16. その他

出国日本人数の伸び悩み

日本政府観光局の統計によると、インバウンドの回復が鮮明となっています。8月に日本を訪れた外国人旅行者は3か月連続で200万人を超え、コロナ前の2019年8月と比べて86%の水準まで回復しました。
福岡はやはり韓国からの観光客が多いようですね。たまに博多駅や天神の繁華街に行くと、ハングルの会話を耳にすることが本当に多いです。中国語もよく耳にしますが、台湾や香港の皆さんでしょうか。

他方で海外に行く日本人の数は、回復途上にあるとはいえ、2019年の5、6割にとどまっています。年代別データを確認できていないのですが、シニア層が海外旅行に依然として慎重なのと、ビジネス出張がオンラインに置き換わっていることなどが考えられます。

ただ、コロナ禍でオンライン会議などを経験して、改めてリアルの価値を再認識した人も多いのではないでしょうか。もちろん福岡を拠点にしながら東京とつながったり、取材を受けたりと、私はかなり恩恵を受けているのですが、オンラインだとどうしても情報が限られてしまいますし、新たな出会いや発見は難しいように思います。
それに海外に行かなければ円安を実感することも少ないでしょうし、日本の存在感を意識することもないでしょう。海外旅行は日本での暮らしを客観的に見ることのできるいい機会ですので、皆さん、機会を見つけて国の外に出たほうがいいと思いますよ。

※写真は韓国の市場での一コマです。

 

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韓国のカフェ

海外渡航の再開第2弾は韓国でした。出入国時にコロナ関連の手続きが不要となったので、ほぼコロナ前の状態に戻りました。
ただし、再入国の税関手続きにはがっかりしました。紙ではなく電子手続きを選んだところ、羽田空港の端末でスマホのQRコードとパスポートの両方を同時にスキャンしなければならず、さらに顔認証もあります。直前に同じこと(パスポートのスキャンと顔認証)をするので、重複感が強いです。紙なら渡すだけだったのに、かえって面倒になりました。

韓国は2020年1月以来の訪問です。いまさらですが韓国にはカフェが多いですね。スターバックスに代表されるチェーン店は町のあちこちにあります。調べてみると、スタバの数は日本よりも多いそうです(出典はこちら)。参考までに韓国の人口は約5100万人です。
テイクアウト専門の店も町のあちこちで見かけます。おしゃれな(=SNS映えする)カフェもソウルにはたくさんあって、おそらく若い人でにぎわっているのでしょう。かつてはインスタントコーヒーが出てくる喫茶店が普通にありましたが、時代は変わりました。

せっかくなので、今回私が訪問したソウルのカフェ(喫茶店)を2つご紹介します。

THE ROYAL FOOD & DRINK

近年人気エリアとなった解放村(ヘバンチョン)にある絶景カフェです。幸運なことに眺望のいい席を確保できました。
解放村は朝鮮戦争の時に北から避難してきた人々などが山の斜面に住み着いたところで、近くには米軍基地があり、独特な雰囲気を感じました。歴史をさかのぼると米軍基地の場所には日本軍の施設があり、周囲には日本人が多く住んでいたそうです。
カフェからの景色だけではなく、周囲の散策もおすすめです。

伝統茶院(耕仁美術館)

仁寺洞(インサドン)という、やはり人気のエリアにある韓屋カフェ(茶店)で、こちらでは韓国の伝統茶を楽しむことができます。美術館と併設ですが、入場料などはかかりません。
下の写真はなつめ茶(テチュチャ)で、甘くて飲みやすかったです。他にもお馴染みの柚子茶(ユジャチャ)や、赤くてきれいな五味子茶(オミジャチャ)なども飲めたのではないかと思います(ハングル表記だけだったので未確認です)。

 

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台北出張メモ

3年ぶりに海外に出かけました。台北への調査旅行です。
出張の成果はどこかで発表するつもりですので、今回は旅の備忘録として何点か記しておきましょう。

出入国

台湾(桃園空港)では入国も出国も非常にスムーズで、コロナ前とほとんど変わりませんでした。
すでに昨年9月末からビザなしでの入国が再開されていて、今年の3月上旬からは入国時の抗原検査義務もなくなりました。
入国後7日目までは自主防疫期間(健康管理期間)となっていて、症状がなければ公共交通機関を使えますし、外食もできます。

