保険代理店と保険会社

週末(18日)のRINGの会オープンセミナーでは、無事インタビュアーを務めることができました。
Inswatchによると、セミナーの参加者は約1000人(うちオンライン視聴者が約500人)に達したようです。ハイブリッド開催で、かつ、RING主催の懇親会もありませんでしたが、それにもかかわらず500人もの来場者が集まったのですね。大学のハイブリッド授業とは大違いです(笑)

今回のセミナーのテーマは「NEXT MOVE ~新たな時代に次の一手を~」でした。ただ、個人的には、今回の特徴として挙がっていた「(保険代理店が)保険会社と共に考える事」について、より考えさせられるセミナーでした。

登壇した第1部の参考として、事前に保険代理店および損害保険会社の営業担当社員に、「(withコロナで)日々の業務での不安や、不便に感じていること」を聞いていただいたところ、両者の回答に際立った違いがありました。代理店からは、withコロナでも「保険会社との関係」を不安視する回答がほとんどなかった一方で、保険会社社員からの回答で最も多かったのは「(同僚や代理店との)コミュニケーション」という回答だったのです。
第2部でも登壇者のお一人が代理店と保険会社のすれ違いを端的に表すアンケート結果を示しており、withコロナで両者が別の方向を向いていることが改めて見えてしまったのかもしれません。

第3部ではRINGメンバーの代理店経営者が登壇し、代理店の視点から保険会社と共に発展していくための提言もありました。保険会社からの参加者がどの程度いたのかがやや不安ではありますが、代理店からの片思いに終わらず、両者のすれ違いが少しでも解消されることを期待したいです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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地下鉄サリン事件とリスクマネジメント

RINGの会オープンセミナーはいよいよ今週末です。withコロナにも慣れ、何となく業務は回っているものの、インプット不足に陥ってはいませんか、保険会社の皆さん。
アンケートによると、保険会社(営業担当社員)と代理店の意識ギャップがはっきり表れていますよ。

さて、今週のInswatch Vol.1140(2022.6.13)に寄稿した記事をこちらでもご紹介します。
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聖路加国際病院の奮闘

大学の授業(ゼミ)で、地下鉄サリン事件で多くの命を救った聖路加国際病院のドキュメンタリー番組を観ました(NHKのプロジェクトXです)。
あれからもう27年にもなります。当然ながら学生たちが生まれる前の出来事ですし、もしかしたら本誌の読者にも事件をご存じないかたがいるかもしれませんね。

1995年3月20日、朝の通勤ラッシュで混み合う東京の地下鉄車内に猛毒の化学兵器・サリンが撒かれ、乗客・地下鉄職員13人がサリン中毒で亡くなるという前代未聞のテロ事件が発生しました。私も危うく巻き込まれそうになりました。
事件発生後、聖路加国際病院の救急センターには600人以上が来院し、心肺停止の患者も次々に運ばれてきました。地域の拠点病院であっても、一度に600人以上もの患者が押し寄せることはありません。しかし、日野原院長(当時)は患者を全員受け入れるとスタッフに伝え、スタッフはトリアージで患者を症状ごとに分け、場所を確保するため、病院の礼拝堂も病室に転用しました。

他方、原因が特定できないなかで、重症患者の容体は悪化していきます。副作用のある解毒剤「PAM」を使うべきかどうかを悩む現場のリーダー。そこに、前年に松本市で起きたサリン事件で治療を行った医師からの情報が入り、解毒剤の投与を決断。結果的に多くの患者の命が助かりました。

リスクマネジメントが機能するには

番組を観た後、学生たちに「なぜ聖路加国際病院では多くの患者を受け入れることができて、犠牲者を最小限に抑えることができたのか」を挙げてもらいました。

<学生からの回答例>
・院長が災害時に役に立つような病院を建てていた
・礼拝堂を病室として使えるように設計していた
・院長がいち早く「患者を全員受け入れる」「外来は休む」と決断した
・医師たちが他の病院で起きた経験を研究していた
・他の病院との情報ネットワークがあった
・救急センター以外のスタッフも救命治療を学ぶなど緊急体制があった
・スタッフ一人一人が自ら率先して行動した
・スタッフどうしが助け合う雰囲気があった

これらを見ると、リスクマネジメント(あるいは危機管理)がうまく機能するのに不可欠な3つのことが浮かび上がってきます。「リーダーの決断」「事前の体制整備(ハード&ソフト)」「リスクカルチャー」です。
リーダーに決断力があり、スタッフの意識が高くても、事前の体制整備がなければスタッフができることは限られます。あるいは、組織にリスクカルチャーが根付いていなければ、リーダーが決断し、ハード面が整っていても、対応はうまくいかないでしょう。

