
3月26日の日経に「生保解約金3.8兆円 最高に(会員限定)」という記事が出ていました。「金利上昇を受けて、既存の生命保険を解約して新しい商品に乗り換える動きが広がっている」とのことで、見出しには「投信・国債にマネー流出」とありました。
ちょっと気になったので自分で調べてみたところ、次のようなことがわかりました。
25年10-12月の解約返戻金が3.8兆円に達したのは記事のとおりです(生命保険協会のサイトで確認できます)。直前の7-9月期が2.9兆円だったので、1兆円近く(正確には9,324億円)増えたことになります。
そこで個社の解約返戻金の動きを確認したところ、増加した約1兆円のうち、5社だけで全体の75%を占めていることがわかりました。この5社とは多い順に日本生命、第一フロンティア生命、三井住友海上プライマリー生命、メットライフ生命、マニュライフ生命です。
日本生命を除く4社はもともと銀行等を通じた一時払いの貯蓄性商品の販売が多く、かつ、数年前までは外貨建てが中心でした。外貨建ての貯蓄性商品は円安が進むと解約が増える傾向が見られます。25年10-12月期は円安が進んだので、おそらく同じことが起きたのでしょう。
他方、日本生命の解約返戻金が25年10-12月期になぜ急増したのかは、公表資料だけではわかりません。ただ、同じ期の保険料収入も急増していて、なかでも営業職員チャネルでの保険料収入が数千億円増えた模様です。これは25年9月に一時払終身保険の予定利率を1.0%から1.5%に引き上げたことが大きいとみられます。したがって、この期の解約増加と保険料収入の増加は何らかの関係がありそうです。
ということで、個別にはいろいろあるとしても、どうも全体としては「円金利の上昇に伴い、生保マネーが投信・国債に流出している」という話ではなさそうですし、この材料で「保有する債券を売却する必要に迫られる」「解約に伴って含み損を抱えた債券の売却が増えると、計上する損失額は膨らむ」とまで書くのはむしろミスリードだと思います。
※写真は京都の大徳寺大仙院の庭園です。
