保険学会70周年記念大会

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日本保険学会の70周年記念大会が
23(土)、24(日)に早稲田大学で開催されました。

初日の午後は例年通りシンポジウムで、
今年のテーマは「保険販売の今後を考える」。

早稲田大学の大塚英明先生、日本生命の樫原英男さん、
保険代理店トータスウィンズの亀甲美智博社長、
ライフネット生命の出口治明社長、
三井ダイレクト損保の北尾敏明さんの5人が
それぞれの持論を語り、意見を交わしました。

このテーマでこの顔ぶれですと、予想通りではありますが、
「情報開示」や「比較情報」の話になります。

日本生命の樫原さんは、
「シンプルでわかりやすく、かつ、充実した保障の提供が必要」
「ただ、特に生前給付型の商品では、充実した保障を提供しようとすると
 商品が複雑になりがち(=商品比較には慎重姿勢)」。

これに対し、亀甲さんや出口さんは、
「枝を捨て幹で比べれば、大きな選択ミスはしない」
「ただし、それには捨てる技術が必要」
という主張でした。

ポイントは「条件をどこまでそろえることができるか」なのでしょう。

出口さんのプレゼンには、これからの大きな課題である
「ベストアドバイス義務をどう担保するか」の一例として、
ニューヨーク州が販売コミッションの開示に踏み切った
(2011年から施行)という紹介がありました。

ニューヨーク州では、購入者が求めた場合には、
保険募集人は得られる報酬の種類、金額、源泉と、
募集人が提示した他の保険契約を販売した場合に
受け取る報酬について開示しなければなりません。

「ベストアドバイス義務」と「それをどう担保するか」は
確かに今後の保険販売を考えるうえで重要なテーマでしょう。

「保険販売」というテーマが学会の年次大会で
ふさわしいのかどうかは、私にはよくわかりませんが、
興味深いシンポジウムでした。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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週刊東洋経済の保険特集②

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前回触れた「加入後のフォロー体制ランキング」について
やや舌足らずだったので、再度コメントします。

商品内容や料率だけではなく、加入後のフォロー体制についても
しっかりチェックしようという考えは正しいと思います。
このような比較表は読者にとって参考になるでしょう。
そういう意味で「新鮮」と書きました。

ただ、比較表だけではなく、「ランキング」となると、
ビジネスモデルの異なる会社を比べている点で抵抗があります。

例えば、契約者へのアフターフォローを、会社がルールとして
営業職員や代理店にやらせる仕組みがあれば高得点で、
営業職員や代理店が独自に行う仕組みだと高得点は取れません。

ターンオーバーの激しい営業職員チャネルで、かつ、
複雑なパッケージ商品を提供するモデルであれば、
会社がルールとしてフォローを徹底し、全体の底上げを
図る必要があるのでしょう。
放置しておくと品質のばらつきが大きくなってしまうからです。

しかし、厳選された営業職員や代理店による販売モデルなら、
極端に言えば、会社がわざわざルール化しなくても、
十分なアフターフォローが期待できます。

つまり、例えばコンビニのマニュアル化されたサービスと、
接客のプロによるサービスを同じ物差しで測っていいのかという疑問です。

また、「郵送による情報提供回数」「コールセンターのスタッフ」では、
「回数が多い」「スタッフが正社員」だと高得点です。
確かにアフターフォローだけを考えればそうなのですが、
その分コストがかかるので、一般的には保険料に反映されます。

このようにみると、今回のランキングで大手生保が高得点となったのは、
支払い問題を経た現在、当然の結果のようにも思えます。

反対に、ライフネットや県民共済(今回は対象外)のように、
割安でわかりやすい(と顧客が感じる)商品に自発的に
加入してもらうモデルでは、このランキングで高得点は望めません。
でも、彼らに大手と同じフォロー体制を求めるべきなのでしょうか。

長々と書きましたが、要はビジネスモデルが異なれば、
求められるアフターフォローも異なるということだと思います
(最低限必要なアフターフォローというものはありそうですが...)。

次の機会があれば、ビジネスモデルをある程度そろえたうえで、
質問も多少変えてランキングしてみてはいかがでしょうか。

※いつものように意見には個人差があるということでお願いします。

※今回の写真も川和富士です。
 調べてみたら、現在の富士塚は二代目で、
 初代は港北ニュータウン建設の際に壊されてしまったとか。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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週刊東洋経済の保険特集

