節電の目的は何か

夏の電力不足に協力するため、始業と終業の時間を繰り上げる
サマータイムを導入しようとする動きが目立ってきました。

ただ、節電の目的を考えると、ややずれているように感じるのは
私だけでしょうか(意味がないとは言いませんが)。

震災発生直後は、東京電力の供給力が震災前の5200万kWから
一気に3100kWまで落ちたため、とにかく節電が必要でした。
プロ野球のナイターなどもってのほかだったわけです。

しかし、今考えなければならない節電は、夏のピーク時対応です。

記録的猛暑だった昨年の需要は約6000万kWに達しました。
7月には供給力が5200万kWまで高まる見込みとはいえ、
ピーク時には不足してしまうので、電力需要の削減が必要なのです。

ここで重要なのが「ピーク時の不足に対応するため」という点です。

1日のうち、朝10時から夜9時がピーク中のピークです。
仮にスーパーの開店を朝9時から8時に、閉店を夜10時から9時に
それぞれ1時間繰り上げても、朝10時から夜9時は営業するので、
ピーク時の節電効果はかなり限定的であることがわかります

例えば休日を分散する、夜間操業にシフトするといった、
ピーク時に電力需要を集中させない対策が効果的でしょう。

また、夜間は例年と同じ生活でかまわないはずです。
というのも、夏期でも夜中から朝8時くらいまでの電力需要は
4000万kWを下回っており、電力不足ではないからです。

もちろん、資源の無駄遣いや地球温暖化を避けるための節電は
大いに結構な話ですが、体を壊したら元も子もありません。

「冷房のきいた部屋で夏の甲子園をテレビ観戦」が
電力需要を高めているという話が本当であれば、
今年の甲子園はナイター開催にしたらいいかもしれませんね。
あるいはNHKがテレビ中継をしなければいいのかも。

関係者は猛反対しそうですが^^

ご参考
※資料第1-3、第2-2あたりが参考になります

 

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生保の運用計画

生保の運用計画についての報道を見ると、
がっかりすることが多いです。

23日の日経「生保、際立つ安定運用」では
大手生保8社が国内債券への配分を増やし、
国内株式への配分を減らすと伝えています。

この記事の問題点は、生保の負債特性について
一切触れていないことです。
ALMという当たり前の話が欠け落ちているのですね。

ですから、長期債・超長期債への投資は
「2%超の利回りを確保するため」
となってしまいます。

また、震災復興の財源対応として国債発行が増え、
長期金利に上昇圧力がかかりやすくなっても、
長期債を購入する生保が多いという紹介です。
これでは単なるナンピン買いです。

なぜ生保が国内株式を圧縮し、国内債券
(特に長期債・超長期債)投資を増やしているのか。

単に「資産運用のリスクを抑える狙い」とか、
「12年3月期から保険会社の財務規制が厳しくなるため」
という解説ではあまりに乱暴だと思います。

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※写真は品川駅です。緑色の袋に自転車が入っています。

 

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原子力発電の今後

 

12日に福島第1原発事故の評価が、当初のレベル5から
チェルノブイリ事故と同じレベル7に上がったのはびっくりしました。
一般に格付けが一気に2段階も上がるのは珍しいことです。

4日の汚染水放出も、やむを得ない措置だったのかもしれませんが、
内外からの批判を招きました。

ようやく行程表が示されたとはいえ、放射性物質の放出が
続いている状況はしばらく続きます。

今回の原発事故による日本ブランドへの悪影響は計りしれません。
日本に対する世界の目が「大震災による被害者」から、
加害者へと変わりつつあるのを感じてしまいます。

そのようななか、16、17日に行われた毎日新聞の世論調査では、
電力の約3割を原発でまかなう現在のエネルギー政策について、

 「やむをえない」       40%(男性52%、女性32%)

 「原発は減らすべきだ」   41%(男性33%、女性46%)

 「原発は全て廃止すべきだ」13%(男性12%、女性14%)

