保険に入らなくなった?

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土曜日(12/26)の日経「日本gene U-29」のテーマの一つが
「保険に入らなくなった?」でした。

記事の中身はご覧いただくとして、使われた図表のなかに
「20代の生保加入率は大きく低下」というものがありました。
このデータは以前もここで取り上げたことのある
「生命保険に関する全国実態調査」の一部です。
HPには過去3回分の調査結果が掲載されています。

生命保険文化センターのHPへ

調査によると、1991年には約90%だった29歳以下世帯の加入率が、
2009年には71.6%まで下がったことが示されています。

ただ、直近の調査から「生協・全労済」も含まれるようになりました。
従来の「民保、簡保、JA」だけの加入率をざっと計算すると、
おそらく65%程度まで下がっているようです。

興味深いのは、今回加わった「生協・全労済」の加入率です。
全年齢では28.8%なのに対し、29歳以下は29.6%でした。

生協・全労済の主力である「一律掛金、一律保障」商品は
若年層には本来、相対的に不利なはずですが
(リスクの異なる20代も50代も同じ掛け金なので)、
それでも29歳以下世帯の支持を集めているのですね。

若年層の生保加入率低下の原因として
「オフィスのセキュリティー強化(=営業員が職場に入れない)」
がしばしば挙げられます。

しかし、このような生協・全労済の加入率をみると、
これは従来のビジネスモデルを前提にした言い訳のように
聞こえてしまいますね
(他に「若年層の所得水準低下」という深刻な要素もあると思いますが…)。

 

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バーゼル委の規制見直し案

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クリスマス前に風邪をひいてしまい、ようやく復活しつつあります。
とんだプレゼントでした。

恥ずかしながら自分で見つけたのではなく、教えてもらった話ですが、
17日に公表されたバーゼル銀行監督委員会の規制見直し案
(市中協議文書)のなかに、資本持ち合い規制の強化がありました。
これが結構厳しい内容です。

バーゼル委の市中協議文書(金融庁HP)

具体的には次の通りです。

①他の金融機関への出資比率が10%以上の場合、
 出資額と同額を当該銀行のコア資本から控除する
②他の金融機関への出資合計がコア資本の10%を超えている場合、
 超えた部分を当該銀行のコア資本から控除する

ここでいう「他の金融機関」には銀行のほか、保険会社なども入ります
(おそらくノンバンクも)。
①は、例えば三井住友銀行は三井生命に14.23%出資(普通株のみ)
しているので、この出資分が全額控除対象となります。
②は「出資合計」ですから、もっと影響が広範囲に及ぶと思われます。
コア資本が3兆円の銀行の場合、3000億円が上限です。

この案がそのまま新しい規制となるわけではなく、
何回か市中協議文書が公表されることになるのでしょうし、
「グランドファザリング(既存の取扱いを一定期間認める措置)」や
「段階的な実施」を十分長期にわたり設定するとのことです。

ただ、このような規制の方向性は押さえておいたほうがいいかと思います。

※サンタさんは娘には「人生ゲーム」をプレゼントしてくれました。
 かさばるので運ぶのが大変だったでしょうね^^

 

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統合損保の臨時株主総会

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損保各社は12/22に、統合の承認を求める臨時株主総会を開催しました
(日本興亜損保は12/30の予定ですが、どうなるでしょう?)。

関連する記事が各紙に載っていますが、このうち朝日(22日)に
私のコメントが出ています。

「『代理店の統廃合ペースは鈍る可能性がある』と指摘する。
1社専属でなくライバル社の商品を扱う代理店も増え、
締めつけが厳しいと、他社商品に流れる恐れがあるからだ。」
(私のコメントは『 』部分です)

より正確に言えば、統合で乗合代理店が増えるというよりは、
そもそも乗合代理店も多いので、統合を成功させるには
無理な統廃合や手数料の見直しはできないだろうという趣旨です。
あいおい損保誕生の際、トヨタ系以外の一部ディーラー等が反発し、
他社に流れてしまったのは記憶に新しい話です。

販売網の生産性や効率性を高め、いわゆる二重構造問題を
解消するのは国内損保の重要な経営課題となっています。
例えば、東京海上の抜本改革や損保ジャパンのPT-Rは
二重構造解消を意識した取り組みです。

