03. 保険市場の動向

相互宝の運用終了

加入者どうしがリスクをシェアし、万一の際には助け合うという仕組みをネットの世界で実現したP2P保険の成功例として紹介されてきた中国の相互宝が、1月28日をもって運営を終了するそうです。詳しくは片山ゆきさんによるこちらのレポートをご覧ください。

2018年のサービス開始からわずか1年間で1億人の加入者を集めたというのもびっくりしましたが、中国当局がオンライン金融事業への規制を強めるなかで、運営終了に追い込まれてしまったというのも驚きです。
片山さんはレポートのなかで、中国当局が昨年になってオンライン金融事業についても既存の金融機関と同様の規制を適用する姿勢を示したなかで、相互宝が保険商品と同様の規制や、保険会社のような厳しい監督・管理を受けていなかった(そもそも当局が保険として認めなかった)ことを述べたうえで、「従来より官(主務官庁)と足並みを揃え、厳しい規制の中で成長した保険会社(民)と、莫大なユーザーを背景に異業種から参入したITプラットフォーマー(民)では、官(主務官庁)との協働関係のあり方に本質的な違いがあったのであろう」とコメントしています。中国ビジネスにおける政府リスクの存在を見せつけられた感があります。

最近のニッセイ基礎研レポートといえば、前金融庁長官の氷見野良三さんが総合政策研究部エグゼクティブ・フェローとして書いたこちら(「金融機関のシステム障害」)も興味深く読みました。
某社のシステム障害についてコメントしたものではなく、「剛構造主義」「ゼロ許容度」から「柔構造主義」「オペ・レジ主義」への転換について述べたものです。私もリスクマネジメントを検討するなかで同じことを時々考えますが、氷見野さんのおっしゃるとおり、社会全体で変わっていく必要があるでしょうね。前回のブログで示したように、そう簡単なことではなさそうですが。

※筑後川昇開橋です。なんと係のかたが橋を動かしてくれました。

 

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損害保険ダイレクト事業に関する考察

土曜日(12月11日)は日本保険学会の九州部会例会が対面で開催され、福岡大学に約40人の研究者や保険関係者が集まりました。報告テーマは「生命保険の自殺免責について」「地震インデックス保険」で、どちらも興味深い内容でした。
今回も残念ながら懇親会はありませんでしたが、久しぶりに同業の皆さんと直接お会いして、意見交換などをすることができました。オンラインの学会では報告や質疑応答はできても、オフィシャルではない情報交換が難しいのですよね。

※同じような構図でも前回ブログの写真とは雰囲気がだいぶ違いますね^^

自動運転と等級制度

損保総研の専門誌『損害保険研究』の直近号(2021年11月)に掲載された、損害保険料率算出機構OBである大島道雄さんによる論稿「損害保険ダイレクト事業に関する考察」を興味深く拝読しました。
自動車保険を中心としたダイレクト事業の現状を公表資料から詳細に分析し、今後の動向や市場への影響を探った力作です。

大島さんが本稿で提案している「国内損保・外国損保の区分なく一つの市場と捉えること」「損害保険市場の新たな区分が必要であること(=個人市場および企業市場の区分を設けること)」は私も同感です。前者は保険業法の問題というよりは、業界団体が2つに分かれていることから統計が一本化されていないということかもしれません。後者は格付アナリストの時代から業界にリクエストしてきた話でして、大島さんも「損害保険の事業分析も企業向けと個人向けとに分けて行うほうが、より市場特性とその市場に対する個々の企業の対応が明確に把握できる」と述べています。

