とある会合で、保険会社の健全性指標
(ソルベンシー・マージン比率などですね)
について議論をする機会があり、そのなかで
「新しい会社のソルベンシー・マージン比率は
総じて高いけど、健全性を把握する指標として
役に立つのか」
という話になりました。
私の結論は、「単年度の比率だけを見ても、
あまり健全性の手掛かりにはならない」です。
当然ながら、事業を始めたばかりの会社は
保有契約が少ないため、保険引受リスクや
資産運用リスクが自己資本に比べて小さく、
ソルベンシー・マージン比率(以下SMR)は
高くなります
(1年後に大きく下がることはありますが…)。
しかし、考えてみれば、そもそも新設会社は
ビジネスモデルが確立できていないため、
事業そのもののリスクが非常に大きいはず。
ただ、このリスクを数値で表すのは困難です。
ですので、SMRでは新しい会社の健全性は
うまく示されていないと考えるべきでしょう。
では、基礎利益や当期損益はどうかといえば、
これらも残念ながらあまり役に立ちません。
特に生保事業では、新しい会社のように
保有契約に対して新契約のウエートが大きい
会社の場合、基礎利益や当期損益が小さく
出る傾向があります。
これは、新契約を獲得する際、販売経費など
コストがかさむため、売れば売るほど利益が
圧迫されてしまうためです。
それでは何を見たらいいのかという話ですが、
そもそも新設会社の経営リスクは大きいという
認識をお持ちいただいたうえで、「良質な契約を
順調に獲得しているか」なのでしょう。
契約数が少なければ初期投資の回収が遅れる
ばかりでなく、死亡率や発生率が安定せず、
収支の振れが大きくなってしまいます。
とはいえ、単に契約を増やせばいいのではなく、
良質な契約でなければ、数年後の収支が著しく
悪化することもありえます。
保有契約の動向とともに、新契約EVや発生率
など、契約の質の手掛かりとなる指標を探し、
ウォッチしていくことのが現実的でしょう。
なお、歴史の浅い会社では初期投資がかさみ、
歴史の長い会社とは資金繰りの構造が異なる点
にも注意が必要です(油断できないという意味)。
再保険を積極的に活用しているのであれば、
再保険活用の目的や出再先の信用リスクなども
注目事項です。公表資料だけでは難しいですが…
※写真は東海道・薩?(さった)峠です。