米国の医療保険制度(いわゆるオバマケア)では、個人に民間医療保険への加入を義務付けたうえで、一定の条件の下で政府が補助金を支給しています。
オバマケア撤廃に執念を燃やすトランプ大統領は、この補助金を打ち切ると発表したそうです。
1月のブログで書いたように、米国ではオバマケアの導入で無保険者の数は減ったものの、制度の担い手である民間保険会社の収益性が厳しくなり、最大手のユナイテッドヘルスをはじめ、この事業から撤退する保険会社が相次いでいます。
そのようななかでの補助金打ち切りは、保険料率の引き上げや給付対象の制限強化、さらには事業の担い手となる民間保険会社の消滅につながるかもしれません。
そもそも米国の民間が担う医療保障は、オバマケア以前から、日本の健康保険とは中身がかなり異なるようです。
香取照幸さんの著書「教養としての社会保障」では、アメリカで売られている民間医療保険のことを、「リスク細分化型・制限給付特約付き」だと表現しています。
所得階層・社会階層によって受けられる医療保障が天と地ほども違い、まともに機能する保険に入れる人はごくわずか。さらに、前述のように、頼みのオバマケアも大きく揺らいでいます。
日本の医療保険制度では、国民皆保険のもとで、保険証さえあれば誰でも医者にかかれますし、保険がカバーする範囲も広く、所得階層・社会階層が違っても受けられるサービスは平等です。
私たちはこれを当然のようにとらえていますが、米国では全く状況が異なるようです。
なお、公的な制度が優れているということは、民間保険会社の事業機会が限られるということでもありますが、日本に住む個々人としては、この制度ができるだけ続いたほうが幸せですよね
(医療従事者の長時間労働など解決すべき課題は多々ありそうですが)。
その意味では、このところ保険会社が前向きに取り組んでいる「健康増進促進」という流れは、個々人の健康寿命を改善するばかりでなく、医療保険制度の持続性を高めることにも貢献できると思います。
※写真は浜松城と遠州鉄道です。