12. セミナー等の感想

ゼロゼロ融資・42兆円の反動

元首相の銃殺というショッキングな事件が起きてしまいました。ご冥福をお祈りするとともに、私たちの社会が妙な方向に進んでいかないことを願います。

さて、以前から親交のある一橋大学の安田行宏先生がNHKクローズアップ現代に出演するということで、なぜかドキドキしながら番組を観ました
(放送は7/6でした。13日まで見逃し配信中です)。

番組の概要はこちらのサイトのとおりですが、政府による異例の中小企業政策(特に2020年5月に民間金融機関まで広げたこと)が企業と金融機関のモラルハザードを引き起こし、結局のところ国民が負担する可能性が高いのだと理解しました。

「企業にとっては借りやすい分、本来の身の丈に合わない額まで融資を受けてしまう可能性があるといいます。金融機関にとっても、確実に融資を回収できて利子も稼げるので、今の低金利時代においてゼロゼロ融資は“恵みの雨”といえます」
(安田先生のコメント部分を引用)

番組では、大阪信用保証協会による経営サポートの取り組みや、金融機関どうしの連携で貸付先の経営改善を図る動きを紹介していました。とはいえ、コロナ前から総じて経営状態の厳しい金融機関を、全くリスクを負うことのない形でゼロゼロ融資に参加させたことが危機対応として正しかったのか、国民負担が実現してしまった際には検証が必要でしょう。
そもそも長年にわたり法人税を払わないような中小企業が数多く存続できているというのが正常ではないと思います。番組でも「ゾンビ企業」というワードが出ていましたね。

※JR九州の特急「A列車で行こう」に乗りました。

 

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活版印刷の発明と海上保険

この週末(25日)は日本保険学会九州部会の例会があり、福岡大学での対面&オンライン(zoom)開催でした。こちらから当日のプログラムやレジュメをご覧いただくことができます(確か期間限定だったと思います)。

2人の報告者のうち、最初に登壇した神戸大学の若土先生の報告「活版印刷技術が及ぼした中世海上保険証券への影響」は、『海事交通研究』第70集に掲載されたこちらの論文(PDF)のアップデートだったようです。中世イタリアをはじめ、スペイン、ポルトガル、オランダ、ドイツなど、これだけの古文書(主に保険証券)を発掘するにはかなりの労力がかかったのではないでしょうか。

『海事交通研究』の論文を拝見したところ、15世紀にグーテンベルクが発明した活版印刷技術が、それまで全て手書きだった海上保険証券の定型部分に導入されていったことを、文献だけではなく、若土先生自らが収集した史料をもとに検証したものでした。

グーテンベルクの活版印刷技術は火薬、羅針盤とともに「中世の3大発明」の1つと言われ、その後のヨーロッパ社会に大きな影響を与えました。この技術を使えば写本よりも早く、安く、大量に読み物を作ることができるので、情報が広く一般に普及するようになります。確かにこれは革命的です。
ただ、海上保険の保険証券を早く、安く、大量に印刷する必要はなさそうなので、両者がどう結びつくのかが疑問でした。これに対し、本論文では16世紀末のアムステルダムで保険証券の定型部分に活版印刷が利用されたことについて、2つの理由を挙げています。

「登記の手間の削減や保険手続きの簡素化や迅速化といった時代のニーズに対応できるよう、恐らく証券書面の統一化を図るため証券上の定型的な部分に活版印刷技術を導入していったのではないかと筆者は考えている」

「取引市場のエリアが拡大し(中略)有力商人たちは企業化しネットワーク網が広がり、契約した重要な補償内容を現地・本部のいずれでも確認できる需要が強まり、証券の定型部分を活版印刷によって記載する動きに繋がったのではないかとみている」

いずれもまだ仮説のようですが、興味深いですね。僭越ながら研究が進み、活版印刷技術と保険の関係がより明らかになることを期待しています。

※アジサイにもいろいろな種類があるのですね。

 

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保険代理店と保険会社

週末(18日)のRINGの会オープンセミナーでは、無事インタビュアーを務めることができました。
Inswatchによると、セミナーの参加者は約1000人(うちオンライン視聴者が約500人)に達したようです。ハイブリッド開催で、かつ、RING主催の懇親会もありませんでしたが、それにもかかわらず500人もの来場者が集まったのですね。大学のハイブリッド授業とは大違いです(笑)

