大震災後に円高が進んだ背景として、
「保険会社が多額の保険金支払いに備え、海外資産の売却を進める」
という話を耳にします。
それはないだろう、というのが私の見解です。
例えば損保です。
地震保険の責任限度額は政府分を入れると5.5兆円。
このうち元受会社の負担分は0.6兆円にすぎません。
これに地震火災費用保険、企業保険の一部がどの程度加わるかどうか。
しかも、請求は一気にというよりは五月雨式に来ますし、
請求があれば即支払いというものでもありません
(もちろん可能な限り迅速な支払いは求められますが)。
再保険からの回収には時間差があり
一時的な資金負担は考えられるとしても、
昨年度末の現預金・コールローンの残高は1.2兆円、
国債も4.4兆円あります(インシュアランス統計号より)。
加えて毎月の収入保険料や当座貸越等も活用できます。
他方、損保が保有する外国証券は4.4兆円です(同)。
このなかには円建外債やヘッジ付きもあるでしょうし、
そもそも外国為替市場の規模は1日100兆円単位ということを
忘れてはなりません。
生保については、より現実的な話ではありません。
仮に数万人への支払いだったとしても
数百億円から数千億円というオーダーにしかならず、
生保が保有する流動性の高い資産残高
(現預金・コールローンは約7兆円、国債は12兆円)
を考えると、ほとんど問題になりません。
また、生保の外国証券残高は数十兆円になるものの、
公表資料によると、ヘッジ付きがかなりを占めています。
強いストレスを受けたのは日本なので、
海外資産を一気に手放す理由がありません。
円高の背景はよくわかりませんが、こうしてみると、
少なくとも保険会社が「犯人」ではないように思えます。
いかがでしょうか?