他方で、行きの福岡空港での航空会社チェックインと帰りの入国手続きには、それぞれ1時間以上かかりました。
航空会社チェックインは帰国する台湾人が多く、荷物を預けるのに時間がかかっていたようです。保安検査や出国手続きはすぐに終わりました。

福岡空港での入国手続きは、外国人の入国手続きの列がものすごく長くなり、検疫のエリアを超えて伸びてしまっていたため、すべてが滞っていました。
飛行機が空港に到着しても20分くらい機内待機となり、さらに降りてからも1時間近く並びました。せっかくVisit Japan Webサービスで事前に検疫(ファストトラック)の手続きをしていたのに、そこまでたどり着けないのではファストトラックの意味がありません。

マスク着用

台湾でも一部の場所を除き、マスク着用の義務はなくなっていました
(自主防疫期間の渡航者はマスク着用が必要)。
とはいえ、大半の人が屋外でもマスクを着用していました。台湾は暑いので、マスク着用は不快なはずですが、なかなか元には戻らないようです。日本の現状と似ています。

町の賑わい

前回台北を訪れたのは2019年5月でした。今回もMRT(≒地下鉄)に乗り、オフィス街や繁華街を歩き、レストランや夜市にも足を運びましたが、コロナ禍前と賑わいはほとんど変わらないという印象でした。あえて言えば、日本語を耳にすることが少なかったくらいでしょうか
(日本人旅行者も増えてきているようです)。

参考までに、台北では悠遊カード(Easy Card)を入手し、MRTで移動するのが仕事でも観光でもおすすめです。
日本の交通系カードと同じで、チャージしておけば電車やバスに簡単に乗れるほか、コンビニやスタバなどでも使えます。台北にはセブンイレブンやファミリーマートがあちこちにあって、何かと便利です。
MRTはこの10年間で路線網が一段と充実しました。今は環状線を作っているようです。

物価の動向

海外に久しぶりに行くと、物価高に驚くことが多いですよね。しかし、台湾はこの10年間、あまり物価が上がらなかったので、今回もホテル代を除き、値段が高くてびっくり、ということはありませんでした。
もっとも、2022年以降の消費者物価指数は概ね3%台で推移しています。

台湾でありがたいのは、MRTやタクシーなど交通機関の料金が安いことです。MRTの初乗りは約100円ですし、タクシーもちょっとした移動であれば500円くらいで済みます。
食事代も節約できます。レストランではなく、町の食堂に行けば、500円くらいでいろいろなものが食べられます。夜市の屋台も200円から300円くらいのメニューが多いです。

 

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京都の素敵なカフェ12選

大学講師のため京都に10数回通うことになり、せっかくなので毎週京都の魅力的なカフェでランチをすることにしました。昭和初期にオープンした老舗喫茶店や京都を代表するコーヒーチェーン、レトロな建物を改装したお店など、京都には個性的なカフェがいくつもあり、私が訪れたのはそのごく一部です。
なお、いずれも禁煙または分煙のお店(のはず)です。喫茶店にタバコは付きものとはいえ私には辛いので、全面喫煙可のため行くのをあきらめたお店もいくつかあります。

1.老舗喫茶店
2.リノベーションカフェ
3.町家カフェ

皆さんも京都観光などの際には素敵なカフェで過ごしてみてはいかがでしょうか。

※1月15日に4軒追加し、2月1日にも2軒追加したので「18選」となりました。

 

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町家カフェ

小川珈琲堺町錦店

2022年10月27日訪問。京都に本社を置く小川珈琲が2022年にオープンした店舗です。古い町家を改装した、おしゃれなお店でしたね。坪庭も素敵でした。ホットサンドとコーヒーをいただきました。
地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分程度ですが、写真のとおり看板がないので要注意です。

スターバックスコーヒー京都二寧坂ヤサカ茶屋店

2022年10月7日訪問。二寧坂の日本家屋を改装したスタバで、畳に上がってコーヒーを飲むことができます。雨が降りしきるなか、1時間くらいまったりと過ごしました。

cafe bibliotic Hello!