今回のセミナーのテーマは「NEXT MOVE ~新たな時代に次の一手を~」でした。ただ、個人的には、今回の特徴として挙がっていた「(保険代理店が)保険会社と共に考える事」について、より考えさせられるセミナーでした。

登壇した第1部の参考として、事前に保険代理店および損害保険会社の営業担当社員に、「(withコロナで)日々の業務での不安や、不便に感じていること」を聞いていただいたところ、両者の回答に際立った違いがありました。代理店からは、withコロナでも「保険会社との関係」を不安視する回答がほとんどなかった一方で、保険会社社員からの回答で最も多かったのは「(同僚や代理店との)コミュニケーション」という回答だったのです。
第2部でも登壇者のお一人が代理店と保険会社のすれ違いを端的に表すアンケート結果を示しており、withコロナで両者が別の方向を向いていることが改めて見えてしまったのかもしれません。

第3部ではRINGメンバーの代理店経営者が登壇し、代理店の視点から保険会社と共に発展していくための提言もありました。保険会社からの参加者がどの程度いたのかがやや不安ではありますが、代理店からの片思いに終わらず、両者のすれ違いが少しでも解消されることを期待したいです。

 

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RIS2021全国大会に参加

12月4日から5日にかけて、リスクを学ぶゼミ学生が全国規模で集う「全国学生保険学ゼミナール(RIS)」の全国大会が京都・同志社女子大学で開催され、私のゼミも初めて発表を行いました(大学からオンラインで参加)。
当日は13大学31ゼミの報告があり、社会人を含めて300人規模の参加者があったようです。

初参加の教員としては、何とか発表までこぎ着けたというところでしょうか。3年生のゼミは4月から発表に向けて準備を進めてきたとはいえ、先輩という道しるべもなく、テーマを決め、いざ調査を進めると壁にぶつかり、他の道を探るとまた落とし穴にはまる…といった試行錯誤の連続でした。

植村ゼミの発表は次の2つでした。

一班:九州の医療費が高いのはなぜなのか
・国民健康保険について調べていたら、福岡県をはじめ九州各県の医療費が全国平均よりも軒並み高いことを発見。そこで、医療費を高めている要因を可能なかぎり探りました。会場からは「日本の医療市場が供給主導となっているから」というコメントなどをいただきましたが、他の発表であった「医療分野でキャッシュレスが普及していない」というのも、根っこは同じなのかもしれません。

二班:自動運転と未来のリスクマネジメント
・自動運転車が活躍する世界はもはや未来ではなく、分野によってはすでに実用段階にあることを紹介したうえで、自動運転の事故事例に着目することで、今後の自動車保険市場の姿を探りました。流行りものをテーマにすると大変だとわかっていたのですが、案の定、情報がありすぎて、発表直前までゴールが見えずに内心焦りました。

難しかったのは、教員としてどこまで内容に関わるべきかどうかで、これは最後まで迷いました(まだ終わっていないので、現在進行形です^^)。すべてを学生に委ねるというやり方もあり、それはそれで有意義だとは思いますが、うまく回らなければ単なる放置となってしまいかねません。とはいえ、内容に踏み込み過ぎてしまうと、極端に言えば、学生は出された課題をこなすだけで終わってしまいます。
こうして振り返ってみると、ゼミの学生以上に教員としての私が鍛えられた1年だったのかもしれません。関係者の皆さま、ありがとうございました。

来年はクリスマスの東京開催ということで、いまの2年生を中心に臨むことになります。今度は先輩もいますし、また違った試行錯誤となるのでしょうね。

 

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RIS2020全国大会に参加して

この週末に全国学生保険学ゼミナール(RIS)の全国大会がありました。
RISは全国の大学における保険論関係のゼミナールを中心に、年1 回集まって合同で研究発表会を行うもので、今年は14大学18ゼミが集結し、実務家も交えて盛大に開催されました。

「盛大」と書きましたが、オンライン開催で懇親会もできなかったため、例年のような大学を超えたリアルな交流はできませんでした。とはいえ、自分が参加したかぎりでは、発表資料が総じて充実していたほか、討論者(他大学の学生)とのやり取りや参加者との質疑応答など、リアルな大会に負けないレベルで行われていたように思いました。

