植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2017年03月19日

大手生保の中期経営計画

 

先週、日本生命と明治安田生命が中期経営計画
(日本生命は新計画への切替)を発表しています。

上場保険会社では半年ごとのIRミーティング等で
経営計画に関する詳細な説明があるのですが、
相互会社は入手できる情報が限られているので、
これらは経営の考えを知る貴重な機会です。

いずれもマイナス金利政策下での厳しい環境が
続くなかで新たに策定した計画ということで、
私が気になった部分をご紹介します
(全体像はそれぞれのリンク先をご覧ください)。


<日本生命>
2017-2020年度 中期経営計画 【PDF】

2015年度からの3カ年計画の途中ですが、
マイナス金利政策下での歴史的低金利を受け、
事業戦略を見直し、新たな中計を策定しました。

成長戦略として「超低金利下での収益性向上」
の実現を掲げ、

超低金利下で顧客ニーズと収益性の両立を
前面に打ち出しています
(具体的な取り組みは今後でしょうか?)。

「超低金利下でも着実な成長を果たすべく、
 経営戦略の根幹にERMを位置付けて経営」

というERMに関する説明もあり、

「グループベースに加えて、保険子会社ごと、
 領域ごとに経済価値指標を用いたPDCAを実施」

「経済価値ベースでの収益性・効率性・健全性
 管理を強化」

と、経済価値ベースでの管理を強調しているのも
注目です。


<明治安田生命>
MYイノベーション2020 【PDF】

「明治安田NEXTチャレンジプログラム」に続く
新たな3カ年計画です。

明治安田生命にとっても超低金利の影響は、
決して小さくないと思うのですが、発表資料には
超低金利を意識した記述はほぼ見られません
(あえてそうしているのかもしれません)。

2019年度目標値として今回から新たに、

「資本効率指標(RoEEV):年平均6%程度を
 安定的に確保」

「経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)
 :160%以上」

が加わりました。

日本の上場保険会社の大半がこれらの指標を
自主的に公表し、アナリストや投資家との対話に
活用していますが、おそらく明治安田生命も
何らかの指標を公表していくのでしょう。

ただし、注記を見ると、それぞれ
「2016年度末見込の運用環境に基づく数値」
「想定運用環境を前提とした数値」とありまして、
市場変動の影響は目標値の対象外だそうです。

中計に沿って、資産運用収益力を強めたり、
ERMでリスク・リターン運営を行ったりしても、
資産運用によるリスクテイクは、実現益として
純資産を積み上げないと、目標達成には貢献
しないはず(インカムゲインを除く)。

運用強化のターゲットはクレジット投融資なので
これでOKという割り切りなのかもしれませんが、
ステークホルダーであれば、もう少し説明が
ほしいでしょうね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は岡山県の港町・牛窓です。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 18:26:27 | コメント(0)  | カテゴリー : 02. 保険会社の経営分析 |

2017年03月11日

年次大会報告集

 

日本アクチュアリー会の年次大会(昨年11月開催)の
報告集が公表されました。
年次大会報告集のサイトへ

以前お伝えしたとおり、私は3年ぶりに登壇し、
「マイナス金利と保険会社経営」パネルのMCと、
ERM委員会「模擬経営会議」のナビゲーターを
務めました。

「マイナス金利と保険会社経営」パネルでは、

・辻野菜摘さん(JPモルガン証券、証券アナリスト)
・松山直樹さん(明治大学教授、アクチュアリー)
・渡辺有史さん(スイス再保険、アクチュアリー)

の3名にご登場いただき、超低金利環境のなかで
経済価値ベースの指標をどう捉えたらいいのか、
経営者やアクチュアリーは何をすべきなのか、
といったテーマで話していただきました。