という結果でした。

やはり16、17日に実施された朝日新聞の世論調査でも
「原子力発電は今後どうしたらよいか」という質問をしており、

 「増やす方がよい」    5%
 「現状程度にとどめる」 51%
 「減らす方がよい」    30%
 「やめるべきだ」     11%

という結果だったそうです。

また、読売新聞の世論調査は少し前(1~3日)ですが、
「今後国内の原発をどうすべきか」という問いに対し、

 「増やすべきだ」     10%
 「現状を維持すべきだ」 46%
 「減らすべきだ」     29%
 「すべてなくすべきだ」 12%

でした。

いずれの調査でも「やむをえない」「現状を維持すべき」
という回答が多く、「減らす」が意外に少なくて驚きました。

 

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保険経済価値規制の是非

 

週刊金融財政事情の4/18号の特集は
「保険経済価値規制の是非を問う」です。
自分が登場しているので、ご紹介だけさせていただきます。

「市場整合的な保険負債の評価は規制、開示になじむか」
というタイトルがついた座談会では、経済価値評価に基づく
保険会社のソルベンシー規制やリスク管理、開示について、
様々な論点が挙げられています。

出席者は日本生命のアクチュアリー、ソニー生命と東京海上の
リスクマネジャー、および監督当局という顔ぶれ。

ちなみに、他の媒体では、それぞれにインタビューを行い、
それを座談会形式に構成して掲載することもあると聞きますが、
実際にきんざいの会議室で座談会を行い、そのエッセンスが
掲載されています。

座談会のほかには、

「経済価値ベース規制の流れを理解するために」
(キャピタスコンサルティングの森本祐司さん)

「生保経営におけるMCEV開示の意義」
(ソニー生命の花津谷徹さん)

「保険会社に対する健全性規制の最近の動向」
(後半に保険会社のERMについて私も書いています)

といった論文が載っています。

なお、今ならきんざいのHPで全文が確認できます
(21日まで。大震災に伴うサービスです)。ご参考まで。
きんざいHPへ

※地元・大倉山ではここの桜が一番気に入っています
 (写真は10日です)。

 

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避難生活「戻れない」65%

 

東日本大震災から1か月に合わせ、避難所で暮らす約600人に対し、
NHKが今後の住まいについてアンケートを行ったそうです。

「同じ場所でもう一度生活したいか」と尋ねたところ、
岩手県と宮城県では「戻りたいが戻れない」「戻りたくない」
という回答が、合わせて65%に上ったとのこと。

回答からは、「住み慣れた場所を離れたくはないが、
生活も仕事も失ってしまった現実を直視すると、
戻りようがない」という姿が浮かび上がり、胸が痛みます。

一方、福島県の避難所では88%の人が「戻りたい」
と答えたそうです。岩手県や宮城県とは異なる結果でした。

地震や津波による直接的な被害よりも、原発事故によって
避難しているかたが多いからでしょうか。

ただ、原発事故の発生から1か月たっても事態が
収束する兆しはなく、放射性物質の拡散が続いています。
自宅がほぼ無傷だとしても、放射性物質による影響を
どう考えればいいのか、現時点ではわからない状況です。

まさに被災者が最も気にしていることで、かつ、多くの人は
まだ必ずしも希望を捨ててはいないというタイミングで
今回の「10年、20年住めない」発言が出てしまいました。

※写真は東京・池上本門寺です

 

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経済教室「ベキ分布」

 

7日の日経「経済教室」は、明治大学の高安秀樹さんによる
「平均の概念 意味なさず」でした
(「統計の常識」超す大災害の本質という副題あり)。

興味深く拝読したものの、どこかモヤモヤが晴れませんでした。

ポイントは次の通りです。

・特異な性質を持つ「ベキ分布」の研究進む
・大震災、ブラック・スワン現象が随所に発生
・想定外への対処、ヒト、モノ、知恵総結集で

ベキ分布とは、発生する確率がその値のベキ乗(累乗)に
比例するというもので、地震をはじめ、多くの自然現象や
経済現象、社会現象で観測される非常に重要な分布だそうです。

Wikipediaへ

高安さんは本稿のなかで、

「ベキ分布に従う災害では、過去のデータから平均的に
リスクを推定するという常識的な科学の方法自体に
本質的な限界がある。残念ながら、この問題の深刻さは
まだあまり広く認識されていない」