同時に4つの発表があるので、がんばっても全体の1/4しか参加できなかったのですが、私が参加したなかで最も印象に残ったのは「マスクの裏表問題」(長崎県立大学)でした。
使い捨てマスクに裏表があるのをご存じでしょうか。使い捨てマスクは裏と表で素材が違い、正しくつけないと着用の効果が減ってしまうにもかかわらず、裏表を間違えて着用している人は結構多いようです。コロナ禍でマスクの研究というのは身近でタイムリーですし、感染リスクに関わる重要な話でもあります。
発表者は入手できるマスク30製品超を確認し、アンケート調査を行い、さらにはメーカーへのヒアリングも実施しています。各メーカーの姿勢の違いも垣間見えたようで、いい勉強をしているなあと思いました。

来年は私のゼミ生も参加する予定なので、今回はオブザーブ参加させてもらいました(これはオンライン開催のいいところですね)。他大学の学生の様子を見る機会はなかなかないでしょうから、何らかの刺激にはなったのではないでしょうか。

なお、もしRISにご関心のある実務家等のかたがいらっしゃいましたら、私までご連絡いただければ幸いです。
実務家の投票によるMNP(実務家の視点から最も印象に残った発表)の表彰も行っていますし、意外な発見があるかもしれませんよ。

※写真は福岡・六本松のイルミネーションです。

 

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前期の講義を終えて

大学教員1年目の前期講義が終わり、採点などをしています。

同僚の先生がたと情報交換してみると、オンライン講義は出席率が高く、かつ、下がらない傾向があったようです。確かに私の場合もそうでした。
ただし、ゼミ以外の授業では「音声をミュート」「カメラをオフ」にして授業に臨むので、本当に出席しているかどうかは確認しないとわかりません。前期の経験からすると、どうやら1割くらいの学生はその場にいなかったようです。

2回に1回は小テストを行い、時には感想を聞いたりしたところ、「ゆっくり丁寧でわかりやすい」という声と、「難しいのでもう少しゆっくり話してほしい」という声があり、どうしたものかと悩みました。
後期もいろいろと試行錯誤してみることにしましょう。

2つの保険の講義のうち、片方で保険会社の経営破綻に関する話を2回に分けて行いました。
感想を聞くと、保険会社が次々に破綻したという事実を知って驚いたというコメントが多かったですね。「自分は保険に入っているけど、保険会社の破綻など考えたこともなかった」「ビルの名前か何かで聞いたことがある生保が破綻していたなんて」などなど。
中堅生保の経営破綻が相次いだのは2000年前後なので、20歳前後の学生の皆さんがちょうど生まれたころに起きた事件です。社会科の授業で取り上げることもないでしょうから、知らないのも無理はありません(リーマンショックだっておそらくピンとこないでしょう)。

なるほどそうきたか、というコメントもありました。
例えば、「保険会社は破綻しても再出発できるのですね」というもの。保険会社の破綻の話しかしなかったので、比較のためにJALの話でもすればよかったのかもしれません。とはいえ、生命保険会社の場合、債権者の大半が保険契約者であり、既契約の存続が絶対命題としてあるので、特殊な処理なのは確かですね。

破綻生保の既契約を引き継いだ会社が設定する「早期解約控除」について、「うまいこと考えるなぁ」というコメントには、当事者には申しわけありませんが、思わずクスッとしてしまいました。二次破綻を避けるための苦肉の策だと思うのですが、興味深く映ったようです。

※今年は実家での会食をあきらめ、ケーキを切って実家に持っていきました。
 久しぶりに横浜に戻ってきています。

 

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わりかん保険

日本でもP2P保険がデビュー

インシュアテックのスタートアップ企業であるjustInCase(ジャストインケース)が28日に「わりかん保険」の取り扱いを始めました。
日本初のP2P保険ということで、IT技術を利用した助け合いの実現と、保険料が後払い(かつ低廉)なのが従来の保険にはない特徴です。
政府のサンドボックス制度を活用した実証実験の案件でもあります。

