10年国債では長期化になりません

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前回のブログで個室寝台列車について書いたところ、
たまたま週刊東洋経済が鉄道特集で、ブルトレ廃止の真相について
記事が載っていました。やっぱり、という感じです。

さて、30日(火)の日経17面に「AIG規制、先取り相場の動き」
という題のコラムが載りました。
AIG危機の再発防止を狙った国際規制の強化を見越し、
大手生保の一角が10年国債の買いに動いた、というものです。

「国際規制の強化」→「資産・負債の金利リスクが顕在化」
→「長期債購入によりリスク量圧縮」という流れはその通りです。

ただ、実際のデータをみると、次のようなことがわかります。

・公社債の長期化は足元というよりも、2007年度あたりから加速している。
・推定残存年数はすでに10年前後になっている(大同生命を除く)ので、
 10年国債を買っても長期化にはならない。

ということで、「10年国債の買い」を「国際規制の強化が背景」とするのは
ちょっと無理がありそうですが、公社債の長期化が進んでいるのは確かです。
なかでも2008年度に長期化が目立ったのは、住友、明治安田、太陽、富国、
ソニーでした。第一や三井もすでにかなり長期化しているようです。

ここでは推定残存年数を、「~1年=0.5年」「1~3年=2年」「3~5年=4年」
「5~7年=6年」「7~10年=8.5年」「10年~=15年」として計算しているので、
実際にはもっと長いかもしれません(10年超を一律15年としているため)。

これだけ長期化しても、生保の金利リスクは依然として大きいと見ています。
というのも長期の負債に対し、公社債で全てをカバーしているわけでは
ないからです。

こちらもデータをみると、残念ながら2007年度末のものしかないのですが、
一般的に期間の長い負債である個人保険、個人年金の責任準備金に対し、
公社債の割合は5、6割にすぎないのです(富国とソニーは8割超)。

同じ円金利資産でも貸付金の期間は公社債よりも短めですし、
株式や不動産では負債の金利リスクを軽減できません。

※写真は広島です。修学旅行の小学生がたくさんいました。

 

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個室寝台列車の旅

 

西日本への出張があったので、念願の「個室寝台列車」に乗りました。
以前からチャンスがあれば乗ってみたかったのですが、
機会がないなかで、夜行列車がどんどん廃止されていきます。
先日はついに九州方面に向かうブルートレインがなくなりました。

そこで、最終目的地は広島にもかかわらず、サンライズ出雲(終点は島根県!)
のチケットをゲットし、初搭乗を果たしました。
会社の鉄道ファンによると、個室はプラチナチケットと化していて、
「植村さん、運がいいですよ」とのこと。

サンライズ出雲はオール個室のビジネス寝台特急で、A寝台は
写真のように大きな窓のある部屋にベッドとデスク、洗面台などがあります。
これだけの空間を独占できるのですから、かなりぜいたくなのでしょう。
室外ですがシャワーも使えます(トイレも室外にあります)。
ただ、食堂車も車内販売もないのは残念でした。

乗り心地はといえば、昔乗ったブルートレインよりも揺れない感じでしたね。
そうはいっても飛行機よりは揺れが気になります。
というか、駅に着くと(夜中でも駅に停まることがあるのです)
揺れなくて目が覚めるというのが正しいかもしれません。

私が小学生のころは、東京から西に向かう夜行列車が10本以上ありました。
それが今ではサンライズ出雲・瀬戸の1本だけです。
B寝台の顧客は値段の安い夜行バスにとられてしまったのでしょう。
夜行バスは安いだけではなく、快適にもなりました。

ただ、ちょっと豪華な夜行列車の旅のニーズは十分あると思います。
実際、東京から北海道へ向かう「カシオペア」は大変な人気ですし、
欧米でも豪華列車の旅は非常に人気があるようです。

そう考えると、ニーズの問題ではなく、鉄道会社の問題、
つまり、西方面はJRが東日本、東海、西日本、九州と分かれてしまったことが
大きいのではないでしょうか。

 

