米国の変額年金販売

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2008年の金融危機を受けて販売休止が相次いだこともあり、
2009年度は変額年金の販売が減少し、銀行窓販の主力が
定額商品(定額年金、一時払い終身保険)に移りました。
これは日本の話です。

米国ではどうなっているのか気になったので調べてみると、
変額年金の販売はやはり2008年、2009年と減っています
(LIMRAのHPより)。

ただ、2008年に急増した定額年金の販売が、2009年には
小幅ながら減少しているところをみると、必ずしも変額年金から
定額年金にシフトしているわけではないことがうかがえます。
しかも、2010年の1-3月には変額年金の販売が前年を上回りました。

なぜ日本とは異なる動きになるのかというと、
一つは販売チャネルの違いがありそうです。

日本では銀行が一時払い商品のメインチャネルとなっており、
変額/定額ともに銀行が販売しています。

他方、米国では主に銀行が定額年金を販売し、
変額年金は証券チャネルが積極的に扱う、というとやや言いすぎですが、
証券チャネルの存在が大きいのは間違いなさそうです
(他に年金制度の違いも大きいようですが、ここでは触れません)。

もっとも、米国でも販売上位の顔ぶれは変わっています。
変額年金ではプルデンシャル、メットライフの2大生保が上位を占め、
INGやハートフォードは順位を下げています。
AIGは変額年金で7位、定額年金で2位と善戦しているようです。

※保険会社の本社は風格のあるビルが多いですね
 (どこだかわかりますか?)。

 

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0.57のテクニック

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塾の「保護者のための体験教室」に参加してきました。
1時間の体験授業(算数)を受けるというものです。

レンズ型(または葉っぱ型)ってわかるでしょうか?
正方形の1つの対角線の両端を中心に、
正方形の辺の長さを半径とする円(おうぎ形)を描くと、
その2つの円の重なる部分がレンズ型になりますよね
(図で説明すれば簡単なのですが...)。
今回はそのレンズ型の面積の求め方についてでした。

学校ではおそらく、
 (おうぎ形の面積 - 直角二等辺三角形の面積)× 2

あるいは、
 おうぎ形の面積 × 2 - 正方形の面積

というように地道に計算させるでしょう。

ところが体験教室では、正方形の面積 × 0.57 という解法を
紹介していました(正確には、π ÷ 2 - 1)。

実は数日前、たまたまこの「0.57」が娘との話題になり、
このテクニックを使わせるべきかどうか考えていたところでした。
中学受験をしたことのない私には、このテクニックは初耳で、
なんとなく抵抗があったのですね(人間知らないことには保守的ですから^^)。

ただ、今日の授業では、なぜ0.57になるかの丁寧な説明があったうえ、
計算が楽にできるというよりは、計算ミスをしにくいというメリットを
先生は強調していました。

「テクニック」というと何となく悪い響きに聞こえがちですが、
必ずしもそうではありません。テクニックの背景を理解できていれば、
むしろどんどん使ったほうがいいのでしょう。
そこからいろいろ考えることにつながっていけばいいのですから。

※「浜銀通り」というのが横浜らしいですよね。
 同じ通りに三菱UFJもみずほもあるのですが...

 

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収入構成と損益構成の違い

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生保の2009年度決算では、貯蓄性商品(主に銀行窓販)の販売動向が、
年換算保険料などの業績指標を大きく左右しました。
しかし、保障性商品と貯蓄性商品では当然ながら利益率は
かなり異なるはず。会社価値への貢献という点ではどうだったのか、
もっと情報がほしいところです。

銀行セクターに目を転じると、一部の銀行では
事業部門別に資本コスト控除後の純利益を開示しています。

例えば、きんざいでも紹介されていましたが、
千葉銀行では「貸出金の収益構造」を開示しています。
銀行ビジネスの中核的存在というイメージのある大・中堅企業向け
(貸出平残は全体の18%)が資本コスト控除後純益では赤字であり、
平残で33%の住宅ローンが、純益の5割を占めていることがわかります。

りそなホールディングスも「事業部門別管理会計の状況」のなかで
資本コスト控除後利益を公表しており、コーポレート事業の赤字を
コンシューマー事業(特にローン)と信託事業、市場部門で
補っていることが示されています。
業務純益の段階とはかなり姿が異なります。

このような部門別の情報があれば、経営活動の妥当性を
外部から評価しやすいでしょうね。

 

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主要生保の決算発表から

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先週末に主要生保の決算が出そろいました。
銀行窓販をはじめ、貯蓄性商品へのニーズの強さが
改めて浮き彫りになったように思います。