個人的に印象深かったコメントは、渡辺さんの、

「終身であることが足かせになって、いろいろな
 商品が出せなくなっているということを感じている」

というもので、なるほどと思いました。


「模擬経営会議~CROの役割と葛藤~」のほうは、
生命保険会社の経営会議での場面を3名の方に
演じていただき、それを受けて私が解説したり、
会場からコメントをいただいたり、というもの。

出演者の皆さんには本当に頑張っていただきました。
活字の報告集ではなく、動画で観たいですね^^

ところで、解説の場面では双方向ツールを使い、
会場の皆さんに質問を出し、投票してもらいました。
当日はその結果を見て、さらに展開したのですが、
投票結果を記録するのを失念してしまいまして、
今回の報告集でようやく確認できました。

いくつか質問したなかで、

「当時ERMがあれば破綻を回避できたか?」

という質問をしたのですね。
当時とは、生保破綻が続いた2000年前後です。
回答は、

 回避できた    :31%
 回避できなかった:69%

ちょっと残念な結果でした。

なお、主演の市川さんも語っていますが、
「模擬経営会議」というのは一つの経験になる
ということを私も再確認しました。

実戦とは違いますが、演技とはいえ「やってみる」
というのは、暗黙知を習得するうえで、いい方法
だと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※横浜でシウマイと言えば崎陽軒。
 その崎陽軒本店のレストランでクラス会がありました。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:33:58 | コメント(0)  | カテゴリー : 15. 執筆・講演等のご案内 |

2017年03月04日

執務室の施錠と情報公開

 

経済産業省が情報管理を徹底するため、
2月27日から全ての執務室を施錠したところ、
報道機関から猛反発を受けているようです。

「密室化は不信を招く」(朝日)
「異常な情報管制の発想」(毎日)
「世耕氏には記者が『敵』なのか」(読売)

各紙の社説の見出しです。
最初に「執務室の施錠は情報公開の後退」
というニュースを見たときは、3月1日なのに
エイプリルフールなのかと思いましたが、
そうではなかったようです。

なぜこのタイミングなのかという点、あるいは、
メモを取る職員の同席という新ルールには
疑問を感じるとはいえ、セキュリティの強化と
情報公開は別の話ということに尽きるかと。

むしろ、多くの中央官庁の執務室が「施錠なし」
ということに驚きました。

確かに、私がかつて勤務していた金融庁でも、
その数年前までは施錠がなく、外部のかた
(金融機関関係者が多い)が急に入ってきて
あわてて机上の資料を隠すこともあったとか。

毎日新聞の社説(2日)に、

「機密情報を扱う機会が多い外務省や防衛省、
 警察庁などでも執務室を施錠しているのは
 一部の部局にとどまる」

とありますが、国民のための情報管理が
それで大丈夫なのかと心配になりました。


朝日新聞の社説(4日)には、

「行政機関と民間企業には大きな違いがある。
 企業が自らの利益を増やそうとするのに対し、
 行政はあくまで国民生活に資すべき存在だ」

とあり、密室化は不信を招くとしています。

でも、行政の執務室に報道機関がいつでも
入れる環境が、開かれた行政の実現のために
どうして必要なのでしょうか。
職員がサボらずちゃんと働いているかどうかを
監視しようとでもいうのでしょうか。

「政策立案の面から見ても、外部と壁をつくり、
 接点が減ってしまっては、むしろマイナスだろう。
 省外の知見や批判を積極的に取り込んでこそ
 政策は洗練され、納得度も増すはずだ」

という記述もありますが、ここで言う「外部」とは
一部の報道関係者に限られます。というのも、
中央官庁の建物内に簡単に入れるのは、
IDカードを持つ国家公務員と、記者クラブという
常駐先のある一部の報道関係者だけだからです。

同じ報道関係者でも、フリージャーナリストが
経産省に行っても、誰かのアポイントがなければ
執務室はおろか、普通は建物にも入れません
(広報が対応してくれるかもしれませんが)。

