保険料収入を売上高として「抜いた」「トップ奪回」
という報道に意味があるとはとても思えませんが、
生保の事業動向を見るうえでは保険料収入も
一つの手掛かりになるのは確かです。
かつてに比べ、生保各社の販売動向をつかむのは
難しくなっています。保険料収入や年換算保険料のほか、
契約高や件数、EVの新契約価値などから解読を試みても、
それだけではわからないことが多いです。
大手4社の指標をいくつか確認してみましょう
(4-9月期。いずれも前年同期との対比)。
①保険料等収入
②個人分野の新契約年換算保険料(ANP)
③うち医療保障・生前給付保障等(≒第三分野)
④個人保険の新契約高(=保険金額)
⑤個人保険の新契約件数
⑥EVの新契約価値
<日本生命>
①保険料等収入 +17.3%(+4300億円)
②新契約ANP +8.1%
③うち第三分野 +24.6%
④新契約高 +28.5%
⑤新契約件数 +1.2%
⑥EVは非公表
「いずれも増加」と言えばそれまでなのですが、
保険料等収入の増加は主に団年特別勘定によるもの。
銀行窓販も1000億円程度の寄与となっていますので、
営業職員チャネルでは減少ということになります。
新契約件数も営業職員チャネルは横ばいでした。
新契約高の増加は昨年度からの「保障追加制度」
「一部保障見直し制度」等が関係ありそうです。
EVを公表していれば、上記の特殊要因があっても
新契約価値を増やせたのかどうかがわかるのですが…
<第一生命>
①保険料等収入 ▲5.9%(▲900億円)
※グループベースでは+7.8%(+2000億円)
②新契約ANP ▲0.2%
※グループベースでは+9.7%
③うち第三分野 +3.6%
④新契約高 ▲45.3%
⑤新契約件数 ▲1.5%
⑥EVの新契約価値 983億円(▲17億円)
※グループベースでは1405億円(+34億円)
今回から米プロテクティブが加わったため、
単体とグループベースの動きが異なっています。
単体の第三分野が増え、新契約ANPと件数が横ばい、
新契約高が急減というのは、「部分保障変更制度」を
導入したことが大きいのではないかと思います。
なお、個人年金の販売増加も目立ちます。
<住友生命>
①保険料等収入 +18.5%(+2300億円)
②新契約ANP +9.3%
③うち第三分野 +3.0%
④新契約高 ▲0.4%
⑤新契約件数 +10.3%
⑥EVの新契約価値 771億円(+66億円)
銀行窓販の一時払商品は減収だった模様なので、
保険料等収入の増加はそれ以外の要因です。
説明資料によると、営業職員チャネルで一時払終身の
販売件数が増加したとあります。
EVの新契約価値は増加となりました。昨年度と違い、
新契約マージンが下がらなかったことが大きいようです。
<明治安田生命>
①保険料等収入 +0.3%
②新契約ANP +13.5%
③うち第三分野 +7.9%
④新契約高 +69.7%
⑤新契約件数 +0.3%
⑥EVの新契約価値 1141億円(+90億円)
説明資料によると、保険料収入は団体年金の減収を
営業職員チャネルが補う構図だったようです。
ここでも営業職員チャネルによる一時払商品の
販売拡大が見られます。
第一生命とは反対に、新契約高が7割増となる一方、
新契約件数は横ばいでした。転換純減が大幅に縮小
しているので、何らかの施策が影響しているのでしょう。
EVの新契約価値は昨年度に続き増加しました。
速報段階なので、新契約マージンがどうなったのか、
後日確認しましょう。
なんだか自分のメモのようになってしまいましたが、
解読作業の一端がご理解いただけるかと思います。
※写真は真壁の町並みです(茨城県桜川市)。
東日本大震災で大きな被害を受けたため、
今でも修復工事が続いています。