3社統合、2社統合で二重構造解消の取り組みが
足踏みしないかどうか、注目していきたいと思います。

ところで、21日の日経の見出しは「保険料下げ競争激化へ」。
統合が保険料やサービス面の本格競争を促すとしています。

しかし、寡占が一段と進むなかでは、教科書的に言えば、
むしろ競争が緩和されるはずです。
投資家向け説明会でも「保険料が下がる」とは聞いていません。
特に競争相手が少ない企業向け分野では、足元はともかく、
寡占による弊害がでないかどうか注意が必要です。

最後に、以下のようなHP(ブログ?)を見つけました。
コメントはあえて避けておきます。

日本興亜損保の真の発展を願う株主有志

※このかわいいサンタさんは晴海のトリトンで見つけました。
 サンタさんはわが家にも来るのでしょうか?

 

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きんざいに書きました

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今週の週刊金融財政事情(2009.12.21)に拙稿が掲載されています。
「金融危機と保険会社のリスク管理態勢」というタイトルです。

11月の日本アクチュアリー会・年次大会で発表した内容を
銀行と保険のつながりを中心に加筆修正しました。

ご参考までに前文を引用します↓

 米AIGの経営危機が金融システムの動揺を招いたように、
 日本でも銀行と生保の関係は強く、かつ、以前よりも多面化、
 複雑化している。このため銀行だけではなく保険会社のリスク
 管理態勢にも十分注意すべきである。

 筆者のインタビュー調査によると、リスク管理の実効性は
 保険会社によって大きくばらついていた。ある程度機能した
 会社では、経営意識の高さ、単一モデルに依存しない体制、
 実行可能性の高さといった特徴がうかがえた。

この号には保険関係の論文がもう一つ掲載されています。
タイトルは「金融危機後の国際的な保険監督規制の動向」。
損保協会の前国際部長で、現在はジュネーブ協会アドバイザーの
松下勝男さんによるものです。
最近の規制強化の動きをわかりやすくまとめています。

※銀座で白いプーさんをみつけました。

 

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RIS2009全国大会

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RIS(全国保険学ゼミナール)2009の全国大会が
日本大学商学部でありました。
全国の大学でリスクと保険について学んでいる
大学生が日大に集まり、研究成果を発表するという
いわば大学生の学会です。

RISのHPへ

2日間にわたる大会のうち、私は都合により2つの発表しか
参加できなかったのですが、予稿集のタイトルや発表要旨をみると
興味深そうなものがたくさんありました。

例えば、「CDSの問題点と今後の対応(大分大学)」
「かんぽ生命の未来(早稲田大学)」といった時事的なテーマや、
「国民年金の財源問題について(近畿大学)」
「失業者と雇用保険~世界経済不況の影響~(日本大学)」
「大学における資産運用のリスクマネジメント(一橋大学)」
といったテーマもあり、大学生の関心分野が伺えます。

私が参加した発表のうち、
「損害保険会社の海外進出の評価(東京経済大学)」は
非常にレベルが高かったです。

まず海外進出の現状を整理したうえで、
仮説を立て、株価データなどを使って実証分析を行い、
さらに大手損保3社へのインタビューも実施したうえで、
「(海外進出に対する)株主と会社の考え方に違いがある」
というまとめをしていました。

サンプル数が少ないことや分析結果の解釈など
荒削りな部分も多いとはいえ、これだけしっかりした分析と
発表ができる学生さんたちがいるんだなあと、
久しぶりにうれしくなりました。

今の大学生は3年になったら就職のことを考えなければならず、
専門性を磨く余裕がますますなくなっているようです。
そのような厳しい環境のなかでも、頑張って勉強している
RISの皆さんにエールを送りたいと思います。

 

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第一生命がEEVを公表

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第一生命グループは14日、2009年9月末のEEV
(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)を開示しました。
上半期末のEVを開示したのはT&D保険グループに続き2例目です。

ニュースリリースへ

第一生命は2010年4月に株式会社化&上場を控えています。
EVは生命保険会社の株主価値を試算したものなので、
投資家にとって非常に重要な指標と位置付けられています。

2009年3月末は株価が低く、市場のボラティリティも高まっていたため、
市場が落ち着いた9月末のEVは確かに参考になると思います。

3月末に比べて修正純資産が5085円増加した(1.8兆円)のは
株価上昇による影響が大きいです。
保有契約価値が2387億円増えた(0.7兆円)のは、
主にリスクフリーレートの上昇によるとのことです
(15年以上の超長期ゾーンが上昇しました)。