つまり、この記述は、政策立案の面で一部の
報道関係者の知見や批判を取り込むべきだと
言っていることになりますね。

さらにおかしいのは、執務室の施錠を情報公開の
後退というのであれば、そもそも建物内に誰もが
自由に入れないことも当然、問題視すべきですが、
そのような論調が一切見られないことです。

報道機関には行政の情報公開姿勢をチェックし、
行政の広報機関のようになってしまわないよう、
がんばってほしいと応援しているつもりですが、
今回の件は、残念ながら私には、既得権益を
守ろうとしているようにしか見えません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は川崎大師です。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:56:30 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2017年02月26日

日本版FD規制の導入

 

FD規制とはフェア・ディスクロージャー規制、
すなわち、上場企業などが公表前の内部情報を
第三者に提供する際、同じ情報を他の投資家にも
出さなければならない、というものです。

日本ではFD規制がまだ導入されていません。
ただし近年、上場企業が証券会社のアナリストに
未公表の業績情報を提供していた事件などがあり、
金融審議会の作業部会が日本版FD規制を検討し、
昨年12月に規制導入を求める報告を行いました。
金融庁のサイトへ(2016/12の金融審報告)

報告書では、規制導入による積極的意義として、

「発行者側の情報開示ルールを整備・明確化する
 ことで、発行者による早期の情報開示を促進し、
 ひいては投資家との対話を促進する」

「アナリストによる、より客観的で正確な分析及び
 推奨が行われるための環境を整備する」

などと述べられているのですが、その一方で、
以前から導入に伴う副作用として、

「(FD規制導入で)企業が情報を提供することに
 消極的になるのではないかとの指摘や、報道
 機関やアナリストによる正当な取材活動等が
 困難になるのではないか」

といった懸念も示されています。
金融庁のサイトへ(2016/4の金融審報告)


2月20日に公表された日本IR協議会による
上場企業を対象にしたアンケート調査の結果も
規制による副作用が心配されるものでした。
調査結果(PDF)

Q:FDルール導入により、貴社の情報開示に
  どのような影響があるとお考えですか

  大きく影響する 8.0%
  やや影響する 43.9%
  変化なし     31.4%
  わからない   16.7%

Q:影響すると回答した企業の具体的な理由

  情報開示に消極的・保守的になる  24.1%
  開示実務の負担が増加する      13.6%
  線引きの判断が必要となる      13.0%
  規制対応や指針・方針の見直しが  11.7%
  必要となる
  中長期的な対話が促進される     1.9%


もし、FD規制の対象となる重要情報の範囲が
よくわからないままだと、規制を強く意識した場合、
「全員に伝える」か「誰にも伝えない」かの二択に
なってしまうのでしょうか(極論ですが)。

とはいえ、確かに下記の線引きは難しそうです。

 「発行者または金融商品に関係する未公表の
  確定的な情報であって、公表されれば発行者
  の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋
  然性があるもの」【規制対象】

 「他の情報と組み合わさることによって投資判断
  に影響を及ぼし得るものの、その情報のみでは、
  直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない
  情報(いわゆるモザイク情報)」【規制対象外】

やはり、FD規制導入後に企業の情報開示が
後退する可能性をある程度は覚悟すべき
なのかもしれません。


ただ、ガバナンス改革として政府が進めてきた
「建設的な対話の促進」は基本的に1対1の対話を
念頭に置いているのだと思います。

企業が求める建設的な対話には、「重要情報」
「モザイク情報」なんてことは些細な話であり、
必要なのは広い視野と深い分析力、というように
有識者の皆さんは考えているのかもしれません。

しかし、広い視野と深い分析力を持つには、
いろいろ話を聞き、知識のストックを増やすことが
不可欠です。

決算データを読むにしても、自分だけで考えるのと、
企業の担当者とやりとりしながら考えるのでは、
理解がだいぶ違います。

FD規制が結果としてそのようなやりとりの場を
なくしてしまうようなことにならないといいですね。

先日取り上げた「顧客本位の業務運営」にも
共通する話ですが、情報の出し手や事業者への
規律を促し、あとはアナリストやFP等におまかせ、
というだけでは片手落ちではないでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※慶大・深尾光洋教授の最終講義に参加しました。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 00:22:46 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2017年02月18日

