今週のinswatchに「損害保険統計号から」という記事を寄稿しました。後日こちらでも紹介したいと思いますが、ボリュームの関係で書かなかったことを、私の備忘録を兼ねて残しておきましょう。
ダイレクト自動車保険
inswatchでは3メガ損保や外資系損保の市場シェアを改めて確認しました。
加えてダイレクト系の元受シェアも見たところ、29社ベースの全種目合計(地震・自賠を除く)では5.6%、自動車保険では7.7%となっていました(2016年度)。昨年10月の産経新聞に出ていた「自動車保険全体の8%程度」を検証できました。
この「7.7%」という数字をどう見るかです。
ダイレクト自動車保険は20年前の1997年にはじまり、10年前の2007年度の元受シェアは4%弱でしたので、徐々にシェアを確保してきているといったところでしょうか。ただし、自動車保険には企業向けも含まれることから、個人向けにかぎればちょうど1割くらいを占めるようになったと考えられます。
都市と地方、あるいは世代によっても、ダイレクト自動車保険の普及度合いは違うのでしょう。
日本の消費者は価格差があっても簡単には動かなかったとはいえ、今後もダイレクト保険のシェアは高まっていくのではないでしょうか。
ネット通販のさらなる普及のほか、事故が起きにくくなると、今の付加保険料の水準を維持するのは徐々に難しくなるでしょうから、代理店が主力に据える商品ではなくなっていくのかもしれません。
元受と正味の違い
また、元受正味保険料と正味収入保険料を比べてみて、格付会社から金融庁に移った時のことを思い出しました。
格付会社で担当していた損保会社は大手から中堅規模ののフルライン会社ばかりで、元受保険料と正味保険料の差がそれほどありませんでした。しかし、金融庁がモニタリングの対象としているのは損害保険会社免許を持つすべての会社なので、50社以上にもなります。
こちらをご覧いただくと、特定分野に特化した会社がたくさんあることがわかります。
加えて、再保険政策も会社によって大きく異なります。特に外資系の場合、元受のかなりの部分を出再するケースが目立ちます。
2016年度データを確認すると、例えばこの1月に富士火災と合併したAIU保険は、元受正味保険料が2511億円、正味収入保険料が648億円ということで、元受保険料の7割以上を出再しています。
アリアンツ火災はもう少し複雑で、元受正味保険料71億円と受再正味保険料75億円の大半を出再しているため、正味収入保険料はわずか1億円です。
元受保険料のほとんどを出再してしまうということは、日本の拠点は実質的に引受リスクを負わないということになります。出再先が海外であれば日本の保険行政の力が及ばない(及びにくい)ので、一般的にはモニタリングが難しいと思われます(もちろんアリアンツに何か問題があるという意味ではありません)。
いずれにしても、生保会社を含め、外資系保険会社では再保険が多用される傾向があり、分析には注意が必要ですね。
※写真は六本木です。光の色が突然白から赤に変わり、びっくりしました。