新聞に出ているようなことをコメントしてもつまらないので、
四半期ごとの契約動向について何点かご紹介しましょう。

大手4社の新契約の推移を見ると、傾向の違いがわかります。

日本=転換純減が続くなかで、下半期は純新規Sが好調。
    また、今年に入り第三分野が増加している。
    個人年金は引き続き慎重姿勢のようにうかがえる。

第一=転換純減が比較的少なく、1件当りSを維持。
    他方、第三分野の保険料は前年割れが続いている。
    第一フロンティアの年金販売は今年に入り抑制した模様。

住友=昨年秋以降、銀行窓販の中心が個人年金から個人保険に
    シフトしたことがデータにも表れている。
    第三分野が堅調に推移。

MY =個人保険(貯蓄性商品)、個人年金とも高水準の販売が続く。
    転換純減が続くなかで、第三分野の保険料が減り続けているのが
    やや気になるところ。

ちょっと意外に思えるかもしれないのがアフラックです。
個人保険の新契約ANPは前年を大きく上回って推移しているのですが、
第三分野は新商品を投入した10-12月期を除き、前年割れでした。
米国の決算データによると、がん保険の落ち込みが効いているようです。

アリコの新契約ANPの推移にも注目です。
個人保険では顧客情報流出問題がクローズアップされたこともあり、
下半期は上半期よりも減っています。
それでも、AIGショックに見舞われた前年よりは高い水準です。
他方、個人年金の回復ペースは遅く、以前の1/4程度にとどまっています。

保険会社の四半期開示はB/S関連を除き、活用が難しいですが、
各社の販売戦略の手掛かりにはなりそうです。
もちろん、いつものように個人的なコメントということでご理解願います。

※娘の宿題のため、ごはんミュージアムに行きました。
 お米やごはんに関するパンフレットやゲーム、ショップがあり、
 意外に楽しめますよ。
 

 

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ガバナンス研究

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先週末(22-23日)に日本ファイナンス学会の年次大会があり、
コーポレートガバナンスに関する2つの研究発表を聞きました。
いずれも実証分析です。

1つは「日本企業が独立取締役に何を期待しているか?」
という早稲田大学商学部の広田真一先生の発表です。

日本の独立(≒社外)取締役は特定のステークホルダー
(株主など)の代表というより、ステークホルダー全体の
代表であるという分析結果が示されました。

さらに、日本で独立取締役の導入が進まない理由は、
マスメディア等の通説である「経営者の保身」ではなく、
従業員をも含めた企業内部者の抵抗、という分析もありました。

ステークホルダーにはもちろん従業員も含まれますが、
日本企業の場合、外部ステークホルダーと内部ステークホルダーに
分けて考えるというのも確かに一つのアイディアだと思います。

もう1つは「日本企業の取締役会構成の決定要因」という、
京都産業大学・齋藤卓爾先生の発表です。

日本企業で取締役がどのように選ばれるかに注目したうえで、
社外取締役と企業属性(規模、R&D比率など)の関係を分析し、

「社外からのアドバイスは好むが、モニタリングは好まない」

という日本企業の選好が取締役会構成に反映されているという
興味深い結論を示されていました。

日本でも社外取締役が増えたとはいえ、海外に比べれば圧倒的に少なく、
しかも経営者が選定に強くかかわっていることが多いようです。
委員会設置会社についても、社外取締役が中心の指名委員会を
導入した会社はごく一部です。

お二人の発表から感じたのは、海外に比べ、日本企業の
ガバナンス構造がかなり特殊な状態にあるということです。
うまくいっている時代はよかったのかもしれませんが、
今は明らかに問題のほうが大きいように思います。

ただ、日本企業のガバナンスに問題があるのがわかっても、
アメリカなど海外の仕組みをそのまま導入しただけでは
あまり役に立たないのかもしれません。
どのような制度設計がいいのか、難しい問題です。

 

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3メガ損保の決算発表

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先週20日に大手損保の決算が発表されました。

本業に近づいてしまうのでコメントしにくいテーマですが、
「保険アナリスト」のブログで全く触れないというのも
それはそれでどうかと思うので、ちょっとだけコメントします。
もちろん、仕事とは一切関係ありません。

さて、3グループに集約されてから初の決算発表ということで、
新聞の扱いはかなり大きかったように感じました。
全紙を確認したわけではありませんが、
朝日や日経は図表(複数)・写真入りでした。

今回の決算がよかったのか、悪かったのかと聞かれれば、
純資産や最終利益が改善していることもあり、
前年度に比べればよかったということになるのでしょう。

しかし、特殊要因が残る自賠責を除くベースで見た
単体の正味収入保険料は、主要8社のうち7社で減収です
(増収はニッセイ同和のみ)。
同じベースで収支残が改善したといえそうなのは、
事業費率を下げることができた東京海上と富士火災くらい。
自動車保険の収支残となると、なんと全社がマイナスでした。