生保の第3四半期決算

 

生保の第3四半期(2017年4-12月期)決算が
出そろいました。

報道では4-12月期の減収減益を伝えるものが
多かったようですが、10-12月期に限って見れば、
トランプ相場による株高や円安の恩恵を受け、
それほど悪い四半期ではなかったようです。

EVを公表している上場会社の数値からも、
悪い決算ではなかったことがうかがえます。

ただ、外貨建資産のウエートが一段と高まり、
大手生保では一般勘定資産の20~30%に
達しています。


さて、例によって、10-12月期の保険料収入を
引き算して確認してみました。

大手は日本、第一、明治安田が減収となる一方、
住友は7-9月期を上回る保険料収入となりました。
同社の新契約年換算保険料を確認すると、
個人年金が7-9月期を上回る水準で売れています。
逆張り戦略なのでしょうか?

銀行窓販の保険料収入も総じて細っているようで、
第一フロンティアや三井住友海上プライマリー
といった窓販専門会社の減収が目立ちました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は韓国南西部の港町、木浦です。
 旧東本願寺が残っていました。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:47:22 | コメント(0)  | カテゴリー : 02. 保険会社の経営分析 |

2017年02月11日

顧客は事業者を選べるか

 

保険流通の業界誌「インスウォッチ」2月13日号で
「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」について
書きました。

金融事業者自身が主体的に創意工夫を発揮して、
顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い、
より良い取組みを行う事業者が顧客から選ばれる。

金融庁は、こうしたメカニズムを実現するため、
「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定し、
事業者に受け入れを呼びかけ、より良い金融商品
・サービスの提供を競い合うよう促そうとしています。

インスウォッチでは、この原則が保険業界にも
関係があるということを示しました。


もっとも、先のメカニズムがうまく機能するためには、
事業者が顧客本位の業務運営に努めるだけでなく、
顧客がより良い取組みを行う事業者を選べるような
環境作りが不可欠です。

この点に関し、12月公表の金融審WG報告書では、

 (1)金融事業者の取組みの「見える化」
 (2)顧客の主体的な行動
 (3)顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化

をあわせて実行していくことが適当としています。
(1)は原則そのものですので、あとは(2)(3)を
どう実現するかです。

金融審WGでは(2)のなかで、

「有識者等で構成される第三者的な機関が、金融
 事業者全般あるいは各金融事業者の取組方針や
 取組状況を顧客の立場から評価し、評価結果を
 公表するといったメカニズムが存在すれば、顧客が
 金融事業者を選別するうえで参考になるのではないか」

という論点が挙げられ、注目していました。

ところが、報告書を見ると、「第三者的な機関」が
「第三者的な主体」に修正されるとともに、続けて、

「例えば民間における自発的な取組みとして形成され」

という文言が加わっていました。

議論の結果、当局主導で第三者的な機関を作るのを
断念したのか、あるいは初めからそのような考えは
なかったのかもしれませんが、残念に思います。

金融事業者には顧客本位の取組みを強力に促し、
あとはマーケットに委ねるということになりますが、
果たしてそれでこのメカニズムが確立・定着するのか。
かつての「(保険の)比較討論会」を思い出します。
「保険の比較情報」はどうなったのか?

