「生命保険の世帯加入率は約9割」の元データとして知られる生命保険に関する全国実態調査の直近版が9月半ばに公表されました。
3年ごとの調査結果から何が見えるでしょうか。
「万一の保障」から「葬式代」へ
まず、死亡保険金額の減少に歯止めがかかっていないことが挙げられます。
民間保険会社の平均保険金額(世帯合計)は2079万円で、調査のたびに小さくなっています。1997年には4000万円を超えていたので、20年間で半減したことになります。
世帯主の平均保険金額も1368万円と、やはり20年前(2791万円)から半減しています(ここでの「世帯」は構成員2人以上の世帯です)。
直近加入契約の加入目的(複数回答可)をみても、「万一のときの家族の生活保障のため」という回答は、1997年の56.0%から直近では49.5%まで下がりました。代わりに毎回増えているのが「万一のときの葬式代のため」という回答です
(1997年:7.7% ⇒ 2018年:15.4%)。
保障中核層からシニア層へのシフトがうかがえます。
医療保険分野は頭打ちか
それでは医療保険や医療特約の世帯加入率が高まっているかといえば、むしろ低下ぎみです。直近加入契約の加入目的をみても、「医療費や入院費のため」という回答は伸びていません。
世帯主が2~3か月入院した場合の差額ベッド料や交通費など、健康保険では賄えない費用に対する経済的備えについて聞くと、「不安」という回答が毎回減っています。他の調査からも医療保障に対するニーズがそれほど強いようには見えません
(ちなみに生活障害・就業不能保障保険へのニーズは強いようです)。
根強い貯蓄ニーズ
ところが、直近調査では生命保険の世帯加入件数は増えていますし、年間払込保険料も10年前とあまり変わっていません。
直近加入契約の加入目的で「老後の生活資金のため」「貯蓄のため」という回答が、いずれも回復していたり、保険料払込方法で「一時払い」という回答率が高まったりしていることから、この10年にかぎれば、貯蓄目的の保険加入が増えたことが一因と考えられます。
世帯主の年齢が65歳以上という世帯が4割を超える状況ですから、万一の保障よりも貯蓄というのは理解できます。
長引く超低金利のなかで、保険会社には悩ましい状況ですね。
※この週末は地域のお祭りです。