2022年12月15日訪問。Cafe Bibliotic Hello!(カフェ ビブリオティック ハロー!)は、三条通りにある町家を改装したカフェで、バナナの木が目印です。中には大きな本棚があり、2階まで見渡せる開放的な空間が広がっています。

おしゃれなカフェなのですが、近所の人が自転車でやってくるような敷居の低さもいい感じです。パスタとコーヒーをいただきました。最寄駅は地下鉄東西線・京都市役所前駅でしょうか。徒歩10分くらいだと思います。

カフェ デ コラソン

2023年1月6日訪問。たまたま西陣あたりを散策していて見つけたお店です。「町家カフェ」ではありませんが、とりあえずこちらに。
住宅街にあるカウンターだけの小さなお店で、中に入ると目立つのは大きな焙煎機。コーヒーが美味しいだけではなく、落ち着ける空間でした。スタッフのかたとの会話も楽しかったです。

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リノベーションカフェ

前田珈琲明倫店

2022年11月24日訪問。京都芸術センター内のカフェなのですが、閉校した昔の小学校の建物を活用しているので、ノスタルジックな雰囲気であふれています。

メニューは給食ではなく前田珈琲のものなので、私はオムカレーとコーヒーをいただいました。地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分くらいです。

前田珈琲文博店

2022年12月1日訪問。旧日本銀行京都支店(今は京都文化博物館別館)の金庫室が前田珈琲の店舗になっています。入場料はかかりません。

こちらではミートスパゲッティとコーヒーをいただきました。金庫室といっても天井が高くて開放的な空間でした。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩5分くらいのところです。

カフェ・アンデパンダン

2022年12月22日訪問。三条通りにある旧毎日新聞京都支局ビル(現1928ビル)の地階をリノベーションしたカフェ。階段を降りると秘密めいた空間が広がっています。料理は本格的で、私はキーマと豚肉のあいがけカレーをいただきました。
地下鉄東西線・京都市役所前駅から徒歩5分くらいです。

d食堂

2022年12月8日訪問。四条近くの佛光寺というお寺の境内にあるカフェです。京都の食材を使ったこだわりの定食をおいしくいただきました。くつろげるカフェです。

中心部にあるお寺なので、昼休みの会社員が境内のあちこちでコンビニランチを食べている姿も見られました。
地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分くらいのところにあります。

デザートカフェ長楽館

2023年1月5日訪問。煙草王と言われた実業家の村井吉兵衛が明治42年(1909年)に迎賓館として建てたところで、八坂神社や円山公園に隣接しています。当時の建物をカフェやレストランとして使っていて、京都市の文化財となっています。

ブレンドコーヒー1100円、カツサンドセット3300円と決してお安くはありませんが、内部を自由に見学できますし、寺社仏閣とは別の京都の歴史を感じる空間でした。

Kaikado Café

老舗の茶筒店「開化堂」が運営するカフェで、京都市電の事務所だった建物を再生しました。
大きなガラス窓のところは車庫の入口だったそうで、私は電車になった気持ちになって(?)茶筒型のチーズケーキをいただきました。

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老舗喫茶店

イノダコーヒ本店

2022年10月13日訪問。イノダコーヒは京都を代表するコーヒーチェーンの1つで、本店はいかにも老舗といった雰囲気です。私は本館でナポリタンと栗のケーキをいただきました(もちろんコーヒーも)。次回は旧館にも行ってみたいです。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩5、6分のところにあります。

喫茶チロル

2022年10月20日訪問。二条城の近くにある老舗の喫茶店で、町の中心からやや外れているためか、敷居の低さがいい感じでした。私は目玉焼きを乗せたカレーをいただきましたが、カツカレーが有名なようですね。
地下鉄東西線・二条城前駅から徒歩5分くらいです。

前田珈琲室町本店

2022年11月10日訪問。京都ではお馴染みの前田珈琲。本店の建物はもともと呉服屋さんのものだったそうです。私は「ハーフふわふわタマゴサンド」とコーヒーのセットをいただきました。地下鉄烏丸線・四条駅のすぐ近くで、地元のかたが多かったような印象です。
ちなみに京都のたまごサンドは卵焼きが定番なのですね。