と述べています。
ただ、少なくとも金融界でリスク管理に関わっていれば、
これはもはや常識ではないでしょうか(ベキ分布は知らなくても)。

金融危機で正規分布を踏まえたリスク管理の限界が示された後も
相変わらずVaRなど正規分布を前提としたツールを使っているのは
代わりとなる適当なツールが見当たらないからにすぎません。

そして、ツールの限界を補うためにストレステストを実施したり、
エマージングリスク対応を行ったりしているのが実情です
(どこまで有効に機能しているかどうかはともかく)。

過去データから分布図を描き、それで管理ができるのであれば
正規分布でもベキ分布でも活用可能のように思えます。

問題は分布の形状ではなく、どの程度の規模の事象が
どういう頻度で発生するかを、過去データから本当に予測できるのか、
という点ではないでしょうか。

したがって、私には問題の本質は分布の違いにあるとは思えないのです。

なお、日経新聞ばかりで恐縮ですが、9日の国際面に興味深い記事
「震災、変わる海外のまなざし」が出ていました。

欧米では「考えられないことを考えよ」「決して起こらないとは
決して言うな」が安全保障や危機管理の専門家の合言葉。
これに対し、日本では「起こってはならないこと」とのこと。

むしろ「大災害の本質」はこちらなのかもしれません。

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人は見たいものしか見ない

 

情報提供というよりは、自戒を込めて。

週末にSPEEDI(放射能影響予測ネットワークシステム)
の存在を知り、さらに、ドイツやオーストリアの気象庁が
放射性物質の拡散予測図を随時公表していると知りました。
ドイツ気象庁のHP(予測図は下のほうにあります)

ドイツ気象庁が公表しているのは、福島から放出される
放射性物質の相対的な濃度の予測図です。

「相対的」というところが重要で、実際の濃度は反映されておらず、
単に放出された有害物質がある気象条件のもとで、
どのように広がって(薄まって)いくかを予測したものです。

ですから、別途に放射性物質の濃度を確認しなければ
この予測図だけでは危険度はわかりません。
ただ、もし高い濃度の放射性物質が放出された場合には、
この予測図が参考になりそうです。

ところで、私は「週末に知った」と書きましたが、
実は2週間くらい前に同じような情報を、息子から聞いたようなのです。

しかし、その時の私は多忙だったこともあり、
「ネットでは不安を煽るような情報が多い」とか何とか言って、
ちゃんと話を聞かなかったらしいのです(全く記憶にありません)。

地震で高校が早々と休みになり、自宅でPCに向かってばかりの
息子の情報で、しかも、どこかにネット世界への偏見もあり
(自分でもブログやSNSをやっているにもかかわらず)、
全く心に響かなかったというわけですね。

同じような話は会社の経営陣とスタッフの間でも
しばしば起こるだろうなあと、つくづく考えてしまいました。
ERMは奥が深いです。

※日吉駅で横浜マリノスの募金活動です。
  もちろん私も募金に協力し、中村俊輔選手と握手しました^^

 

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スカンディアの決断

週刊東洋経済4月2日号の日本国債特集のなかで、
次のような記述がありました。

「スウェーデンでは94年、同国最大手の生保スカンディアの社長が、
 『政治家が真剣に財政赤字削減に着手すると確信できないかぎり、
 スウェーデン国債を買わない』と公言。これを契機に国債利回りが急騰、
 通貨クローナが急落した。危機感を抱いた政府は歳出削減や増税など
 の財政再建計画を拡充し、やっと通貨安が収まったという経緯がある。」

なかなかすごい話ですね。

スカンディアのCEOが1994年7月に国債購入の停止を決めたことは
学術誌にも掲載されています。
 The Geneva Papers on Risk and InsuranceのPDFファイル

もう少し掘り下げてみると、スカンディアはこの時期、
ビジネスモデルの大変革に取り組んでいたことがわかります。

伝統的な生損保を主体とした総合保険グループだった
スカンディアは1990年代に入り、ユニットリンク保険、
つまり変額商品に経営の軸足を移していきます。
損保事業や再保険事業もグループから切り離しました。

しかも、自前チャネルではなく外部チャネルを活用し、
資産運用も外部の専門家に委ね、自らは商品・システム開発と
販売支援に特化するという革新的なビジネスモデルでした。

