少し前ですが、財務省が12月8日に公表した「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、7-9月に続き、10月以降も生命保険会社による外国証券の売り越しが続いているようです。上半期決算データや下半期の運用計画報道を踏まえると、ヘッジコストが高水準となっているなかで、主に為替ヘッジ付き外債(ヘッジ外債)の売却が続いているのではないでしょうか。
そもそも各社がヘッジ外債をどう位置付け、4-9月期にどう動いたのか、公表資料から探ってみましょう。
【日本生命】
・かねてから一般勘定資産の約7割を円金利資産に投資する方針を打ち出していて、IR資料によると、ヘッジ外債はリスク性資産ではなく円金利資産という位置付け。
・4-9月期はヘッジ外債よりもオープン外債を大きく減らしたように見える。
【第一生命】
・IR資料には「ヘッジ外債は円金利資産の代替として投資を行ってきた」とある。
・4-9月期には「リスク・リターンの観点からヘッジ外債の大幅な削減を実施(IR資料)」。決算データからも確認できる。
【住友生命】
・IR資料によると、一般勘定は運用目的に応じてALM運用、バランス運用の2つに区分して運営しており、ヘッジ外債は両方に組み入れ(円金利資産とは扱っていない模様)。
・7-9月期に外国公社債が減っているが、ヘッジ外債ではなさそう。報道によると下半期はヘッジ外債を減らす方針とのこと。
【明治安田生命】
・決算説明資料には資産構成やALMに関する説明がない。
・4-9月期にはヘッジ外債を大幅に減らし、オープン外債を増やしたように見える。
【富国生命】
・決算説明資料には「収益性が低下したヘッジ付外債の売却およびオープン外債化を進めた」、運用計画報道でも「ヘッジ外債のオープン化」という記述があった。決算データからもヘッジ外債の大幅な削減が確認できる。
富国生命のように、リスクテイクを行う中期方針のなかで外債投資を行い、為替ヘッジを機動的に行うなかでヘッジ外債を保有するといった会社は例外で、多くは円金利資産、あるいは円金利資産の代替としてヘッジ外債を保有しているようです。
しかし、超長期の円金利負債を抱える生命保険会社にとって、ヘッジ外債が円金利資産の代替になるというのは無理があるように思います。一時的には負債の金利リスクのヘッジ効果があるとしても、今回のようにヘッジコストの上昇で売却を迫られるようなこともあるので、追加的なリターンを狙う独立したカテゴリーとして取り扱うべきではないでしょうか。
※主役交代の準備が進んでいました。下鴨神社にて。