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※鹿児島の市電です。軌道の緑化を進めているとか。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 15:58:29 | コメント(0)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2017年02月05日

知覧特別攻撃隊

 

保険流通の勉強会(RINGの会です)で鹿児島へ。
この機会に、前から訪問したかった知覧に行きました。
写真(左)のような武家屋敷の美しい町並みのほか、
特攻隊の出撃基地があった場所として知られています。

町から少し離れた場所にある知覧特攻平和会館には、
沖縄戦の特攻作戦で戦死した隊員の遺書・手紙などが
遺影とともに展示されていました。

特攻を作戦と呼ぶには抵抗がありますが、
作戦成功イコール死ですから、まさに「十死零生」。
それをわかっていながら飛び立った隊員たちの心情は
どのようなものだったのでしょうか。

遺書や手紙には、「必中必沈」「大命により征かん」
「立派に死ぬことこそ軍人の本分」といった言葉のほか、
「何の恩返しも出来ず、親不孝をお詫び致します」
「御両親様、決して人前では泣いて下さいますな」
などとあり、彼らと同じ二十歳前後の子どもを持つ
親として、胸が締め付けられる思いでした。

写真(右)は当時の軍の指定食堂だった「富屋食堂」を
復元したものです。食堂を経営していた鳥浜トメさんは
隊員たちから母親のように慕われていたそうです。
トメさんの証言を記録した映像にも心を打たれました。

知覧は鹿児島の中心からバスで1時間以上かかりますが、
機会があれば、ぜひ訪れていただきたいところです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 08:33:51 | コメント(0)  | カテゴリー : 16. その他 |

2017年01月28日

オバマケアの見直し

 

トランプ米大統領が就任して最初に署名した
大統領令は、オバマ前大統領が国民皆保険を
目指して実行した医療保険改革法(オバマケア)
の修正に関するものでした。

オバマケア撤廃を訴えて当選したのですから
見直しに着手するのは自然な流れだとはいえ、
代わりにどうしたいのか明らかではないですし、
就任後の動向を見ていても、やはり大変な人が
大統領になってしまったのだと思い知らされます。

ただ、そのオバマケアですが、無保険者の数は
確かに減ったものの、導入後わずか数年で
運営が不安定になっていたことを知りました。
ニッセイ基礎研究所のサイトへ

この松岡博司さんのレポートによると、
保障を提供する民間の保険会社に危険選択を
禁止したため、収益性が悪化し、最大手をはじめ
この事業からの撤退が相次いでいるそうです。
州によっては参加する保険会社が1社になって
しまったところもあるとか。

オバマケアは、国が罰則や補助金によって、
全ての国民(既往症のある人を含む)に対し
医療保険の加入を促すものです。
事業の担い手は民間の保険会社となります。

しかし、日本の自賠責保険のようなノーロス・
ノープロフィットの制度ではなく、危険選択も
できないとなると、民間ベースでの事業運営は
なかなか大変です。

実際、2014年の制度導入後、健康状態の悪い
低所得の加入者が増えてしまい、保険会社の
経営を直撃しているそうです。

そもそもの医療費が日本に比べて非常に高く、
保険料の水準も安くはないのでしょうから、
補助があるとはいえ、低所得者向けの保険料を
引き上げるにも限界があると思います
(それでも料率引き上げが続いているとか)。
提供するサービスの下限も定められているので、
民間会社としては、あとは撤退となるのでしょう。

レポートではそこまで触れていませんが、
これでは、トランプ大統領が登場しなくても、
制度が持たなかったのかもしれません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※ソウルの北村という、古い町並みが残るエリアです。
 右の「壁」はドラマのロケ地なのでしょうか?


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 11:44:35 | コメント(0)  | カテゴリー : 03. 保険市場の動向 |

2017年01月22日

韓国学会でのスピーチ

 

韓国リスクマネジメント学会の国際セミナーで
日本の生保破綻とその後の対応等について
スピーチをしてきました。

今どうしてこのテーマなのか不思議でしたが、
現地で話を聞いてみると、前々回ご紹介した
ムーディーズのレポートで書かれているよりも、
韓国の保険業界がはるかに深刻な状況にある
とわかり、妙に納得しました。