先週のRISで植村ゼミの学生が発表した「自動運転」に関する話もありました。なかでも、事故防止機能の普及・進化がノンフリート等級別料率制度に影響を与えるというのは、近い未来の話として大きなテーマではないかと思います。
この制度では事故の有無(保険金請求の有無)をもって運転者のリスクの大小とみなしていて、結果として事故を未然に防ぐ機能があります。ところが、レベル3以上の自動運転車が自動運転中に起こした事故は運転車の責任ではなく、原則としてシステムの責任となります。現時点で保険会社はレベル3以上の自動運転中の事故を等級制度の対象外としているようですが、自動運転が広まっていくと、運転者のリスクはどんどん小さくなり、等級制度が不要となるのかもしれません。
大島さんは「高度の事故防止機能を備えたASV等を被保険車両として初めて自動車保険を契約する場合、果たして現在の6等級から開始し、無事故であれば1年毎に等級を挙げるという制度が車の事故防止機能に適合的といえるかどうか」「完全自動運転車に近づくほど20等級以上の安全運転の能力を有している車も発売されるであろう」と述べています。

1年経てば損保総研のサイトから無料でアクセスできるようになるのですが、すぐにご覧になりたいかたは損保総研にオーダーしていただくか、図書館などで探していただければと思います。

※旧プールの跡地に「向月台」ができていました。

 

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東洋経済の保険特集号

この週末(10月30日)、RIS(全国学生保険学ゼミナール)の中間報告にあたる「九州ブロックリスクマネジメントゼミ報告会」があり、九州にある3大学の学生(8グループ)が研究成果を報告しました。
中間段階ではありますが、研究の方向性が見えているグループもあれば、まだ着地点が見えないグループもあり、あと1か月でどこまでたどり着けるかですね。参加した学生にとって今回の報告会がいい刺激になればいいのですが。

「生保・損保特集」

先週発売の臨時増刊『生保・損保特集』を読みました。今年の特集は「保険会社のSDGs」ということで、大手生損保がSDGsにこのように向き合っていますというレポートと、保険会社のトップインタビュー(22社のうち10社は2ページ、12社は1ページ)が中心です。私のような業界人ではない一般読者には正直あまり面白くないのですが、トップが出ると雑誌が売れるのかもしれません。

それでも今回は読んで面白い記事があるほうだったと思います(個人の感想です)。

・「金融サービス仲介業」期待と不安の船出
・乱立する「就業不能保険」 難解な商品を徹底解剖
・自動運転社会の到来と損保ビジネスの変化

いずれも外部の専門家によるもので、旬のテーマを取り扱っています。
私にとって読んで面白い記事とは、旬のテーマだから、読んで新しい知識が得られるからではありません。そのテーマに関する筆者の考察が示されていて、いわば筆者と対話ができるような記事です。「A社は○○を新設し、××を行った」「B社は○○を設定し、××に取り組んでいる」という紹介だけでは対話のしようがありません。

例えば「乱立する『就業不能保険』」では、開発ラッシュ状態にある就業不能保険の全体像を詳細に示した労作で、働けないリスクへの関心が高まっていることが伝わってくる一方、これだけバリエーションが多いと消費者は選びようがないという状態に陥っていることがよくわかりました。筆者の森田さんは「これほどまでに商品を複雑化することが、はたして『顧客本位』と言えるのだろうか」と疑問を呈していて、確かに何らかの環境整備が必要ではないかと思えます。

「自動運転社会の到来と損保ビジネスの変化」では、自動運転が普及すると自動車保険市場が縮小するという通説に反し、筆者の八幡さん(東京海上日動)は、マーケットの縮小は緩やかなものとなるだろうし、新たな移動サービスに関する補償や自動運転に伴う新たなリスクへの対応など、これまでになかった役割もあると主張しています。新たな役割がビジネスとしてどの程度有望なのかによるとはいえ、保険会社が自動運転をはじめとした移動サービスに積極的に関わろうとしているのは確かで、将来に向けた経営の意思を感じます。

売れなければ特集号を出し続けることができないという事情を理解したうえで、来年以降も読んで面白い記事が多く掲載されることを期待したいです。

※大宰府を守る水城の跡にコスモス畑がありました。

 