スマート珈琲店

2022年11月11日訪問。寺町通り(アーケード街)の三条寄りにある老舗喫茶店で、1階が喫茶、2階が洋食ランチに分かれています。私たち(この日は奥さんと一緒でした)は1階でコーヒーとタマゴサンドウィッチ、パンケーキをいただきました。タマゴサンドはやはり卵焼きのサンドです。妻いわく「懐かしい感じがする」とのことでした。
地下鉄東西線・京都市役所駅から数分です。

フランソワ喫茶室

2022年11月17日訪問。1934年創業の喫茶店で、店の建物は国の登録有形文化財に指定されています。店内にはクラシック音楽が流れ、落ち着いたひと時を過ごすことができました。こちらではピザトーストとチーズケーキをいただきました。
場所は四条河原町交差点の近くです。

虎屋菓寮

2023年1月6日訪問。京都のお雑煮が食べたくてホテルで聞いたら、こちらを紹介されました。
とらやは東京の和菓子屋さんだと思っていましたが、京都が発祥で、1869年の東京遷都に伴って東京に進出したのだそうです。
白味噌のお雑煮を満喫しました。

二軒茶屋

2023年1月12日訪問。「老舗喫茶店」のイメージからだいぶ外れてしまいますが、八坂神社の門前にある、室町時代創業の老舗茶屋です。外見とは違い、内部は新しい感じでした。
こちらでは名物の田楽豆腐と、またまた白味噌のお雑煮をいただきました。

喫茶マドラグ

閉店した老舗喫茶店「喫茶セブン」を受け継いだお店で、やはり閉店した洋食店の名物だった「玉子サンド」を提供しています。人気店なので11:30から1時間交代制となっていて、なかなか足を運ぶことができなかったのですが、ようやく訪問できました。
こちらの玉子サンドも焼いたタマゴです。京都では、ゆで卵のマヨネーズ和えのサンドは「コンビニの玉子サンド」と言われているとか。それにしても大きな玉子サンドでした。1人では食べきれなかったので、持ち帰らせていただきました。

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金閣寺のファイアマーク

金閣寺に行く機会があり、ようやく入口(総門)にある東京火災保険会社の鳶口(とびぐち)マークを確認することができました。
これはいわゆる「ファイアマーク」と呼ばれるもので、火災保険に加入していることを示す証として、明治から大正にかけて建物の目立つところに掲げられていたものです。ご存じのかたも多いと思いますが、ルーツはロンドンの火災保険会社にあります。19世紀半ばまでロンドンの消火活動は専ら火災保険会社の消防隊が担っていて、ファイアマークが消火活動の目印になっていたのです。
1888年に日本初の火災保険会社として創業した東京火災保険会社も自前の消防団「東京火災消防組」を持っていたそうですが、その後(1894年?)こうした私設の消防組は府県知事の傘下に入ったようで、東京火災消防組が保険会社の消防組織としていつまで活動を続けていたのかは定かではありません。

鳶口マークといえば安田火災でして、東京火災は現在の損保ジャパンの前身となった会社です。
安田火災がなくなってからすでに20年がたち、このマークを知らない保険会社社員や代理店のかたも増えているのでしょうね。

 東京火災
  ↓
(1944年に帝国海上などと合併)
  ↓
 安田火災
  ↓
(2002年に日産火災と合併)
  ↓
 損保ジャパン
  ↓
(2010年に日本興亜損保と経営統合)
(2014年に日本興亜損保と合併)
  ↓
 損保ジャパン日本興亜
(2020年に商号変更)
  ↓
 損保ジャパン

※絵葉書のような写真が撮れました。

 

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「大半の国 中立姿勢保つ」

日経新聞をご覧になっているかたは、木曜日(6/9)の朝刊に掲載された「ウクライナ危機を聞く」というインタビュー記事(有料会員限定)をお読みになったでしょうか。私は毎朝電子版をチェックしているにもかかわらずスルーしてしまい、FB知人の投稿で知りました。

