金融庁の保険関連レポート

6月30日は金融庁の事務年度末ということで、金融庁のサイトにはなんと30以上の新着情報が並びました。保険関連のレポートもいくつか公表されましたので、ごく簡単に紹介します。

新ソルベンシー規制の検討状況

経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基準の最終化に向けた検討状況について

金融庁は新たなソルベンシー規制を2025年度に導入しようとしています。このレポートは基準の最終化に向けての論点およびその検討状況を示すものです。例えば、以下について暫定決定したとのことです。

・2026年3月期から新基準に基づくESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)の計算・報告を開始(年度末のほか、中間期末にもESRを報告)
・各社の「保険数理機能」が「保険負債の検証レポート」を年1回作成し、取締役会と当局に提出(保険数理機能の責任者は保険計理人でなくてもいい)
・各社の「ESR検証機能」が「ESR検証レポート」を年1回作成し、取締役会と当局に提出
・ESR=100%で監督介入を開始し、ESR>0%のどこかで最も強い監督を発動する方向
・実質資産負債差額の取り扱いを廃止する方向(会計上の債務超過リスクや流動性リスクは第2の柱で捕捉)
・法定開示はSMRと同じ年1回、年度末から4か月以内とする方向

なお、関連情報としてIAISが「規制資本としてのICSの最終化に向けた案」を公表したというアナウンスもありました。

保険モニタリングレポート

『2023年 保険モニタリングレポート』の公表について

金融庁による保険行政を総括したレポートで、金融庁は2021事務年度から公表しています。

個人的に興味深かったのは、11ページの図表「(参考2)家計火災保険の料率世代別の構成割合の推移」です。かつての個人向け火災保険は最長36年、あるいは2015年10月から2022年9月までは最長10年だったので、2025年になってもこれらが5割は残っているという試算結果が示されています。料率引き上げは既契約には適用されないので、なかなか厳しいですね。

新型コロナ関連の多額の給付金発生について何かコメントがあるかと探したところ、事実を示しているだけでした。2023年3月期には生命保険業界だけで約1兆円もの支払いが発生したのですから、本来はリスク管理上の何らかのコメントがあってしかるべき。あえて触れるのをやめたのでしょうか。
他方で28ページからは、金融庁が相互会社の契約者配当に関する情報提供のあり方やガバナンス向上について問題意識を持っていることが示されています。

営業職員チャネルや代理店チャネルに関する記述も多いので、業界関係者のかたは一読するのをお勧めします。

本質的な話ではないのですが、実はいきなり4ページめの図表「(参考)三利源及び逆ざやの推移」で引っかかってしまいました。「利差損益」と「逆ざや」は同じものだと思うのですが、上の図と下の図で金額が違うようです。何か理由があるのでしょうから、注記してほしいですね。

リスク性商品販売のモニタリング結果

リスク性金融商品の販売会社における顧客本位の業務運営のモニタリング結果

ここで言う「リスク性金融商品」とは投資信託、ファンドラップ、仕組債、そして外貨建て一時払い保険のことです。金融庁がモニタリングした金融機関は主要行等、地域銀行、証券会社等となります。

保険に関して言えば、注目は7ページの図表12~15です。主要行等も地域銀行も継続的に一時払い保険を販売してきたにもかかわらず、主要行等の一時払い保険の預かり資産残高はほぼ横ばい、地域銀行も微増です。資産形成機能があるとはいえ、販売会社は保険の魅力で提供しているのですよね。これって、かなりまずい状態ではないでしょうか。

※博多は夏祭りシーズンとなりました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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