのかたに内部を案内していただき、顕微鏡をのぞいたり、標本や資料を拝見したりと、思いがけず楽しい時間となりました。

博士は家業の林業で稼いだお金をコケの研究につぎ込んでいたとか。今も十数名の研究員が所属し、研究活動を行っているそうですが、こうした研究所が大都市ではなく、小さな城下町で存続していることに感銘を受けました。

 

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2020年を振り返る

あけましておめでとうございます。
年末は早めに横浜に戻り、原稿チェックなどをしていました。例年ですと元日は実家(徒歩5分のところです)で会食をするのですが、今年は残念ながら中止して、代わりにみんなで近所の小さな神社へお参りしてきました。来年はいつものように実家で食事ができるといいですね。

それにしても、あっという間の1年間でした。備忘録として簡単に振り返ってみます。

<1月>
学会発表で年始から釜山へ。結果として2020年唯一の海外出張となりました。1月はマニラでの講演も予定されていたのですが、火山の噴火で延期となり、そのままになっています。

<2月>
福岡生活の準備で忙しくしていました。新型コロナ感染症の影響で、下旬から週に何回かテレワークを始めました。

<3月>
各種の催し物が相次ぎ中止となり、私もベトナムの旅を断念。代わりに娘と福岡から鹿児島に足を伸ばし、名物しろくまを味わってきました^^v。

<4月>
福岡生活スタート。緊急事態宣言が出ていましたので外食には頼れず、何とか自炊生活を軌道に乗せようと悪戦苦闘していました。授業開始は28日で、初回は事前準備にもかかわらず大混乱でした(涙)

<5月>
オンライン授業が本格的に始まり、準備とフォローに追われる日々でした。授業の中身よりも、ネット環境の整備や各種アプリの確認、動画アップなどに時間をとられ、厳しい日々でしたね。大学に来ていた先生がたとの情報交換が非常にありがたかったです。

<6月>
zoomやwebexなどのビデオ会議システムで説明会に参加したり、取材を受けたりするのが普通になりました。5月に続き、zoom飲み会も毎週のようにやっていました。

<7月>
4月以降、初めてキャピタスの築地オフィスに出社しました。前期の授業は無事(?)終了です。

<8月>
2週間ほど横浜の自宅で過ごしましたが、保険の書籍のため、どこにいても執筆の日々でした。

<9月>
後期の授業が始まり、ゼミで初めてリアルに学生に会えました(講義は引き続きオンラインです)。

<10月>
京都でスピーチがあり、初めて新幹線で横浜に戻りました。福岡の県立高校で話をしたのもこの月です。

<11月>
推薦入試の面接官を初めて担当しました。講義もゼミも比較的順調で、ネット関連に悩まされることも少なくなりました。月末には息子が福岡に初登場。

<12月>
福岡は太平洋側ではないので、天気の違いに驚きました(寒いです)。

こうしてみると仕事ばかりしていたようですが、過去のブログの写真をご覧いただくと、福岡市内を歩き回ったり、後半は唐津や別府、霧島など、九州の他県にも足を伸ばしています。
何よりほとんど体調を崩さず、健康でいられたのが幸いでした。マスクや手洗いの効果があったのかもしれませんね。

それでは今年も引き続きよろしくお願いいたします。

※港の見える丘公園から見たガンダムです。

 

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