保険会計の動向

日本の企業会計基準は現在、政府が定めているのではなく、企業会計基準委員会(ASBJ)という民間の組織が策定しています。詳しくはこちらをご覧ください。
会計基準は分野によって専門性が高いので、ASBJには各種の専門委員会がいくつもあって、私はその1つである保険契約専門委員会の委員を務めています。もっとも、例えば金融商品専門委員会であれば、その目的は「我が国における金融商品に関する会計基準について検討するとともに、金融商品に関する会計基準についての国際的な意見発信に関する検討を行うこと」となっているのに対し、保険契約専門委員会の目的は「IASBにおける保険契約に関する会計基準の審議に対応して国際的な意見発信に関する検討などを行うこと」とされていて、現時点では「会計基準の検討」は入っていません。

ただし、保険契約の会計基準のほうもいよいよ次のステップに進むことになりそうです。
ASBJは約3年ごとに中期運営方針を策定し、公表しています。前回(2022年8月30日公表)の中期運営方針の記述に比べると、昨年12月12日に公表された中期運営方針での「保険契約」の記述は一歩踏み込んだものでした。

<2022年8月の中期運営方針より>
「保険契約」については、2017年5月に公表されたIFRS第17号「保険契約」が2021年12月に改正されている。これまで我が国では保険会社による保険に関する会計処理に保険業法の定めが用いられてきているが、今後、保険契約全般に関して、当委員会において会計基準の開発に向けた検討に着手するか否かの審議を行うこととする。

<今回の中期運営方針より>
「保険契約」については、2017年5月に公表されたIFRS第17号「保険契約」が2021年12月に改正されている。保険契約全般に関する会計基準の開発については、特に保険会社においては保険契約から生じる負債が関連する資産と密接な関係にあることから、前述の金融商品の分類及び測定に関する議論と合わせて、国際的な動向や関連法令との関係を踏まえながら、着手に関する議論を行う。その際、金融商品と保険契約全般の両基準の開発に関するロードマップを策定し、当該ロードマップに基づいて検討を進めることとする。

つまり、保険会社の経営にはALM(資産と負債の総合管理)が重要であり、資産サイドの「金融商品の分類及び測定」に関する議論を行うので、負債サイドの「保険契約」に関する議論も行うということでしょうか。IFRSも保険会社には、先に開発された第9号「金融商品」と、第17号「保険契約」を同時に適用できるような配慮がありました。

3月17日の保険契約専門委員会では、基準開発への期待をコメントしました(専門委員会の論議は原則として公開です)。今の保険会計でも保険負債(=取得原価)に対し、責任準備金対応債券区分(=償却原価)などを使えば、保険会社がマッチング型ALMを進めても会計上、おかしなことにはなりません。しかし、会計情報の利用者としては、活用できる手掛かりが少なく(特に保険負債)、保険会社のリスクやリターンを評価するのが難しい状況が長く続いています。

他方で、今の保険会計は、保険業法の定める規制があれば、それ(監督会計)に基づいた会計処理を行い、それ以外は企業会計基準に従って処理を行うことになっています。
2月22日のブログでも書いたとおり、金融庁は「経済価値ベースのリスク管理との整合性や財務会計に関する見直しの動向等も踏まえ、監督会計のあり方について、関係者を含めた検討を実施する」(37ページ)と述べるなど、監督会計のあり方を、経済価値ベースのソルベンシー規制導入後の重要課題としてとらえているようです。監督会計はすべての保険会社が対象なので、企業会計(財務会計)の動向にも影響を及ぼしますので、今後の動向には要注目です。

※写真はシドニーです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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