主要生保の2015年度決算が出そろいました。
今回の決算は、現行会計ベースの各種指標
(基礎利益やソルベンシーマージン比率など)
だけを見ていると、「底堅かった」という見方に
なるようです。
確かに基礎利益を見ると、大手生保4社合計で
約2兆円を確保(特殊要因を除くベース)しており、
前期より減ったとはいえ、▲3%にとどまりました。
しかし、基礎利益が微減だったからといって、
底堅い決算だったと言うのは、私には抵抗があります。
基礎利益 ≒ 三利源なので、危険差益、費差益、
利差損益の合計です。
このうち危険差益と費差益の大半は、過去に獲得した
保有契約から当年度分が計上されます。
ですので、すでに保有契約が大きい会社の場合には、
変額年金の最低保証対応などの特殊要因を除けば、
1年で大きく変わることはありません。
また、利差損益は予定利息と利息配当金等収入の
差額です。キャピタル損益などは含まれませんので、
こちらも保有資産を大幅に動かすようなことがなければ、
急に増えたり減ったりしません。
ですから、基礎利益は前の年から大きく動かないのが
普通であって、マイナス金利政策の影響がほとんど
出てこないのは当然なのです。
貸借対照表やソルベンシーマージン比率にも
マイナス金利政策の影響は限定的にしか出てきません。
負債の大半を占める責任準備金は契約獲得時の
予定利率で評価されています(いわば簿価評価です)し、
保有する超長期債の多くも、やはり簿価評価です。
このため、金利が下がっても動かないのですね。
他方、生保の企業価値の手掛かりとなる指標に
エンベディッド・バリュー(EV)があります。
こちらは次のようになっています
(2016年3月末。いずれもグループベース)。
日本 非公表
第一 4.6兆円(前期比▲22.4%)
住友 2.5兆円(前期比▲31.4%)
MY 3.4兆円(前期比▲38.0%)
T&D 1.9兆円(前期比▲17.8%)
かんぽ 2.7兆円(前期比▲22.4%)
会社により算出手法や前提条件が異なるため
単純に比べることはできませんが、各社とも
EVを大きく減らしていて、普通ではない事態が
発生していることがわかります。
減少の主な要因は金利水準の低下など、
経済前提と実績の差異によるものです。
EVをめぐっては様々な議論があるようですし、
EVだけで判断すべきと言うつもりはありません。
ただ、現行会計ベースではほとんど見えてこない
金利低下による生保経営へのインパクトを知る
手掛かりとして、EVは非常に重要だと思います。
※久しぶりにサントリーホールに行きました。
右の写真はコンサート前の腹ごしらえ^^