植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2017年04月23日

金融システムレポート

 

19日公表の日本銀行「金融システムレポート」
(2017年4月号)を見ると、

「金融機関は充実した資本基盤を備えており、
 当面収益力が下押しされるもとでも、
 リスクテイクを継続していく力を有している」

という記述に続き、

「今後、金融機関のポートフォリオ・リバランスが、
 経済・物価情勢の改善と結びついていけば、
 収益力の回復につながっていくと考えられる」

とあり、ちょっと首を傾げてしまいました。

例えば、ポートフォリオ・リバランスということで
地域金融機関の貸出金は確かに増えていますが、
その多くは不動産業向けです(17ページ)。

有価証券については、地域金融機関が保有する
外債と投資信託の残高が急増しています。
投信の半分は海外金利系とのこと(44ページ)。

これらを踏まえると、ポートフォリオ・リバランスで
将来の収益力回復に期待できるというよりも、
日銀のマイナス金利政策実施から1年たって、
副作用として金融システムの脆弱さが増した
と見るのが自然ではないでしょうか。

マイナス金利政策が金融システムに悪影響を
及ぼしているのは生保セクターも同じです。

レポートには、機関投資家等の資金運用動向
として生命保険会社の話も出ているのですが、
外債投資の増加と超長期国債投資の減速しか
言及がありません。

本来、分析すべきは、ALMのミスマッチを抱える
生保がマイナス金利政策により、どんな状況に
なっているかを見るべきだと思うのですが...
(各社のEVや金融庁フィールドテスト結果など
 分析のための素材も多少はありますよね)


なお、参考までに、レポートの27ページにある、

「外債の運用比率が上昇している背景には、
 国内債との利回り格差があるが、2010 年度に
 改正されたソルベンシー・マージン規制において、
 外貨建て債券のリスク係数が引き下げられたこと
 も影響しているとみられる」

という記述は、残念ながら誤解です。

外貨建て債券のリスク係数が 5%から 1%に
下がったことを見てのコメントかと思いますが、
改正前の「5%」は為替リスクを含んだもの、
改正後の「1%」は為替リスクを含まないもので、
為替リスクは別途に反映するようになりました。

合わせて為替ヘッジの反映方法も見直され、
改正前に見られたヘッジ効果の過大反映が
改正により解消されました。

つまり、規制としては厳しくなったのですが、
それでも生保各社は長引く低金利のなかで、
海外金利リスクやヘッジコストの変動リスクが
あるのを承知のうえで(だと思います...)で、
外債投資に注力しているという状況です。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は愛宕山のNHK放送博物館です。

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2017年04月15日

InsurTechのイベント

 

4/10(月)の「【緊急開催】 InsurTech Meetup」
というイベントに出席したところ、日本の現状は
「まだスタートラインにも立っていない」という、
かなりお寒い状況にあるとのことでした。

イベントは、弁護士の増島雅和さんの講演と、
原健一郎さん(DCM Ventures Investment)
佐俣アンリさん(ANRI GeneralPartner)、そして
増島さんによるパネルディスカッションがあり、
最後にネットワーキング(懇親会)というもの。

増島さんの講演も、パネルディスカッションも
非常に興味深い内容でした。

例えば増島さんによると、しばしば耳にする
次のような話は「間違った理解」だそうです。

・保険の規制は厳しく、従前の業界慣行を
 踏まえると、日本には海外のInsurTechの
 ビジネスモデルは入ってこれない。

⇒ 規制や業界慣行はInsurTechの流れを
  止めることができない。

・日本企業もテレマティクス保険やウエアラブル
 端末を用いた医療保険の開発に取り組んで
 いるからInsurTechに遅れていない。

⇒ InsurTechを進めるにはオープンイノベー
  ションが不可欠。

・海外のInsurTechサービスも大した規模ではなく
 InsurTechはニッチサービスに過ぎない。

⇒ 現在のInsurTechは、第四次産業革命による
  保険の革新に突入する準備フェーズ。

資料には「なぜ間違っているのか」という説明も
ありますので、こちらのサイトをご覧ください
(ご本人に確認済です)。

特に2つめの指摘は、目からウロコというか、
私見ですが、日本でInsurTechが遅れている
という最大の理由なのかもしれません。

増島さんは資料のなかで、

・ディスラプティブ(破壊的)イノベーションは
 狙ってできるものではなく、試行錯誤の中から
 しか生まれない

・イノベーションの成功確率を高めるには、
 最小コストでうまくいかない例を可能な限り
 多く試すこと

と述べているのですが、他方で日本企業には
「失敗を許さない文化」「大きな経営判断ミスより
粒々の損失を責められる」などが目立ちます。

だからこそスタートアップとの協業ということかと
思いますが、せっかく協業しても、この文化の
違いをちゃんと理解したうえで進めていかないと、
イノベーションは生まれないのでしょう。