このような話をしたのですが、果たして学生たちに響いたでしょうか。
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※宮崎産マンゴー(小さいもの)がなんと198円でした。

 

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「大半の国 中立姿勢保つ」

日経新聞をご覧になっているかたは、木曜日(6/9)の朝刊に掲載された「ウクライナ危機を聞く」というインタビュー記事(有料会員限定)をお読みになったでしょうか。私は毎朝電子版をチェックしているにもかかわらずスルーしてしまい、FB知人の投稿で知りました。

話し手のチャン・ヘンチー氏はシンガポールの政治学者です(外交官と言ったほうが正しいかもしれません)。記事の一部を引用すると…

「ロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会の非難決議には141カ国が賛成した。国連決議に賛成した国の中でロシアへの制裁に踏み切ったのは、欧米やその同盟国を除くと、わずかだ。アジアや中南米、アフリカの大半の国は制裁に同調していない」

「世界の大半の国は米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしない『第3の空間』に属することを望んでいる。自国の国益を第一に考え、ある問題では米国の立場に賛同し、別の問題では中ロに近い立場を取ることを矛盾だと考えない」

世界の現実はこうなのですね。

2月下旬以降、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースが連日流れています。私の日常的なニュースソースはNHKと日経、その他ネットで得られるものが中心なのですが、私たちは何となく「ロシアは世界から孤立していて、一部の大国(中国やインド)だけが中立的な姿勢をとっている」といった世界観を無意識のうちに作り上げているのではないでしょうか。
しかし、残念ながら現実はそうではないと、このインタビュー記事は教えてくれます。

※写真は3月に新装オープンした日本銀行福岡支店です。天神にあります。

 

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生保の新契約動向

5月8日のブログでご案内したRINGの会オープンセミナーが2週間後に迫ってきました。リアル参加かオンライン視聴かで迷っているかたも多いのではないかと思います。リアル参加はおそらく上限があるでしょうから、そろそろ申し込んだほうがいいかもしれません。
<申し込みはこちらへ>

さて、今回は生命保険会社の新契約動向を、少し長いスパンで見てみましょう。いずれも新契約年換算保険料(ANP)です。
まずは大手生保4社の動向から。

上のグラフが個人保険の15年推移、下のグラフが個人保険に占める第三分野(医療保障・生前給付保障等)の割合です。
日本生命と他の3社でやや傾向が違うようです。他の3社の回復が遅れているように見えるのと、経営者向け保険や第三分野の取り組み方針の違いがありそうです。日本生命は他社よりも死亡保障を重視した戦略をとっているとみられます。

次は「ソニー」「プルデンシャル」「メットライフ」「アフラック」「アクサ」です。
なかなか興味深いグラフとなっています。なかでもアフラックの動向が気になります。

最後は損保系生保3社です。
足元は緩やかな回復といったところですが、15年間で見ると、あんしん生命と他の2社でグラフの形がかなり異なっています。

これらをもとに各社の販売戦略を確認すれば、もう少しいろいろなことが見えてくるのではないかと思います。

※あじさいの季節になりましたね。

 

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生保の規制対応が一巡

最初にセミナーのご案内です。
今年も損保総研の特別講座で講師を務めることになりました。
保険会社経営の今後を探る ~最近の環境変化を踏まえて~」という演題で、6月28日(火)の18:00開催となっています(申込締切は21日)。zoomによるライブ配信なので、お茶の水の損保総研に行かなくても参加可能です。ご関心のあるかたはぜひご参加ください。

さて、主要生保の2021年度決算が出そろい、5月27日の日経には決算のまとめ記事のほか、「超長期債 買い手消える日(有料会員限定)」という記事が出ていました(ポジションというコラムです)。

「資本規制への対応で買ってきた生命保険会社の対応が一巡した(後略)」

「(市場参加者のコメント)『買い増しは昨年度までに一巡した。需給面で生保の超長期債への買い圧力は今後弱まる』と話す」

このようなことが書いてあったので、文字通りポジショントークとは思いつつ、まずは「一巡した」と言えるほど買い増しが進んだのか、決算発表で残存期間別の公社債残高を公表している主要生保10社の数字を確認してみました。
この1年間で10年超の公社債を増やした会社は7社ありましたが、前年度よりも増加が目立ったのは第一と大同くらいでした。住友や朝日のように、10年超の公社債を数期連続して減らしている会社もありました。

