株式・貸付金から公社債・外国証券へ
4月19日に生命保険協会が公表した提言レポート「生命保険会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取組について」の3ページめに、過去70年間の生保運用資産の構成割合の推移が示されています。
70年間というスパンで見ると、日本国債をはじめとする公社債と、年々増えている外国証券が中心を占めるようになったのは最近のことであって、かなりの期間は株式と貸付金が主体だったことがわかります。
外国証券の割合がここまで高いのも、過去にはなかったことのようです。
生保資産運用の社会的役割
レポートによると、生保の資産運用が果たしてきた社会的な役割は時代によって変わっています。
高度成長期(1950年代~70年代初)には融資・株式投資を通じて、重工業中心の経済成長に貢献しました。低成長期(石油危機~90年頃)には多様な産業への投融資を通じて、第三次産業の発展に貢献しました。そして低成長期(90年代~現在まで)には国債投資を通じて、高齢化社会移行に伴う財政負担を下支えしており、加えて2000年代後半からはESG投融資等を通じて、持続可能な社会の実現に貢献しています。
確かにそのとおりなのですが、民間企業としての生命保険会社の資産運用を考えた場合、これらはあくまで結果としてそうだったという話であって、これらの社会的役割を果たすために生保が加入者から保険料を集めてきたのではないと理解すべきだと思います。
例えば、米国の生保(一般勘定)が株式や国債ではなく社債を中心に運用しているからといって、「米国の生保が社会的な役割を果たしていない」と批判するのはおかしいですよね。
何を優先すべきなのか
生保として最も優先すべきことは長期にわたる保険契約を全うすることであり、資産運用もそのために行っているはずです。
そこを踏まえないと、生保はいつまでも「お金が湧いてくる便利なポケット」のようにとらえられてしまいます。株式と貸付金が主体の資産運用の時代の亡霊は令和の時代にはふさわしくありません。
生保が提供している商品は超長期にわたり固定金利を保証しているので、よほど自己資本が余っていて、それが許容される状況であれば別ですが、そうでなければ保険負債の金利リスクをヘッジする投資行動となるのが自然な姿だと思います。
※写真は釜山の甘川文化村です。町おこしの成功例と言えるのかもしれません。