InsurTechというと、AIやビッグデータの活用など
テクノロジーの進化に注目が集まっています。
でも、本質はそこではないのですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左は中目黒駅のホームから撮った写真。
 右は浜離宮の菜の花です。

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2017年04月08日

生涯未婚率の上昇

 

4月3日に国立社会保障・人口問題研究所が
2017年版の「人口統計資料集」を公表し、
そのなかで2015年の国勢調査をもとにした
生涯未婚率の上昇が話題となりました。
人口統計資料集のサイトへ

生涯未婚率は50歳で結婚経験がない人の
割合を生涯未婚として計算しています
(正確には45~49歳と50~54歳の平均値)。

近年の推移は次のとおりです。

     2005年  2010年  2015年
男性  15.96%  20.14%  23.37%
女性   7.25%  10.61%  14.06%

日本では嫡出でない子(婚外子)の割合
2%程度で低位安定しているので、
未婚率が高まると少子化が進みます。

他方で核家族のうち「夫婦と子ども」世帯は
この5年間でわずかながら減っていました。
全体に占める割合も26.8%にとどまります
(1990年には37.3%の最大勢力でした)。
いま増えているのは単独世帯です(34.5%)。

さらに、機関誌「人口問題研究」の論文
わが国の結婚と出産の動向」によると、
出産後も就業を継続する女性の割合が
初めて5割を超えたことが示されています。
「人口問題研究」のサイトへ

以上のように、日本の結婚や家族構成に
これだけ大きな変化が生じているのですから、
かつてのような規模で遺族のための保障
(死亡保障)が売れるわけはありません。

ただ、生涯未婚率が高まると、例えばですが
純粋に長生きのリスクだけを保障する保険商品
(遺族がいなければ死亡保障は不要でしょう)
があれば、貯蓄と社会保険だけで備えるよりも
無駄なく対応できそうですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※地元・大倉山の桜です。

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2017年04月02日

「こども保険」への違和感

 

先週は3月最終週だったためか、発表ものが
いろいろとありました。

金融庁関連をいくつか紹介しますと、28日に
経済価値ベースの評価・監督手法の検討に
関するフィールドテストの結果について」の公表、
30日には「顧客本位の業務運営に関する原則
の確定とパブコメ概要の公表がありました。

後者については、「原則」を採択し、取組方針を
策定・公表した金融事業者のリストを6月末から
金融庁が公表するそうです。
果たしてどのような顔ぶれになるのでしょうか。

28日に報道された標準生命表の見直しの件も
日本アクチュアリー会が31日に改定案を公表し、
意見を募集しています。

この4月から標準利率が引き下げられたので、
2年連続で標準責任準備金の基礎率が変わる
ことになります。

ただし、3月までの各社の料率改定をみると、
予定利率を引き下げただけではなさそうなので、
1年後の各社の対応も、標準生命表の見直しを
単純に反映したものとはならないのでしょう。


「保険」関連で私が最も気になったニュースは
自民党・2020年以降の経済財政構想小委員会
が29日に発表した「こども保険」の創設です。

いろいろと報道されていますが、発表資料
見つけたので、こちらを見てみましょう。

概要資料によると、子どもが必要な保育・教育等
を受けられないリスクを社会全体で支える
「こども保険」の創設を提言するとのことです。

保険料は厚生年金・国民年金等の社会保険料に
上乗せして徴収します。
つまり、厚生年金では事業者と勤労者から、
国民年金では加入者からとることになります。

「全世代型社会保険」の趣旨はよくわかりません
(今の社会保険も全世代型のような...)が、
少子化対策の財源をどこに求めるかという話で、
税でも国債でもなく、保険方式を打ち出してきた
ということなのでしょう。