話し手のチャン・ヘンチー氏はシンガポールの政治学者です(外交官と言ったほうが正しいかもしれません)。記事の一部を引用すると…

「ロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会の非難決議には141カ国が賛成した。国連決議に賛成した国の中でロシアへの制裁に踏み切ったのは、欧米やその同盟国を除くと、わずかだ。アジアや中南米、アフリカの大半の国は制裁に同調していない」

「世界の大半の国は米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしない『第3の空間』に属することを望んでいる。自国の国益を第一に考え、ある問題では米国の立場に賛同し、別の問題では中ロに近い立場を取ることを矛盾だと考えない」

世界の現実はこうなのですね。

2月下旬以降、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースが連日流れています。私の日常的なニュースソースはNHKと日経、その他ネットで得られるものが中心なのですが、私たちは何となく「ロシアは世界から孤立していて、一部の大国(中国やインド)だけが中立的な姿勢をとっている」といった世界観を無意識のうちに作り上げているのではないでしょうか。
しかし、残念ながら現実はそうではないと、このインタビュー記事は教えてくれます。

※写真は3月に新装オープンした日本銀行福岡支店です。天神にあります。

 

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令和3年の犯罪情勢

数回前のブログで、人間の2つの思考システムについて紹介しました。人間には物事を直感的にざっくりと捉えるシステム1と、論理的な思考を行うシステム2があって、日常の判断は直感的なシステム1で行われがちで、結果としてリスクを過大に、あるいは過小に評価しやすいという内容でした。数日前に、まさにその通りのニュース(読売新聞オンライン)を見ました。

警察庁が3日に発表した「令和3年の犯罪情勢」によると、2021年の刑法犯認知件数(警察が犯罪と認めた件数)が戦後最小を更新したそうです。刑法犯認知件数は2002年の285.4万件をピークに減少が続き、昨年は56.8万件でした。このうち強盗や殺人、強制わいせつなどの重要犯罪も減少傾向が続いています。

その一方で、警察庁が昨年11月にインターネットを通じてアンケート調査を行い、「ここ10年で、日本の治安はよくなったと思いますか。それとも悪くなったと思いますか」と聞いたところ、「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人の割合が64.1%に上ったそうです。
「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人に、どのような犯罪が発生している状況を思い浮かべていたかを聞くと、上位は「無差別殺傷事件」「オレオレ詐欺などの詐欺」「児童虐待」「サイバー犯罪」でした(5割以上の回答があったもの)。

統計を見れば治安はかなりよくなっているのに、人々は悪くなったと感じています。
アンケート調査の回答者の多くは、犯罪件数がピーク時の5分の1まで減っていることを知らなかったのかもしれません。しかし、もし知っていたとしても、アンケート直前の10月に京王線での切り付け事件が発生し、NHKでは毎日のように林田アナが「ストップ詐欺被害!」とやっていて、児童虐待の痛ましいニュースに心を痛める人々が、警察のアンケートで日本の治安はよくなったと回答するとは考えにくいです。

警察庁の総括は「一部罪種については増加傾向にあるほか、認知件数の推移からは必ずしも捉えられない情勢があることや新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の態様の変化の影響等も踏まえると、犯罪情勢は、依然として厳しい状況にある」です。この総括の参考としてアンケート調査の結果を示しています。
この資料にアンケート結果が載るようになったのは、2019年のものからです。やはり日本の治安について聞いていて、「悪くなったと思う」「どちらかといえば悪くなったと思う」と回答した人の割合は61.4%。警察庁の総括は「必ずしも当該指標(=認知件数)では捉えられない情勢もあり、依然として予断を許さない状況にある」でした。

警察庁は2001年度から2017年度までの間に地方警察官を合計3万人強増やし、それが治安の回復に効果をもたらしたとしています。成果を上げたということですよね。交通事故による死傷者も減っています。すばらしいです。
事件や事故が減ったなら、警察官を減らすべきと言いたいわけではありません。特殊詐欺件数の高止まりやサイバー犯罪の増加などへの対応を強めることは必要だと思いますし、警察官の仕事が広がっている、あるいは変わってきているのかもしれません。
ただ、結果がほぼ明らかなアンケート調査を行い、それを参考にして「犯罪情勢は依然として厳しい状況にある」と総括するのは疑問を感じます。

※季節外れの紅玉を見つけたので、ジャムを作りました。

 

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