産経新聞のコメント

 

8月に起きた福知山市の花火大会での爆発事故
(露店が爆発し、多数の死傷者が出ました)
の関係で取材を受け、コメントが掲載されました。
産経新聞のHPへ

念のためコメント部分だけ引用します。

 「損保業界に詳しい保険アナリストの植村信保さんは
  『大規模なイベントなどでは、万が一の事態に備えるため
  積極的に保険を活用するべきだ』と指摘。保険会社に対しても
  『リスクの見積もりが難しいかもしれないが、こうしたケースでこそ
  力を発揮することが求められている』としている」

本件に関しては、直接の加害者である露天商や同業組合に
賠償金を支払う資力がなく、イベントの主催者である実行委員会が
どこまで責任を負うべきかによって補償額も変わってくるとみられ、
決着まで時間がかかるかもしれません。

また、自然災害リスクとは違い、こうした賠償責任のリスクには
確立されたモデルがないとのことで、損害保険会社が引き受けに
慎重となるのも十分理解できます。

それでも、保険が実力を最も発揮する局面は、個人や企業では
備えることのできない低頻度・高損害のリスクだと思うのですね。

ですから、このようなコメントを出させていただきました。

※普通の地方鉄道だと思っていたら、路面電車になってびっくり。
 京福電鉄(嵐電)です。

 

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金融モニタリング基本方針

 

4日に「ERMヒアリングの実施とその結果概要について」、
6日に「平成25年度 金融モニタリング基本方針」と、
金融庁HPが盛り上がっています。

今回は「金融モニタリング基本方針」についての印象を。
金融庁HPへ

もともと金融庁のモニタリングはオンサイト(=立入検査)と
オフサイト(=監督による情報収集)から成っていて、
「オン・オフ一体」「両局の協働」がうたわれてきました。
ですから、今回もその延長線上にあると見ることができます。

ただ、今回の金融モニタリング基本方針をみると、
担当検査官と専門チームが実施する「水平的レビュー」
(大手生損保も対象です)では、確認票に基づく指摘を行わず、
検査結果を踏まえた監督局による報告徴求も実施しないとか。

「模擬金融庁検査」を実施した某銀行には気の毒^^ですが、
従来の立入検査とはかなりテイストが異なりますね。
検査局がオフサイト・モニタリングを手がけるように読めます。

他方、同じ日に「平成25年度 監督方針」も公表されていて、
こちらは前年度から大きく変わっていません。

保険会社等向け監督方針をみると、重点分野の1つには
今事務年度も「リスク管理の高度化の促進」とあり、

「高度化促進に当たっては、保険会社によるリスク管理態勢
 に関する自己評価やERMヒアリング等の実施により(後略)」

とのこと。金融モニタリング基本方針の「水平的レビュー」の
検証項目にも「統合的リスク管理及び資産運用」とあるので、
両者の関係がどうなっているのか気になるところです。

横断的な分析は有益ですが、広く浅くで終わってしまったら、
これまでよりも問題把握が遅れてしまうこともありえます。
個別テーマについてどこまで深掘りできるかどうか
(さらに言えば、個別テーマをどう設定するか、でしょうね)。

今回の新たな試みに注目しましょう。

※京都は町のあちこちに歴史の痕跡が残っていますね(写真)

 

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セミナー講師を務めます

 

久しぶりにセミナーの告知です。

9/12(木)の午後、金融ファクシミリ新聞社のセミナーで
講師を務めます。
金融ファクシミリ新聞社HPへ

今回の演題は「保険会社ERMの構築状況と留意点」で、
「最近の保険規制・格付動向を踏まえて」という副題付きです。

講演項目として、最近の保険規制・格付動向のほか、

・保険検査マニュアル「統合的リスク管理態勢」をどう見るか
・保険会社ERMの構築状況
 (金融庁「ERMヒアリング」や各種サーベイより)

などを盛り込みました。

最後にさりげなく(?)「各種サーベイより」とあり、
これを見てピンと来たかたも多いと思います。
ややフライング気味ですが、現在集計・分析中の
某ERMサーベイの一部をご紹介できればと考えているところです。

また、私の予想では、金融庁から今週あたりに今事務年度の
監督方針や検査の年度方針(今回は後者に注目でしょうか?)
が公表されるでしょうし、ERMヒアリングの結果公表も秒読みの様子。
これらについても可能な範囲で解説したいと思います。