「子育てを終えた世代や子どもがいない人は
 負担するだけで、給付の可能性が全くない」

という批判に対しては、少子化対策の財源を
社会全体で負担するという考えに立てば、
これは理解できます。

どうにも違和感があるのは、少子化対策の
財源が社会保険料の上乗せというところです。

概要資料の8ページの「こども保険」「消費税」
「教育国債」の比較表にも書いてあるように、
保険方式の利点は給付と負担の関係が明確
というところだと思います。

でも、「こども保険」はそうではありません。

年金、医療、介護では、社会保険料の負担者と
給付を受ける可能性がある人が一致しています
(外国人などの例外事例はあるにせよ)。

今回の「こども保険」の場合、財源は現役世代
と事業者、給付も基本は現役世代ということで、
事業者を除けば一致しています。

しかし、「こども保険」の直接的な給付対象は
現役世代だとしても、その恩恵を受けるのは
現役世代だけではなく、全ての国民ですよね。
ここが違和感のもとなのでしょう。

つまり、どうして少子化対策のコストを現役世代
だけで賄わなければならないのかという疑問です。
不公平感の源は「子供がいる・いない」ではなく、
広く国民が負担する仕組みではない点にあります。

先ほどの資料には、経済・財政への影響として、

・消費税は負担増が目に見えるため、必ず消費に
 悪影響を及ぼす
・教育国債は国債発行が拡大するため、財政再建
 目標の実現が困難になる
・「こども保険」は保険料率が低い限り、経済への
 影響は少ない。財政再建目標と整合的

と書いてあります。

給付額が同じであれば、消費増税と「こども保険」
導入の影響は経済的には同じはず。
増税は難しいけど、社会保険料の引き上げなら
実現可能ということなのでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は井の頭公園です。

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2017年03月25日

日本の科学技術の失速

 

最初にお知らせです。
アドバイザーとして参加しているRINGの会が
今年も横浜でオープンセミナーを開きます。

このセミナーは、午前に1つ、午後に2つの
パネルディスカッションのほか、保険会社や
各種の営業関連のブースも数多く出ていて、
「保険販売業の文化祭」のような雰囲気です。

私も午前のパネルディスカッションに登壇し、
丸紅セーフネット監査役の栗山泰史さん、
弁護士の増島雅和さんとともに保険業界の
現在と未来を語り合うことになっています。

受付が始まりましたので、ぜひご参加ください。
(↓こちらからアクセスできます↓)
RINGの会 オープンセミナー

さてさて、今回取り上げたいのは、数日前に
NHKで観たこのニュースです。
NHKのニュースサイトへ

英国の科学雑誌「ネイチャー」が特別版で、
日本の科学研究の失速を指摘しました。

例えば、次のようなデータが示されています。

・世界のハイレベルな68の科学雑誌に掲載された
 日本の論文の割合は、2012年の9.2%から
 2016年には8.6%に低下

・世界のおよそ2万2000の科学雑誌に掲載された
 論文の総数は、2005年から2015年にかけての
 10年間で、世界全体では80%増加した一方で、
 日本の増加は14%にとどまり、日本は世界全体
 の伸びを大幅に下回っている

確かにNature Indexの各グラフを見ると、
米国、英国、中国、韓国と比べたグラフなどがあり、
この10年間の停滞ぶりがわかります。


調べてみたところ、ネイチャーによる指摘以前から
文部科学省は日本の科学技術力の現状について
2013年から取りまとめを行っていました。そこでも、

・論文数の伸び悩み(=世界シェアの低下)
・多くの分野において日本の順位が低下
・日本は海外にあまり学生を送り出しておらず、
 受け入れている学生も多くはない

などの指摘がみられます。
科学技術・学術政策研究所のサイトへ

日本では大学が論文の約7割を産出しています。
ただ、大学の研究開発費は2000年代以降の伸びが
海外に比べて低く、博士課程入学者も減りぎみで、
かつ、任期付きの若手研究者が増えています。

このところ毎年のようにノーベル賞受賞者を
輩出してきた日本ですが、このままでは世界に
ついていけなくなりそうで、危機感を覚えます。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※久しぶりに築地市場内「トミーナ」で奮発ランチ。
 わたり蟹のトマトクリームパスタです。

