外貨建資産の増加

inswatch Vol.1010(2019.12.9)に寄稿した記事をご紹介します。
今回は生保の資産運用について取り上げています。
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一般勘定資産の3割を占める

生保の4-9月期決算の発表があり、各社の9月末の資産構成も公表されました。
過去10年間の国内系生保の資産構成(一般勘定)推移を見ると、外貨建資産の割合が一貫して高まっていったことがわかります。9社合計ベースでは、2009年度末には13%だったものが、この9月末には29%となりました。参考までに、国内株式の割合は約10%でほぼ横ばいです。
外貨建資産には外国株式や海外インフラファンドなども含まれますが、その8割以上は外国公社債です。各社が公表するデリバティブ取引の状況から推測すると、外貨建資産の6割強は為替リスクをヘッジした公社債(いわゆるヘッジ付き外債)が占めているようです。

外債投資の狙い

日本の生保が長期資金の担い手としての社会的な役割を果たしてきたのは事実です。ただし、それはあくまで結果であって、生保はそのために保険料を集めているのではありません。
生保の資産運用に求められる役割は次の2つです。1つは長期にわたる保険契約を全うするため、保険商品に内在する金利リスクをヘッジすること。もう1つは追加的なリスクテイクによりリターンを追求することです。優先順位が高いのは当然ながら前者で、金利変動の影響とどう向き合うかが生保資産運用の最大課題となっています。

外債投資の位置づけは、後者の「追加的なリスクテイクによるリターン追求」です。為替リスクのあるオープン外債ではなく、為替リスクを外したヘッジ付き外債であっても、超長期にわたる保険負債の金利リスクをヘッジしようとする投資行動ではなく、前者の役割ではありません。
ヘッジ付き外債は通常、中長期の外債を購入し、短期間の為替ヘッジを継続して行うというものです。現物とヘッジの期間をずらすことで、生保は円建ての公社債よりも高いリターンをねらうことができます。「円金利があまりに低いので、運用利回りを少しでも高めたい。でも、為替リスクは抱えたくない」ということで、今では生保の主力資産となっています。

「基礎利益」が誤ったインセンティブに

外債投資がここまで増えた理由の1つとして、私は「基礎利益」の存在も大きいとみています。
基礎利益はもともと、「生保は毎期の逆ざやを期間損益では吸収できず、体力をすり減らしているのではないか」という外部からの疑問に答える形で公表された指標です。確かに当時(2000年前後)はメディアや保険評論家による誤った情報も多く、公表には一定の効果があったと思います。
しかし、近年の動きを見ると、外債投資に伴う利息収入の増加が基礎利益を支えていて、生保の基礎的な収益力を示す指標とは言いがたい状況となっています。しかも、外債投資に伴う為替リスクやヘッジコスト、あるいは海外金利リスクは基礎利益に反映されません。「メディアに取り上げられるから」「風評リスクが心配」といった目先の理由で基礎利益の拡大を図るのは、長期にわたる保険契約の全うをむしろ難しくしているように思います。

なお、生保が外貨建て保険の販売を増やしていることも、外貨建資産が増える一因となっています。おそらく国内系9社ベースであれば、外貨建ての保険負債の割合は全体の数%だと思いますが、会社によっては外貨建て保険に注力し、かなりの規模となっているところもあるようです。
ところが、生保業界は外貨建て保険負債の規模を公表していません。外貨建て保険の見合いとしてオープン外債を保有するのと、円建て保険で追加的なリターン確保のためにオープン外債を持つのとでは、やっていることの意味がまるで違います。生保の経営リスクを外部に理解してもらい、それこそ余計な風評を発生させないために、速やかな情報開示を求めます。
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※香港の動きも気になります。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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