3時間ものセミナーは久しぶりですが、いつもの講演と違い、
参加者との距離が近いので、私も楽しみにしています。

ご関心のあるかた(&ご予算のあるかた^^)は、どうぞご参加下さい。

※写真は前回の金閣寺・龍安寺に続き、
 天龍寺の庭園と竹林の道です。

 

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夏の京都

 

歴史があまり好きではない中2女子(=うちの娘)を連れ、
京都に行きました。
少しでも関心を持ってもらうには、本物を見せようというわけです。

初日は平清盛つながりで、「三十三間堂」と「六波羅蜜寺」へ。
六波羅蜜寺の名前はマイナーですが、ここの宝物殿にある
「空也上人像(=口から阿弥陀仏が出ている像です)」や
「平清盛坐像」は、皆さんどこかで見たことがあると思います。

2日目は「金閣寺」「龍安寺」「天龍寺」など、室町時代のお勉強。
もちろん、寺社ばかりではなく、「伊右衛門サロンの贅沢かき氷」
などの特典付きです^^

そして最終日は大原へ。
娘は大原(特に寂光院)が最も印象的だったようです。
壇の浦の戦いで敗れ、息子の安徳天皇とともに入水したはずが、
不幸にも救い出されてしまった清盛の娘、建礼門院徳子のお寺です。

ところで、今回ふと気がついたのですが、かつてに比べると、
京都の観光地はずいぶん変わりましたね。

嵐山と言えば、以前はタレントショップとお土産屋ばかりでした。
今はタレントショップは一軒もありません。
お土産屋にしても、何でも売っているような店は少なく、
いずれも特色を出しています。

新京極もそうです。かつてはお土産屋ばかりでしたが、
今はゲームセンターやアニメショップが目立ちます。

私の想像ですが、京都観光の主役が修学旅行をはじめとする
若年層から、シニア層に変わったためではないでしょうか。
シニア層はタレントショップには足を向けないでしょうし、
お土産にも質の高いものを求めるでしょうから。

 

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破綻か再建か

 

6月に慶応大学理工学部・経済学部で行った
生命保険の講義のなかで、次の課題を出しました。

「あなたが金融庁で保険行政に関わっているとします。
 担当している会社の経営内容が悪化し、
 経営破綻に陥る可能性が高まっています
 (ただし、当社の経営危機は表面化していません)。
 担当者として次のどちらを選びますか。

 (1) 再建の可能性があるかぎり、ギリギリまで再建の道を探る。
 (2) 再建の可能性が小さくなったので、速やかに破綻させる。」

学生の皆さんの回答はどうだったかというと、
(1)が37人、(2)が32人、その他が4人となりました。

講義で過去の破綻事例の話をしたので、
(2)の早期破綻を選ぶ人が多いと予想したのですが、
結果は見事に分かれました。

(1)を選んだ主な理由
 ・破綻させると契約者だけでなく、経済全体への影響が大きい
 ・過去の破綻事例を見ると、当局の支援で再建する道はある

(2)を選んだ主な理由
 ・早いうちに破綻させたほうが損失が少ない
 ・この時点からの再建は、当局支援があっても非常に困難

現実の世界では、「早いうちに対応したほうが破綻コストが少ない」
という考えに基づく枠組みではあるものの、金融システムへの
影響を考慮し、破綻前に公的資金を投入した事例もありました
(今は「大きくても破綻させる」仕組みを作っていますね)。

過去の事例を見ると、延命を図ったばっかりに
傷口を広げたケースが散見されます。

他方、ある行政OBに聞いたところ、○○生命が経営破綻した後、
株価が上がらないことを祈ったとか。
「どうして破綻させたんだ」という話になってしまうからです。

つまるところ、経営破綻に陥る可能性が高まってからでは
遅いのかもしれません。

それにしても学生の皆さんは、私の講義を聞きながら、
一生懸命考えてくれたようですね。読みごたえがありました。

※夏休みが終わり、築地市場に賑わいが戻ってきました。

 