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今週の週刊東洋経済は保険特集号でした。
タイトルは「『いざ』という時の頼れる保険」。
60ページにも及ぶ大特集でした。

中には?と感じる記事もあったとはいえ
(例えば「“強い”保険会社のランキング」など)、
興味深い企画がいろいろとあり、面白かったです。

まず、大手生保の営業職員(または営業担当者)と
人気FPが保険プランの提案で対決するという企画。
むしろ「対面販売の生保がFPに挑む」と言うのが
正しいかもしれません。

7つのケースを読むと、大手生保、FPそれぞれの
プランニングの特徴が浮き彫りになり、勉強になります。
多くの世帯が既に保険に加入していることを踏まえると、
次回は「保障見直し」対決を読みたいですね。

「加入後のフォロー体制ランキング」も新鮮でした。
異なるビジネスモデルの会社を比べるのは
やや無理があるように感じましたが
(充実したフォローにはコストがかかるはずなので)、
同じ営業職員主体でも、結構差がつくものなのですね。
プルデンシャル生命がないのは、未回答だったのでしょうか?

他にも「どちらがいい?対面vsネット」や「保険ショップの裏側」
「コールセンター実態調査」「本当にお得な自動車保険は」
などの記事が私には興味深かったです。

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※ようやく秋らしくなりましたね。
 写真はいずれも横浜市緑区の風景です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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公共交通への費用負担

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私は以前から都市の交通システムに関心があり
(卒論は「19世紀ロンドンの地下鉄建設について」でした)、
今でも「車本位のまちでいいのか?」という視点から
自転車や路面電車などを活用した取り組みに注目しています。

現在、日経新聞のゼミナール欄(経済教室の左横です)では、
「新時代の公共交通」を連載しており、毎回興味深く読んでいます。

8日は「官のかかわり方」についての記事でした。

公共交通(特に鉄道系)の費用負担の考え方は
日本と欧米で大きく異なります。

日本の公共交通は、事業による運賃収入で運営費を賄うだけでなく、
整備費(実際には建設時の借入金返済)も賄うのが基本です。

これに対し、欧米の公共交通の多くでは、
整備費の大半を公的資金で賄ったうえで、
事業運営も公的補助に依存しているケースがほとんどです。

欧米が日本のように独立採算制を基本としないのは、
社会インフラに対する考え方の違いがあります。
採算が取れなくても社会的に必要なものは整備するという発想です。

日本でも道路(特に地方)は社会インフラとしての役割から
公的資金により整備されてきました。
しかし、都市の公共交通は、一部の建設費への補助を除き、
整備費・運営費ともに運賃で賄う枠組みでやってきました。

ただ、地方都市を中心に、この枠組みの維持が難しくなっています。
写真の豊橋では豊橋鉄道が路面電車の運行を維持していますが、
収支は黒字だったり赤字だったりのようです。
同じ愛知県でも、岐阜では名古屋鉄道が2005年に
市内線を廃止しています。

「車本位のまち」から脱却するには、公共交通の維持・拡大が欠かせません。
それには従来の枠組みを根本的に見直す必要がありそうです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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公務員数の国際比較

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日本は公的部門の職員数が国際的に少ないと聞いたので
ネットで調べてみました。

総務省の「人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較」では、
フランス(2008年)の86.6人、アメリカ(2009年)の77.5人、
イギリス(2008年)の77.2人、ドイツ(54.3人)に対し、
日本(2009年)はわずか31.6人です。
総務省HPへ

他にも、少し古い(2005年)ですが、野村総研のレポートがありました。
人口千人当たりの公務員数は、フランスやイギリスが100人近く、
米国74人、ドイツ70人に対し、日本は42人です。

このように日本の公務員数は相対的に少ないと言えそうですが、
なぜ公務員を見る目は非常に厳しいのでしょうか。
ほとんど「国民の敵」のような扱いは異常です。

ミクロで見れば確かにいろいろありますし、
マクロ的にもいろいろ考えられます
(批判しやすいという理由もありそうです)。

ある先生は次のようにコメントしていました。

「『所轄のために働く』が徹底していた(=所轄外からの反発)」
「統合・調整する機能が弱い(=主に政治の役割)」

確かに納得感があります。

※いつもの通り、個人的なコメントということでご理解下さいね。

※写真は小石川にある「こんにゃくえんま」源覚寺。
 目の病気にご利益のあるえんまさまだそうです。

 

