前回に続き、長年の知り合いの本のご紹介を。
キャピタスコンサルティングの森本祐司さんたちが
「【全体最適】の保険ALM」という本をきんざいから出しました。
特別寄稿として私も5ページだけ書いています。
ALMといえば資産と負債の総合管理のことですが、
本書では「資産・負債の経済価値およびその変動」を
重視すると明確に定義しています。
本書のALMの目的は企業価値を安定的に向上させることです。
また、タイトルにある「全体最適」とは、何か数式を解けば
「客観的」に正解が得られるようなものではなく、
企業のリスクに対する姿勢により決まる「主観的」なもの。
いいかえれば「リスクアペタイトの設定」のことです。
つまり、ここでいうALMは限りなくERMに近いものであり、
従来のALM のイメージしか持っていない人には
発想の転換が必要かもしれません。
ぜひ理解していただければと思います。
保険会社のALM/ERMに関する本で
これだけまとまったものは、なかなか見当たらないでしょう。
ところで以前、住宅ローンの収益・リスク管理について
このブログで書いたことがあります。
住宅ローンの収益性評価
通常のローンと違い、住宅ローンは期間が長いだけではなく、
デフォルト率の経年変化や期限前返済の存在などから、
収益・リスク管理がそう簡単ではありません。
しかし、銀行における住宅ローンの存在感が
これだけ大きくなっているにもかかわらず、
銀行で住宅ローンのALMを経済価値ベースで行っている
という話をほとんど聞いたことがありません
(皆無とは言いませんが、一般的ではなさそうです)。
ということで、銀行など保険業界以外のかたも、
「銀行のリスク管理は保険会社よりも進んでいる」
というプライドや幻想を捨て、本書に目を通していただければ
きっと何か得られるものがあると思います。