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ネット保険&共済

前々回にお伝えした通り、「4大共済の実力分析」が
今週の週刊東洋経済(2013.8.24号)に掲載されました。

5年前の同じ企画では、財務面の課題が中心でした。
しかし、今回目立ったのはむしろ事業面での課題と、
経営方針を見直す動きだったので、今回のレポートは、
「ビジネス」の現状と方向性に力点を置きました。

また、「共済=高成長」というイメージとは裏腹に、
成長鈍化が一段と鮮明になっていることもわかりました。
これは、共済が生損保の補完ではなく、保障の選択肢
の一つとして定着したためだと思います。

共済を提供している団体の経営情報は少ないので、
ご関心があるかたはぜひご覧下さい。

今回の特集は「ネット保険&共済」でした。
「相談有料の実力派」に「安くてシンプルな保険」を
選んでもらうという企画が特集の柱となっています。

そちらはご覧いただくとして、私の目を引いたのは、
最後の「多様化する保険チャネル」のところにあった
囲み記事「SBIが生保買収で保険事業拡大」でした。

SBIによる生保買収は何回目かのチャレンジなので、
「今度はどうかな」くらいの感想ですが、よく見ると、
SBIと関係のある保険ショップがたくさんあるのですね。

4大保険ショップと言われる「ほけんの窓口グループ」
「保険クリニック」「保険見直し本舗」「みつばち保険ファーム」
のうち、保険クリニックを運営するアイリックコーポレーション、
保険見直し本舗を運営するウェブクルーとは資本提携の関係、
みつばち保険ファームとSBIモーゲージは共同出店だそうです。

元受事業と流通事業の関連性はよくわかりませんが、
保険ビジネスに注力しているのは間違いなさそうです。

 

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生保の2013年4-6月期決算

先週末に生保の4-6月期決算が発表されました。

注目の「ポートフォリオ・リバランス」はと言えば、
株式は実質的に横ばい、外国証券はやや増加
(ヘッジ外債が多いと思いますが、詳細は不明)
といったところでしょうか。

公社債は、様子見モードが強かったなかで、
会計上の金利上昇リスクを意識してか、
「その他有価証券区分」の公社債を減らし、
「責任準備金債券」を増やす動きが目立ちました。

今回の注目は「解約返戻金」かもしれません。
前年同期と比べると、大手では住友生命、
外資系等ではメットライフアリコやジブラルタ、
ハートフォード、三井住友海上プライマリーなどで
解約返戻金が大きく増えています。

これらの会社に共通するのは、銀行を通じた
変額年金または外貨建年金の契約が多いことです。
株高や円安が進み、低迷していた運用実績が回復。
解約すると利益が出るようになったのでしょう。

実はこの傾向はすでに1-3月期から見られますが、
変額年金で最大手だったハートフォード生命
(現在は新規販売を休止中)の解約返戻金は、
4-6月期だけで期首総資産の7%強に達しました。

※いただいた鰹節を実家で削りました(家には削り器がないので)。

 

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原稿を書きました

 

週末を過ぎてもブログが更新されないので、
「夏休み!」、あるいは、暑さで倒れたのでは?
と思われたかもしれませんね。

実は週末にかけて原稿の締め切りに追われ、
スポーツジムもブログの更新もままならず、
ようやく一息ついているところです。

発売前ですが、執筆者特権(?)ということで。
今回の原稿は週刊東洋経済でして、
5年ぶりに4大共済の分析レポートが出ます
(保険&共済の特集だそうです)。

執筆時間が短かったとはいえ、材料は豊富です。
経営陣へのインタビューもそれぞれ3時間前後。
5年ぶりにもかかわらず、4共済のうち3共済が
前回と同じ役員だったのが印象的でした。

アナリストの視点から、4大共済の経営の現状と
方向性が浮き彫りになる記事を目指しました。
共済にご関心のあるかたはどうぞご覧下さい。
来週19日の発売予定です。

原稿執筆と言えば、保険代理店向けメールマガジン
「inswatch」の最新号にも書いています。

今回のテーマは損保代理店でして、
発表された代理店統計を「読んで」みました。

※夏生まれの父と娘の誕生会を実家で行いました。
 家族の行事は大事ですよね。

 

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「リスクと向きあう」

環境リスク評価研究のパイオニアである中西準子さんによる
「環境リスク学」「リスクと向きあう」を続けて読みました。
それぞれに、「不安の海の羅針盤」「福島原発事故以後」
という副題がついています。