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終身年金の憂鬱

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ニッセイ基礎研究所の明田裕さんが
「終身保険の憂鬱」というレポートを発表しました。
A42枚の短編ですが、なかなかショッキングな内容を含んでいます。
ニッセイ基礎研HPへ

厚生年金の支給開始年齢が2000年から、60歳から65歳へ
徐々に繰り下げられていますよね。
しかし、他方で60歳や65歳時点の平均余命が着実に伸びており、
5年間の繰り下げ効果を上回りかねないというのです。

平均寿命の長さは世界に誇るべき話かと思いますが、
年金財政を確実に圧迫する話でもあります。
もし今のトレンドが続くと年金財政が持たないので、
保険料や国庫負担の引き上げ、年金支給額の引き下げ、
あるいは支給開始年齢のさらなる繰り下げなどが想定されます。

終身年金のリスク、つまり、集団全体の長寿化が進み、
支給額が増えてしまうリスクは、確かに民間で引き受けるのは難しく、
引き続き政府を中心に提供していく分野なのかもしれません。
ただ、民間が挑戦しなければならない分野という見方もできるでしょう。

なお、明田さんの主張は、公的年金の支給開始年齢を
75歳前後まで引き上げ、それまでの生活資金は私的年金
(=自助努力だが政府支援あり)でつなぐ、
すなわち、政府は長生きリスクに集中し、75歳までは民間に委ねよ、
というものでした。

※最近売り出し中の「豊橋カレーうどん」を食べてきました。
 一見ふつうのカレーうどんなのですが、食べ進めるとご飯が出てきます。
 カレーうどんの写真は...食欲に負けて撮り忘れてしまいました^^

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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東洋経済の「生保・損保特集」

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2010年版の「生保・損保特集」が出ました。
週刊東洋経済の臨時増刊として毎年出ているもので、
最近の保険業界の動向を手軽につかむことができます。

今回のテーマは「顧客接点強化」でした。

巻頭特集の「『顧客接点』強化へ大改革」では、
日本生命の取り組みを中心に紹介。

続いて、「チャネル改革で主力商品にも変化」
「銀行窓販は拡大期」「女性向け新商品の販売戦略」
「販売チャネルの新潮流」「コールセンターは重要拠点」
「損保代理店の『新常識』」「損害サービス大改革」
と顧客接点に関する記事のオンパレード。

記事と記事の間には社長インタビューが入ります。

ただ、このような構成の場合、記事が単に保険会社の取り組みを
紹介するだけでは業界の広報誌みたいになってしまいます。
きちんとした現状分析(=どこに問題があるのか)や、
各社の取り組みに対する評価がほしいところです。

私の要求が厳しすぎるのかもしれませんが、
全体的にもう少し深い突っ込みがほしかったですね。

読者の中心が業界関係者だとすると、読者の多くは
この10年間の保険市場(特に生保)の縮小を実感しています。

各社が現在取り組んでいる顧客接点強化によって、
本当に将来展望が開けるのか、それとも流れを変えるには
もっと大規模なビジネスモデルの見直しが必要なのか。

どうも読者の知りたいことと、実際の記事に乖離があるように感じました。

保険会社の広告が掲載されるうえ、近年は就職特集も見られるなど、
様々な制約や苦労があるのは想像できます。
しかし、ここ数年、読みごたえのある記事が減っているように
感じるのは私だけでしょうか。

アナリストやアクチュアリーなどの専門家ではなく、
普通の業界人が読んで、「へぇ、そうなんだ!」と感じるような記事が
何本も載っている特集号が理想なのでしょうね。

私は転職するまで10年連続で執筆していたので
(今回は執筆していません)、特集号の刊行を楽しみにしていました。
そんな事情もあり、ちょっと辛口コメントになってしまいました。

(おまけ)
損保各社の社長が代理店について大いに語った後に、
「保険会社は口出しすぎ 本当の差別化とは何か」
という損保代理店による「ホンネ匿名座談会」があって、
これは面白かったです。

 