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2017年03月19日

大手生保の中期経営計画

 

先週、日本生命と明治安田生命が中期経営計画
(日本生命は新計画への切替)を発表しています。

上場保険会社では半年ごとのIRミーティング等で
経営計画に関する詳細な説明があるのですが、
相互会社は入手できる情報が限られているので、
これらは経営の考えを知る貴重な機会です。

いずれもマイナス金利政策下での厳しい環境が
続くなかで新たに策定した計画ということで、
私が気になった部分をご紹介します
(全体像はそれぞれのリンク先をご覧ください)。


<日本生命>
2017-2020年度 中期経営計画 【PDF】

2015年度からの3カ年計画の途中ですが、
マイナス金利政策下での歴史的低金利を受け、
事業戦略を見直し、新たな中計を策定しました。

成長戦略として「超低金利下での収益性向上」
の実現を掲げ、

超低金利下で顧客ニーズと収益性の両立を
前面に打ち出しています
(具体的な取り組みは今後でしょうか?)。

「超低金利下でも着実な成長を果たすべく、
 経営戦略の根幹にERMを位置付けて経営」

というERMに関する説明もあり、

「グループベースに加えて、保険子会社ごと、
 領域ごとに経済価値指標を用いたPDCAを実施」

「経済価値ベースでの収益性・効率性・健全性
 管理を強化」

と、経済価値ベースでの管理を強調しているのも
注目です。


<明治安田生命>
MYイノベーション2020 【PDF】

「明治安田NEXTチャレンジプログラム」に続く
新たな3カ年計画です。

明治安田生命にとっても超低金利の影響は、
決して小さくないと思うのですが、発表資料には
超低金利を意識した記述はほぼ見られません
(あえてそうしているのかもしれません)。

2019年度目標値として今回から新たに、

「資本効率指標(RoEEV):年平均6%程度を
 安定的に確保」

「経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)
 :160%以上」

が加わりました。

日本の上場保険会社の大半がこれらの指標を
自主的に公表し、アナリストや投資家との対話に
活用していますが、おそらく明治安田生命も
何らかの指標を公表していくのでしょう。

ただし、注記を見ると、それぞれ
「2016年度末見込の運用環境に基づく数値」
「想定運用環境を前提とした数値」とありまして、
市場変動の影響は目標値の対象外だそうです。

中計に沿って、資産運用収益力を強めたり、
ERMでリスク・リターン運営を行ったりしても、
資産運用によるリスクテイクは、実現益として
純資産を積み上げないと、目標達成には貢献
しないはず(インカムゲインを除く)。

運用強化のターゲットはクレジット投融資なので
これでOKという割り切りなのかもしれませんが、
ステークホルダーであれば、もう少し説明が
ほしいでしょうね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は岡山県の港町・牛窓です。


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2017年03月11日

年次大会報告集

 

日本アクチュアリー会の年次大会(昨年11月開催)の
報告集が公表されました。
年次大会報告集のサイトへ

以前お伝えしたとおり、私は3年ぶりに登壇し、
「マイナス金利と保険会社経営」パネルのMCと、
ERM委員会「模擬経営会議」のナビゲーターを
務めました。

「マイナス金利と保険会社経営」パネルでは、

・辻野菜摘さん(JPモルガン証券、証券アナリスト)
・松山直樹さん(明治大学教授、アクチュアリー)
・渡辺有史さん(スイス再保険、アクチュアリー)

の3名にご登場いただき、超低金利環境のなかで
経済価値ベースの指標をどう捉えたらいいのか、
経営者やアクチュアリーは何をすべきなのか、
といったテーマで話していただきました。

個人的に印象深かったコメントは、渡辺さんの、

「終身であることが足かせになって、いろいろな
 商品が出せなくなっているということを感じている」

というもので、なるほどと思いました。


「模擬経営会議~CROの役割と葛藤~」のほうは、
生命保険会社の経営会議での場面を3名の方に
演じていただき、それを受けて私が解説したり、
会場からコメントをいただいたり、というもの。

出演者の皆さんには本当に頑張っていただきました。
活字の報告集ではなく、動画で観たいですね^^

ところで、解説の場面では双方向ツールを使い、
会場の皆さんに質問を出し、投票してもらいました。
当日はその結果を見て、さらに展開したのですが、
投票結果を記録するのを失念してしまいまして、
今回の報告集でようやく確認できました。

