政府の行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」では
JA(農協)から金融(信用)事業、保険(共済)事業を分離し、
農業関係の事業に専念させる改革を検討するそうです。
2008年度のJA部門別損益(770組合の合計)をみると、
信用事業(2143億円)と共済事業(1712億円)の黒字で
購買、販売、指導といった農業関連事業の赤字を補い、
2189億円の当期利益を計上しています。
このような損益構造は08年度だけではありません。
JAの信用事業は組合員から貯金を集め、貸出を行います。
貯貸率は3割弱にすぎず、多くは信連への預金に回ります。
貯金・預金の利ざやは資金運用収益の半分を占めており、
信連や農林中金の運用益が信用事業を支えているのです。
他方、共済事業はJA共済連との共同引受とはいえ、
JAでは引受リスクを負わず、販売に特化しています。
つまり、共済事業は実質的に手数料ビジネスです。
こうして見ると、信共分離のハードルは高そうですが、
やはり気になるのがJAのガバナンスの問題です。
JAは協同組織であり、組合員のために存在します。
ただ、同じ組合員でも、貯金者や共済加入者と、
農業関連事業の利用者ではJAに求めるものが違うはず。
例えば、共済加入者にとって、掛け金は安いほうがいいでしょう。
しかし、JAの経営を考えれば掛け金が安くなると、
JAに入ってくる手数料(付加掛金)が減ってしまいます。
兼業農家が圧倒的に多く、かつ、准組合員も多い
(組合員の約半数が准組合員です)なかで、
貯金者や共済加入者の利益が十分守られているのか、
今後の議論に期待しましょう。
※いつもの通り、個人的なコメントということでお願いします。
※左は丸の内、右は新横浜の駅ビルです。