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金融システムレポート

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先日(9/28)日本銀行が「金融システムレポート」を発表しました。

ここ数年、日銀は半年に1度のペースで同レポートを出しています。
足元の金融システムについて様々な分析があり、参考になります。
日銀HPへ

今回のレポートに、「蓄積が進む金利リスク」という分析がありました。
銀行による国債保有残高はすでに100兆円を超え、
金利リスク量(ここでは100bpv)も増えているというものです。

特に地域銀行での増加が顕著で、
100bpvは自己資本(TierⅠ)の30%に達しています。
平均残存期間をみると、大手行が2年程度まで短期化する一方、
地域銀行はむしろ残存期間を伸ばしています(3.5年超)。

もちろん、流動性預金の残存期間をどう見るか、
つまり、平均残存期間を1、2カ月とみるか、あるいは、
コア預金を踏まえ、例えば5年程度とみるかによって、
金利リスクの評価は全く異なります。

しかし、残存期間を5年程度とみる前提は、
「低金利が続き、資金移動が低調」というものです。
この前提が崩れることはないのでしょうか。
生保の負債とはかなり特性が異なるように思うのですが。

そうだとすると、やはり地域銀行の金利リスクは
もはや無視できる状況ではないのかもしれません。

※いつもの通り、個人的なコメントということでご理解下さい。

※この週末は地元のお祭りでした。
 ただ、残念ながら今回は所用につき不参加でした。
 数年前に雨の中おみこしを延々と担いだのを思い出します。

 

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交通系電子マネー

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JR東日本の「スイカ」と関東私鉄の「パスモ」による
決済が伸びているという報道がありました(28日の日経)。
8月の総決済件数は「スイカ」が前年比で40%増、
「パスモ」が37%増です。
猛暑の影響で、駅で飲料を購入する人が増えたとか。

もう少し調べてみると、7月のデータですが、
「スイカ」「パスモ」合計の月間利用件数は5565万件と、
1年前から30%増えています。

ただし、発行枚数が4655万枚なので、
1枚当りの利用件数は月1.2件となります(1年前は1.1件)。

依然として「スイカ」「パスモ」を乗車券(定期券など)としてのみ
使っている人が大部分を占めているのだとは思いますが、
他方で、日常的に電子マネーを小口決済の中心としている
ユーザーも一定程度存在するということなのでしょう。
利用者の裾野も広がってきているように感じます。

おそらく、小銭を持ち歩かない人はまだまだ少数派でしょう。
ただ、コンビニや自販機を中心に、利用できるところがかなり増えたので、
1枚当りの利用件数は今後もしばらく伸び続けるのではないでしょうか。

かく言う私はまだ小銭派です。
コンビニや自販機ではたまにしか買い物をしない
(近所のスーパーでは「パスモ」が使えません)
ということもありますが、古い人なのかもしれません^^

※写真は大黒埠頭側から見た横浜ベイブリッジです。

 

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自転車対人事故の高額賠償

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各紙の報道によると、2007年以降、自転車と歩行者の事故で
自転車側に高額賠償を命じる判決が相次いでいるそうです。
賠償額は数千万円に上ります。
特に歩道上の事故では過失相殺を認めない流れだとか。

自転車乗りとしては、個人賠償保険などで身を守ろうとは思うものの、
どこかすっきりしません。

まず、加害者の資力が担保されていません。

自動車による対人事故であれば自賠責保険が使えますが、
自転車の対人事故への公的な備えはありません。
高額賠償を命じられた加害者に支払い能力がなければ
結局のところ被害者は救済されません。

自転車が安全に走れる交通システムが確保されないなかで
加害責任を自転車の運転者に一方的に負わせることにも
疑問があります。

普段から自転車に乗っていればわかります。
自転車は車道を走れと言われても(実際に走っていますが)、
車道は相変わらず自動車のもので、自転車への配慮など
ほとんどありません。

しかも、自転車は日本の交通システムのなかで
中途半端な状態に置かれてきたためか、
運転者のルールが徹底されていません。
街を走っていると、逆走する自転車に何回遭遇することか。

自転車に加害責任を全面的に負わせるのであれば、
自転車が安全に走れる環境の整備もセットではないでしょうか。

※写真は白川郷の民宿の朝ごはん。
 ホテルと違い、同宿者みんなでいただきます。

 

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