03. 保険市場の動向

生保加入率の男女逆転

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先週末だったでしょうか。「生保、女性加入率が男性上回る」
というニュースが流れました。
「不況の影響に加え、未婚化が進み、生命保険の必要性を
感じない人が増えている」とのこと。

本当にそうかなあと思って、元の資料を調べたところ、
事実は次の通りでした。

生命保険文化センターが9日に発表した
「平成22年度 生活保障に関する調査」によると、
生命保険・個人年金保険の加入率が、
男性が79.9%(H19年は81.9%)だったのに対し、
女性は81.4%(同81.2%)と確かに逆転しています。

ただ、内訳をみると、民保の男性加入率はむしろ高まっており、
簡保とJAの下げが、男性加入率の低下に寄与しています
(生協・全労済の加入率は上昇)。

また、女性加入率の上昇は、ほとんど民保によるものです。
H19年の55.6%から、今回は60.3%と約5ポイントの上昇です
簡保とJAの加入率は低下、生協・全労済は横ばいでした。

このようにみると、今回調査の特徴は「男女逆転」ではなく、

・民保で女性加入率が急上昇している
 → 各社の思惑通り、女性の医療保険加入が進んだのでしょう。

・簡保、JAの加入率低下
 → 主に貯蓄性商品の満期到来によるものと思われます。

・生協・全労済の男性加入率の上昇
 → 家計のメイン保障としての存在になりつつあるのでしょう。

ということで、記事とは一味違う分析結果になりました。

※写真は羽田の赤鳥居です。多摩川河口近くにあります。
 もちろん自転車で行きました。

 

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世界五大危機

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再保険業界で「世界五大危険」といえば、

 ・米国のハリケーン
 ・米国カリフォルニアの地震
 ・欧州の冬の嵐
 ・日本の地震
 ・日本の台風

この5つだそうです。なんと日本が2つも入っています。

過去10年間の日本の損保の出再保険収支は、
受取再保険金が多かった2004年を除いて、
常に大幅赤字となっています。

五大危険のうち二つもあるのだから仕方がないのか、
それとも再保険会社を儲けさせすぎなのか、
果たしてどちらなのでしょうか?

なお、ここでいう「危険」は保険損害額です。
犠牲者数ではありません。

スイス再保険の資料(シグマ)によると、
過去40年間に発生した災害の犠牲者数ワースト3は

1.バングラデシュの風水災害(1970年)
2.中国の地震(1976年)
3.インド洋の地震&大津波(2004年)

でした。

他方、高額保険損害額の上位5件はすべて米国です
(ハリケーン・カトリーナ、アンドリュー、WTCなど)。
上位20件になると、日本の台風が2つ、欧州が5つ入ります。

先進国と新興国・途上国の違いがはっきり表れていますね。

※左はラゾーナ川崎、右はキュービックプラザ新横浜のツリーです。

 

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日本の損保市場

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報道によると、大手損保の10月の保険料収入は
エコカー補助金の終了などを受け、5社中2社で減収となったそうです。
損保の収入は自動車保険の動向に左右されます。

ところで、たまたま損保協会のHPで種目別統計表を確認する
機会があり、改めていろいろな発見がありました。
業界のかたには当たり前の話ばかりかもしれません...

まず目を引いたのは、傷害保険です。
傷害保険といえば「積立保険」というイメージがありました。
ところが、今や積立以外の保険料のほうが多いのですね。

2009年度の元受正味保険料(収入積立保険料を含む)は、
積立が3907億円、積立以外が6348億円です。
確かに今の金利水準では、貯蓄性を重視した積立保険
の提供は難しいのでしょうね。

主要種目を大きい順に並べると、自動車(3.4兆円)、
火災(1.4兆円)、傷害(1.0兆円、除く積立では6500億円)、
自賠責(8000億円)となります。
これに続く種目は何だかわかりますか?

答えは賠償責任で4747億円もあります。
他の種目が伸び悩むなかで、賠責だけは右肩上がり。
10年前の1.5倍、15年前の2倍近い規模まで成長しました。

日本企業のリスクマネジメント意識の低さは
しばしば指摘されるところです。
それでも時代は徐々に変わりつつあるのかもしれません
(もちろん、このデータだけで判断するわけにはいきませんが)。

※写真は前回に続き、金沢区の海岸です。

 

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終身年金の憂鬱

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ニッセイ基礎研究所の明田裕さんが
「終身保険の憂鬱」というレポートを発表しました。
A42枚の短編ですが、なかなかショッキングな内容を含んでいます。
ニッセイ基礎研HPへ

厚生年金の支給開始年齢が2000年から、60歳から65歳へ
徐々に繰り下げられていますよね。
しかし、他方で60歳や65歳時点の平均余命が着実に伸びており、
5年間の繰り下げ効果を上回りかねないというのです。