この大変革の結果、スカンディアは変額商品で世界有数の
保険グループに成長しました。

ですから、おそらく経営が会社価値の向上を真剣に考えた結果が
ビジネスモデルの変革であり、国債購入の停止だったのではないかと
思えてなりません。

ただし、この話には続きがあります。

2000年代初頭のITバブル崩壊の影響を強く受け、
米国スカンディアの売却など、スカンディアはグループ展開の
縮小を余儀なくされます(日本法人も売却しましたね)。
さらに経営陣のボーナスや住宅をめぐる問題なども発生し、
ついに2006年にはオールドミューチュアルの傘下に入りました。

これをもって、「ビジネスモデルを見直すべきではなかった」と
考えるべきかどうか。なかなか興味深いテーマですね。

※井の頭公園の「自粛」ポスターです。
 「天罰」と口走った人が「被災者へ配慮」だなんて。

 

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加入率と付帯率

 

地震保険に関する記事や資料を見ていると、
「加入率は23%」「付帯率は5割近く」というように
2種類のデータがあることに気がつきます。

「付帯率」とは、ある年度に契約された火災保険
(住宅物件)のうち、地震保険が付帯されている割合です。

2009年度のデータをみると、全国平均は46.5%と
新規に火災保険に加入した人の半分は
地震保険にも入っていることがわかります。

宮城県の付帯率は66.9%と高く、岩手県は42.2%、
福島県は39.0%です。

付帯率が6割を超えているのは宮城県のほか、
岐阜県、愛知県、徳島県、高知県、宮崎県、鹿児島県です。

他方、一般に「加入率」と言うときは、地震保険の契約件数を
住民基本台帳に基づく世帯数で割った数、つまり、
全世帯のうち地震保険に加入している世帯の割合のことです。

阪神大震災のあった1994年度の加入率(全国平均)は9.0%。
これが2009年度には23.0%まで高まりました。
宮城県は32.5%、岩手県は12.3%、福島県は14.1%です。

加入率の高い県は宮城のほか、愛知(34.5%)、東京(30.0%)、
神奈川(28.3%)となっています。

付帯率に比べて加入率が低いのは、
地震保険は火災保険とセットで加入することになっている
(火災保険の加入率は2002年時点で53%)ほか、
火災保険の加入段階では地震保険を付帯しても、
保険料負担などから更新しない人も多いからでしょうか。

もっとも、現行の地震保険制度には、

①民間の責任限度額が危険準備金残高を上回っている
 (2009年度末で2300億円)

②大震災発生で準備金が枯渇すると、次の大震災への備えがない
 (ただし、政府による資金あっせんや融通が可能)

といった制度上の問題点があります。

毎年の保険料等からの準備金が積み上がるまでは、
責任限度額に対して備えが十分でない状態が続いてしまうのです。

 

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プロ野球の開幕問題

迷走を続けていたプロ野球の開幕問題は、
ようやく4月12日のセ・パ同時開幕で決着しました。

落ち着くべきところに落ち着いたという感じですが、
またしてもプロ野球のガバナンスの弱さが露呈してしまいました。

日本のプロ野球は社団法人日本野球機構(NPB。文部省が所管)が
セントラルリーグとパシフィックリーグを統括しています。

機構の会長は日本プロフェッショナル野球組織のコミッショナーです。
コミッショナーは正当な理由なく任期中に解任されず、

「コミッショナーが下す指令、裁定、裁決及び制裁は、最終決定であって、
 この組織に属するすべての団体及び関係する個人は、これに従う」

となっています。

しかし、実際にはコミッショナーが権限を発揮するのは難しいようで、
今回も残念ながら一部オーナー等に押し切られそうになりました。

結果的には選手会、政府、そして世論を無視できなかったわけですが
2004年のプロ野球再編問題で指摘されたガバナンス改革は
道半ばという感じがします。
相撲協会もそうですが、もっと外部の目線が必要ではないでしょうか。

参考までに、NPBの定款では組織の目的として、

「野球の普及による国民生活の明朗化と文化的教養の向上」
「野球を通してスポーツの発展に寄与し、日本の繁栄と国際親善に貢献」

を挙げています。決してオーナー企業の発展のためではありません。

※写真はサンフランシスコのジャイアンツです。
 もしメジャーリーグだったら、どんな対応をしたのでしょうね。

 

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