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保険学会の全国大会で報告

10月23日から24日にかけて、日本保険学会の全国大会がオンラインで開催されました。
オンライン開催なので、懇親会等での非公式な意見交換ができないのは残念なのですが、大会に参加しやすいというメリットはありますね。私も福岡にいながらにして報告を行うことができました。

情報開示とメディア

私は3月の九州部会に続き、全国大会でも保険会社の経営情報の伝達について報告しました。
過去20年間の決算報道を調査したところ、平時における報道内容が固定化していることを「発見」したので、その理由を探るため、主要保険会社の広報部門(およびメディア関係者)へのインタビューを行いました。その結果、報道固定化には「メディア自身によるニュースバリューの判断」「報道機関固有の事情」が影響していることが見えてきました。
報告の詳細は今後どこかでご覧いただけるかと思います。

地震リスク

今回の大会では土曜日のシンポジウム、日曜日の共通論題がいずれも地震リスクに関するものでした(金融庁の栗田監督局長による特別講演でも自然災害リスク関連の話がありました)。
シンポジウム「レジリエンスから見た地震リスクと地震保険」は個人の地震リスクと家計向け地震保険についての発表とディスカッション、共通論題「地震リスクに対する企業保険制度の課題」は企業の地震リスクとその対応状況についての発表とディスカッションという内容で、特に後者は知る人ぞ知るという内容だったかもしれません。

共通論題を聞いたうえでの私見ですが、企業の地震リスク対応が進んでいない根底には、日本企業に資本コストを意識した経営が浸透していないことや、そもそも大企業と言えども実質的に事業部門の集合体で、コーポレート部門の機能が弱いという問題があるのだと理解しました(共通論題ではそこまで突っ込んだ議論にはなりませんでしたが)。

なお、シンポジウムではお二人の先生が、地震保険の危険準備金取り崩しをもって「破綻の危機」「財政に懸念」とおっしゃっていて、この点はよくわかりませんでした。
民間準備金が取り崩されてから、官民負担スキーム修正(民間負担分を下げる)までのタイムラグの問題があるとはいえ、地震保険は超長期の収支均衡を意識したプライシングがなされ、政府が再保険というかたちでバックアップするしくみです。もし民間準備金が枯渇し、新たな準備金の蓄積まで政府負担が大半を占めるスキームになったとしても、それをもって「破綻」とみなすのは私には抵抗があります。この保険の存続可能性を問題視するのであれば、論点はリスクに応じたプライシングがなされているか、ではないでしょうか。

※ハロウィンまであと1週間ですね。

 

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生命保険の年齢別・男女別統計表

代理店統計を確認しようとインシュアランス生命保険統計号を見ると、巻末に「年齢階層別・男女別統計表」が載っているのに気が付きました(2016年から載っていたようです ^^;)。元データは生命保険協会の統計みたいですね。
生命保険の加入者は、どちらかと言えば男性のほうが多いというイメージですが、過去5年の個人保険・新契約件数の男女比は概ね半々でした。

  年度  男性の割合
 2015年度  49.6%
 2016年度  49.8% 
 2017年度  49.9%
 2018年度  50.8%
 2019年度  51.9%

生命保険協会の統計を20年前までさかのぼると、2008年度までは新契約件数の53~56%を男性が占めていました。その後女性の割合が高まったのは、統計にかんぽ生命が加わったことのほか、銀行窓販の終身保険や、医療・がん保険の販売が影響していると考えられます。足元で男性の割合が高まっているのは、かんぽ生命の営業自粛が効いているのかもしれません。

統計表には新契約高(保険金額ベース)も載っていて、こちらは男性が67.2%を占めています(2019年度)。新契約高は死亡保障を中心とした指標なので、主に20代から40代の男性が遺族のために保障を買っているという構図は今でも続いているとうかがえます。