このようにみると、海外事業や運用環境改善などを除けば、
実質的には相当厳しい決算だったのではないでしょうか。

※写真は近所のバス通りなのですが、最近になって、
 川が流れていた名残(欄干だけ残った)と知りました。
 地元に長く住んでいても知らないことはたくさんありますね。

 

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V字回復とは言うものの

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※毎度のことですが、コメントはあくまで個人的なもので、
 仕事とは一切関係ありません。

大手銀行の決算が出そろいました。
新聞には「V字回復」とありますが(朝日、読売、東京など)、
同時に利益水準の低さにも注目が集まりました。

生保とは違い、歴史的低金利の恩恵を受けた銀行セクターですが、
さすがにこれだけ低金利が長引くと利ざやを稼げません。
預金金利はこれ以上下がらない水準にある一方、
資金需要が弱いなかで高い貸出金利は設定できません。

有価証券投資にも期待できません。
銀行が中長期債に傾斜すると、金利リスクを抱えることになります。

国内ではおそらく、投信や保険販売などの手数料ビジネスに
一段と力を入れる銀行が増えるのでしょう。
いよいよ保険のチャネル間競争が激しくなりそうです。

※砂浜に行くと、つい土木工事に走ってしまいます^^

 

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経営者の交代と報酬

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「コーポレート・ガバナンス 経営者の交代と報酬はどうあるべきか」
(日本経済新聞出版社)を読みました。

本書は制度的変化の解説や先進事例の紹介ではなく、
ある程度大規模なデータセットを用いて
日本企業のガバナンスの実態を分析した労作です。

筆者は、
「コーポレート・ガバナンスの基本は、経営者の交代と金銭的なインセンティブ」
ということを繰り返し指摘しています。

優秀な経営者には高い待遇を提供し、悪い経営者には退出を促す
ということです。

しかし、本書によると、日本の経営者は株価を最大化するような
インセンティブをほとんど持っていないことが明らかにされています。
しかも、業績が悪化しても交代しない社長のほうが多いようです。
イメージ通りではありますが、データ分析なので説得力があります。

「悪い人が悪いことをするのを防ぐことは容易ではないが、
 いい人が、善意で悪いことをするのを防ぐことも容易ではない」

という記述もありました。
私には後者のほうがより難しいように思えますが、どうでしょうか。

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※久しぶりに江の島へ。今回は娘とのデートでした♪

 

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サムスン生命の上場

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日本ではあまり大きく報じられていないようですが、
韓国生保最大手のサムスン生命が上場しました。
第一生命とは違い、もともと非上場の株式会社だったものが、
2007年に韓国政府がIPOを認めたことを受けたものです。

時価総額は約1.8兆円と、第一生命(1.6兆円)を上回りました。
気になるEVとの関係ですが、報道によるとEVの1.4倍程度だそうです。
会計や計算の前提が異なるので単純比較はできませんが、
第一生命(0.6倍程度)とはずいぶん違いますね。

ロイターの記事に載っていた投資家のコメントには、

「韓国の生保市場は日本ほど成熟しておらず、中国ほど成長性はないため、
 この程度のEV倍率は理解できる」

とありました。

それが正しいかどうかはともかく、外国人投資家は当然のように
第一生命とサムスン生命を比べて評価しているのでしょうね。

 

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新型インフルエンザの影響

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1年前の今ごろは新型インフルエンザ騒動で大変でした。
昨年の4/28に政府が発生宣言を出し(当時の厚労相は舛添さん!)、
国内初の感染者が確認されたのが5/9です。
結果的に弱毒性ということで死者は200人弱にとどまったものの、
不安な日々を強いられました。

ところで、生命保険経営学会の機関誌「生命保険経営」最新号(5月号)に
「新型インフルエンザの生保事業への影響」という論文が
掲載されています。

論文の試算によると、重度の新型インフルエンザが発生した場合、
保険金や給付金の支払いは全社合計で6.5兆円に及ぶとのことです。
2008年度末の危険準備金が5.7兆円、ソルベンシー・マージン総額では
23.4兆円あるため、業界全体で見れば健全性が危機的な状況に
なることは考えにくいという結論でした。

前提としている日本政府の被害予測が甘い(想定感染率が低い)
という意見もあるようで、今後の新たな試算に注目したいところですが、
一つの目安として踏まえておきたいと思います。

※休日の井の頭公園にはいろいろな店が出ていて楽しいですね。

 

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