いくつか質問したなかで、

「当時ERMがあれば破綻を回避できたか?」

という質問をしたのですね。
当時とは、生保破綻が続いた2000年前後です。
回答は、

 回避できた    :31%
 回避できなかった:69%

ちょっと残念な結果でした。

なお、主演の市川さんも語っていますが、
「模擬経営会議」というのは一つの経験になる
ということを私も再確認しました。

実戦とは違いますが、演技とはいえ「やってみる」
というのは、暗黙知を習得するうえで、いい方法
だと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※横浜でシウマイと言えば崎陽軒。
 その崎陽軒本店のレストランでクラス会がありました。

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2017年03月04日

執務室の施錠と情報公開

 

経済産業省が情報管理を徹底するため、
2月27日から全ての執務室を施錠したところ、
報道機関から猛反発を受けているようです。

「密室化は不信を招く」(朝日)
「異常な情報管制の発想」(毎日)
「世耕氏には記者が『敵』なのか」(読売)

各紙の社説の見出しです。
最初に「執務室の施錠は情報公開の後退」
というニュースを見たときは、3月1日なのに
エイプリルフールなのかと思いましたが、
そうではなかったようです。

なぜこのタイミングなのかという点、あるいは、
メモを取る職員の同席という新ルールには
疑問を感じるとはいえ、セキュリティの強化と
情報公開は別の話ということに尽きるかと。

むしろ、多くの中央官庁の執務室が「施錠なし」
ということに驚きました。

確かに、私がかつて勤務していた金融庁でも、
その数年前までは施錠がなく、外部のかた
(金融機関関係者が多い)が急に入ってきて
あわてて机上の資料を隠すこともあったとか。

毎日新聞の社説(2日)に、

「機密情報を扱う機会が多い外務省や防衛省、
 警察庁などでも執務室を施錠しているのは
 一部の部局にとどまる」

とありますが、国民のための情報管理が
それで大丈夫なのかと心配になりました。


朝日新聞の社説(4日)には、

「行政機関と民間企業には大きな違いがある。
 企業が自らの利益を増やそうとするのに対し、
 行政はあくまで国民生活に資すべき存在だ」

とあり、密室化は不信を招くとしています。

でも、行政の執務室に報道機関がいつでも
入れる環境が、開かれた行政の実現のために
どうして必要なのでしょうか。
職員がサボらずちゃんと働いているかどうかを
監視しようとでもいうのでしょうか。

「政策立案の面から見ても、外部と壁をつくり、
 接点が減ってしまっては、むしろマイナスだろう。
 省外の知見や批判を積極的に取り込んでこそ
 政策は洗練され、納得度も増すはずだ」

という記述もありますが、ここで言う「外部」とは
一部の報道関係者に限られます。というのも、
中央官庁の建物内に簡単に入れるのは、
IDカードを持つ国家公務員と、記者クラブという
常駐先のある一部の報道関係者だけだからです。

同じ報道関係者でも、フリージャーナリストが
経産省に行っても、誰かのアポイントがなければ
執務室はおろか、普通は建物にも入れません
(広報が対応してくれるかもしれませんが)。

つまり、この記述は、政策立案の面で一部の
報道関係者の知見や批判を取り込むべきだと
言っていることになりますね。

さらにおかしいのは、執務室の施錠を情報公開の
後退というのであれば、そもそも建物内に誰もが
自由に入れないことも当然、問題視すべきですが、
そのような論調が一切見られないことです。

報道機関には行政の情報公開姿勢をチェックし、
行政の広報機関のようになってしまわないよう、
がんばってほしいと応援しているつもりですが、
今回の件は、残念ながら私には、既得権益を
守ろうとしているようにしか見えません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は川崎大師です。

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2017年02月26日

日本版FD規制の導入

 

FD規制とはフェア・ディスクロージャー規制、
すなわち、上場企業などが公表前の内部情報を
第三者に提供する際、同じ情報を他の投資家にも
出さなければならない、というものです。

日本ではFD規制がまだ導入されていません。
ただし近年、上場企業が証券会社のアナリストに
未公表の業績情報を提供していた事件などがあり、
金融審議会の作業部会が日本版FD規制を検討し、
昨年12月に規制導入を求める報告を行いました。
金融庁のサイトへ(2016/12の金融審報告)