相互宝の加入者は1億人

P2P保険は日本では初めての試みですが、中国には「相互宝」などの成功事例があり、ジャストインケースも参考にしたそうです。
相互宝はアリババグループ傘下のアント・フィナンシャルが運営するP2P保険で、がんを含む重大疾病保障を提供しています。アリペイ(スマホ決済)で加入を受け付けたところ、サービスを始めてからわずか1年間で加入者数が1億人を超えました。
(ちなみにライバルのテンセントは「水滴互助」というP2P保険を提供しており、こちらも加入者が8000万人に達しているそうです)。

若年層に受け入れられるか

「相互宝」が短期間にこれだけ多くの加入者を獲得したのは、アリペイという中国で最も普及した決済プラットフォームを活用したサービスだからでしょう。相互宝では加入手続きも保険料の支払いも給付金の受け取りも、すべてアリババ経済圏のプラットフォームで完結します。
ジャストインケースはこうしたプラットフォームを持たない代わりに、提携企業の力を借りることで加入者を集めようとしています。まずはこの1年間が勝負なのでしょうね。

「相互宝」の存在意義は、会員向けに安い保障を提供している点だけでなく、これまで保険加入機会がなかった層(農村や地方都市に住む層)に保障を提供しているところです。
ジャストインケースの価格設定をみると、やはり保険加入機会に乏しい若年層を取り込もうとしているように見えます。
確かに、助け合いを感じられる仕組みや運営の透明さは、今の20代、30代にフィットしているようです。今の若い人たちは、「がんになった加入者がいなかったので、保険料がゼロ円だった」よりも、「がんになった加入者が○人いたので、保険料をみんなで××円ずつシェアした」という体験のほうに価値を感じるかもしれませんね。

※梅が咲いていました。大倉山公園です。

 

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スマホ利用の影

10月2日のブログでお伝えしたとおり、日本保険学会の全国大会でシンポジウム「保険法10年の経験と今後の課題」に登壇し、何とか役目を果たしてきました
(風邪気味で少し聞き苦しかったかもしれません。失礼しました)。

このシンポジウムでも私の報告でインシュアテックの進展との関係を少しだけ取り上げましたが、翌日午後の共通論題(講演とパネルディスカッション)は「インシュアテックと保険事業」でしたし、初日の講演の演題も「行動ファイナンスとAIによる資産運用」と、日本の保険学会でも技術革新による法律や経済への影響に注目が集まるようになりました。
なかでも私の印象に残ったのが、東京経済大学の佐々木裕一先生による基調講演「スマートフォン+アプリが作る『情報環境』と倫理」でした。

公開されている報告要旨をもとに少しご紹介しますと、人々がスマホでSNS/メッセージングアプリ(要はツイッター、フェイスブック、LINE、インスタグラムなど)を高頻度で利用するようになったことで、「情報過多」や「アルゴリズムによるフィルターバブル」の問題が生じているという話がありました。

情報過多は文字どおり情報が爆発的に増えているということですが、この結果、SNSでは複雑な話は好まれなくなり、「娯楽情報の流通が増えていることやフェイクニュースの流通にはそういう要素がいくぶん影響していると講演者は考えている」。
しかも、SNSではその人が見たいであろう情報をアルゴリズムが選び、人々は偏った情報のみに触れがちとなります。事態が進むと「民主主義が機能しなくなる可能性をもたらす」(=フィルターバブル問題)というのです。

こうした技術革新による負の影響、しかも、これから影響が起きるのではなく、残念ながらすでに現実に起きてしまっている問題だということで、佐々木先生のおっしゃるとおり、保険業界も意識して対応していく必要があると感じました。

※会場の関西大学にはこの電車で行きます
 たこ焼き、ごちそうさまでした

 

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歴史を学ぶ意味

パネルディスカッションに登壇

11月8日から9日にかけて日本アクチュアリー会の年次大会があり、その翌日(10日)は日本保険・年金リスク学会(JARIP)の研究発表大会と、まさに勉強の秋となりました。
そのなかで私は、9日のパネルディスカッション「経済危機とリスク管理~これからのリスク管理を担う若手のために~」にパネリストとして登壇しました。