次に、規制対応が必要なのかどうかです。
各社が任意で公表しているESR(第一、明治安田、T&D、富国、ソニー)や金融庁フィールドテストなどから判断すると、そもそも新規制になると資本不足状態という主要生保はおそらくなさそうです。ただ、金利リスクの占める割合が大きく、金利変動によりESRが大きく動いてしまうので、金利リスクを減らしたいと考えている会社が超長期債の購入などを行っています(金利が下がると分子の資本が減るうえ、分母のリスク量も増えてしまう会社が一般的なようです)。

このあたりの判断は会社によって異なっていますし、2016年のマイナス金利政策の導入以降、生保業界の超長期債購入ペースは明らかに鈍化しました(金利リスクを減らしたいと考えていても、超長期金利があまりに低い水準になって実行を躊躇した)。これが全体として買い増しに転じたのは2020年度からなので、わずか2年間で金利リスクを減らしたいと考えている会社が目標を達成したとは考えにくいです。

なお、金利リスクの手掛かりとなるEVの金利感応度は、円金利だけではなく海外金利も同時に変動するので、要注意です。円金利の上昇はEVにプラス(超長期の負債を抱えているため)、海外金利の上昇はマイナス(保有資産の価格が下がるため)なので、これだけ外国公社債の残高が増えると相殺される度合いが大きくなり、感応度分析の役割を果たさなくなりつつあります。
実際、2021年度決算では海外金利の上昇によって外国公社債の価格が下がり、円金利の上昇によるプラス効果を打ち消すという事態が生じました。
会社の経営状況を外部ステークホルダーに伝えるには、いくつかの会社が今回の決算発表で行ったように、円金利と海外金利に分けた感応度を開示すべきだと思います。

※写真はドーム球場近くのビーチです。

 

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2021年度の大手損保グループ決算

大手損保グループの2021年度決算が出そろいました。
全般的にまずまずだった模様ですが、なかでも海外保険事業は、2020年度のようなコロナ関連損失がなかったうえ、レートアップ効果などもあり好調だったと言えそうです(ただし、MSアムリンのC/Rは引き続き100%超でした)。

国内損保事業で注目したのは、自動車保険の損害率があまり戻らなかったことです。
各社のE/I損害率(損害調査費を含む)は、事故件数がざっくりみて平年の▲5~10%水準だったことから、引き続きコロナ前の水準に比べると低い損害率でした。

東京海上日動 60.8 ⇒ 54.3 ⇒ 56.8%
MSI    59.4 ⇒ 55.9 ⇒ 57.7%
ADI    58.2 ⇒ 53.0 ⇒ 56.1%
SOMPO  59.8 ⇒ 54.9 ⇒ 55.7%

なお、資産運用利益が伸びたという報道もありました(そのようなコメントをした会社があったのでしょう)。中核損保に関して言えば、実現ベースでは好調に見えたとしても、運用成果を示す「時価利回り」は2020年度に比べるとかなり低かったというべきでしょう。

東京海上日動 9.55 ⇒ 3.07%
MSI    11.00 ⇒ 4.38%
ADI    12.38 ⇒-0.38%
SOMPO  8.11 ⇒ 2.50%

とりあえず今回は速報版ということで、さらに分析を進めたうえで、いくつかの媒体で記事などをご覧いただける予定です。

※来福した両親に福岡を案内しました。

 

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日本企業のリスクマネジメント意識が変わる?

今週のInswatch Vol.1136(2022.5.16)に寄稿した記事をご紹介します。
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企業のリスク意識の低さ

以前(2020年6月)のプロフェッショナルレポートで、「(変化の兆しが見られるとはいえ)日本企業のリスクマネジメントに対する意識が総じて低く、最低限の保険にしか加入していない」と書きました。
例えば、2011年の東日本大震災による経済損失が20兆円規模だったのに対し、支払われた保険金額は1兆円をはるかに下回るものでした(家計向けの地震保険を除く)。また、3メガ損保グループによるコロナ関連の保険金支払いはそれぞれ数百億円に達したものの、そのほとんどは海外事業によるものでした。
日本企業が最低限の保険にしか加入していなくても、経営者が直接コントロールできない外部環境の急激な変化による損失発生は「仕方がないもの」として許される雰囲気があったのかもしれません。あるいは、企業向け保険の主要チャネルが企業代理店となっていて、企業のリスクマネジメント部門との十分な連携がないままに保険を手配してきたのかもしれません。

