『図説 生命保険ビジネス【第2版】』を読んで

2月に出たトムソンネット編『図説 生命保険ビジネス【第2版】』を読みました。1つのテーマが見開き2ページで完結していて(左が図表、右が文章)、これだけ多くの図表を用意するのはさぞ大変だったのではないかと思います。

数ある図表のなかで私にとって興味深かったのは生命保険市場に関するのもので、なかでも目を引いたのは「会社グループ別死亡率(契約高ベース)推移」と「第三分野支払給付金の発生率推移」でした(いずれも178ページ)。

まず、生命保険会社の死亡保険金支払額が保有契約高に占める割合を伝統系(日本生命など)、分社系(伝統系のグループ会社)、外資系、損保系、異業種系で比べた図表では、伝統系が着実に上昇しているのに対し、外資系と異業種系はほぼ横ばいとなっています。本書では、伝統系の上昇を「若年層顧客を外資系以下の3つのグループに奪われたことによる保有顧客の相対的な高齢化によるもの」と推測しています。契約高ベースなので、伝統系が死亡保険重視から第三分野重視に移行してきた影響も大きいのでしょうね。
ちなみに分社系と損保系は近年になって上昇していますが、特定会社の影響が大きいのかもしれません。

もう1つの第三分野の支払給付金は、2020年度に発生率が下がったものの、傾向としては徐々に上がってきているようです。ただし、上がったといっても、経過保険料に対する発生保険金額の割合が30%ちょっとということで、いくらなんでも発生率が低すぎるように思えてしまいます。
本書では「高齢化により、特に終身保障のある保険で将来的な発生リスクの増加が懸念されている」と解説しています。とはいえ、賦課方式ではないので、この図表の発生率がどうなるかは別として、個々の契約者の年齢上昇は保険料に織り込まれていて、保有顧客の高齢化はあまり問題がないように思います。むしろ心配なのは、環境変化などにより発生率のトレンドが変わってしまうことでしょう。そのリスクと今の発生率の低さをどう捉えるべきかは悩ましいところですが、終身保障を提供するのがいいのかという疑問にたどり着いてしまいます。

他にも興味深い図表がいくつもあり、勉強になりました。

※写真は糸島(福岡県)です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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