夏休み前ということで(?)、久しぶりにブックレビューを。
「戦前・戦時期の金融市場」
著名ファンドマネジャーである平山賢一さんによる、戦前・戦時期の金融市場に関する研究成果をまとめたものです。
戦前・戦時期の国債市場と株式市場を分析するにあたり、国債と株式のパフォーマンスインデックス(PI)を算出しているのですが、単にデータ収集が大変というだけでなく、当時の市場の特殊要因を調整する必要があるため、ものすごく労力がかかっていることがうかがえます。
このPI算出によってはじめて、戦前・戦間期の金融市場を市場参加者の目線から分析することが可能となったわけで、この点だけでも本書の功績は大きいと思います。
「サイバーセキュリティ」
著者の谷脇康彦さん(総務省総合通信基盤局長)は行政の立場からサイバーセキュリティに携わってきたかたです。
サイバーセキュリティ関連の情報を探すと技術的なものが多く、全体像がよくわからないと思っていたところ、この本に出会いました(正確にはご本人にお会いして、本書を知りました)。
サイバー空間における脅威を正しく理解し、政府・民間、そして国際的な動向をつかみたいかたに、おすすめの書籍です。
「日本軍兵士」
副題に「アジア・太平洋戦争の現実」とあるように、凄惨な戦場の現実を史料やデータから浮き彫りにしたもので、著者は歴史学者の吉田裕さんです。
第1章 死にゆく兵士たち
1 膨大な戦病死と餓死
2 戦局悪化のなかの海没死と特攻
3 自殺と戦場での「処置」
第2章 身体から見た戦争
1 兵士の体格・体力の低下
2 遅れる軍の対応--栄養不良と排除
3 病む兵士の心--恐怖・疲労・罪悪感
4 被服・装備の劣悪化
こうして目次の前半部分だけを取り上げても、戦場の凄惨な現実が見えてきます。
「日本の異国 在日外国人の知られざる日常」
著者の室橋裕和さんはバンコクで10年間暮らした経験があるライターで、本書では大きくなりつつある「日本のなかにある異国」の最前線を紹介しています。
新大久保や高田馬場といった有名どころだけでなく、「こんなところに外国人のコミュニティが!」といったスポットがいくつも紹介されていて、興味深く読みました。
外国人として暮らした経験があるためか、著者の目線が一貫して暖かいのにも好感を持ちました。
※写真は長崎です。坂と階段の町でした。