ガバナンス改革の進展

しかし、ここにきて、日本企業のリスクマネジメント意識を高めるような風(保険ビジネスにとっては追い風)が強まっているのを皆さんはご存じでしょうか。
1つはコーポレートガバナンス改革の進展です。松田千恵子先生の著書 『コーポレートガバナンスの進化』(2021年、日経BP)から引用すると、「戦後以来強固であったメインバンクガバナンスの枠組みも、90年代後半には揺らぎをみせます。それまでのメインバンクガバナンス(主要取引銀行によるガバナンス)から、エクイティガバナンス(株主によるガバナンス)へ、世の中は移り行くことになったのでした。コーポレートガバナンス・コードはこうした流れを決定的にしました(44ページ)」ということで、日本企業の経営者は債権者思考から株主思考への対応を迫られています。

利息収入が得られる債権者とは違い、株主は出資した企業の価値が高まらなければ、リターンを得られません。ですから、株主は経営者に対し、出資先のリスクに応じたリターンを求めます。
問題は企業がどのようなリスクを抱えているかです。コーポレートガバナンス・コードは、適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを上場会社の取締役会に求めています。外部環境の変化を自らのリスクとして捉えず、経営努力の範囲外なので「仕方がない」とする経営姿勢を、これまで債権者は許してきたとしても、株主は許しません。メインバンクガバナンスが過去のものとなった現在において、経営者はリスクマネジメント体制を構築し、取るべきリスクや避けるべきリスクを明確にしたうえで、事業を遂行する必要があるのです。リスクのプロである保険業界の出番が増えそうですね。

気候変動リスクへの対応

もう1つは近年、企業が気候変動リスクへの対応を強く求められるようになったことが挙げられます。保険会社も事業を通じ、顧客企業の気候変動対応の支援を求められています(金融庁「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方(案)」を参照)。
気候変動リスクへの対応がなぜ「追い風」なのか。顧客が気候変動に備えて保険に加入するようになるからでしょうか。いえいえ、この話はそのような表面的なものではありません。
考えてみましょう。顧客企業は気候変動の影響を把握するだけでいいのでしょうか。そうではありません。経営者に求められているのは、気候変動を含めた全社的な機会とリスクを把握することです。気候変動リスクだけを把握しても、そもそも全社的なリスクマネジメントができていなければ、当然ながら持続可能な経営とはなりません。

保険業界はコーポレートガバナンス改革の進展と気候変動対応という2つの追い風を生かし、日本企業のリスクマネジメント意識改革に大いに貢献していただきたいと思います。
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※写真は舞鶴公園のシャクナゲです。

 

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上場生保グループのEV

上場生保グループの2021年度決算の発表がありました。
ちらっと眺めただけですが、中核子会社のEV(エンベディッド・バリュー)があまり増えていない(あるいは減った)のが意外と言えば意外でした。

金融市場の環境はざっと以下の通りでした。
(2021年3月末 ⇒ 2022年3月末)。

<国内金利>
10年国債利回り 0.10% ⇒ 0.22%
30年国債利回り 0.67% ⇒ 0.91%

<米国金利>
10年国債利回り 1.74% ⇒ 2.34%

<国内株式>
日経平均株価 29179円 ⇒ 27821円

<為替>
円ドルレート 110.70円 ⇒ 121.69円

そして各社の単体EVはこちらです。

第一生命  51274億円 ⇒ 49766億円(▲3%)
太陽生命  11146億円 ⇒ 11345億円(+2%)
大同生命  20588億円 ⇒ 21481億円(+4%)
かんぽ生命 40262億円 ⇒ 36189億円(▲10%)

かんぽ生命は自己株式の取得(3588億円)と、新契約価値がマイナスという特殊要因があるものの、他社は新契約価値の上乗せがあるうえ、国内金利が上昇し、円安が進んだにもかかわらず、EVは増えませんでした。個別には他の要因もありますが、海外金利の上昇がかなり効いた模様です。
国内金利が上昇するとEVはかなり増えるのですが、海外金利が上昇すると逆にEVが減ってしまうということが、T&Dとかんぽ生命のIR資料(EVの感応度分析)で示されていました。

もっとも、過去にEVの感応度分析で国内と海外に分けた開示があったのはT&Dだけ(グループベースのみ)だったので、ここまで海外金利の影響が大きいとはわかりませんでした。外貨建債券の保有残高が増えたので、内外を分けた金利の感応度分析の情報が不可欠なのだとわかりました
(加えて為替の感応度も必要ですね)。

※大学のバラが見ごろを迎えています

 