平均寿命の長さは世界に誇るべき話かと思いますが、
年金財政を確実に圧迫する話でもあります。
もし今のトレンドが続くと年金財政が持たないので、
保険料や国庫負担の引き上げ、年金支給額の引き下げ、
あるいは支給開始年齢のさらなる繰り下げなどが想定されます。

終身年金のリスク、つまり、集団全体の長寿化が進み、
支給額が増えてしまうリスクは、確かに民間で引き受けるのは難しく、
引き続き政府を中心に提供していく分野なのかもしれません。
ただ、民間が挑戦しなければならない分野という見方もできるでしょう。

なお、明田さんの主張は、公的年金の支給開始年齢を
75歳前後まで引き上げ、それまでの生活資金は私的年金
(=自助努力だが政府支援あり)でつなぐ、
すなわち、政府は長生きリスクに集中し、75歳までは民間に委ねよ、
というものでした。

※最近売り出し中の「豊橋カレーうどん」を食べてきました。
 一見ふつうのカレーうどんなのですが、食べ進めるとご飯が出てきます。
 カレーうどんの写真は...食欲に負けて撮り忘れてしまいました^^

 

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自転車対人事故の高額賠償

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各紙の報道によると、2007年以降、自転車と歩行者の事故で
自転車側に高額賠償を命じる判決が相次いでいるそうです。
賠償額は数千万円に上ります。
特に歩道上の事故では過失相殺を認めない流れだとか。

自転車乗りとしては、個人賠償保険などで身を守ろうとは思うものの、
どこかすっきりしません。

まず、加害者の資力が担保されていません。

自動車による対人事故であれば自賠責保険が使えますが、
自転車の対人事故への公的な備えはありません。
高額賠償を命じられた加害者に支払い能力がなければ
結局のところ被害者は救済されません。

自転車が安全に走れる交通システムが確保されないなかで
加害責任を自転車の運転者に一方的に負わせることにも
疑問があります。

普段から自転車に乗っていればわかります。
自転車は車道を走れと言われても(実際に走っていますが)、
車道は相変わらず自動車のもので、自転車への配慮など
ほとんどありません。

しかも、自転車は日本の交通システムのなかで
中途半端な状態に置かれてきたためか、
運転者のルールが徹底されていません。
街を走っていると、逆走する自転車に何回遭遇することか。

自転車に加害責任を全面的に負わせるのであれば、
自転車が安全に走れる環境の整備もセットではないでしょうか。

※写真は白川郷の民宿の朝ごはん。
 ホテルと違い、同宿者みんなでいただきます。

 

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がんに関する意識調査

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先月になりますが、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が
「がんに関する意識調査」を発表しています。
アフラックのニュースリリース
アフラックではがんに関する各種イベント(セミナーや展示会など)
を開催しており、来場者にアンケート調査を行った結果だそうです。

アンケートによると、がん告知を望む人は全体の96%と
圧倒的でした(がん経験のない人が回答)。
回答者はおそらくがんに対する関心や意識が高い層のはず。
とはいえ、ここまで高いとは思いませんでした。

実際の告知率データは残念ながら見つかりませんでした。
国立がんセンターなど、がん医療の主要拠点病院では
ほぼ100%告知されるようですが、全体としてはよくわかりません。

ただ、私の父の場合もそうでしたし、芸能人の例を見ても、
がん告知は急速に普及しているようです。

がん治療費用に関する調査もあります
(保険会社が実施したアンケートですからね^^)。

がん経験のない人の7割以上が「200万円程度」「300万円程度」
「300万円以上」と回答したのに対し、
がん経験者の回答は、「50万円程度」が37%、
「100万円程度」が31%でした。
未経験者がイメージしているほどは、
実際には費用がかかっていないことが伺えます。

ただし、「300万円程度」「それ以上」という回答も
全体の12%を占めており、これをどう考えるかです。
保険でカバーしようとした場合、入院保険だけでは
あまり役に立たないような気がしますね。

※いつものことですが、コメントはあくまで個人的なものです。

※写真はJR城端線です。
 車窓から砺波平野の散居村が見えました。

 

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米国の変額年金販売

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2008年の金融危機を受けて販売休止が相次いだこともあり、
2009年度は変額年金の販売が減少し、銀行窓販の主力が
定額商品(定額年金、一時払い終身保険)に移りました。
これは日本の話です。

米国ではどうなっているのか気になったので調べてみると、
変額年金の販売はやはり2008年、2009年と減っています
(LIMRAのHPより)。

ただ、2008年に急増した定額年金の販売が、2009年には
小幅ながら減少しているところをみると、必ずしも変額年金から
定額年金にシフトしているわけではないことがうかがえます。
しかも、2010年の1-3月には変額年金の販売が前年を上回りました。

なぜ日本とは異なる動きになるのかというと、
一つは販売チャネルの違いがありそうです。

日本では銀行が一時払い商品のメインチャネルとなっており、
変額/定額ともに銀行が販売しています。

他方、米国では主に銀行が定額年金を販売し、
変額年金は証券チャネルが積極的に扱う、というとやや言いすぎですが、
証券チャネルの存在が大きいのは間違いなさそうです
(他に年金制度の違いも大きいようですが、ここでは触れません)。