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第一生命の最後の総代会

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6/30(火)の総代会を前に、第一生命が組織変更計画案と
株式の割当て状況を発表しました。

 第一生命のニュースリリース

これによると、1株以上の割当てがある社員(≒契約者)は306万人。
全体の37%です。整数株式を受け取り株主になることも、
株式相当の金銭を受け取ることもできます
(端数部分は金銭を受け取ることになります)。

1株未満の割当てがある社員は全体の53%(432万人)。
こちらもいくらかの金銭を受け取ることができます。

そして全く割当てのない社員は10%だけでした。
これは大同生命の26%、太陽生命の30%、三井生命の36%に比べ、
かなり小さい数字です。
社員権の喪失に対し何の補償もなくていいのかという疑問もありますが
(第一生命のせいではなく、そのような制度になっているのです)、
予定利率の高い、いわゆる「お宝契約」であるはずです。

「第一生命の契約者であると同時に社員である」という意識を持った
加入者は、おそらくほとんどいないと思います。多くの契約者にとって、
株式割当て(または金銭受け取り)は「たなぼた益」でしょう。

気になるのはその金額ですが、これは上場直前までわかりません。
ただ、第一生命のEVは1.5兆円、修正純資産だけでも1兆円強あります。
仮に1兆円を1000万株に分けるとしたら、1株当たり10万円です。

1株未満の割当てがある社員432万人には182万株の割当てですから、
平均すると1人当たり0.4株となり、4万円となりますね。

今後の経済・金融情勢にもよりますが、何らかの割当てのある
720万人にとっては、ちょっとした臨時ボーナスとなりそうです。

※写真は小雨に煙るランドマークタワーです。

 

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連邦規制は実現するか(米国)

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オバマ大統領が17日に発表した金融規制改革案のなかに
「連邦レベルの保険規制当局の設置」があります。

そうです。米国の保険監督は州レベルで行われていて、
州によって規制がバラバラなのです。
そのような状態がもう135年も続いています。
NAICという組織がありますが、あくまで州当局の横のつながりであって、
全米を代表する規制主体ではありません。

昨年9月にAIGが経営危機に陥った際、
「某国の保険監督当局がAIG危機を受け、米国と連絡を取ろうとした時に、
 いったい誰に連絡すればいいのかわからなくて困った」
「IAISが(AIG本社のある)NY州の保険監督当局に連絡したところ、
 『CDSの問題は英国の話なのでここではわからない』と突き放された」
などといった話が伝わっています。

金融危機の再発防止に向けて、連邦レベルの保険規制当局を設けるのは、
ごく自然な流れのように思えます。
ところが、これがそう簡単ではないのです。

まず政治家が反対します。各州の保険庁には何百人もの職員がいるうえ、
州規制に対応するために作られた保険会社がたくさんあるためか、
州規制の見直しは雇用問題や税収の問題に直結するからです。

大手保険会社も規制改革にそれほど積極的ではなさそうです。
各州の監督を受けるコストは非常に大きいと思うのですが、
規制の緩い州に名目的な本社を置くなど、メリットもあるためでしょうか。

「連邦規制への移行」はこれまで何十年も議論され、実現せずにきました。
今回はAIG問題で州規制の欠点が国際的にも露呈したわけですが、
果たして連邦レベルの保険監督当局は実現するでしょうか。

※横浜線シリーズ第3弾は中山駅。
 ここから市バスでズーラシアに向かいます。

 

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「激震 変額年金」

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18日と19日の日経に「激震 変額年金」という記事が載りました。

AIGの信用不安、ハートフォード生命の主力商品の運用停止、
さらに今年になってから販売休止が相次いでいるわけですが、
記事ではこのような変額年金市場の異変をうまく整理しています。