報告書では、規制導入による積極的意義として、

「発行者側の情報開示ルールを整備・明確化する
 ことで、発行者による早期の情報開示を促進し、
 ひいては投資家との対話を促進する」

「アナリストによる、より客観的で正確な分析及び
 推奨が行われるための環境を整備する」

などと述べられているのですが、その一方で、
以前から導入に伴う副作用として、

「(FD規制導入で)企業が情報を提供することに
 消極的になるのではないかとの指摘や、報道
 機関やアナリストによる正当な取材活動等が
 困難になるのではないか」

といった懸念も示されています。
金融庁のサイトへ(2016/4の金融審報告)


2月20日に公表された日本IR協議会による
上場企業を対象にしたアンケート調査の結果も
規制による副作用が心配されるものでした。
調査結果(PDF)

Q:FDルール導入により、貴社の情報開示に
  どのような影響があるとお考えですか

  大きく影響する 8.0%
  やや影響する 43.9%
  変化なし     31.4%
  わからない   16.7%

Q:影響すると回答した企業の具体的な理由

  情報開示に消極的・保守的になる  24.1%
  開示実務の負担が増加する      13.6%
  線引きの判断が必要となる      13.0%
  規制対応や指針・方針の見直しが  11.7%
  必要となる
  中長期的な対話が促進される     1.9%


もし、FD規制の対象となる重要情報の範囲が
よくわからないままだと、規制を強く意識した場合、
「全員に伝える」か「誰にも伝えない」かの二択に
なってしまうのでしょうか(極論ですが)。

とはいえ、確かに下記の線引きは難しそうです。

 「発行者または金融商品に関係する未公表の
  確定的な情報であって、公表されれば発行者
  の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋
  然性があるもの」【規制対象】

 「他の情報と組み合わさることによって投資判断
  に影響を及ぼし得るものの、その情報のみでは、
  直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない
  情報(いわゆるモザイク情報)」【規制対象外】

やはり、FD規制導入後に企業の情報開示が
後退する可能性をある程度は覚悟すべき
なのかもしれません。


ただ、ガバナンス改革として政府が進めてきた
「建設的な対話の促進」は基本的に1対1の対話を
念頭に置いているのだと思います。

企業が求める建設的な対話には、「重要情報」
「モザイク情報」なんてことは些細な話であり、
必要なのは広い視野と深い分析力、というように
有識者の皆さんは考えているのかもしれません。

しかし、広い視野と深い分析力を持つには、
いろいろ話を聞き、知識のストックを増やすことが
不可欠です。

決算データを読むにしても、自分だけで考えるのと、
企業の担当者とやりとりしながら考えるのでは、
理解がだいぶ違います。

FD規制が結果としてそのようなやりとりの場を
なくしてしまうようなことにならないといいですね。

先日取り上げた「顧客本位の業務運営」にも
共通する話ですが、情報の出し手や事業者への
規律を促し、あとはアナリストやFP等におまかせ、
というだけでは片手落ちではないでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※慶大・深尾光洋教授の最終講義に参加しました。

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2017年02月18日

生保の第3四半期決算

 

生保の第3四半期(2017年4-12月期)決算が
出そろいました。

報道では4-12月期の減収減益を伝えるものが
多かったようですが、10-12月期に限って見れば、
トランプ相場による株高や円安の恩恵を受け、
それほど悪い四半期ではなかったようです。

EVを公表している上場会社の数値からも、
悪い決算ではなかったことがうかがえます。

ただ、外貨建資産のウエートが一段と高まり、
大手生保では一般勘定資産の20~30%に
達しています。


さて、例によって、10-12月期の保険料収入を
引き算して確認してみました。

大手は日本、第一、明治安田が減収となる一方、
住友は7-9月期を上回る保険料収入となりました。
同社の新契約年換算保険料を確認すると、
個人年金が7-9月期を上回る水準で売れています。
逆張り戦略なのでしょうか?

銀行窓販の保険料収入も総じて細っているようで、
第一フロンティアや三井住友海上プライマリー
といった窓販専門会社の減収が目立ちました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は韓国南西部の港町、木浦です。
 旧東本願寺が残っていました。

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