年齢階層別データを合わせて見ると、女性は60代以降の層が生命保険を最も購入しているようです(件数ベース)。先に挙げた「かんぽ生命」「銀行窓販の終身保険」「医療・がん保険」のいずれも、販売の中心は高齢女性となっているのでしょう。

※来週から賑やかなキャンパスが戻ってきます。

 

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IT関連2題

やや強引ですが、ITに関連した2つのテーマを取り上げます。

インシュアテックの未来

「わりかん保険」「コロナ助け合い保険」などで知られるジャストインケースの畑加寿也代表が9月29日に、インシュアテックのホワイトペーパーを公表しました。
ITを中心とした保険の発展の方向性を示したロードマップということで、今後10年間で保険市場がどう変わり、既存の事業者はどう対応したらいいかを述べています。

ペーパーでは、(日本の)保険会社は「他のディスラプトされてきつつある業界と比べると金銭的にも時間的にも猶予が残されている」としたうえで、「多くの保険会社は従来の運用モデルとレガシーシステムから離脱できず、新ビジネスの導入や規模の拡大が遅れたり、急速な市場の変化に追いつくことができないでいる」と指摘。今後ITインフラをどのように進化させるべきか、いくつかの選択肢を示しています。

「システムを作らせる技術」

先のペーパーによる、「IT予算の多くは既存のレガシーシステムの維持管理に使われている」「IT人材が不足するなか、レガシーシステムの維持・運用にIT人材が割かれている」「既存のレガシーシステムの全容を理解している人材がいない」といった指摘は保険会社の経営者にとって耳が痛いものだと思います。
しかし、システム変革の選択肢を示され、「パッケージソフトウェアの購入とクラウドベースとしたSaaS(Software as a Service)の利用のどちらにしますか」「サービスの接続方法はAPIですか、アダプターですか」などと言われても、困ってしまうのではないでしょうか(おまえと一緒にするなという声も聞こえてきそうですが…)。

たまたま最近手に取ったのが、白川克さん、濱本佳史さんによる「システムを作らせる技術~エンジニアではないあなたへ」です。著者のお2人はケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズというITに強みを持つコンサルティング会社のメンバーですが、コンサルの書いた薄っぺらいハウツー本ではありません(確かにページ数も多いのですが、そういう意味ではありません)。
あるようでなかった、システムを作ってもらう人が身につけるべき技術、知っておくべきことを学ぶための本で、極めて実用的に書かれているばかりでなく、その根拠も記されています。

コラムの1つに「ITベンダーは品質など気にしていない!」というものがあり、私にはストンと落ちました。「品質」と「精度」は別の概念なのですね。

※羽田空港で楽しい自販機を見つけました。

 

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生命保険の加入状況

生命保険文化センターが「生命保険に関する全国実態調査」の最新版を公表しました(9月22日)。
最も注目される「世帯加入率」は89.8%と、前回調査(2018年)の88.7%から大きな変化はなく、簡保・かんぽ生命の加入率低下をかんぽ生命以外の民保と県民共済・生協等の上昇でカバーした形です。
かんぽ生命以外の民保では、配偶者の加入率上昇が目立ちます。ただし、配偶者の医療保険・医療特約の加入率(かんぽ生命を除く民保ベース)は下がっているので、なかなか解釈が難しいです。

直近加入契約の加入年次(民保)を見ると、調査年度およびその前年という回答が計14.9%と、前回調査の15.2%から大きく変わっていないので、ここにはコロナ禍の影響は見られません。
その一方で、2016年以降の加入契約の加入チャネルを聞いたところ、営業職員と地域金融機関、インターネットの割合が上昇し、保険代理店が下がるという結果でした。前回調査に比べると、保険ショップの勢いがやや落ちたのと、コロナ禍でも伝統的な対面チャネルが健闘しているということかもしれません。もっとも、今後の加入意向のあるチャネルのほうを見ると、郵便局の急落を踏まえれば、営業職員も保険代理店も実質的に横ばいと見るべきかもしれません。