私のコメントもあります。
「今回の教訓を機に、関係を正常化すべきだ」というものですが、
これだけでは何だかわからないので、少しだけ解説しますと、

・そもそも金利水準が低いなかで、「最低保証」「値上がり期待」
 「高い代理店手数料」の3つを満たすのは難しい。

・ただ、銀行の販売力を前に新規参入する保険会社が相次ぎ、
 銀行主導のマーケットになっていた。最低保証が日々上昇したり、
 リスク資産のウエートが高かったりする商品も見られるようになった。

・ところが、金融市場の混乱で、もし保険会社が破綻したり
 撤退したりした場合には、銀行も無傷ではないことがわかった。
 手数料ビジネスなので財務的なダメージはないが、
 顧客の信頼を失い、顧客基盤を棄損するおそれがあるためだ。

・もっとも、リテールビジネスを強化したい銀行にとって、
 保険・年金商品は不可欠な存在だ。
 今後は単に「いい商品」をとっかえひっかえ採用するのではなく、
 銀行と保険会社がパートナーとして長期的な関係を築いていく必要がある。 

という話をしました。
とはいえ、販売を休止したり、抑制したりという動きは続きそうですから、
今年度の変額年金の販売はかなり落ち込むのではないでしょうか。

※写真は娘からの「父の日プレゼント」です^^

 

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「保険金支払いの先送り」の記事

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17日の日経と朝日に掲載された日本興亜損保に関する記事です。

「保険金部門の担当役員が2月の会議で、保険金の支払い先送りを
 示唆するとも受け止められる発言をしていたことがわかった」(日経)
「役員が09年3月期決算で収益をかさ上げするため、社内会議で
 保険金支払いの決算への計上を遅らせるよう指示した疑い」(朝日)

これに対し、兵頭誠社長は18日の会見で(第三者委員会の調査を踏まえ)
「経営が関与した事実はない」と否定しています。

保険金支払いを意図的に遅らせるのは違法行為でしょう。
でも、年度内に発生した事故の支払いが翌年度にずれ込むことは
多々あります。その場合には支払備金を計上するので、
損益への影響はニュートラルです。

つまり、保険金の支払いが遅れても、損益に影響はありません。
損害率や収支残には影響しますが、「利益をかさ上げして配当し、
会社に損害を与えた」という悪質な話にはなりえません。

しかも、記事には指示が実行されたとは書いてありません。日経記事は、
「示唆するとも受け止められる発言をしていたことがわかった」です。

両紙はなぜ、このニュースをこの内容で掲載したのでしょうか?

※写真は横浜線の鴨居駅。ららぽーと横浜の最寄り駅です。

 

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日経ビジネスの損保特集

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6月15日号の日経ビジネスに損保業界のレポートが掲載されました。
「瀬戸際損保、生き残りの戦い」というタイトル。
「再編だけではまだ危ない」という副題が付いています。

ビジネス誌にありがちな再編の内幕ものではなく、
東京海上の有力代理店14社による代理店政策への不信や不満、
あるいは、損保主導ではない、代理店自身による再編の動きなど、
保険会社と代理店の関係にかなりの誌面を割いています。

記事には「事業費率を抑えるため、代理店数を半減」とありますが、
減少した代理店の大半は小規模なところなので、
半減しても事業費削減効果は限られています。
事業費率の低下は合併等に伴う人件費、物件費の引き下げ効果
(生保子会社への人員シフトもあり)が中心だと思います。

例によって、最後のほうに私のコメントも載っているので、ご紹介します。

「(政策保有株式について)本当に利益を生むのかという細かい分析は
 なかったのでは。株価が大きく下がるたびに巨額の損失を負ったが、
 それでも保有し続けてきた」

というものです。
記事によると、日本興亜では経済的付加価値分析(=EVAでしょうか?)
をユニットごとに行うそうなので、大いに期待したいです。

※写真は横浜線の小机駅。日産スタジアムの最寄り駅です。

 

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鳩山総務相の更迭

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この件ですが、世間ではどう受け止められているのでしょう?

