9月20日の日経新聞に「増える独自の利益指標(リンクは有料会員限定)」という記事が載りました。IFRSを採用する企業で「事業利益」「コア営業利益」といった独自の利益指標を開示する企業が増えているというレポートで、武田や三菱ケミカル、アサヒグループなどの事例を紹介しています。
ただ、「比較しにくい難点も」「市場関係者からは懸念の声が上がっている(経営者にとって都合の良いものができる、など)」「IFRSを策定するIASBも企業間で指標を比較しにくいのは問題だとして、対策に乗り出した」など、なんだか否定的なトーンなのが気になりました。
記事をよく読むと、「会計原則に基づかない独自指標を開示する会社が増えている」という話と、「IFRSでは損益計算書のフォーマットを細かく規定していない(原則主義なので)」という話がごっちゃになっているのですね
(全体として「細則主義の日本基準がいい」と主張しているようにも読めます)。
独自指標の開示について、市場関係者は本当に懸念しているのでしょうか。
会計上の指標では事業特性をうまく説明できないということは、IFRSでも日本基準でもよくある話です。身近なところでは損保の「グループ修正利益」がありますね(6月のブログで取り上げています)。
投資家が知りたいのは期間損益そのものではなく、企業価値を評価するうえでの手掛かりです。記事中のコメントにあるように「会社によっては利益を良く見せたいとのインセンティブが働くので見極める必要がある」というのはそのとおりですが、会計ベースの指標しか信じられないということはないと思います。
後者の「原則主義と細則主義のどちらがいいか」という話については、確かに原則主義のIFRSでは企業の裁量に委ねられるところがあるため、開示にばらつきが出るのはデメリットと言えるのかもしれません。しかし、細則主義はルールが詳細に決まっているからこそ、形式さえ整えればいいという発想になり、かえって本当の姿を示さなくなるという欠点があることを忘れてはならないと思います。
※バンコク高架鉄道の優先席です。イラストがかわいいですね。