「環境リスク学」は、横浜国大での中西先生の最終講義
「ファクトにこだわり続けた輩がたどり着いたリスク論」のほか、
中西さんによるリスク評価や環境リスクに関する論文から
構成されています。

「リスクと向きあう」のほうは、「福島原発事故に直面して」
「時代の証言者 リスクを計る(=読売新聞の連載)」
の二部構成で、後半は「私の履歴書」のような感じですが、
前半は読みごたえがありました。

中西さんのリスク評価は、
「リスクとリスクがぶつかる時、どうするか」
というところから始まっています。

例えば、原発事故の危険を避けようとすれば、
しばらくは化石燃料への依存を増やさなければならず、
温暖化による悪影響の可能性を高めることになります。
このバランスをどうするかという問題です。

この「リスク・トレードオフ」に答えるには、二つのリスクを
できるだけ共通の尺度で比べることが必要です。

中西さんは河川の計画をしていて、人の安全のためにいいことと、
生態系保全のためにいいことが矛盾することがあると気づき、
悩んだ末にこのリスク評価の研究に取り組むようになったそうです。

保険会社や金融機関におけるリスク論とはやや距離があると
感じられるかもしれませんが、私には興味深い話ばかりでした。

 

中西さんのHPも見つけました → 「中西準子のホームページ」へ

※一見どこのジャングルだろうといった感じですが、
 実は浜離宮の写真です。

 

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郵政・アフラック提携

木曜日(25日)の日経一面トップには驚きました。
その後26日に正式発表となっています。
アフラックのHPへ

Bloombergの取材を受け、私のコメントが載りました。

「TPP交渉をにらんで、日本として米国の求めに対応する姿勢を
 示しているように見え、アナウンスメント効果の方が大きい」

「郵政の販売網は魅力的だが、マーケットが急に激変するような
 ことはないだろう」

というものです。

報道ではしばしば「がん保険ではアフラックが7割のシェアを持つ」
「アフラックとメットライフアリコの米国勢が約8割のシェアを握る」
と言われていますが、これはあくまで保有契約高の話。

確かに第三分野(特約を除く)は大手生損保が取り扱えない
時代が続きましたが、2000年代初頭に完全自由化されました。

がん保険のパイオニアであるアフラックとはいえ、
さすがに新契約シェアは5割前後まで下がっています。
市場シェアを言うのであれば、こちらでしょう。

次に、市場がひっくり返るほどインパクトがある話なのかどうか。
これにはアフラックと第一生命の業務提携が参考になりそうです。

第一生命は提携後、がん保険を自社で開発せず、
アフラックの商品を営業職員チャネルで提供しています。
データを探してみると、ピーク時で年30万件くらい、
新契約年換算保険料で約100億円を販売していました
(現在はもっと小さい数字です)。

他方、第一生命の個人保険新契約件数は年120万件程度、
かんぽ生命(=販売網は主に郵便局)は年220万件程度なので、
郵便局では第一生命の約2倍の生保を売っていることになります。

がん保険の新契約件数は市場全体で150万件前後です。
仮に郵便局ネットワークでアフラックのがん保険を、
ピーク時の第一生命の2倍(60万件)売ったとすると、
アフラックの新契約シェアは単純計算で64%となります。

市場構造が変わるほどのインパクトではなさそうですし、
そもそも「60万件」は直観としてかなりハードルが高そうです。
第一生命の主力商品は各種保障を組み合わせたもの、
かんぽ生命は養老保険や学資保険など、貯蓄性の高い
商品が多いので、「2倍」にはかなり無理がありそうです。

また、市場が成長しているのであればともかく、
一般のイメージと違い、がん保険の新契約件数は
10年前とあまり変わっていません。

ということで上記のコメントとなるのですが、わからないことが一つ。
今回の件が本当に「TPPでの日米交渉に好影響」なのでしょうか。

米国は保険市場における対等な競争条件を求めています。
国有企業の日本郵政が米系生保との提携を拡大しても、
「対等な競争条件」につながる話ではありませんよね。

※いつものように個人的なコメントとということでお願いします。

※最近、黄色い銀座線に乗ることが増えました。
 車両が増えたのでしょうか?

 

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