このパネルディスカッションは、保険会社のリスク管理に従事する若手社員が抱いている疑問を、リスク管理や規制の高度化に取り組んできたベテランにぶつけることで、あるべきリスク管理を模索するという異色の企画でした。
若手の疑問や不満を正面から受け止める役回りだったので、90分の持ち時間があっという間にすぎてしまい、オーガナイザーをヒヤヒヤさせてしまいました。果たして会場の皆さんには何らかのメッセージが伝わったでしょうか
(「ベテランは話が長い!」という感想もありそうですが…)。

過去の経緯は重要

私とともにベテラン側として登壇した藤井健司さんは、VaRの登場からその後の普及の経緯を説明したうえで、「『あるべきもの』があって、そこから展開していくのではなく、実務にフィットしたものが業界標準となる」という趣旨の話をしていました。過去の経緯を知らないと、いま行っている業務がどうしてそうなっているかを理解しにくいので、得てして業務そのものが目的となってしまいがちなのですね。

たまたま私も先日ご紹介した保険毎日新聞の書評(保険業界戦後70年史)のなかで、こんなことを書いています。

「例えば保険募集人に対する規制を導入した2014年の保険業法改正や、損害保険会社が自由化後の代理店手数料を決めるために採用した代理店手数料ポイント制度といった、保険流通に関わる多くの業界人が日常的に直面する諸制度が、保険流通のいわば普遍的な『あるべき姿』を想定し、それを実現するための仕組みとして導入されたのではなく、過去の経緯やその時その時の時代背景の影響を受けながら形づくられてきたことがわかるだろう」

過去の歴史を振り返っても、今の仕事にはほとんど役に立たないと思われるかもしれませんが、そうではないのですね。

時代の大きな流れをつかむ

ただし、過去に学ぶといっても、今がどのような時代なのかを踏まえたうえで学ぶべきなのでしょう。
再び書評から引用します。

「戦後50年間続いた『成長の時代』とは、復興期はともかく、人口増加や東西冷戦、高度経済成長といった外部環境に恵まれ、緩やかな競争環境を人為的に確保することが可能だった極めて特殊な時代だったと言えよう。本書の記述からも、極論すればこの時代の業界の歴史とは、規制や制度の歴史だった感がある。こうした恵まれた外部環境はすでに1980年代後半には消滅しつつあったため、日米保険協議に象徴される外圧がなくても、遅かれ早かれ『成長の時代』は終わっていたと考えられる。今後は人口減少という未体験の事象を無視できないとはいえ、長いスパンで見れば、経営者が自らの知恵と決断で事業を切り開いていく普通の時代に戻ったと言うべきかもしれない」

保険会社の経営陣は「成長の時代」のマインドを引きずってはいないでしょうか。若手が心配しているかもしれません。

 

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OLISの50周年シンポジウム

 

今から50年前の1967年、アジア諸国における生命保険事業の発展を目的に設立されたアジア生命保険振興センター(OLIS)が創立50周年を迎え、東京で記念シンポジウムを開きました。
当日(10/25-26)は15か国・地域から約140人の関係者が集まったそうです。

過去にOLIS主催の内外セミナーや寄付講座で講師を務めたご縁もあり、私もスピーチをしました。演題は「日本の生保危機とその教訓」です。
かつての生保破綻の話もさることながら、その後、日本の生保業界や行政当局がどのように危機を乗り越え、新たな時代にふさわしい体制に向かっているのかを話しました。
どういうわけか、バングラデシュの参加者3名が質疑応答を独占することになりましたが、世界的な低金利のなかで保険会社の健全性の問題が他人事ではない国・地域もあるはずなので、何かの参考になればうれしいです。

パネルディスカッションのテーマは「高齢化」。日本が断トツの先進国かと思ったら、韓国や台湾は急激に高齢化が進むので、少し経つと日本に追いついてしまうのですね。
中国も一人っ子政策の影響で高齢化が進みます。パネルでの言及はありませんでしたが、中国の場合、社会保障制度が必ずしも十分に整備されていないようなので、日本の高齢化社会とはだいぶ違った社会の姿となりそうで、ちょっと怖いです。
インドネシアやベトナムのような若い国も、今のうちに社会保障制度をがんばって整備することが、日本の経験から得られる最大の教訓なのかもしれません。

 

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