コロナ禍の影響を強く感じたのは、加入意向のあるチャネルでインターネットという回答割合が高まったことのほか、「今後増やしたい生活保障準備項目(複数回答)」が軒並み上がっていることです。「特にない」という回答の割合は横ばいなので、もともと保障を増やしたいと考えている層が、より幅広く保障を増やしたいと回答しているようで、将来への不安心理が強いことがうかがえます。

中小企業のリスク意識

ところで、9月16日に日本損害保険協会が「中小企業のリスク意識・対策実態調査2021」を公表していますので、こちらもご紹介します。
企業が直面する深刻なリスクとして「取引先の廃業等による売上の減少」を挙げ、被害を受けた経験を持つ会社もそこそこいるにもかかわらず、5割以上の会社は「特に対策をしていない」のだそうです。企業向け損害保険の加入状況も、火災保険を除けば総じて低いですね。

 

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ファンドの保険会社買収

7月3日に初のオンライン開催となったRINGの会オープンセミナー。19日までの期間限定でダイジェスト版の動画(YouTube)が公開されています。

・第1部は「実践代理店!DX~デジタルシフトする進化系代理店に学ぶ~」
・第2部は「事業者の進化~DXの時代に生きる経営者に必要なもの~」
・第3部は「zoom展示会」※動画なし

保険流通の最新動向に関心のあるかた(あるいはRINGの会に関心のあるかた)は、どうぞご覧ください。

ファンドによる保険会社の買収

2日の日経「バフェット流経営に軸足(有料会員限定)」によると、米大手投資ファンドによる保険会社の買収が相次いでいるそうです。例えばブラックストーンは2021年に入り、オールステートやAIGの生保事業への投資を行っています。

投資ファンドにとって保険会社は長期資金の安定的な供給源に見えるのかもしれません。顧客からの預かり資産ではなく、保険金を支払うまで超長期にわたり返さなくてもいい資金だからです。
ただ、特に生保事業(変額ではなく、定額の保障)となると、過去の様々な失敗事例が頭をよぎります。例えばということで、韓国・大韓生命の事例を紹介しましょう。

韓国の大手生保であるハンファ生命は、20世紀末に経営危機に陥り、政府が救済した大韓生命を前身としています。大韓生命が経営危機に陥ったのは、韓国経済がアジア通貨危機という強いショックを受けたこともありますが、それ以上にガバナンス面の問題が大きく影響しました。要は財閥の会長が傘下の大韓生命をグループのために「活用」したのですね。

・海外に貿易会社を作り、大韓生命から資金を拠出
・返済見込みのないグループ会社を大韓生命が支援
・過大な本社ビル(大韓生命63ビル)への投資を実行
・大韓生命の資金で教会をいくつも建設
 (会長は熱心なクリスチャンだった)

ここまでひどい事例はなかなかないとは思いつつ、通常の事業とは違い、保険事業は先にお金(保険料)が入ってくるので、魅力的に見えてしまいがちです。投資ファンドの保険事業が、運用者にとって都合のいい貯金箱のようにならないといいですね。

※オリ・パラの記念切手を入手しました。

 

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日本生命のCM

先日訃報が伝わった作曲家の小林亜星さんは「モクセイの花」という曲も作っています。
そう、「ニッセイのおばちゃん」のCMソングです。

モクセイの花(動画)

このCMは1970年代から80年代にかけて長く使われたので、40代半ばくらいまでの人であれば、口ずさめるのではないでしょうか。
いま聞くと、しんみりとした名曲ですね。もちろん生命保険のCMなのですが、保険を前面に出さないのに、人生の節目にはニッセイのおばちゃんに相談しようという気にさせますね。

日本生命のCMは結構好きでして、例えば、谷川俊太郎さんの詩を使ったCMは、保険をうまく表現していると思いました。
この駅はかつての井の頭公園駅ですね。

愛する人のために(動画)