13日の日経に郵政民営化委員会・田中直毅委員長が、

・「かんぽの宿」売却問題の本質は、民営化前に意味のない施設を
 でたらめな基準で造っていたことにある。
・第3種郵便の不正利用では、旧郵政がチェックが働かず自己修正できない
 組織であることが明らかになった。
・こうした問題を放置すればやがて巨大な赤字を生む。それを防ぎ
 200兆円近い郵貯を有効活用するのが郵政民営化の本質だ。

とコメントしていますが、私もその通りだと思います。

「国民の財産の不当な安売り」といっても「不当」の根拠は薄く、
そもそも2400億円もかけたことのほうがよっぽど問題でしょう。
6日の朝日新聞「かんぽの宿 ぬるま湯経営」では
ある施設の赤字経営の実態が報道されていましたが、
まさに「お役所仕事」といった実態が浮き彫りにされていました。

東京中央郵便局の建て替え問題も、文化的価値はわかりますが、
その点も含めて十分検討されたはず。

民営化後の郵政に問題がないとは言えません。
ただ、権力とはそのように行使するものではないと思うのですが。

※写真は小学校の黒板です。週末に授業参観がありました。

 

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日本興亜損保の統合反対事件

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損保ジャパンとの経営統合計画を進めている日本興亜損保に対し、
前社長などが統合計画に反対する文書を送付したとのこと。

OBが現在の経営陣に注文をつけるというのは、日本ではよく聞く話ですが、
このような形で外部に明らかになるのは異例のことでしょう。

「親密金融グループが離反する」「日本興亜の文化の破壊」など
気持ちはわかりますが、現在の経営陣の決断に対し、
OBが揺さぶってどうしようというのでしょう。

しかも、この統合計画ではまだ統合比率(株式交換比率)が
決まっていません。

「対等の精神」とはいえ、損保ジャパンの株主からすれば、
日本興亜損保をいくらで買うかという話です
(本来は統合計画発表と「いくらで買う」はセットだと思いますが...)。

買い値をこれから決めようというこの時期に、おそらく株主でもあるOBが
自ら価値を下げるような行動をとるとは、私にはまったく理解できません。

3月の統合計画発表以降、日本興亜の株価は低迷していますが、
果たして7月にも発表される統合比率がどうなるか注目です。

※写真は多摩川から見た川崎のビル群です。

 

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「ステップアップ!保険窓販」

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きんざいのFP向け月刊誌「ファイナンシャル・プラン」の6月号は
「ステップアップ!保険窓販」と題した窓販特集でした。

 ファイナンシャル・プランのHPへ

このなかに私のインタビュー記事が掲載されています。
「生命保険マーケットの概況と銀行窓販の今後の行方」というタイトルで、
保険マーケットの変化や銀行の置かれている現状などについてコメントしました。

特集では、三菱東京UFJ銀行の保険窓販レポートや、
RML株式会社・清水英孝代表による「生命保険のセールス話法」
などが掲載されています。

清水さんの記事は、金融機関の保障性商品販売について
どのような論理・技術が必要なのかを解説したものです。
これを読むと、セールスは科学なんだなあと思います。

「銀行窓販は損保系生保のモデルに似ている」という主張には私も同感です。

10年少し前、膨大な損保の顧客に対して生保を販売しようと参入した損保。
ところが損保系生保のクロスセル率は10年で5%前後にとどまっています。
今度は銀行が膨大な顧客基盤に対し、生保の保障性商品を
提供しようとしているわけですね。
今のところ成功モデルは必ずしも確立していないようですが、
果たしてどうなるでしょうか。

記事によると、損保系生保のクロスセル率が期待を下回ったのは、
損保系生保が見込み客の位置付けを間違えたことと、
モデルの異なる外資系生保の手法を採用したことなどが要因としています。

単に各種の生保販売話法を覚えるのではなく、
「関係性が薄く、生保を欲しいと思っていない顧客から契約を得るには
どうしたらいいか」を考えるべきという主張には説得力があります。

※写真は横須賀線・新川崎駅です。日吉と新川崎の近さを実感しました。

 

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