ただ、新契約価値(上半期に獲得した契約の価値)は
前年度の4割にとどまっています。

新契約価値についてもリスクフリーレートの上昇が
プラスに効いているはずなのですが、
第一フロンティア生命の変額年金が4787億円も売れたので、
最低保証オプションの負担が足を引っ張ってしまったようです。
同社が下半期に販売を抑制する方向で検討するというのも
理解できる話ですね。

※写真は日本橋三越の巨大ツリーです。

 

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台風18号の支払見込額

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10月上旬に上陸した台風18号の保険金支払見込額は
約551億円だったそうです。

損保協会のニュースリリースへ

この台風は、50年前に大きな被害を出した伊勢湾台風と
上陸するまでほぼ同じコースをたどり、勢力も強かったので、
大きな被害が出る恐れがあると言われていました。

今回の「551億円」は史上12番目の支払額なので、
決して小さい金額ではないですが、正直言って、
関係者はこの程度の被害にとどまってホッとしたでしょう。

現在のソルベンシー・マージン比率の風水災害リスクは
伊勢湾台風に相当する規模の台風が発生した時の
推定保険金をリスク相当額としています。
金額は今回の10倍以上です。

上陸地点がやや東にずれた(=名古屋を直撃しなかった)ことや、
上陸後の台風のスピードが速かったことなどが
不幸中の幸いだったのでしょう。

とはいえ、地球温暖化の影響からか、強い台風は
発生しやすくなっているようです。
また、海面温度が高いと、日本に近づいても勢力が
衰えない傾向があるとのこと。
油断は禁物ですね。

※今年は地元の大倉山駅前にツリーが登場しました。

 

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損保協会の比較サイト

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日本損害保険協会が最近、自動車保険商品の比較サイトを開設しました。

損保協会・自動車保険比較サイトへ

最初は「保険料の比較ができないサイトなんて利用価値がない」
とも思ったのですが、価格以外にどの項目を比べればいいのかを
知るうえでは参考になりそうです。

例えば、人身傷害保険や車両保険の選択パターンが示されています。
主な特約や割引制度も示されていて、便利です。
主なサービスや商品の特徴も簡潔に記されています。

もちろん、リスク細分がどのような条件設定で行われているか
(年齢、運転者の範囲、免許証の色、使用目的、走行距離など)
という情報もあります。

数年前に開催された「比較討論会」では、業界団体に比較情報の提供を
期待する声が多く、私などは非常に違和感を覚えたものですが、
様々な制約があるなかで、損保協会の取り組みは評価したいと思います。
価格情報はないですが、リンク先で見積もりを出すことはできそうですし。

あとは生保と第三分野ですが、今のところ具体的な動きはなさそうです。
このままですむとは思えないのですが。

※渋谷で待ち合わせをしたら、モヤイ像がなくなっていました。
 なかなか面白い企みですね。

 

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変額年金の資産残高

今さらではありますが、生保の上半期報告のデータをみると、
変額年金の資産残高が過去最高となったことを発見しました。
主要12社の残高合計は16.7兆円で、この半年で18%増えています。

もちろん、時価が10%近く増えた影響もあるのですが、
住友、第一フロンティア、T&Dフィナンシャルなどの売り上げが
寄与しているようです。
銀行の手数料ニーズもあるとはいえ、貯蓄性商品へのニーズは
依然として根強いと言えそうです。

別件ですが、セミナーのご案内です。
クリスマスイブに金融財務研究会主催のセミナーで
スピーチをする予定です。
有料セミナーですが、ご関心のあるかたはどうぞ。
自分で言うのもなんですが、今回は面白いと思いますよ。

金融財務研究会のHPへ

※写真は横浜港の風力発電(風車)です。
 気がついたら風車がありました^^

 

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連邦規制は実現するか(続き)

以前このブログでも取り上げた米国の金融改革ですが、
どうやら「連邦レベルの保険規制当局」は実現しなさそうです。

連邦規制は実現するか(6/23のブログ)

正確に言うと、連邦レベルの保険当局は設立されるものの、
州単位の免許制度はそのままで、新たな保険当局は
モニタリングと国際問題への対応などを行います。

やはり州の影響力(というか政治力)は強いのですね。
米国が基本的に内向きな国であることを改めて認識しました。

そういえば自国の大統領が提唱してできた国際連盟にも
米国は加盟しませんでしたね。90年も前の話ですが。

 

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