比較的最近のものでは、朝ドラのヒロイン清原果耶さん出演のこちら。
つい、うるうるしてしまいます(笑)

見守るということ(動画)

反対に、これは逆効果だと思ったのが、CMではありませんが、2011年放映の「JIN-仁-」です。
日本生命はあくまでスポンサーであり、脚本に影響を与えたとは思いたくないのですが、ドラマのなかで坂本龍馬に「保険」「保険」と叫ばせ、船中八策ならぬ「船中九策」まで登場(保険が加わりました)。原作にそのようなシーンは一切なかったので、かなりガッカリしました。

※手水のところが紫陽花で埋まっていてびっくりしました。太宰府天満宮です。

 

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大手保険代理店の業績動向

営業職員チャネルによる生命保険の販売シェアが5割前後まで下がっているにもかかわらず、営業職員以外の保険流通に関する公表データは限られています。業界紙の皆さん、ぜひ保険流通の全体像がわかるような報道をお願いします(データ付きで)。
いくつかの大手保険代理店が株式を公開し、業績動向を含めた経営情報を投資家・アナリスト向けに公表しているので、最近の数字などを確認してみました。

アドバンスクリエイト(2002年上場)

日本最大級の保険比較サイト「保険市場(ほけんいちば)」を運営し、コンサルティングプラザ「保険市場」での対面販売や提携代理店による協業販売、非対面チャネルによる販売などを行っています。かつてのような保険ショップで集客する事業ではなく、サイトで集客し、対面・非対面チャネルにつなげるビジネスモデルを確立しています。
同社の売上高の8割以上は保険代理店事業です。2020年4-6月期の売上高は前年より17.5%減りましたが、その後は売り上げが回復しています。3月からオンライン面談を導入したことのほか、サイトで集客するビジネスモデルがコロナ禍でプラスに効いていると考えられます。

NFCホールディングス(2014年上場)

ニュートン・フィナンシャル・コンサルティングとして創業し、日本最大級の保険コールセンターを持つ代理店のほか、買収により来店型保険ショップの保険見直し本舗、損保販売を中心とするE保険プランニングなどを擁する大型保険流通グループ。親会社は光通信です。
売上高の7割が保険サービス事業となっていて、2020年4-6月期も前年並みに売上高を確保しました(7-9月期、10-12月期は増加)。これは、2020年1月にE保険プランニングを子会社化したことが寄与しているとみられ、保険見直し本舗の新契約年換算保険料はこの時期大きく落ち込みました(10-12月期は前年並みに回復)。もっとも、経営者向け保険の税制見直しや外貨建て保険の予定利率の引き下げなど、コロナ禍以外の影響も大きいようで、業績トレンドをつかむのが難しいです。

アイリックコーポレーション(2018年上場)

来店型の保険ショップ「保険クリニック」を運営するほか、自社で開発した保険分析・検索システム「保険IQシステム」に強みを持つグループです。
売上高に占める保険販売事業は6割程度で、2020年4-6月期(前期比3.7%減)よりも1-3月期(同23.1%減)のほうが目立ちますが、NFCと同じく、経営者向け保険の税制改正や外貨建て保険の予定利率引き下げも影響しているようです(7-9月期、10-12月期の売上高はおおむね前年並み)。
このところ保険販売事業以外の売上高が拡大していて、システム販売やFC店舗の増加などが貢献しているとみられます。

いかがでしょうか。各社の売上高がコロナ禍でも総じて堅調に見えるのは、売上高の多くを占める手数料収入には、契約時に受け取る初回手数料のほか、次年度以降手数料などがあるからかもしれません。とはいえ、各社の開示情報をざっと見たかぎりでは、それぞれが独自のビジネスモデルを確立していることも大きいのではないかと思いました(ここから保険流通全体を語るのはちょっと厳しいかもしれませんが…)。

 

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