日本の生保で経営の重荷となっている契約は
20年以上前に獲得したものが中心です。
加えて、主力商品が保障性商品中心となって
かなりの時間がたっています。

他方、韓国では比較的最近まで金利水準が
高かったため、今から見れば予定利率の高い
超長期の貯蓄性商品を近年まで売っていました。
予定利率が3%超の契約が全体の約7割を占め、
かつ、全体の2/3が残存20年超とのことでした
(通訳が正しければ)。

ちなみに、韓国の10年国債利回り(今は約2%)は、
2010年頃まで5%程度で推移していました。

韓国では2000年代半ばから金利連動型商品
(=金利変動リスクを顧客が負う)が普及しており、
最近では新契約の約8割、保有契約の半分強が
金利連動型となっているそうです。
ただし、金利連動型商品には最低保証があり、
2000年代には3%以上の保証利率だったとか。

もう一つ日本と違うのは、韓国では国際会計基準
(IFRS)をすでに強制適用していることです。

保険契約に関するIFRSが完成し、これをもとに
ソルベンシー規制を行うと、業界全体で数兆円の
資本不足に陥るという報道もあるそうです
(行政当局からのリーク情報と言われています)。

確かに上記のような負債構成を考えた際、
経済価値ベースの評価をすると、非常に厳しい
経営実態が見えるのかもしれません。

「会計・規制への対応という話と、経営者として
 現状を見てどう対応するかという話は別物」

質問への回答として、こんな話もしたのですが、
個社の対応とは別に、保険行政としての対応が
求められる状況のようにも感じました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左の写真は朴大統領の退陣を求める人たち、
 右は大統領を支持する人たちです。




ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 17:29:46 | コメント(0)  | カテゴリー : 10. 出張報告 |

2017年01月14日

バーゼルIIIの最終化を延期

 

銀行規制の話ですが、新年早々に発表があり、
関係者の皆さんを驚かせました。
金融庁のサイトへ

金融危機後にバーゼル銀行監督委員会が
進めてきた規制改革(バーゼルIII)の最終化が
年内に間に合わず、1月上旬に予定されていた
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ
(=ここで規制案を承認)の開催が延期されました。

報道によると、意見調整がまとまらなかったのは、
自己資本比率の計測に内部モデル手法を採用する
銀行に対し、最低限保有すべき自己資本の水準を
どう設定するか(=資本フロア)という話のようです。

現行のバーゼルIIでも資本フロアは存在しますが、
バーゼル委員会は、内部モデルによるリスク計測は
銀行間でバラつきが大きすぎると考えているため、
資本フロアの見直しを検討してきました
(例えば、内部モデルを使わない「標準的手法」で
 計測したリスクの90%を最低基準とする案など)。

これも報道ベースですが、調整がまとまらないのは、
「内部モデルなんかとんでもない」とする米国当局
(=米国の規制と平仄を合わせようということ?)と、
これまで規制における内部モデルの活用を進め、
かつ、経営内容が必ずしも良好ではない大手銀行を
抱える欧州当局が対立しているためのようです。

確かにモデルはあくまでモデルなので、常に改良が
不可欠となります。これを規制として活用するには、
当局による承認というプロセスが必要ですし、
金融機関どうしの比較も難しくなります。

ただ、バーゼルIIやEUソルベンシーIIで内部モデルを
積極的に採用してきたのは、内部モデルのほうが
その金融機関の抱えるリスクを適切に反映するうえ、
金融機関自身による経営管理手法とも合致する、
あるいは、高度化を促す効果があるからです。

また、実質的に標準的手法だけになってしまうと、
「規制で求められる水準さえ確保すればいい」
という経営マインドになりかねません。

いまさらこのような話をしても仕方がないのですが、
保険の国際規制に関わってくる話でもありますし、
今後の動向に注目しましょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※今年も香川の雑煮を食べることができました。
 白味噌にあん入り餅です!

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 13:13:51 | コメント(0)  | カテゴリー : 07. 規制・会計基準 |
植村信保ブログ プロフィール ライブラリー お問い合わせ