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3年ぶりのリアル開催

23回目となるRINGの会オープンセミナーは6月18日(土)、3年ぶりのリアル開催です。場所はいつものパシフィコ横浜となります(ライブ配信も行います)。
お申し込みはこちらからどうぞ。

今回のプログラムはこちらです。「NEXT MOVE」をテーマにした3部構成となります。
第1部は感染症の専門家として知られる松本哲哉先生による基調講演と対談です。私は対談相手として登壇することになっています。
続く第2部は保険業界の働き方改革を探るというもので、組織変革の専門家として注目されている沢渡あまねさんが、旧態然とした保険業界に物申す企画(と私は勝手に解釈しています)です。第三者に言われないとわからないことは多いので、個人的には最も注目しています。
最後の第3部は、第1部と第2部を踏まえ、RINGの会のメンバーである保険代理店の経営者がディスカッションを行うというものです。今年のセミナーの裏テーマ(?)は「保険会社と共に考える」とのことですが、代理店評価制度にも切り込むとのことで、どこまで踏み込んだ話ができるか期待しましょう。

毎年1000名を超える規模で開催してきたオープンセミナー。コロナ禍の直撃を受けて2020年は中止となり、昨年はライブ配信を行いました。今回はいよいよ観客を迎えての開催となります。

オンライン配信には、全国どこにいても視聴できるというメリットがあります。昨年のクオリティを考えると、プログラムから学ぶだけであれば、オンライン参加でも十分かもしれません。
しかし、この2年間、数多くのオンライン会議やセミナーに参加し、オンラインでの講演や授業を行ってきた経験からすると、わざわざ週末の横浜まで出向くだけの価値はあると思います。
とりわけ登壇者からすると、こちらから一方的に話をする状況であっても、出席者の反応がわかるかどうかは大きいのですね。もちろん、オンライン配信や録画であっても最大限の努力をするのですが、オンライン配信を経験したおかげで、対面の場合には無意識のうちに参加者の反応に合わせて話し方を変えたり、内容を調整したりしているとわかりました。

ということで、貴重なリアル開催のイベントですし、久しぶりに仲間と会える機会になるかもしれません(ただし、懇親会はありません)。横浜で多くの方にお会いできることを楽しみにしています。

 

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金融機関の気候変動対応

金融庁は4月25日に「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方(案)」を公表し、現在意見を募集しています(5月26日まで)。
さすがに気候変動の話を耳にしたことがないというかたはいないと思いますが、いろいろな機関がそれぞれペーパーを出しているので、全体像をつかむのはそう簡単ではないと感じます。このペーパーでは最初のほうで「気候変動を巡る議論・背景」をまとめてくれているので、現在の状況がざくっとわかって便利かもしれません。

金融庁が「金融機関」と言う場合、実質的には銀行など預金取扱機関を指すことも多いです(単なるひがみ?)。しかし、このペーパーは保険会社も対象です。例えば、気候変動に関連する機会及びリスクの認識と評価について、「保険会社においては、リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)の一環として、気候変動に関連する機会やリスク、およびそれらを踏まえた戦略やリスク管理、資本の状況の妥当性を評価することも考えられる」という注記があったりします(21ページ)。

顧客支援の具体的な進め方についての記載は、銀行と保険会社に分かれています。
保険会社のところでは、「企業や産業が脱炭素化を進めつつ、自然災害の激甚化への強靭性を高める観点からは、保険会社の役割も重要である」としたうえで、生命保険会社については投資行動を通じた支援、損害保険会社については保険商品の提供を通じた支援に関する記述がみられます(42ページ~)。

もっとも、銀行にしても保険会社(特に損保)にしても、顧客支援として本質的になすべきことは変わらないのではないでしょうか。
顧客企業がやるべきことは、気候変動の影響を把握するだけではなく、気候変動を含めた全社的な機会とリスクの把握です、気候変動による影響だけ頑張って把握し、TCFD開示を行っても、全社的なリスクマネジメントができていなければ、持続可能な経営とはなりません。ですから銀行や保険会社に求められるのは、全社的なリスクマネジメントの構築支援ということになります。
事業会社のリスクマネジメントが総じて発展途上であり、保険の手当てを人事部や総務部が行っている現実を踏まえると、リスクの引き受けを本業としてきた保険会社にとってビジネスチャンス到来と言えるかもしれません。
コーポレートガバナンス改革と気候変動対応を切り口に、事業会社に目覚めてもらいましょう。

※戦前に存在した共同火災という会社のファイアマークを発見しました。竹原(広島県)にて。

 

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