植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年09月14日

今年度のモニタリング方針

 

金融庁が平成26事務年度の金融モニタリング基本方針
(監督・検査基本方針)を公表しました。
金融庁HPへ

今回は、監督局・検査局の連携がさらに進むようにと、
従来は両局がそれぞれ作成していた監督方針・
金融モニタリング基本方針を統合しています。
このため、47ページもの大作となりました。

肝心の中身ですが、重点施策は次の9つとのこと。

 1.顧客ニーズに応える経営
 2.事業性評価に基づく融資等
 3.資産運用の高度化
 4.マクロ・プルーデンス
 5.統合的リスク管理
 6.ビジネスモデルの持続可能性と経営管理
 7.顧客の信頼・安心感の確保等
 8.東日本大震災からの復興の加速化
 9.公的金融と民間金融

このうち、「3.資産運用の高度化」という項目があり、
資産運用における金融機関の役割を検証するそうです。
「1.顧客ニーズに応える経営」と重なる面もありそうですが、
最後にこのような文章も付いています。

「金融機関自身による有価証券運用についても、
 業態等により異なる資産運用の性格を踏まえつつ、
 資産規模等に見合った運用やリスク管理の態勢が
 整備されているかについて検証する」

そこで、主要行等と保険会社等に対する監督・検査で
どのようなことが書かれているかを探してみました。


まず、主要行等では、

「主要行等においては、多額の有価証券運用を行っているが、
 政府におけるデフレ脱却に向けた取組み等も見据えつつ、
 各種情報収集や適切なリスク・リターンの管理のための
 態勢の整備等、有価証券運用のより一層の高度化に向けた
 取組みが求められる」

とあり、着眼点として、運用態勢やリスク管理態勢について
検証すると書かれています。

「政府におけるデフレ脱却に向けた取組み等も見据えつつ」

の意味するところは何でしょうか。融資の話ではありません。


一方、保険会社等では、

「保険会社等は(中略)機関投資家としての運用業務を通じ、
 金融仲介機能を発揮するとともに、市場における重要な
 プレイヤーとなっている」

「保険会社が機関投資家として資産運用に努めることは、
 国民の安定的な資産形成に資するものであることから、
 各社が資産規模等に見合った資産運用能力の向上に
 務め、リスク管理の態勢を整備することが重要である」

としたうえで、多様なリスク計量手法やストレステストの活用、
市場動向の分析等により、適切にリスクとリターンを把握して、
運用方針等を作成の上、当該方針に沿って資産運用を実施し、
そのモニタリングを行っているかを検証するのだそうです。

主要行等と違い、重点施策の記述と同じ内容、すなわち、
「資産規模等に見合った運用」「リスク管理態勢の整備」
と書いてあるのが目を引きます。しかも、

「機関投資家としての運用業務を通じ、金融仲介機能を発揮」
「国民の安定的な資産形成に資するもの」

という記述です。
他方で、昨年度の監督方針に書かれていた、

「国債市場等の金融市場のボラティリティが拡大し、
 市場リスクの管理態勢と収益性を考慮した運用方針の
 重要性が一段と増している」

「各社が支払余力と経営基盤を向上させるため」

といった文言は全てなくなりました。

これらを踏まえると、「アベノミクスで金融市場は安定し、
支払余力も向上したのだから、保険会社は機関投資家として
国民の資産形成に努めろ」というメッセージなのでしょうか。
もしかしたら、ポートフォリオ・リバランスを促そうという話に
つながってくるのでしょうか。

まあ、着眼点のなかには、引き続き統合的リスク管理に着目し、
負債特性に応じたALMの取組みを促していくとありますし、
加えて、経営管理態勢についても深度あるモニタリングを行う
ということなので、保険会社の保有する資産だけに着目したような
おかしな動きにはならないことを期待しています。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※上諏訪駅のホームに足湯がありました。これはいいですね。


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コメント一覧

今、リスク管理を考える  (2014年09月14日 14:49:00)

他の金融機関でも同じだとは思いますが、多くの保険会社では、この手の文書が出ると、昨年と比べて何が追加された、削除された、表現が変わった、その意図は?といった話題で盛り上がりますね。

金融庁内で文書を最終化するにあたって、このような変更を検討するプロセスを想像すると、いろいろな意図が込められているのは当たり前ですし、一歩で、金融庁も組織なので、文面通りの意図とは少し異なり、ある種の妥協の産物として書かざるを得ないこともあるでしょう。

金融庁のいろいろな意図が込められたこの手の文書をしっかり理解するとことは非常に重要なのは論を待たないのですが、一方でその重みが以前より軽くなってる気もしています。言い換えるなら、金融庁の意図の部分より、妥協の産物としての割合が以前より大きくなっているのではと。

よりストレートに言えば、保険会社の経営としては、あまり意識する必要がなくなりつつあり、単に保険会社の人が金融庁論を語るための材料に堕しているのではと。

金融庁にご勤務経験のある植村さんの率直なご意見お聞かせ頂けたらと思います。

デモン  (2014年09月15日 16:55:14)

RAFの深化、徹底に通じるとお見受けしました。
ストレステストについても、従来のような、severityの高い極端なシナリオだけでなく、もっと様々な強度のシナリオを用意して肌理細かな運用が求められるのでしょうか。
あと、保険会社の資産運用力については、一部の会社では、合理化のためか、系列のアセマネに運用委託や助言という実質委託で行っている状況を考えると、本当に状況を把握してるのか?と思ってしまいますね。
特に、グループ内の複数の保険会社への助言を系列のアセマネに集中してるところへは、どんな指導をするんでしょうか?
更には、そのアセマネも一部の外貨建資産は外資のマネージャーに丸投げしてるから、運用力強化って言われても無理ではないかと。

タロ  (2014年09月24日 22:31:41)

『これらを踏まえると、「アベノミクスで金融市場は安定し、支払余力も向上したのだから、保険会社は機関投資家として国民の資産形成に努めろ」というメッセージなのでしょうか。』

→そこまで深読み(?)する必要はないのではないでしょうか?この下りはさらっと流してあげましょう(笑)当局の意向が威光を放つかつてのような時代でもないですし。。

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