14. 書評

連休中の読書

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体調がいまいちだったこともあり、連休は自宅でだらだらとすごしました。
連休中に読んだ2冊の本について簡単にコメントします。

1.「プロジェクトファシリテーション」関尚弘・白川克 日本経済新聞出版社

最初にお断りですが、著者の一人である関さんは昔からの友人なので、
中立的な立場からのコメントではないかもしれません。
その点を割り引いても、まさに迫真のノンフィクションです。

副題に「クライアントとコンサルタントの幸福な物語」とある通り、
本書は実際に古河電工で行った業務改革プロジェクトについて
立場の違う二人が交互に語っています。

タイトルをはじめ、カタカナがたくさん出てくるので、
最初はやや抵抗がありました。
でも、関係者が実名で登場するので非常に臨場感がありますし、
コンサルタントの書いたノウハウ本を読むよりも、ずっと参考になりそうです。

保険業界とは直接関係ないかもしれませんが、
普通のミドルが外部の力を借りてプロジェクトを成し遂げた記録は
私たちに勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

2.「尊敬される保険代理店」千田琢哉 マネジメント社

「セールスよりもマーケティング」
「凡人でも売れてしまう仕組みを構築すること」

筆者の主張はよく理解できますし、私もそう思います。
保険代理店の依存心の強さや、「俺がやれば売れる」は
組織作りにはタブーという考えにも同感です。

ただ、代理店経営のあり方に触れた第一章、第二章と、
全体の7割近くを占める第三章「保険業界に愛をこめて、六〇のメッセージ」が
私にはどうもうまく結びつきませんでした。
具体的なノウハウと言うよりも、精神的な話が多いようです
(ターゲットとした読者には好感されるのかもしれませんが)。

また、凡人でも売れてしまう仕組みをどう構築するのかという点は、
見たところ本書ではあまり触れられていないようです。
ここが読者には一番知りたいところだと思うのですが。

 

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「なぜ世界は不況に陥ったのか」

これも主に連休中に読みました。
慶応大学の池尾先生と上武大学の池田先生の対談という形で
今回の金融危機について議論が進められています。

対談形式がこれほどわかりやすいとは新たな発見でした。
池尾先生はかなり高度な話をしているのですが、
池田さんがメディア出身のためか、どんどん読み進めていくことができました
(なかには議論がかみ合っていないところもありますが…)。

私が印象に残ったのは、次のような話でした。

「適正価格が見いだせないという問題が(米金融危機の)本質」
「グローバルモデレーション(大平穏)とグローバルインバランスの急拡大」
「短期的な症状を緩和する政策/中期的に制度を立て直す政策」
「結局、1980年代に直面した問題と基本的に同じような問題に再び直面」

 

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「巨大銀行の消滅」

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GW中に読んだ本です。
副題は「長銀『最後の頭取』10年目の証言」。

本書は日本長期信用銀行(長銀)がなぜ破綻に至ったのか、
その原因や経緯についての当事者からの報告です。
いろいろ感想はあるかと思いますが、当事者による証言は
やはり貴重なものです。

私が最も印象に残ったのは、次のところです。
「結果論だが、長銀にとっては、このとき(1980年代半ば)が、
 『名誉ある合併』の好機だったのだろう。
 しかし、長銀の自尊心はその発想すら奪っていた。」

1980年代半ばといえば、長信銀制度の存立意義が失われ、
収益も低迷していた時期です。
その後長銀は不動産関連融資で資産規模を拡大し、
バブル崩壊による不良債権問題に苦しむことになります。

筆者はSBCとの「不平等条約」締結について、
「視点を変えて問題提起するという取締役の役割を果たし得なかった」
「担当セクションの判断を尊重する縦割りの思考に、私自身、
 どっぷりと浸かっていたことが悔やまれる」
と述べています。
これは当時の長銀だけではなく、今日的な教訓だと思います。

それにしても、長銀破綻で行政(大蔵省)の果たした役割は
中堅生保の破綻事例以上に大きかったように感じました。

 

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「行列のできる保険代理店の作り方」

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京都で保険代理店を経営している加藤さんの著書です。
私は代理店経営者ではありませんが、とても面白かったです。
キーワードは「集客力」。

読んでみて、生保の営業職員チャネルの話を思い出しました。
日本の生保は営業職員の数を増やそうとするだけで、
どうやって保険を売るかという科学的な取り組みを怠ってきたというもの。
生保も損保も同じなんだなあと思いました。
保険会社には保険営業のノウハウはないのですね。

それにしても、ここまで「秘訣」を提供していいのかなあ
なんて余計なことも考えてしまいました^^

 

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「市場リスク 暴落は必然か」

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某生保の著名アクチュアリーの勧めで読んだ本です。
400ページ以上もあり、かつ、翻訳ならではの読みづらさもありましたが、
大変勉強になりました。

著者のリチャード・ブックステーバー氏は、ウォール街の投資銀行や
ヘッジファンドでリスクマネジャーとして活躍しています。
本書は彼の金融危機の根源に関する研究をまとめたもので、
ブラックマンデーやLTCM危機、シティグループ誕生など、
当事者ならではの生々しい記述がたくさん盛り込まれています。

詳細はご覧いただくとして、いくつかの記述を紹介しておきましょう。

・市場が危機に陥ると、資産間の相関の絶対値は1に近づく。

・チームの規模が大きくなればなるほど、すでに認識されているリスク要因が
 より詳細に分析されるようになり、新しい要因にはほとんど注意が払われなくなる
 傾向がある。(中略)真のリスクとは、目に見えないリスクである。

・組織が大きくなると、だれが意思決定を行っているのか判断がつきにくくなる
 きらいがある。そうなると、奔流をせき止めることができなくなって、破綻への
 坂道を転がり落ちていくことにもなりかねない。

・規制や組織的な監視の階層を追加して、リスクをコントロールしようとしても、
 われわれの制度設計が生み出した市場の複雑性や密結合がもたらす問題を
 解決できるとはかぎらない。(中略)何よりもまず複雑性を減らすのが望ましい。

・予期せぬ出来事が起きて絶滅する種は、ある環境の既知のリスクへの対処には
 適しているが、予見不可能な変化への対応には適していない機構を持っている。

今回の金融危機が起きる前(2007年)に出た本とは思えないような
タイムリーな本でした。おすすめです。

 

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「生命保険はだれのものか」

ライフネット生命・出口社長の最新作です。
名著「生命保険入門」を、より平易かつクリアにした感じの本でした。

本書で示されている日本の生命保険の問題点についての指摘は、
私の問題意識ともかなり共通しています。
出口さんのすごいのは、解決策を示すだけではなく、
自ら実践しているところです(最近も付加保険料を開示していますね)。

私にとって最も興味深かったのは、営業職員チャネルのコスト構造を
具体的に試算しているところでした。
「なるほど、こう説明すればいいんだ」と目からうろこでした。

あと、「タテ(歴史)とヨコ(世界各地)の両軸から迫らないと、
その事象の本質は理解できない」という記述もあって(P175)、
西洋史学科出身の私には、何だかとっても共感できました^^

おすすめの1冊です。

 

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