今年度のモニタリング方針

 

金融庁が平成26事務年度の金融モニタリング基本方針
(監督・検査基本方針)を公表しました。
金融庁HPへ

今回は、監督局・検査局の連携がさらに進むようにと、
従来は両局がそれぞれ作成していた監督方針・
金融モニタリング基本方針を統合しています。
このため、47ページもの大作となりました。

肝心の中身ですが、重点施策は次の9つとのこと。

 1.顧客ニーズに応える経営
 2.事業性評価に基づく融資等
 3.資産運用の高度化
 4.マクロ・プルーデンス
 5.統合的リスク管理
 6.ビジネスモデルの持続可能性と経営管理
 7.顧客の信頼・安心感の確保等
 8.東日本大震災からの復興の加速化
 9.公的金融と民間金融

このうち、「3.資産運用の高度化」という項目があり、
資産運用における金融機関の役割を検証するそうです。
「1.顧客ニーズに応える経営」と重なる面もありそうですが、
最後にこのような文章も付いています。

「金融機関自身による有価証券運用についても、
 業態等により異なる資産運用の性格を踏まえつつ、
 資産規模等に見合った運用やリスク管理の態勢が
 整備されているかについて検証する」

そこで、主要行等と保険会社等に対する監督・検査で
どのようなことが書かれているかを探してみました。

まず、主要行等では、

「主要行等においては、多額の有価証券運用を行っているが、
 政府におけるデフレ脱却に向けた取組み等も見据えつつ、
 各種情報収集や適切なリスク・リターンの管理のための
 態勢の整備等、有価証券運用のより一層の高度化に向けた
 取組みが求められる」

とあり、着眼点として、運用態勢やリスク管理態勢について
検証すると書かれています。

「政府におけるデフレ脱却に向けた取組み等も見据えつつ」

の意味するところは何でしょうか。融資の話ではありません。

一方、保険会社等では、

「保険会社等は(中略)機関投資家としての運用業務を通じ、
 金融仲介機能を発揮するとともに、市場における重要な
 プレイヤーとなっている」

「保険会社が機関投資家として資産運用に努めることは、
 国民の安定的な資産形成に資するものであることから、
 各社が資産規模等に見合った資産運用能力の向上に
 務め、リスク管理の態勢を整備することが重要である」

としたうえで、多様なリスク計量手法やストレステストの活用、
市場動向の分析等により、適切にリスクとリターンを把握して、
運用方針等を作成の上、当該方針に沿って資産運用を実施し、
そのモニタリングを行っているかを検証するのだそうです。

主要行等と違い、重点施策の記述と同じ内容、すなわち、
「資産規模等に見合った運用」「リスク管理態勢の整備」
と書いてあるのが目を引きます。しかも、

「機関投資家としての運用業務を通じ、金融仲介機能を発揮」
「国民の安定的な資産形成に資するもの」

という記述です。
他方で、昨年度の監督方針に書かれていた、

「国債市場等の金融市場のボラティリティが拡大し、
 市場リスクの管理態勢と収益性を考慮した運用方針の
 重要性が一段と増している」

「各社が支払余力と経営基盤を向上させるため」

といった文言は全てなくなりました。

これらを踏まえると、「アベノミクスで金融市場は安定し、
支払余力も向上したのだから、保険会社は機関投資家として
国民の資産形成に努めろ」というメッセージなのでしょうか。
もしかしたら、ポートフォリオ・リバランスを促そうという話に
つながってくるのでしょうか。

まあ、着眼点のなかには、引き続き統合的リスク管理に着目し、
負債特性に応じたALMの取組みを促していくとありますし、
加えて、経営管理態勢についても深度あるモニタリングを行う
ということなので、保険会社の保有する資産だけに着目したような
おかしな動きにはならないことを期待しています。

※上諏訪駅のホームに足湯がありました。これはいいですね。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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