もっとも、米国でも販売上位の顔ぶれは変わっています。
変額年金ではプルデンシャル、メットライフの2大生保が上位を占め、
INGやハートフォードは順位を下げています。
AIGは変額年金で7位、定額年金で2位と善戦しているようです。

※保険会社の本社は風格のあるビルが多いですね
 (どこだかわかりますか?)。

 

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チャネルシェアの変化

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久しぶりに保険ネタです。あくまで個人的なコメントで、
仕事とは一切関係ありませんのでお含み置き下さい。

2010.3.29の週刊金融財政事情に
「保険会社の時価総額世界ランキング」という論文が掲載されています。

論文のなかにセグメント別の新契約年換算保険料推移の図表がありました。
伝統的営業職員のシェアが、01年:7割 → 09年:4割と激減する一方、
銀行窓販や独立代理店(個人向け)のシェアが着実に伸びており、
日本の生保市場は市場内のマーケット・シフトが激しいとしています。

確かに伝統的営業職員のシェアは落ちているとは思いますが、
保険料なので、どうしても貯蓄性商品を扱う銀行窓販のシェアが
大きくなります。

利益、あるいは価値(EVなど)という観点で見れば、
08年度以降の銀行窓販はプラスかどうかも怪しいわけで、
保険料シェアの推移からマーケット・シフトが激しいとするのは
ちょっとミスリーディングだと思います。

他方、独立代理店(個人向け)のシェア拡大は、
もっと注目されていいのかもしれませんね。

 

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保険に入らなくなった?

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土曜日(12/26)の日経「日本gene U-29」のテーマの一つが
「保険に入らなくなった?」でした。

記事の中身はご覧いただくとして、使われた図表のなかに
「20代の生保加入率は大きく低下」というものがありました。
このデータは以前もここで取り上げたことのある
「生命保険に関する全国実態調査」の一部です。
HPには過去3回分の調査結果が掲載されています。

生命保険文化センターのHPへ

調査によると、1991年には約90%だった29歳以下世帯の加入率が、
2009年には71.6%まで下がったことが示されています。

ただ、直近の調査から「生協・全労済」も含まれるようになりました。
従来の「民保、簡保、JA」だけの加入率をざっと計算すると、
おそらく65%程度まで下がっているようです。

興味深いのは、今回加わった「生協・全労済」の加入率です。
全年齢では28.8%なのに対し、29歳以下は29.6%でした。

生協・全労済の主力である「一律掛金、一律保障」商品は
若年層には本来、相対的に不利なはずですが
(リスクの異なる20代も50代も同じ掛け金なので)、
それでも29歳以下世帯の支持を集めているのですね。

若年層の生保加入率低下の原因として
「オフィスのセキュリティー強化(=営業員が職場に入れない)」
がしばしば挙げられます。

しかし、このような生協・全労済の加入率をみると、
これは従来のビジネスモデルを前提にした言い訳のように
聞こえてしまいますね
(他に「若年層の所得水準低下」という深刻な要素もあると思いますが…)。

 

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通販自動車保険の成長

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三井住友海上HDのIR資料を見ていたら、
「通販損保ランキング」という資料がありました
(三井ダイレクト損害保険のところですが、まだ更新されていないかも)。

三井住友海上グループホールディングスのHPへ

通販というと外資系のイメージが強いかもしれませんが、
上位6社(ソニー、三井ダイレクト、アクサ、チューリッヒ、
アメリカンホーム、そんぽ24)のうち、3社は国内系です。

6社の自動車保険元受正味保険料は1686億円(2008年度)。
市場全体の保険料が3.5兆円程度(AIUを含む)ですから、
通販6社のシェアは4.8%となります。

ただ、3.5兆円のなかには企業のフリート契約なども含まれるので、
個人向けを全体の7割とすると、シェアは7%近くに上がります。
通販社がメインターゲットにしている顧客層、例えば、
都市部の週末ユーザーであれば、すでにかなりのシェアを
通販社が確保しているのではないでしょうか。

しかも、通販6社の収入保険料は今も成長を続けています。
ややペースが落ちてきたとはいえ、年8%前後伸びていますし、
この上半期もソニーが前期比11.7%増、三井ダイレクトが同11.8%増、
そんぽ24が同19%増となっています。

収支面でも、ソニーはすでに発生ベースで
コンバインドレシオが100%を下回っています。
三井ダイレクトも100%割れが見えてきました
(成長している会社では正味ベースだと数値がかなり低く出るので
発生ベースをみる必要があります)。

英国のような爆発的な伸びはありませんでしたが、
いよいよ無視できない存在になってきましたね。

※写真は港北ニュータウンの緑道です。
 自転車での紅葉めぐりもいいですよ。

 

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